心に届くアドベンチャー
「ONE 輝く季節へ」のネタバレがある可能性があります。
心に届く物語
この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。
----- 第一話 「心に届くアドベンチャー」 -----
できたーーーーー!!!
俺は18禁ゲーム、美少女ゲーム、
俗称エロゲと呼ばれるゲームのシナリオライターだ。
名前は、麻榎准太郎。
たった今、そのゲームのシナリオを完成させたところだ。
共同で開発をしているネットワークサーバーに悪戯をして
うんこフォルダを階層的に作成し、
消されないよう階層深く作っている所を見つかり、
うんこフォルダの作成と削除の攻防で、
うんこフォルダが削除できなくなる障害も乗り越え、
ついにシナリオ完成へとこぎつける事ができた。
こんな悪戯をする俺だが、
ゲームを作成する情熱は誰にも負けないと思っている。
今、作っているこのゲームのコンセプトは、
『心に届くアドベンチャー』だ。
コンセプト自体は、
最近見たアニメ『新世紀エヴァンゲリオン」というヒット作に
感銘を受けて思いついたものだ。
このアニメは、
アニメを見る事で心を補完するというメタフィクション構造になっていて
視聴者の心の成長を促がすというオチになっていたが、
それは完全なものではなく
アニメの途中から中途半端に作られたものだった。
しかし、俺はこれをゲームで実現するというコンセプトのもと、
このゲームを作り始めた。
シナリオは二人で共同で作成し、
ヒロインキャラごとにシナリオを分ける感じだ。
もう一人のシナリオライターの名前は、久林直太郎。
ヒロインを可愛くキャラ付けするのが上手いシナリオライターだ。
今作のキャラは、久林のキャラが、
えいえんの世界に行ってしまった幼馴染を待つ女の子。
聾唖者でいつもスケッチブックを持ち歩く女の子。
目の見えない女の子。
そして、俺の受け持つキャラは、
健気な強い母性を持つメインヒロイン。
知的障害のある女の子。
勝気なツインテールのツンデレヒロイン。
この企画を通すために、本来エロ目的であるはずの購入者に
感動を売るという冒険に出るため、シナリオ書きなら
禁じ手にも近い障碍者をキャラとして出す事になった。
ストーリーとしては、えいえんの世界に憧れる少年の主人公が
ヒロインとの絆を得て現実に帰ってくるという話だ。
ギミックとしては、このえいえんの世界というものが、ゲーム中の
世界そのものだ。このゲームを遊んだプレイヤーはゲームでの経験を
得て現実できっと強く生きてくれる。
俺は、そう思ってゲームを構築し、シナリオを書いた。
これから、久林の作ったキャラとの矛盾点の修正など統合を行う。
俺は久林へ問題点がないか、自分のシナリオをメールで送り
久林の書いたシナリオを読む。
えいえんの世界へ消えた幼馴染を待つ女の子のシナリオの
消えてしまった幼馴染が気になる。
どういう設定にしてあるんだろう?
久林へメールを書く。
「消えた幼馴染の設定ってどうなっているの?」
しばらくしてメールが返ってきた。
『麻榎へ。消えた幼馴染は、俺自身だよ。
問題点は特になさそうだ。フォフォフォ v(^^)v』
絵文字の顔が気になったが、良かった。これで行けそうだ。
そして、ゲームは発売された。
ネットでの評判もなかなかいい。
『感動した。涙で前が見えない』
しかし、思わぬ感想が出てきた。
『もう、このゲームの世界から出たくない』
俺の予想に反してゲーム世界にどっぷりとつかり、
まるで正反対の効果になってしまっている。
どうしてこんな事に……。
久林からメールが来た。
『上手くいったな、麻榎! 二次元こそ、俺達の住む世界!
フォフォフォ v(^^)v』
おまえが原因かーっ!!
相方のシナリオライターとの連携を正しく取れなかった俺にも責任はある。
俺は何て事をしてしまったんだ……。
また、久林からメールが来た。
『隠しシナリオ、麻榎も自分の分身キャラを登場させて
いたんだな。
隠しシナリオをクリアして友情を示している人もいたぞ。
良かったな! フォフォフォ v(^^)v』
そう、俺は自分の分身をキャラを登場させていた。
全てのシナリオをクリアした後、
全てのヒロインをふって俺の分身に会いに行くと、
俺との友情シナリオになるのだ。
今回の失敗を糧に、友情を示してくれた人のために、
俺は、心に届くアドベンチャーを作り続けるっ!!!