第87話 助っ人登場
・主人公交代の話ではありませんが、かわりに新キャラが出てきます。
・あと、ユニークアクセスが4000人突破しました。
―――――――どれほどの時間が経ったのだろうか。
―――――――痛みはほとんど感じられない、むしろ引いていくように感じられる。
―――――――俺は生きているのか、それとも死んでいるのか。
―――――――黒やみんなは無事なのだろうか・・・・・・。
「――――――――――勇吾!!」
「――――え・・・・・・・・・・・・?」
聞き覚えがある声がし、俺はゆっくりと目を開ける。どうやら気絶していたようだ。
すると、目を開けた先には見覚えのある顔があり、俺の意識は一気に覚醒した。
「――――――――――慎哉!?」
そこにいたのは、ガーデンで留守を守っている筈の慎哉だった。
どう言う事だ!?俺は大罪獣とカースの攻撃を受けたんじゃないのか!?
そもそも、俺も退避できないあの状況でどうやってコイツが俺の元に来れたんだ!?
俺は起き上がって自分の周囲を見渡す。
そこには――――――
『よう、よく眠れたか?』
「ライ、それに・・・・」
「おい、動くなよ!今、回復させてんだぞ!」
「晴翔!琥太郎も!?」
そこにいたのは、何時の間にか姿を暗ましていたライ、そして晴翔と琥太郎のだった。
晴翔は俺に最近覚えたばかりの《回復魔法》をかけ、戦いで負った傷を治していた。
周囲を見渡すと何もない空間、これは確かライが得意とする結界のひとつだったか・・・・。
「どうしてお前らがここに・・・・・・?」
俺の当然の疑問に答えたのは琥太郎だった。
「部活が終わったら、いきなりライが現れて『緊急事態だ!』って言って無理矢理連れてこられたんだよ。」
「・・・・・・ライ?」
『怖い顔すんなって!お蔭でお前も助かったんだからよ!』
「・・・・・・“お前も”?そうだ、黒達は大丈夫なのか!?」
俺が訊くと、ライは「愚問だぜ?」と言いながら答えていった。
『《神龍》があの程度の攻撃で死ぬ訳がないのはお前も知ってるだろ。それに、ヨッシー達なら他の助っ人達が行っているから問題無しだ。敵の残存兵も、カースの“端末”を含めて、これから奴らが一気に掃討するぞ。』
「――――――助っ人だと?」
『ああ、その為に俺は色々動いてたんだぜ?何事にも保険はあって困らないからな。気になるんだったら、ここからでも見れるぜ?』
すると、目の前に巨大スクリーンのようなものが現れ、そこ結界の外の様子が映し出された。
それを見た瞬間、俺の顔は再び驚愕の色に染まった。
「あれは――――――――――――――!?」
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――――数分前に遡る
「――――――――――随分と力任せな方法をとったな。お前が使える手の中にはもっと良い手があったはずじゃないのか、良則?」
―――――――――え?
その姿を見た瞬間、僕は呆然とした表情で目の前に立っているその人の顔を見つめていた。
「―――――――――剛兄?」
「何て顔をしてるんだ?まだ戦闘中だと言う事を忘れたのか?」
そこに居たのは、今はこの世界には居ない筈の僕の兄、凱龍王国で現役の警察官をしている3番目の兄、護龍剛則、通称剛兄だった。
剛兄は僕の額をチョンと指で突くと、後ろを振り向いてそこで身動きの取れなくなっている敵に対峙した。
『グオォォォォォォォ!!放せぇぇぇぇぇぇぇ!!』
「《強欲の猛虎》、《強欲》の大罪を糧に育った《大罪獣》か。なるほどな、確かにこれは《幻魔》の最新作と呼ぶべきだろうな。」
『グオォォォォォォォ!!』
僕がさっきまで戦っていた大罪獣の片割れ、グリード・フィアスタイガーは岩壁の中に閉じ込められたまま大声で怒鳴り続けていた。
これは剛兄の《巨岩堅牢獄》、大地を隆起させてその中に敵を閉じ込めた上で圧縮し、自力では脱出がほぼ不可能な状態にする、剛兄が仕事でも愛用している技だ。
そういえばさっきから周囲が土埃で何も見えないけど、これも剛兄の結界だ。
あ、それよりも敵はもう1体いたはず、もしかしてそっちも――――――――
「剛兄、ドラゴンの方は!?」
「―――――足元をよく見ろ。」
「え・・・・・・あ!!」
足元を見て気付いたけど、僕達が今立っているのは地面だ。きっと、剛兄が地面を隆起させて僕がいた高さまで持ってきたんだろうな。
そして、その地面の上には小中学生位の男の子が気を失って倒れていた。
もしかしなくても、あのドラゴンの大罪獣、《憤怒の火竜》は剛兄によって倒されたみたいだ。
流星群が落ちてから僕が剛兄に気付くまでは十秒どころか五秒にも満たなかったはずなのに、その僅か数秒で僕を流星群から守り、敵も1対は拘束し、もう1体は倒して“核”にされていた人も助けたのか。やっぱり剛兄は凄いなあ。
『グオォォォォォォォォォ!!』
「――――――喧しい。」
スッ・・・・・・・・・・・・・・!
