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賞命首  作者: じゃったん
第一章 ゲーム開始
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第一話 賞命首

  これは、ある惑星(ほし)で起きた物語。

  世界人口約5000万人。大陸は全て陸続きで、一種の言語が世界共通。人々は平和に暮らしていたーーーーーーーーあるデスゲームが始まるまでは……。



「なぁ、誠!」


「何だ。朝からうるさいな」


  学校の教室に着くや否や、同級生の板垣(いたがき) (りょう)が話しかけてきた。金城(きんじょう) (まこと)は自分の席に座り、気だるそうに亮のくだらない話に付き合う。


「これ見てよ!」


  亮は、一種のサイトが表示されたスマホの画面を見せてきた。見たことのないサイトだった。


「なんだこれ」


  と誠は訊く。よく見るとそのサイトは掲示板サイトで、不特定多数の人間が何かを書き込んでいた。


「誠、お前『賞命首』って知ってるか?」


「は? 何だそれ」


「え。……テレビとか見てないのか?」


「あんまり」


  亮いわく、今、都会のほうで大問題になっている事象らしい。その、『奨励首』? 『小便首』? だか何だか知らないが。

  誠は全くもって無関心だった。目の色を変えない誠を見て、話に乗ってくれないのか……と、亮は肩を落とす。

  だが亮はそこで諦めずに、矢継ぎ早に話を続けた。


「いや、これ、世界問題になるレベルだって! ヤバいからちょっと聞いて!!」


「お、おう……」


  誠は亮の熱意に圧され、渋々亮の話を聴いてみることにした。

  亮が言うには、こうだーーーー。



  事の発端は、五日前の2018年9月22日。世界首都のシャラナで起こった。


『皆さん御機嫌よう。午前7時をお知らせします』


  シャラナモニターという、シャラナの街を、宙に浮きながら見下ろしている電子テレビの画面に、仮面を被った人物が突如姿を現した。声色から推察するに、おそらく男の人物だろう、というのが世の見解だ。

  朝やっていたニュース番組などはどれも中断され、放送はその男の独壇場となった。


『今日から人間の皆さんに、「賞命首」というゲームをしてもらいます』


  変声機で加工された不気味な声に、シャラナの街の人々は次々と足を止め、上を見上げていく。


『まず皆さんは、〝賞金首〟というのはご存知でしょうか? いわゆるお尋ね者と呼ばれている人達を、捕まえたり殺したりすれば賞金が貰えるという、アレです。このゲームは、それをモチーフにしています』


  画面が、白い背景に、黒い文字で「賞命首」と書かれたものに切り替わる。


『〝賞命首〟。文字通り、賞命首にかかっている人を殺せば、殺した人は〝命〟が報酬として貰える……というゲームに、人間の皆さんに参加してもらいます』


  その仮面男の、突拍子もない話に、街の人々は唖然とさせられた。

  一瞬の静寂ののち、街をざわつきが包み始める。

  「放送事故か?」「非現実的な話だな」「何それやばくね?」人々の反応は様々であった。

  それでもまだ、完全に信じ込むという人はいない。その〝賞命首〟というゲームが本当に始まるということなど。


『少し実演してみましょう』


  仮面男がそう言うと、画面に一人の顔の写真が映った。その上には「賞命首」という文字。氏名、年齢らしきものが横に表示され、下には「ライフ『1』」と書かれている。


「おい! 何で俺の顔が映ってんだよ!」


  民衆の中の一人の男が叫ぶ。だがその怒号は、画面の向こうの仮面男には届かなかったようだ。

  仮面男は淡々と話を続けた。


『今この男を誰かが殺せば、その誰かに命を〝一個〟、報酬として与えますーーーー』



「ーーーー結局、その〝賞命首〟にかかった男は、近くにいた奴にナイフで刺されて死んだらしい。これをキッカケに、今都会の方は大混乱。この田舎にももうじき影響の波が来るぜ」


「はぁ……」


  高校二年生にもなって、そんな話を振ってくる亮に、誠は溜息しか出なかった。


「ただの犯罪だろ。テレビ局をジャックして、人を殺してくださいって、扇動しただけだろ? アホらし」


「いやいや誠、信じてくれよ……」


  亮を突き放し、誠は教科書とノートを広げ、いつもはしていない数学の勉強を始めた。亮は口をとんがらせたが、もう「しょ」の字は口に出さなかった。


「おい、誠!」


「痛てっ」


  誠が叩かれた後頭部を押さえながら後ろを振り向くと、そこには日川(ひかわ) 夏芽(なつめ)が立っていた。彼女の表情はいかめしく、誠に非難の目を向けている。彼女は右手に「サッカー部 マネージャー」と書かれたノートを持っていた。誠はこれで叩かれた。


「あんた、何日部活休むの? もう来週大会だよ?」


「分かってる、分かってる。今日行くから!」


  夏芽の説教はしつこくて長い。誠にはもう耳にタコであり、いつものようにいい加減な返事を返した。来週には大会、という言葉も、さらりと聞き流して。


「ホントに? 今日は来るんだね?」


  夏芽はいかつい形相のまま、誠の顔を覗く。だが、誠は夏芽に目を合わせない。ついさっきの自分の軽はずみの発言に、誠は簡単に責任を持てずにいた。


「……あ、あぁ。行くよ」


  結局、誠は「Yes」と答えた。少しでも間を空ければ、また次々と責め立ててくるであろうこの猛虎に、誠はとうとう白旗を揚げた。


「うん! じゃあ、放課後逃げないでね! 亮がまた困るから」


  「ははっ……」と、亮は笑った。

  以前に誠は、今日は部活に来ると断言した日の放課後に逃走未遂をし、亮に迷惑をかけていた。具体的に言うと、誠と亮の放課後鬼ごっこである。

  これだけ聞けば、誠はサッカー部にとって不良部員、そう思うかもしれない。実際、誠は部活動には消極的だ。だが、誠には誠なりの、〝部活動に参加したくない理由〟があった。

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