森
第4話 『森』
南の国を旅出て数日が経った。
『もう暗くなるし、この辺で野宿しようか』
『はぁ、今日中に抜け出せなかったぁ〜広すぎるよ!この森!』
この森に入ったのは3日前なのだが、なかなか目的地にはつかない。全体的に大きな木々に覆われていて日光が入りににく、基本的に暗くてジメジメしている
『また野宿か、さちちゃんまたあの子出してくれる?』
『うん。まかせて!スケッチ!!』
そう言うと目の前にペンとスケッチブックが出てきた。そのスケッチブックにさちちゃんは絵を描き始める。私はこの間に枯葉など燃えやすいものを集める。
『できたよ〜』
『私も、これだけあれば足りるよね?』
『うん!大丈夫、じゃあ行くね』
さちちゃんが詠唱を始める、するとスケッチブックが光り出して先ほど描いてた絵が浮かび上がってくる
『いでよ!レッドコドラ』
すると描かれていた赤い子供のドラゴンが目の前に現れた。
『何度見てもすごいなぁ、この召喚術』
さきちゃんの魔法”絵描召喚”は術を唱えると、魔法のスケッチブックと魔法のペンがでてくる。この二つを使うと、実際に見たことのあるモンスター思い浮かべるとペンがおもむろに動き出してそのモンスターを描き始める、そして描いた絵のモンスターを召喚できるという魔法だ。
そのモンスターの能力は絵のうまさと術者の想像力に比例する。さちちゃんは絵はとても上手でまるで、そこにいるかのようなリアルさがある。
『さっレッドコドラあなたの力を貸して』
レッドコドラに命令すると『がるるー!』と鳴いて私の集めた枯葉に火をつける。
『ほんっとにこの子かわいい!!!んーでも、この子はどのくらいで消えちゃうの?』
『うーん、あんまり魔力込めてないから5分くらいかな』
『そっか、君もなのね・・・・でもすごいね!見たことあるやつならなんでも召喚できるんだよね!さすが南の国一の魔術師だね!』
『えへへ、ありがと、でもこれだけだったら国一は名乗らないよ』
『というと?』
『ちょっと魔力使うから、あんまり使わないけど、ちょっと見ててね』
『え?』
『我に契約し魂よ、我と共に〜』
詠唱が始まるとさちちゃんの周りが青く光りだす
『いでよ、ジャイアントゴーレム』
突然目の前に大きなゴーレムが現れた。
ジャイアントゴーレムは南の国が管理する魔獣で、普段は門番している、心優しくとても忠誠心が強いため持ち場を離れることはないはずなのだが。
『え!?なんで!どうゆうこと!?』
『えへへ、これが私が使えるもう一つの魔法”契約召喚”だよ!、スケッチサモンは私の能力以下の子しか出せないけど、これならそのモンスターの100%の力を持つ分身体を呼べるんだよ、まぁ制限時間短いんだけどね』
『すごい!!!ジャイアントゴーレムがいつでも味方にいるなんて心強すぎ!!ほかにはどんな子が呼べるの?』
『契約したら呼べる様になるんだけど、実は契約してるのはこの子くらいなんだよね.あははー』
『ふふ、でもすごいよ! 』
『ありがとう』
『あ、そうだその契約召喚ってもしかして・・・・』
旅を出て数日たつけど私たちの話のネタは無くなりそうにない。
かろうじて木々隙間から見える空が紅く染まっていてく。
焚き火を消し、そろそろ寝ようとしていた時だった。
森中に爆音が鳴り響く、森の動植物が異常に騒ぎ始めた。
『え?なに?これ』
さきちゃんが飛び起きる。
『グオオオオオオオオオオオオオ』
低く大きな声が森中を駆け巡る。
『『もしかして、この声って!』』
二人は顔を合わせ、すぐに荷物を持って声のする方へ走り出した。
かつてこの森は竜が暮らしていた、しかしある事件を境に二度とこの森に竜は現れなくなった。
『あの鳴き声って竜だよね?』
さちちゃんが私に聞いてくる。
『たぶん、そう!私も父親についって行った時に一度だけ竜の里で見かけただけだから確信はないけど、、』
段々と爆音と怒号が大きくなる。
森の中で一切木々が生えてない場所でた、そこでは黒い竜が人間の軍団と戦っていた。
私たちは一旦、近くの茂みに隠れる。
『ドラゴンスレイヤー・・・・』
さちちゃんが呟く
『ねぇ、さちちゃん、私あの子を助けたい』
『うん!、私も思ってた』
あの竜はあの事件の生き残りかもしれない、それならばあの悲劇を生まないようにするのが、私たちの使命だと感じた。
『でも、どうやって?私のジャイアントゴーレムを・・・』
『いやそれじゃあ、乱戦になるだけだから、竜とあの軍団を離さなきゃ』
『確かにそうだけども、でもどうやって・・・・』
『大丈夫、さっき言ってたやつをやろう!あれならできると思う!』
さちちゃん困惑していた様子がだが、私を見てコクンッと頷き、詠唱を開始する。それを合図に私は走り出した。
昔、遊んでいた時にたまたまできた魔法があった。
当時は魔力が足らなくて未完成で終わってしまったけど、もし私が二人になるのなら、できるかもしれない。
走っている私の隣にもう一人私が召喚される
『いくよ!私!あれやるよ!』
『了解』
軍団は一歩引き、竜との距離を少し取った。
『『今だ!!!地獄にはびこる植物よ、その姿今ここに示せ!いでよ”ヘル・プランツ”』』
すると竜と軍団の間に植物が壁を作るように急成長する。軍団から完全に死角になった竜はこちらを一瞬睨み、何処かへ飛んで行った。
軍団たちは急に現れた謎の壁に戸惑っていた。
『えへへ、ざまぁーみろ・・・・』
軍団は竜が逃げた事に気がつきあたりを見回る。
気がつかれる前に逃げようとするが身体に力が入らない。
『やば・・・・魔力ぎれ・・』
力なく、前に倒れようする私を暖かい毛並みが支えてくれた。
ダークウルフ、闇の中ではどこにいるか認識で気なくなるくらい真っ黒な毛並みの狼
『この子は・・・・さちちゃんかな?』
その子に倒れるように乗っかりこの場所から脱出する。空を見上げると満点星空だった。
『うわっーめっちゃ綺麗...』
ここで私の意識が途絶えた。
つづく
バトルなんてなかったんや・・・・・