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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第8章 転生者編
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第82話 堕天使ルシフェル

・遅くなりましたが本日2話目です。


 ――――――――『堕天使ルシファー』、またはルシフェル、その名はキリスト教やユダヤ教だけではなく、世界各地に様々な形で伝承に記されている。

 名前の起源については不明な点も多いが、ラテン語では「明けの明星」を指し、ルシファーはこれの英語での音訳にあたる。


 ルシファーに関する伝説は実に多く、有名なのは「堕天使の長」、悪魔であると言う伝説であるが、ルシファーが堕天使になった経緯についてはいくつか話がある。

 キリスト教の解釈によれば、ルシファーは元々――熾天使のトップ――天使達の長だったが、アダムとイブに仕えろと命じた神に反抗して展開から追放され堕天使になったと言われている。

 また、ルシファーは“進歩”と“知的探求”の神、“光”の神としても崇められ、神の意志に反して人間に光を与えた事で堕ちたと言う説もある。


 先に記したとおり、ルシファーの名は「明けの明星」を指す言葉だが、それ以外にも「光をもたらす者」、「光を帯びた者」、「光を掲げる者」という意味があり、ルシファーは“光”と縁が深い存在と扱われる事が多く、別の神話では闇の女神と対を成す神と記されている。


 そして、ルシファーは《神の敵対者(サタン)》と同義に扱われるが、これについては未だにハッキリとした答えは出てこない。それはサタンと同義とされる悪魔が複数存在する事もあるが、ルシファーと同義とされる存在(・・)も複数存在するからであるが、ここでは省略とする。









 創られた異空間の戦場に、漆黒の羽根が何枚も舞う。

 その光景は美しくも恐ろしく、見る者の心を奪うような魔力を秘めていた。


「・・・・堕天使・・・!」


 勇吾は平静をどうにか保ちながら、黒い羽根が舞い落ちる街に浮かぶ存在に向かって呟いた。

 背中から生える烏よりも黒い12枚の羽、変わった点はそれだけだったにもかかわらず、それだけで全てが変質していた。人間なのかも怪しかった気配は完全に人外のものへと変わり、全身から漂っていた魔力は密度を格段に増し、近くにいる者の精神を無差別に殺していくような邪悪さを持っていた。


『・・・・・属性を反転させたのか!?』


 アルビオンは目を見張らせながら、堕天使の姿となったカースを見下ろした。

 2人のカースは12枚の羽根を大きく広げながら、それが当然のことの様に答える。


『『光を闇に、闇を光に、僕には造作もないことだよ♪』』


 下から見上げながらも、カースのその視線は逆にアルビオンを見下ろしているかのようだった。

 勇吾達はカースに視線を集中させてはいたが、すぐに攻撃すべきかどうか迷いが生じていた。それは戦場では致命的な隙だったが、今のカースの前では仕方のない事だった。それほどまでに、カースの堕天使(ルシフェル)としての姿は衝撃的だったのだ。

 だが、致命的な隙だったのにも係わらずカースが攻撃を仕掛ける事はなかった。強者の余裕とも、傲慢ともとれる態度を見せながら、唖然としている勇吾達を面白そうに一瞥する。


『――――――――目を覚ませ!!』

「「「――――――ッ!」」」


 鼓膜を直接振動させたかのような声に、勇吾達は一斉に正気を取り戻した。

 声の方へ視線を向けると、そこには黒王とプライド・レックスが拳を押し付け合いながら対峙していた。


「―――――――黒!!」

『こっちはいい!!お前達は幻魔師の方へ集中しろ!!』


 それはここは自分だけで十分だとも、自分を無視して戦えとも取れる叫びだった。

 黒王は自分に殺意を向け続けている大罪獣を睨みながら、右腕の力をさらに上げていく。次第にプライド・レックスの方が押されていくが、それでも一方的ではなく、向こうもさらに力を増して黒王を押し返していこうとしていた。

 そんな様子を一瞥し、勇吾は隣に立っていた良則と共に目の前に立ちはだかる堕天使に攻撃を仕掛けていった。


「―――――――――カース!!」

『『ハハ、敵は僕らだけじゃないよ?』』

「「―――――――――!」」


 カースが勇吾に向かって言葉を口にしたのと同時に、カース達の背後から2つの影が勇吾と良則にそれぞれ襲い掛かってきた。


『―――――――――死ネ!』

『ガルルル――――――殺ス!』


 勇吾に襲い掛かってきたのは中世の騎士のような、甲冑と剣を装備した《大罪獣》、良則に襲い掛かってきたのは毛皮を被った剣士の姿をした《大罪獣》だった。


『『先に言ったはずだよ、本当の(・・・)|《大罪の宴》を始めるって?』』


 カースの言葉を証明するかのように、その背後から霧が噴き出し始め、その中から《大罪獣》が次々に姿を現し始めた。


『『既にいるのも含めた合計44体の《真の大罪獣》、そして僕が君達の相手であり、この宴の主役なのさ♪』』

「―――――――クッ!!」

「凄い力!こんなのが全部で44体―――――――!?」


 勇吾は目の前の敵と剣戟を繰り広げていき、黒王が戦っているプライド・レックスにも劣らない戦闘力に苦戦を強いられていた。

 良則の方もまた、忘我状態で剣を振る相手に苦戦を強いられていた。


「なんて無茶苦茶な戦い方なんだ・・・・・・!?」

『ガウオォォォォ―――――――!!』


 相手の攻撃には型というものはなかった。

 ただ力任せに剣を振るっているにもかかわらず、その力が強すぎ、避けても斬撃の余波でダメージを負ってしまう。痛いことに、剣は風を纏っていたことが余波の威力を上げていた。


((――――――――――《ステータス》!!))


