ⅩⅩⅩⅣ………前夜祭と白お化け④
あと三十分くらいで午後三時。逃げても仕方がないけど、取り敢えずそれまではここにいよう。一人ぼっちに古びた教室。なんだかそわそわして窓の傍へ近寄った。
窓を開けようと手を伸ばすとカランと何かにぶつかった。それは空の水槽。何でこんなものがここに?
「──ばあっ!!」
「ひょわあっ!!」
声と同時に背中を押されつい情けない声が出てしまった。一体なんだと後ろを振り向くと、さらなる衝撃が。
白く薄い布を頭からかぶった怪しげな姿。目の部分だけ穴があけられている。
「……何やってるの、柏木さん?」
呼ばれた彼女は体をうねり、白い布を揺らして否定する。
「ん。柏木じゃない。白お化けマークⅡボルカニックカスタム」
何それかっこいい!……じゃなくて。
「……で、何やってるの?」
「……ん。安立から伝言。『クラスの方が落ち着いたら図書室に来るように』とのこと」
文化祭の準備とかかな。それにしても、集合場所が図書室って。本当に美術部の顧問って自覚あるのだろうか。あ、と柏木さんが何かを思い出したようで、言葉を続けた。
「それから松本から伝言。『三時には教室に戻ってきて』とのこと」
あー、はい。知ってますとも。
「私も三時からクラスでミーティング。終わった方から先に図書室に集合。それでいい?」
異論はないのでコクンと頷いて同意する。柏木さんはそれだけ確認するとそのまますぐに教室の外に駆けて行ってしまった。白い布がひらひらと揺れる姿が微笑ましい。
そういえば柏木さんのクラスの出し物はお化け屋敷だっけ。柏木さん扮する白お化けマークⅡボルカニックカスタムも登場するんだろうか。……いや、まずそれなんだ?
ふと時計を見ると、午後3時まであと数分。
僕も急いで教室を出た。




