第十二話:決着その参
雷電の檻は依然顕現したままクラウンを閉じ込めている。
どうあっても檻から出すつもりはないらしい。同じく檻の中の更に形成された籠の中に閉じこもる少女の笑顔がそれを物語っていた。
ようやく追いつめたーーとでも言いたいのだろう。
クラウンは嬉々として口角を最大まで引き上げるプラムエルの表情を見てそう感じた。
たしかにクラウンの基本戦術は、幻術を使った相手の精神面を攻撃し戦闘不能に追い込むことにある。
あるいは以前梓たちに稽古をつけたときのように、先ほどアイリスと戦ったときのように剣を使った近接戦闘も取り入れることも可能だ。
しかし前者はともかく、剣で彼女を傷つけることはもはや不可能だろう。彼女を護る雷の籠がそれを許さない。あれに触れようものなら剣ごと感電するのがオチだ。
試しに小石を拾い上げて、丁度檻を形作る雷と雷の柱の間に放ってみる。すると予想通り小石が檻に触れるより早く、小石は黒い炭となって焼失した。石はあのように燃え屑となりうるものなのだろうか。そう思う程に異様な光景であった。
触れたらーーではない。近づいたらああなってしまうのだ。
剣を振り下ろそうものならそれを握るクラウン自身も焼き尽くされることだろう。
「アハ! 無駄無駄。もうここから出ることは出来ないし、私を傷つけることも難しいよ」
プラムエルは優越感に浸りながら嗤う。
「……みたいだね。でも、手がないわけじゃない」
むしろこの程度で追い込まれたなどと吹くには早すぎる。
まるでそう言っているかのようなクラウンの余裕の満ちた表情に、少女の盛り上がった気分がストンと一瞬にして底につく。どこまでも憎たらしい男だ。
再び憎悪が再燃されるが、すぐに冷静になって考えを改める。
表情は取り繕ってはいるが、先ほど見た様子だと精霊術でかなりのダメージを負ったことに変わりはない。
目の前で余裕を安売りするいけ好かない男は、所詮幻術で相手を惑わしながら近づき攻撃する臆病者。もしかすると直接的な戦闘能力は玄武よりも弱いかもしれない。肉体的に見ても玄武の方が圧倒的に騎士というイメージが強いじゃないか。
要は口で人の心を惑わす嘘つきだ。動揺を誘い隙をつく。卑怯者の常套手段。つまり自分と似ているタイプの人間なのだ。
プラムエルは今までのクラウンとの戦闘の様子を見てそう判断した。
「へぇ? じゃあその手ってのを見せてみなよ」
この檻に閉じ込めている以上はどこにも逃げられやしない。
ピシャリとクラウンの言葉に返答する。
そしてすぐに仕掛けた。再び≪雷の螺旋≫が放たれる。
稲妻は渦を描きながら一瞬にして広がっていく。雷よりも速く動くことが出来なければ回避することは不可能だ。
クラウンは咄嗟に剣で受け止めようとするが物理的に止められるものでもない。稲妻は剣ごとクラウンの身体を貫いた。
「うぐッ!」
苦痛に喘ぐ。
悪魔にとって弱点となる精霊術は一気にクラウンの体力を削った。
たったの一撃ーーといっても既に二発目ではあるが、玄武の受けた痛みの数倍以上がのしかかってくる。
生命が脅かされるような感覚。まるで大量の血液が抜け、視界が暗くなるような負荷がクラウンの膝を折ってしまう。
このまま倒れてしまえばどれだけ楽なのだろうか。
砂利だらけの固い地盤が、今の彼にはふかふかの布団に錯覚して見えてくる。
もしも背負うべきものが何もなければ目の前の甘い幻惑に遠慮なく倒れていたかもしれない。だが梓と契約せし悪魔としてその甘い囁きに踏みとどまる。
「あれれ、倒れなかったの? じゃあまだまだいくね!」
