ⅩⅩⅩⅥ………明日はきっと②
「おっ、三坂どうした?そんなおびえた顔して」
急に呼び止められて、足を止める。阿立先生だ。
ハッと周りを見るとそこはもう図書室前。と言っても図書室は僕のクラス2-2と同じ階ですぐ近くなのだけど。
「まあいい。ほら、早く入るぞ。漫研と合同で明日のルール確認だ」
ああなるほど、準備ではなくルール確認か。だから美術室ではなく図書室……ん?
僕が質問するよりも先に阿立先生は図書室の中に入っていく。
「こっむらさぁ~ん!!来たよ~!!」
うわぁ。
「あ、阿立先生。三坂くんもいらっしゃい。こちらへどうぞ」
そう言って小村さんに案内されたところは図書室の閲覧スペース。いくつかの机がくっつけられて会議室みたいになっている。
一番奥の席に漫研顧問の倉田先生が腕を組んで座っていた。
「……ああ、なんかパッとしないのが入ってきたと思ったら阿立先生ですか。ほら、美術部の席はそちらですよ」
「んだと、倉田てめえ。パッとしないのは三坂だけだろうが!」
んだと、阿立てめえ。
倉田先生の目の前の席に座った阿立先生をキッと睨みながら、僕もその隣に腰を下ろす。僕ら三人の他にまだ来ている人はおらず、図書室は静寂に満ちて……いるはずもなく。
「全く、こっちはどこぞの美術教師とは違って暇じゃないんですよ」
はあ、と倉田先生がわざとらしくため息を漏らす。
「なるほどな、さすが女子生徒に色目使いまくってる国語教師は言うことがちげーや」
「だ、誰が!?私は小村さん一筋です!」
それもどうかと思うけど。
額の汗をぬぐって倉田先生も負けじと反撃する。
「阿立先生こそ、最近無駄に身だしなみに気を付けているそうじゃないですか。よく生徒から聞きますよ、前髪の分け方を毎日変えてるとか、かんきつ系の香水を使ってるとか。一体どっちが色目を使っているんだか」
「べ、別にそういう意味でやってんじゃねえ!くそ、三坂も何か言ってやれ」
ええ……。仕方がない、ここは我が部の顧問をフォローしとこう。
「そうですよ。阿立先生はただパケメンって呼ばれるのが嫌なだけで、他に他意はないですよ。体育会系男子が『臭い』と言われて気にしだすようなあれです」
「や、止めろ!」
阿立先生が顔を真っ赤にして叱ってくる。どうやらフォローは失敗したようだ。
少し離れたところからクスクスと笑う声が聞こえてきた。そこにいたのは小村さん、それから松本さんにナツと柏木さんだった。




