ⅩⅩⅣ………レモンティーにブラックコーヒー①
取り敢えず柏木さんと合流できたことを横山さんにライヌで連絡する。
クラスのグループチャットから横山さんのアカウントを……あった。
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『柏木さんと合流できたよ。買い出し行ってくるね』
『わかった』
『そういえば進藤どこ行ったか知らない?』
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ううーん……どうしようか。
「ん?」
柏木さんも僕のケータイを覗き込んで首をひねる。
「玲くん迷子?」
玲くん……?
「柏木さん、その“玲くん”って玲志のこと?」
うん、と柏木さんが頷くのと同時に僕は送信ボタンを押していた。
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『玲志なら楽器屋にいるよ』
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呼び方についてはあとで玲志に聞きに行こう。もっとも、その時玲志が生きていればの話だけど。
……冗談はほどほどにして、さっさと買い物を済ませることにしよう。
横山さんのメモによると僕らが買わないといけないのは三つ。
ガムテープ、模造紙、ペンキ。
取り敢えず文具コーナーに足を運ぶ。
柏木さんはあまりこういうところに来たことがないのか物珍しそうに周りをキョロキョロしている。
ガムテープと模造紙をかごに入れ、レジへ向かおうと柏木さんの方を向く。
「翔太郎、あれ!」
柏木さんが僕のシャツを掴み、もう片方の手でどこかを指さす。指の先には『ペン詰め放題』の文字が。
引っ張られるままにそこまで行ってみると、カートに山盛りになったペンと、ビニール袋。そしてさらに『袋いっぱい100円』のポップが。
柏木さんの瞳の輝きが一層増している。
「……やってみる?」
ぶんぶんと首が千切れるほどに頷く彼女を一体だれが止めることができるというのだろう。
柏木さんはカートの四分の一を袋に収め、僕はそれを別会計で支払った。
おそらく柏木さんはペンで店を開きたかったのではなく、詰め放題というものをしてみたかっただけなのだろう。
ひとしきりパンパンになった袋を見ると、すぐに興味を失ったようで、親切な店員さんにもらった大きなレジ袋にそれをしまった。
ピロンっとライヌの通知音。玲志からだ。
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『おい翔太郎、お前俺を売っただろ!』
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返事はない。僕はただの屍。
既読はついたが知ったことじゃない。もともと逃げ出す方が悪いんだ。なむなむ。
気持ちを切り替えて、次の買い物へ……といってもなあ。
ペンキなんてミオンにあるだろうか。近所の画材店で買った方がいろいろおまけしてもらえるしなあ……
よし。
「柏木さん、買うもの買ったし、あとは休憩でお茶しよっか」