プラムエルの指先から稲妻が立て続けに放たれる。今度はクラウンに向かって真っすぐと。
プラムエルが最初に広範囲の攻撃から仕掛けたのは確実にクラウンに攻撃を当てる為という目的もあったが、何より幻術で位置情報を惑わされていないかどうか確かめる為というのが大きい。
もしかすると先程の会話の隙に幻術にかけられていたのであれば、目の前でうすら笑う男にいくら攻撃したところで無駄なのだから。
しかし心配しすぎだったようだ。目の前で膝をつくクラウンが正真正銘本物であることは確認できた。
ならばあとは魔力消費が抑えられ、威力も大して差がない≪稲妻≫の方が使い勝手がよい。
連続で五回放たれた電撃はただの一発も損なうことなくクラウンの肉体を穿つ。
「白城!」
檻の外から玄武が叫ぶ。
「ガ……っ。だ、大丈夫だよ。…………まだ」
その声に支えられ、崩れ落ちそうになる身体をなんとか持ちこたえる。
「アハハ! き・も・ち・イぃ~! どうしたの、ねぇ? アタシを懲らしめるんじゃなかったの? 懲りるどころか敏感に感じちゃってるよ。ねえ、ねえ、ねえ、ねえ!」
ケラケラケラと頗る機嫌良さそうに嗤う。
「まったく。そう焦らないでよ。ここからもっと楽しませてあげるから」
「へえ。そんなボロボロの姿で? またお得意の幻術でも使って私を脅かそうとするの?」
「まあそれがお望みとあらば」
「アハハハハ! どうせそれしか能がないくせに! いいよ。やってみなよ。私をどうぞ楽しませてーー」
ーーそう愉快に笑顔を見せていたプラムエルの表情が一瞬凍り付く。
原因は視界が鮮明になったこと。雷の柱の合間から覗いていたはずの景色が一気に透明感ある光景へと変貌したこと。
自身の身を護る為に自分を囲った雷の籠が何の音沙汰もなく消失してしまったのだ。
それだけではない。
クラウンを捕らえた巨大な檻も合わせて消え去っている。
「げ、幻術……?」
そのーーはずだ。
プラムエルは確かめるようにして言葉を紡ぐ。
精霊術を解いた覚えはない。
ならばこれは目の前の男お得意の幻術であるはずだ。
試しに、とプラムエルは自分を護る籠を探るようにして手を伸ばす。だがその白い肌は空気を撫でるだけで彼女の皮膚を焼け焦がすことは無かった。
「う、嘘?」
「いやー。助かったよ。これでようやくキミに近づける」
「ア……、アハ! どうせ幻術でしょ。そうはいかないよ。≪雷の螺旋≫
回避不可。三度広範囲精霊術が行使される。
もしかすると目の前に立つクラウンの姿も既に幻かもしれない。そう判断したプラムエルは彼の実態の座標を掴むべく雷を放つ。
だが稲妻の軌道は少女に予想外な動きを見せた。
外に広がりながら渦を描く稲妻は、何故かクラウンだけを避けて歪な蜷局状の軌道を描いたのだ。
「な、何で!?」
思わず腹の底から叫んでしまう。
いや、あれがそういう幻術というくだりであるならば納得がいく。
しかしこの精霊術はプラムエルを中心に広範囲に及ぶ中規模攻撃。目の前のクラウンに実体はなくとも、どこかに姿を晦ましている本体には命中するはずなのだ。
現に一度目も二度目も見事に電撃がクラウンにダメージを与えたのだから。
だが未だに幻術は破られない。いや、今起きた出来事が幻術であったのかすら疑わしく思えてきた。
追い付かない理解にプラムエルは再び冷静さを失いはじめる。
それを彼は見逃さない。
「じゃ、反撃開始だ」
眼鏡の男はニッコリと微笑んで歩き始める。
当然行先はプラムエルに向かって、だ。クラウンの両手にはいつのまにか六本の短剣がおさめられていた。
(あんなの持ってなかったじゃん!)
