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スリーピングビースト  作者: あきむ
10/10

終:ヒーローの約束 (2/8)

 二ヶ月後。何も変化のない世界。

 アニムスによって破壊された工業地帯は、夢叶によって修復されたものではなく、夢叶の世界で構築されていた世界へ移ったためにもたらされた結果だと言う。

 あくまで破壊される前の光景に戻っただけで、その後同期を切ったために、向こうの世界、もとい元の世界の壊されたステータスは、今の世界には反映されないという。

 夢叶の世界には……。

 あの白い世界は、移行時のどちらの世界にも属していない状態の現れだと言う。智美が方便で「はざまの世界」と称したそれは、実は夢叶が犠牲となって構築された移行後の新しい世界であることを説明していたが、言葉の意味通り受け取るなら正しくはあの白い世界だったように、蓮司には思われた。

 智美曰く、前の蓮司たちのいた世界は、人間の移行状況を確認して、計画的にクローズへと持っていかれるとのこと。

 また今回の『動的マイグレーション』時の記憶は、関係者以外、全ての人間において書き換えられているということだ。

 つまりは、誰も世界が、知らず知らずのうちに置き換わったことを、これからも知らずに生きていくということ。

 この世界は夢叶という存在の恩恵によってもたらされているにも関わらず、ほとんどの人間がそのことに感謝も、記憶もせずに、生きている。

「蓮司の記憶だけは書き換えないで欲しい、ずっとそのままにしてほしい」

 というのが、夢叶がお願いした条件だったよう。

 それこそが、本当の彼女のわがままだったのかもしれないと、蓮司は一人勝手に納得していた。大切な……人には、いつまでも覚えていてほしいという、彼女の想い。

 結局、夢叶はずっと知っていて、蓮司だけが何も知らずに過ごした日々だった。

 夢叶やハヤトが「本当の現実」と称した世界が、どうなっているかは、智美は教えてくれようとはしないし、実のところ蓮司自身もあまり知りたいとは思えなかった。

 何が正解だったのか、未だに蓮司にはわからない。そして実感も、湧かない。

 ただ、蓮司の前に再び夢叶が現れることは、無かった。

 あれは夢だったのかもしれないと思うことさえあるが、その考えだけは一瞬浮かんでも、すぐに否定する。

 そんなことを夢叶は望まない。そして蓮司自身も。

 何より、夢じゃ無かったという確かな証拠が、今もなお存在し続けている。

「さあて、今日もやりますかな。ユメさんよ」

「…………」

 二百メートルは先であろうか。夜の街を不気味に徘徊する、ゾンビ型レグナイトが、複数体確認できる。

 傍で翼を羽ばたかせているユメ。中空で静止しながら、蓮司を向いては了解しているような無表情を浮かべている。

 苦笑する蓮司は、優しくユメの頭を撫でると、ユメの首に結ばれている真っ赤なスカーフほどき、それを自身の左上腕に巻いて、右手と口でぎゅっと結ぶ。そしてデバイスを取り出さずに腰の前で両手だけをクロスさせると、瞑目して一言、小さく呟いた。

「変身」

蓮司と夢叶のお話は一旦終了です。


”一旦”と表したのは、未練たらしくも、まだもう少し加筆したいという想いの表れです。

一定の量に収めようと努めてしまいましたため、だいぶ「彼」と「彼女」についてのエピソードを割愛してしまいました。結末がどうであれ、もう少し二人の時間を書いてあげたいという気持ちが残ります。


いずれまたその際は、ひとつのエピソードとして懲りずにお読み頂ければと思います。


最後に、至らぬ作品ながらも本作にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。

わずかでも、お読み頂きましたあなたの感情に、芽生えるものがありましたら幸いです。


あきむ

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