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サンセットオレンジ  作者: ななる
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ⅩLⅢ………三坂メイド化計画(文化祭・一日目)

 玲志が帰ったあと、真由先輩の宣伝のおかげか十数人くらい美術部にやってきた。そのうち絵葉書を買ってくれた人は九人。例年通りであれば順調なわけだけど、今年は仕入れ数が違う。僕がため息をついていると、柏木さんがふっと笑った。最初の頃は知らない人が来て戸惑っていたけれど、接客にも十分慣れたようで、自然に、いや半ば強引に絵葉書を売っている。……正直、売りたくないんじゃないかと思ってたけど杞憂だったようだ。

 ええと残りは、と考えてやめた。悲しくなるだけだ。

「やあ、思ったより人が多いじゃん」

 やってきたのはナツと松本さん。ナツは首から、前に柏木さんが借りていた一眼レフをかけている。

 ナツが僕らをパシャリと一枚撮った。

「やっぱり柏木先輩の影響力っていまだに健在なんだね」

 松本さんが他のお客さんを見て呟く。たしかに、来てくれた人の何人かは真由先輩のファンらしく、「柏木先輩はいますか?」と口々に聞かれた。

 そういえば、肝心な真由先輩がまだ来てない。

「二人とも、真由先輩見なかった?」

 宣伝してくれるのはうれしいが、あまり悪目立ちはしてほしくない。早めに居場所を掴んでおくのが吉だろう。

「さあ。でもどうせショウタに会いに来るだろ。なんだかんだ気に入られてるみたいだし」

 ナツが他人事だというように言う。正直、気に入られてもあまりうれしくない。

「それにしても上手いよね!これ柏木さんでしょ?ほんと綺麗。三坂くんが絵が上手ってのは本当だったんだね」

 松本さんが横に置いてある絵をしげしげと見る。眼鏡のレンズに絵が反射して見えた。

「そう、翔太郎は上手。我が部のエース」

 柏木さんが自慢げにそう言うのが面白くてみんながドッと笑ったけど、当の本人はなぜ笑われたのかわかっていないよう。キョトンと首をかしげるのがこれまた面白くってまた笑う。けど、同時に嬉しかった。

 一通り笑って収まったころ、不意に松本さんが僕の腕に絡みついた。

「それじゃあ三坂くん、行こっか」

 驚いて距離を取ろうとしたところ、それはかなわなかった。反対側にナツが立ちふさがっている。

「……行くってどこに?」

 恐る恐る聞いてみる。何となくわかっているけれど。

「そりゃあ、もちろん──」

 ナツの言葉に松本さんが続ける。

「みさりんの初出勤よ!そのクマ直すためにメイクもしないといけないし、早めにね。横山さんに頼まれてるの」


「いやだあぁぁあああああっっっ!!離せえぇぇえええええっっっ!!」


 逃亡しようと暴れるも、予想以上に松本さんの力が強い。がっしりとホールドされている。

「それじゃあ、柏木。ショウタの分がんばれよ。またあとで遊びに来るから!」

 コクコクと頷く柏木さん。助けてくれよお……

 連行先は当然だけど僕の教室、2年2組。

 教室に入るや否や、横山さんが大きな声で「みさりんのご出勤よ!みんな準備して!」なんて叫ぶ。みさりん呼びが定着してるのが腹立たしい。

 僕を見かけて先にシフト入りしてた玲志がにかっと笑った。

「みーさりん!」

 あとであいつだけは殴ろう。

 まっすぐに控室に連れられ、鏡の前で椅子に座らされる。もはや抵抗する気力も残ってなかったが、松本さんと横山さんは念入りに僕を縄でぐるぐると椅子に固定した。とてもよい手際でメイクアップ。途中松本さんが「ちょっとちくっとしますからねー」なんて予防接種みたいなことを言っていたのがとても怖い。実際のところはまったくちくっとしなかったけど。

 その間ナツはというと、僕らのメイド喫茶の喫茶スペースで優雅にくつろいでいた。

 もうどうとでもなれ、と目をつぶっていたら、いつの間にかメイド服まで着せられていた。一体どうやって?しかもサイズがオーダーメイドの様にぴったり。ここまでくるとただただ怖い。

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