あれこそが幻術である証明だ。
プラムエルはそう確信する。ならば何故さっきプラムエルの精霊術は通用しなかったのか。その疑問は未だ解けないままだが、とにかくほくそ笑みながら近づいてくるクラウンの姿だけは嘘であると判断をくだす。
だから己を信じて目の前の男をーー視覚が知らせる情報を無視して辺りを見渡す。
だがそれは愚かな行為であった。
プラムエルが幻影だと判断したソレが指に挟む一本の短剣をプラムエルへと投げ放つ。
所詮は幻術。傷つき、痛みに泣くこともない。ザクリと細い少女の腹部に遠慮なく短剣が突き刺さる。
「いッッッたあああああああああああああい!?」
本気で叫び声をあげた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
少女が思う以上に幻には感触があり、痛覚があり、機敏に脳へと信号を送っていた。
現実に理解が追い付かず感覚が遅れて来るなどありはしなかった。リアルタイムで全身に激痛が知り渡る。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ。
右腕、左椀、右脚、左脚。
プシュゥ、と皮膚に大きく開いた穴から血が噴き出る。それでも突き刺さった短剣が蓋代わりとなってすぐに噴出はおさまるが、小さな朱色の滝は止まらない。
「あああああああああああアアッ!」
発狂したかのように少女が大声をあげる。
その瞬間プラムエルの身体が燃え上がる。比喩ではなく、言葉通りに紅蓮の炎が少女の肉体を一気に包みあげたのだ。
そして僅かな火の粉を残してプラムエルに纏った炎は霧散する。
これが彼女が契約し、ある意味一番厄介な精霊である≪不死の精霊≫
短剣で傷つけられたはずの四肢や腹部に傷痕は残っておらず、あるのはその部分だけ破れた服を纏う少女の姿があった。
魔力さえ残っていれば仮に死に直結するような傷であっても再び生を齎すという一際異例の精霊術である。
しかし復活することはできても、感じた痛みは精神に強く残っている。
ハァ、ハァと息を切らしながら前方をキッと睨みつける。
幼いながらに痛みに対する耐性は一端の大人よりもずっとある。だが自分の予測を離れたところで受けた痛みというのは屈辱も混じってひどく彼女を苛立たせていた。
「貴方、幻術じゃなかったわけ?」
「それはキミが勝手にそう判断しただけ」
「そうそう。ボクは自分が幻だなんて一言も言ってないよ」
「ーーッ!?」
耳の横で囁かれた言葉にプラムエルはゾクリと背筋を凍らせた。
ふわっと耳に当たった息は温かく、その声質が目の前の男のモノとひどく似ていたからだ。
プラムエルは思い切って後ろを振り向く。
するとそこにはさっき目の前にいたはずのクラウンの姿が。
もう一度今度は最初見ていた方向へと振り返る。
だがそこにも変わらずクラウンの姿。
「さてーー」
「本物はーー」
「どっちでしょう?」
いつの間にか前後至近距離にまで詰めた二人のクラウンが片手に持つ短剣を空へとかかげる。
そしてーー。
ストン。
重力に逆らうことなくクラウンは短剣を振り下ろす。
その軌道にあったプラムエルの両腕がドサッと落ちた。
「あああアあああぇあああああエあぁ!?」
プシャッと血を噴き出しながら少女は泣き叫ぶ。