剛兄はほとんど音も立てずにグリード・フィアスタイガーを一刀両断に斬った。
僕でも刀の軌跡を見るのがやっとだったから、向こうは斬られた事にも気付いていないだろうな。
フリード・フィアスタイガーは悲鳴も絶叫も上げることなく全身が霧散して消滅した。その後には、大学生くらいの男の人が岩壁の中から抜け出て地面に倒れた。
「・・・・剛兄、また速くなったんじゃない?」
「ああ、前の仕事で色々あってな。それよりも、あと10体の大罪獣達を一掃する。お前も手伝えるな?」
「あ・・・・、うん!」
僕が返事をすると、剛兄は周囲に張っていた土属性の結界を解除した。
結界が消えると、僕達の周りには丁度10体の大罪獣が待ち構えていた。
「良則は左の3体を、残りは俺が片付ける。」
剛兄は普通に言っているけど、何も知らない人からすれば正気を疑われたかもしれない。
目の前にいる《真の大罪獣》の戦闘力はハッキリ言って異常だ。1体1体の戦闘力が僕たちの国、凱龍王国の正規軍の一般兵士の平均戦闘力を優に超えている。下手をすれば将軍クラスの個体も存在するのに、それを剛兄は1人で7体も同時に相手をすると言っているんだ。
けど、竜兄や明兄、そして剛兄の強さを知っている僕は安心して任せる事ができる。
「《千を超える閃拳》!!」
僕は目の前に立ちはだかる3体の大罪獣達に閃拳を放った。
当然相手は避けようとするけど、今撃ちこんだ閃拳は威力よりも速度を重視している。兄さん達ならまだしも、この距離で回避することはまずありえない。
『『『ウオォォォォォォォォォ!!!』』』
予想通り、音速を軽く超える《閃拳》に大罪獣達はかわす事ができずに直撃を受けていった。
僕はすぐに《聖火》を放って“核”ごと大罪獣達を燃やした。
《聖火》はその名の通り神聖な力を持った炎、その効果はには“浄化”もある。その炎に焼かれて大罪獣は残らず霧散して消滅した。
「ふう、剛兄は・・・・・・・・」
「終わっているぞ。」
「・・・・・・・・・・・。」
振り向くと、そこには刀を鞘に納めた剛兄が悠然と立っていた。その向こう側を見ると、そこには7体の大罪獣がそれも一刀両断にされて消滅する光景があった。
僕たちの苦労っていったい・・・・・・・。
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【名前】護龍 剛則
【年齢】17
【種族】人間
【職業】警察官 王子(王位継承権放棄済み)
【クラス】神殺者
【属性】メイン:土 サブ:光 木 火 空 水
【魔力】6,367,000/6,980,000
【能力】攻撃魔法(Lv5) 防御魔法(Lv5) 補助魔法(Lv5) 特殊魔法(Lv4) 土術(Lv5) 光術(Lv2) 木術(Lv4) 火術(Lv4) 空術(Lv3) 水術(Lv4) 武術(Lv4) 錬金術(Lv4) 千里眼 浄化 神眼 龍鱗刀 etc
【加護・補正】魔法耐性(Lv4) 物理耐性(Lv5) 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv3) 凱龍王の加護 地龍の契約 炎龍の契約 神獣の契約 大天使の契約 火神の契約 水神の契約 軍神の契約 夢神の契約 冥府神の契約 不屈の契約者 神殺し
【開示設定】ON
「「「チートだ!!」」」
「―――――そういう兄弟だ。」
外の光景を映した画面の横に表示された剛則のステータスを見て、慎哉達は口を揃えて叫んだ。
まあ、俺も初対面の時は似たようなリアクションを取ったから気持ちはよく分かる。
『おい、あっちの方も決着がつきそうだぜ?』
ライは新しい巨大な画面を表示させ、別の光景を映し出す。
そこに映っていたのは、カースと戦うある男の姿だった。
・プロローグから読んでくれた皆さんの中には気付いていると思いますが、勇吾のステータスにも「etc」があります。これは数が多すぎて省略しているという意味と、今はまだ出さない方がいい【能力】などを隠すという意味の二重の意味があります。決して、面倒臭かったと言う訳ではありません。
・さて、今回は護龍兄弟の三男が登場しましたが、次章あたりから残りの兄弟も順次登場させていく予定です。
・感想&評価お待ちしております。