 攻撃を防ぎつつ、勇吾と良則は相手を視界に入れて《ステータス》を心の中で唱えると、目の前に敵のステータスが表示され、それは大方予想通りの内容だった。



【名前】《傲岸な黒騎士(アロガント・ブラックナイト)

【種族】大罪獣(Lv5)

【クラス】傲慢

【属性】闇

【魔力】5,151,000/5,190,000

【状態】興奮



【名前】《絶望の狂戦士(デスペア・バーサーカー)

【種族】大罪獣(Lv5)

【クラス】怠惰

【属性】風

【魔力】4,960,000/5,070,000

【状態】狂化



「ヨッシー危ねえ!!」

「あっ!」

『『遅いよ♪』』


 ステータスを一瞥した直後、後ろからトレンツが声を上げた。

 トレンツの叫び声で気付いたとき、良則の視界の隅に映ったカースは周囲に千を超える光球を出現させていた。戦っている相手の強さに気をとられてしまい、良則は数秒間カースに対する警戒を怠ってしまっていたのだ。

 気付いた時にはもう遅く、カースは全ての光球から光線(ビーム)を一斉に発射した。



       ビュ!ビュ!ビュ!・・・・・・



「あ・・・・・!」


 直後、異空間全域に光が降り注ぎ、同時に千を優に超える爆発が、閃光と熱線、そして轟音と共に街中を飲み込んでいった。





          ドゴゴゴゴ―――――――――――――ン!!





 まるで流星群が一斉に降り注いだかのよう光景が広がり、結界などで守られた場所以外は例外なく破壊しつくしていく。

 自然と魔法、2種類の光を融合させて圧縮させた光線が起こした爆発、それによって生じた閃光は熱線と共に街を飲み込んでいき、全ての有機物を一瞬にして炭化させ金属も一瞬で熔かして原型を失わせていく。爆発の衝撃はあらゆる現代建築を無惨に破壊し、文明によって形作られた物を無差別に破壊しつくしていった。



「お~~い、ヨッシーも無事か~~?」



 爆発後、最初に聞こえてきたのは馬鹿の能天気な声だった。

 気付けば良則とアルビオン、勇吾達はドーム状の結界の中におり、爆発による衝撃や熱線は馬鹿が作った結界で遮断されていたため全員直撃を避けていた。


『―――――銀洸がやったのか?』

『そ~~だよ~~~~~♪』

「どうよ、俺の相棒のスーパーバリヤーは?」

『――――――分かっているから訊かなくていい。』

「え~~~~、俺も褒めてくれよ~~~?」

「『『お前は何もしてないだろ!!』』」


 馬鹿を適当にツッコんでおき、一同はとりあえず爆発が収まる僅かな間を利用して態勢を立て直す事にした。


『けどよ、実際のところ多勢に無勢に近いだろ?』


 最初にアルバスが言ったことは現状を簡潔に語っていた。

 現状、勇吾達は数の差で劣性に立たされている。個々の戦闘力では負けてはいないどころか、馬鹿を含めた全員が今回のカースや大罪獣達を超えている。

 だが、それだけでは解決しないほど数の差は痛かった。


「ここにいる大罪獣、全部レベル5だと思う・・・。」

『同感だな。どれも魔力の量がほとんど変わらなかったからな。』

「それってヤバくね?」

「ヤバいが、幻魔師を両方押さえれば何とかなるんじゃないのか?」

『問題は誰がおさえるかだ。理想は1人だが、相手は最低でも2人いる以上、こちらももう1人出す必要がある。だが、それだと大罪獣の方が手薄になってしまう。』


 アルビオンの指摘に、勇吾も厳しい顔になる。

 そこに、馬鹿コンビが揃って手を上げた。


「あ、俺やるわ♪」

『は~い!俺も~~!』

「お前ら・・・・・。」

『任せてもいいか?』

「―――――黒。」


 勇吾はまたツッコみたくなりかけたが、その前に黒王が割って入り、馬鹿の提案を決定することを前提で馬鹿に問いかけた。


「YES♪ついでに、あいつらを適当に分断させてやるぜ!」

『超余裕~♪』


 いつもならフザけるなとツッコむところだったが、この時の馬鹿の顔は、外面とは逆に内面に覚悟と真剣さを秘めていた。

 他人なら見過ごしたかもしれないそれに、腐れ縁の勇吾達は見逃さなかった。


「決定だな♪」

「ああ、俺達は大罪獣の方に集中する。良則もそれでいいな?」

「・・・うん、2人とも無理はしないで!」

「オッケー!」

『無問題~~♪』


 話がまとまり、勇吾達は爆発の余波が弱まるのを待って戦闘を再開した。




 だが、すぐ後になって彼らは自分達が見落としをしていたことに気付くことになる。


 悪名高い『幻魔師』カースが、例え暇潰しでも無策で動く訳がなかったのだ。







・余談ですが、ルシフェル(ルシファー)は結婚していたという話がいくつもあります。妻はアダムの元妻のリリスだったり、闇の女神のディアナだったりと神話によって相手は違います。



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