するとすぐに炎が少女を救い出す。燃え上がった後には再び両腕が引っ付いた状態のプラムエルの姿。
だが目尻に浮かぶ涙の色は消えず、治ったばかりというのに噛み締めた唇から小さく血が流れていた。
いくら並みの人間よりも痛みに耐性があるとはいえーーいかに精神が通常の人間とかけ離れているとはいえーー例え元通り治るとしても一瞬両腕を失ったのだ。
堪えがたい感覚に流石のプラムエルもひどく疲弊した顔色を見せていた。
そんな彼女に追い打ちをかけるようにクラウンが口を開く。
「痛かったかい? でもまだこんなもんじゃないよ。キミはキミ中心でーーキミが崇める女神様とやら中心で物事を見過ぎだ。神託といえば聞こえはいいけど、それに伴う犠牲はいつも他者ばかり。キミはもっと他人の痛みを覚えなきゃ」
「ひっ、ーーこ、こんのぉおぉぉおおッ!」
思わず一瞬怯んでしまう。
だがすぐに怒りに任せて精霊術を放とうとするーーが、クラウンはそれをもはや許すつもりはない。
それよりも先に横薙ぎに短剣そ振るう。
するとプラムエルが見ていた景色が落下する。
視線を下げると大地が急激に迫ってきていた。
「ギャン!?」
そのまま大地に顎を打ち付け舌を噛んでしまう。
大地が迫ってきたわけではない。自分から地面へと向かってったのだ。顎の痛みですぐそれに気づいた。
では何故自分は地面に叩きつけられてしまったのか。
実のところプラムエルは薄々感づいていた。しかし否定したいあまりにソレから目を背け続ける。だが何故か身動きできぬ己の身体に認めざるを得なかった。
だから覚悟を決めてゆっくりと首を回す。
そして案の定、という結果である。だが現実的にそんなおっとりと構えていられるはずもなく、プラムエルは再び目にした現実と激痛に泣き叫ぶ。
「あ、あぁあ、あシがああっ!? アタシの脚がああああああアあぁあ!」
「大丈夫だよ。どうせまだ魔力は残ってるんだからすぐ治せるでしょ」
プラムエルの両足を切断した張本人は、まるで少女の悲痛な叫びが聞こえていないかのように肩を竦める。
だが実際その通りで、プラムエルはすぐに精霊術で両足を元の状態へと戻す。
「もモもぉう怒ッた! ぜぇええエっっッたい、許サないッ!」
「許さない? いやいや。それはボクの台詞だよ」
ぷしゅん。
いつの間にかプラムエルの真横に増殖したクラウンが、短剣を少女の左目に躊躇なく圧しあてる。
「ぷりゅぎゅあああァああれへエへへえぇええレ!?」
感じたことのない痛みがプラムエルの精神を狂わさんばかりに暴れまくる。
しかしそれも束の間。炎と共に傷一つ残らぬ可愛らしい顔へと復元する。
だが傷は治れど受けた痛みと恐怖は徐々に、そして確実にプラムエルの心を蝕んでいた。
ゆっくりと憎悪から恐怖の対象へと移りつつある眼鏡の男は、傷を癒し終えた少女を確認してからゆっくりと続けた。
「キミはボクから大事なモノを奪おうとした。危害を加えようとした。悪戯程度ならボクもでしゃばったりするつもりはなかったけど、今回ばかりは少しオイタが過ぎたね。キツイお灸を据えてあげるよ」
「ハ、ハ、アハ……。アハハハハハ! お灸を据える? 貴方が? アタシに? あり得ない! アタシはレーベン様に遣われし神託を実行せし女神様の代行人。プラムエル・ムーデ・セスバイア!
