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賞命首  作者: じゃったん
第一章 ゲーム開始
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第四話 青天の霹靂

『もちろん、いいですよ。私が答えられる範囲であれば』


「あー……、今から俺は追いかけられるんだな? 命を手に入れようとしてる奴らに。……俺がリストに載ってるって、どうやって分かるんだ?」


『主に、テレビなどのメディアからです。まず、朝7時にその日選ばれた1000人の顔と名前が、全世界に報道されます。約30分間ほどの放送です。あとは、「賞命首特設サイト」なるものがネットにあるので、そこから情報を得る人もいます』


「……その情報は……顔と名前だけか?」


『そうですね。テレビでもサイトでも、同じ情報しか得られません』


  誠はまず、住所を特定されて殺される可能性は低いと考えた。


「じゃあ…………俺は、いつまで逃げればいいんだ?」


『今日の午前0時。日付けが変わるまでです』


  約17時間の逃亡。学校に行ってる暇も無ければ、飯ものんびりとは食べられないのではないか……?

  ここで誠は、ある考えに辿り着く。


「逃げないで、隠れるのはアリ……だよな?」


  自分だけが知る隠れ家などで身を潜めたら、たった一日生き延びることなんて容易いだろう。


『良い質問ですね。ですがそれは……ナシ、というか、出来ません』


  電子画面に世界地図が表示される。大陸の西南を占めているのがアグタ区画。クロダ町は、その区画の西に位置する町だ。

  自分の家に赤いピンが立てられていて、アグタ区画の中心部には、青いピンが立てられている。


『誠様は今日、8つのスポットに向かってもらいます。今、この青いピンが立てられている場所に、あと2時間ほどで着かなければなりません。着いたら、また次のスポットを表示します。合計8つのスポットを制覇したら、あとはもう自由です。今日は何処に逃げても隠れても構いません』


「……行かないと、どうなるんだ?」


『誠様は死亡します。この「ライフウォッチ」から、致死薬が誠様の体内に流れ込む仕組みです』


  どうやら、この誠の手首に着いている時計は「ライフウォッチ」と言うらしい。

  誠は唸った。外に出歩かなければならない理由を無理やり作られて、脅されている。誠はまだ、この事が全部夢であってくれ、と心の奥で願っていた。


『……一日生き延びれば、誠様の方に、報酬として命が一つプレゼントされます』


「……そうか」


  誠にとって、そんなことは割とどうでもよかった。

  誠は今、葛藤に揉まれながら苛立っている。この時計が言っていることは全て嘘だろう、と思う自分と、いや、従わなければ死ぬかもしれない、という恐怖を感じている自分。特に前者が後者の考えに怒りを感じていた。

  未知の出来事に、誠の頭は混濁していく。ここから外に出なければ死ぬかもしれないし、外に出ても死ぬかもしれない。どんな未来が待ち受けるのか、誠には到底知る由もない。


「あーっ! クソッ!!」


  誠は寝床から勢いよく立ち上がった。


「行くよ、行ってやるよ。何もしないで死ぬより、何かして死んだ方がマシだ!」


『分かりました。では、誠心誠意、ナビゲート致します』


  誠はとりあえず朝食を摂るため、一階に降りた。

  両親になんて言えば良いのだろうか。

  ふと思い立ち、廊下で誠は足を止める。

  二人は「賞命首」の事件を知っている。説明すれば、多分助けてくれるだろう。一緒に、表示されたスポットを回ってくれたりするだろう。だが、そんな危険なことに関わらせて良いのだろうか? 出来れば隠し通して、自分の力だけで解決させたい。でも、もしそれで自分が死んでしまったら、両親は悲しむだろう。……。

  悩んだ結果誠は、事件を追っている父に頼むしかないという考えに落ち着いた。

  リビングの戸を開ける。瞬間、誠は異様な空気を感じ取った。母が背中を向けて、テレビの前で膝を付いている。部屋のイスやソファが乱雑に動かされ、窓にかかるカーテンはビリビリに破られている。母が座っている床の周りには、ティッシュのゴミが多く散乱していた。


「母……さん?」


  誠は足が竦んだ。肩を震わせ、すすり泣いている母に歩み寄りたかったが、できない。近づくと、とてつもなく恐い何かを知ってしまうような気がして……。


「大丈夫……?」


  誠はもう一声、母にかけた。それに気付いたのか、母の泣く声はそこでピタリと止まった。

  少しの沈黙が過ぎ、母は口を開く。


「お父さんが……死んだわ」


「……え…………?」


  予想だにしない答えだった。


「昨日ね……、あの人、賞命首にかけられていたの……。だから、自分の命を狙う人たちから、逃げて、逃げて、にげて……」


  母は鼻をかんだ。笛のような甲高い音が部屋に響く。


「それでね?……昨日の夜、警察に呼ばれたって、言ったじゃない?…………その時に死んだのよ……」


  つまり、誠が父を見たのは、昨日の食卓で最後だったのだ。誠に衝撃が走る。頭は真っ白になり、言葉なんて出やしない。

  またも沈黙が流れる。それを再度破ったのも母だった。


「……誠……あなたも、なのね……」


  「あなたも」。誠は、母が何のことを言っているのか、すぐには分からなかった。だが、母の前に映し出されているテレビの画面を見て、ハッとする。画面には、見出しで「今日の賞命首」とでかでかと書かれ、その下には大勢の人の顔写真と名前が並んでいた。

  そうだ……俺も今日、賞命首に……。


「もう私は、嫌なの」


  母は重そうに腰を上げ、フラつきながらその場に立った。


「大切な人がこの世からいなくなるのが、辛くて、嫌なの」


  振り向いた母の手には、一本の包丁が握りしめられていた。目は虚ろで、顔も青ざめている。誠にとって、母は別人になったかのように思えた。


「だから……一緒に死のう? 誠」


  母は包丁を両手でしっかりと握り直した。


「待てよ……母さん…………!」


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