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サンセットオレンジ  作者: ななる
23/71

ⅩⅩⅢ………オレンジが遅れて④


 ショッピングモールで一人、柱によっかかって電子遊戯。

 昔から人気のパズルゲーム。指をスワイプしてパズルを動かす。

 ぼんやり遊んでいると、急にピロンッと通知音がして、うっかりケータイを落としそうになった。

 玲志からだ。

 文字で会話するSNS、ライヌ。そこの個人チャットにメッセージをが届いてる。

 ちょうどいいや。個チャを開いて会話しよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『柏木さん来た?』


 『まだ。そっちはどう?』


『逃走なう』


 『草』


『今、山村楽器で隠れてる。あ、横山と松本には内緒なw』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そこですっと顔を上げる。

 うーん、どうしよう。

 とりあえず自分のみの保身のために、聞かれたらすぐ答えるようにしよう。

 それにしても玲志が吹奏楽部に入るとは。なんだかんだ学校ではいつも一緒にいるけど、そんな話一回も聞かなかったな。

 ……まあ、そもそも部活に全然行ってないんだったら話すわけないか。

 あ、靴紐が外れている。

 しゃがんで結びなおしながら、そういえばと思い出す。

 今日は全員制服ではなく私服なのだと。何となく不思議な感じがしていたけれど、そのせいか。

 いつもの学校靴と違って、プライベート用のパステルブルーの靴。白い靴ひもが少し黒ずんでいるのが少し恥ずかしい。

 松本さんは白いシャツにうす紫のパーカー、黄色のロングスカートと全体的にゆったりとした印象。

 対照的に横山さんは薄桃の肩出しトップスに白のハーフパンツで活発な印象。

 二人ともすごいおしゃれで自分ひとり浮いてないか凄い心配で、それもあり早く玲志にきて欲しかったんだけど、やってきた玲志はまさかのジャージ。だけどあいつ、もともと背が高くて顔もまあまあ良くて、なんだかんだ様になっているのが余計に腹立つ。よしやっぱり隠れているの報告するか。

 ちょんちょん、と背中をつつかれる。

 ん?と顔を上げると「ん」と声が返ってきた。

「柏木さん!?」

「ん、翔太郎。お待たせ」

 暖かいオレンジのワンピース、少し大きめの麦藁帽。それから、パステルブルーの涼しげなサンダル。

 ……うん。

「ん?どうした?」

 柏木さんが首を傾げると、麦藁帽が少しずれて落ちそうになった。

 ……かわいい。

 気持ちを切り替えるため自分の頬をパンパンと叩いて目を覚ます。もう一度靴紐をきゅっつと固く結んで立ち上がる。

「どうしたのはこっちの方だよ。何かあったの?」

 ごまかして強引にそう聞くと、柏木さんは静かに俯いて「別に……」とぽつり。

 口ごもるとは珍しい。 

「でも、遅れてしまって、その、ごめんなさい」

 柏木さんは頭を下げると同時にぎゅっとワンピースの裾を握った。少しその手が震えている。

「……何があったのかわかんないけど、いいよ。みんなも別に怒ってなかったし。それよりほら、僕も柏木さんが来たら買いもの行くようにメモ渡されていたんだ」

 そう言って横山さんにもらったメモを見せる。

 柏木さんはそれを見ると、ふむ、と声を出して、周りをきょろきょろと周りを見渡した。

「……翔太郎、早く行こ!」

 よかった、いつもの柏木さんだ。

 そのまま僕らは人混みの中へ紛れていった。

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