貴方如きに邪魔はさせない!」
「いやいや。ボクじゃなくてキミが邪魔なんだよ」
プラムエルの指が全てポトポトポトポトと落下する。
「ああアぁああ!? 女神様のぉぉお、神託に逆らわんとする愚か者のくせにぃイぃぃ!」
「あんな駄女神に媚びを売るキミの方が憐れでならないよ」
プラムエルの胴体が真っ二つに分かれる。
「ああたシは選ばれた人間なのにィ!?」
「それは否定しないよ。その若さで魔力も、契約した精霊の数もボクが見てきた中で一番だ。でも特別ではあるけど人の子であることに変わりはないから」
地面を這いずりながら、自分を見下す男を涙いっぱい浮かべた瞳で精一杯睨みつける。
ズリッ。ズリッ。
血で凝固する砂土が音を立てながら彼女が這った道を残す。
「な、なんで、何で≪不死の精霊≫の能力が発動しないの?」
さっきから復活の炎を纏わんとしているのだが、一向に能力が顕現しない。それどころか他の精霊術も使えないのだ。
魔力はある。まだ傷を癒し反撃するだけの魔力は残っているのだ。しかしどういうわけか精霊術を行使することができない。
このままでは忌々しい男の足元に辿り着いたというのに噛みつくことさえ叶わないではないか。
悔しくて悔しくて、悲しくて悲しくて、痛くて痛くて、辛くて辛くてーー。
多用なマイナスの感情が混ざり溶け合った涙がぽろりぽろりと零れ始める。
「さて。何でだろうね。不思議だね。でもどうだい? お陰でようやく解ったんじゃないかな?」
「わ、……『解った』って何がーー?」
「ただ人の気分さ」
その言葉はプラムエルの感情を大きく揺さぶるのに相応しい一言であった。
瞬間、プラムエルは全身の血の気が引いたのを感じた。体温が急激に奪われていく。
「ほとんどの人間は精霊術が使えない。雷を生み出すこともできなければ、傷口を治すことすらできやしない。
間接的であれ直接的であれキミに殺された人間はみんなそうさ。キミはさぞ見下していたんだろうけどね。
けど運命の計らいのおかげか、キミはキミが殺した人間たちと同じ待遇を経験することに成功した。
考えてみてごらん。あそこに転がっているキミの両足。砂に埋もれたそこらの可愛らしい指。
ーーもう二度とくっつかないんだよ」
「ひーーッ!」
冗談混じりのクラウンの言葉だが、今のプラムエルにとっては効果が覿面だったようだ。
表情がひどく哀しみと恐怖に埋もれている。
感じる痛みなどもはやどうでもいい。身体の一部を本当に失ったと感じてしまった少女にとってはそっちの方が苦痛であった。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダあッ!」
「キミに命を奪われた子らもそういう気分だったんじゃないかな。だからボクは彼らの代わりにキミに教育を施してあげるよ」
するとプラムエルの身体が炎に包まれる。
良かった! 助かった! そう安堵する表情が一瞬窺えた。しかしそれはすぐ苦痛に色を染められることとなる。
炎が散った少女の手には、切り落とされた指がキチンと生えそろっていた。
しかし同時にその小さい手を包み込むようにしてクラウンがしっかり握りしめている。
「…………へ?」
ーーぐしゃ。
プラムエルが呆けた声でそれに気づいた瞬間、少女の眼前で治ったばかりの掌が中の骨と共に握りつぶされてしまった。
ぱしゅーっと噴き出た自分の血が顔についたところで、ようやく何が起きたのかを理解する。
「あきゃあぅうあああ!?」
今宵何度目の悲鳴だろう。
涸れ果てたかのように思えた涙も際限なく溢れ出る。
だが終わりなどこないし、来させやしない。彼の言葉がそれを告げる。
「ーーさて。はじめようか。嗚呼、大丈夫だよ。殺しはしない。罰にならないからね。ボクは宣言通り懲らしめるだけ。もう他人様に迷惑かけないようにね。
キミも初めは大きな口を叩いたんだ。くれぐれも簡単に根をあげないでね。しっかりと懲らしめてあげるから」
そう言ってもう片方の掌も簡単に潰す。
趣向を凝らし、思いつく限りの絶望をプラムエルに与え続ける。
それから幾度となくセスバイア法王国には彼女の断末魔が響き渡る。
遠目に眺めていた二人の男たちは拷問ともいえる彼の行動を止めることすら忘れ、黙って見守り続けるだけであった。