第81話 大罪の宴
・ストックが足りなくなってきたので今日は少し遅れてこれが1話目です。2話目は夕方頃になります。
「――――――――――――甘いよ(・・・)。」
カースが笑みを浮かべながら呟いた一言、敵意も殺意が微塵もない、いやむしろ無さ過ぎるその一言がカースの口から呟かれた刹那、異空間全体の空気は一変して異様なものへと変わった。
「くっ・・・・・・!?」
「「へえ、これに耐えられるんだ?大口を叩くだけのことはあるね♪」」
カースの嫌味とも言える言葉が聞こえながらも、勇吾は必死に気を保ち続けていた。
先程の瞬間、まるで蛇に睨まれたような感覚が全身を襲い、勇吾は意識が一瞬飛びそうになるのを必死に耐え、正気を保ちながらも敵に隙を見せないようにしていた。
もし、あの圧迫感にも似た感覚を普通の一般人が受けたなら、誰も耐えることができず、中にはショック死する者も出ていただろう。
「「な~んてね♪」」
直後、異空間全体に充満していた異様な感覚は消え、勇吾はその反動で姿勢を崩しそうになった。
「「ハハ、ちょっとした冗談だよ♪」」
「カース・・・・・!」
「「けど、これで実力差は分かったんじゃないかな?」」
カースはからかうように言うが、勇吾はその言葉にすぐには反論することができなかった。
カースの言うことは間違ってはいない。
それ程までに勇吾とカースの力には決定的な壁が存在し、本来なら決して戦っていい相手ではない。『幻魔師』と言う存在は天災に等しいのだ。
だが、それはあくまでカース本人が相手だった場合である。
それが分かった上で、勇吾は目の前にいるカース達に反論をぶつけた。
「――――――――ここにいない奴との実力差に、何の意味があるんだ?」
「「ハハハ、確かにその通りだね♪と、そうこう言っている間に、来たみたいだよ?」」
「――――――!」
カースが視線を空に移し、同時に3つの大きな影が勇吾の周りに降りてきた。
『――――――お前達だけか。』
さっきまで無言だった黒王は、両脇を一瞥しながら呟く。
問いかけにも聞こえる呟きに答えたのは、気の抜ける声だった。
『ん~~~、そうだよ~~~?』
「よう!真打ち登場だぜ!」
「馬鹿は黙ってろ!!」
「おいおい、照れなくてもいいんだぜ?こっからは、俺達の友情パワーで大逆転だぜ!!」
「照れてないし、ピンチでもない!!」
馬鹿を殴り飛ばしそうになるのを必死に抑えながらも、他の4人にも声をかけていく。
「トレンツはともかく、お前達は遅かったな?」
「おい!俺はともかくって、どういう意味だよ!?」
「さあな?」
『とぼけるな!』
『アルバス、お前は黙っていろ!』
勇吾に睨みをきかすアルバスをアルビオンが黙らせている間に、良則は勇吾の元へやってきた。
「遅れてゴメン!」
「・・・リサ達には?」
「あってない。けど、たぶん全員無事だよ!」
「――――そうか。」
『なら、大丈夫だろう。良則の《超直感》は信頼できる、そうだろう勇吾?』
「ああ、大丈夫だ。」
(そ、そんなに信頼されても・・・・・・・。)
信頼されすぎて戸惑う良則をよそに、勇吾は不安がひとつ解消されて表情が和らいでいた。
「「緊張は解れたかな?」」
「「「!!!」」」
話している間も警戒をしていたが、カースは水を差す真似はしなかった。
2人のカースは何時の間にか肩を揃えて並ぶと、勇吾達を向きながら声を揃えて挨拶を始めていった。
「「改めまして、僕は『創世の蛇』最高幹部が1人、『幻魔師』カースウェル=フェイク。今回は僕のショーにようこそ、凱龍の末裔達、そしてかつての同胞とその知人達♪」」
他意のあるような口調で自己紹介をし、軽く頭を下げるカースは一瞬だけ勇吾達以外を一瞥すると、すぐに視線を戻す。
「―――――――その言い回し、大方の事は全てお見通しだった訳だな?」
「「それは今更だと思うなあ?僕がどういう存在なのかは、君達は十分に知っている筈じゃないか♪」」
『そうだね~~~~~。』
「おう!知ってるぜ!!」
『『「威張るな、馬鹿!!」』』
馬鹿コンビを勇吾とアルビオン、アルバスが同時にツッコんで黙らせる。
そんな光景を、カースは楽しそうに、そして懐かしそうに眺めていた。
「「ハハハ、まるで先々代みたいだね、よく似ているよ♪」」
「『いや~~~~~~~~~♪』」
『『「喜ぶな!!」』』
ドゴン!!ゴン!!
今度はダブル馬鹿は揃ってボコられ、頭を地面に突き刺された。
「「ハハハ、やっぱりそっくりじゃない♪」」
『―――――茶番はそこまでだ。幻魔師、これはお前の暇潰しでもあり、“盟主”の道楽なのだろう?』
「「・・・・・・・・。」」
黒王の問いに、カースは初めて沈黙する。
そして、今までの愉快そうな表情を消し、別の意味で楽しそうな妖しい笑みを浮かべながら黒王に視線を向けた。
「「―――――――――――へえ。」」
『――――組織の“大命”の為の行動にしては大雑把、かといって個人的な趣味にしては規模が大きすぎる。ならば、お前達の“盟主”も絡んだ道楽と考えるのが妥当、そうだろ?』
「「―――――――大体あってるかな?なら、のんびりやるのもここまでだね。」」
『『「「――――――――――――――!!」」』』
その時、カースは初めて悪意に満ち奥に狂気も含んだ視線を勇吾達に向けた。
その視線を見た瞬間、未だ経験した事のないほどの寒気が全身を走り、勇吾達は気を一気に引き締めなおしてカースと対峙した。
「「じゃあ始めようか、本当の《大罪の宴》を♪」」
パチンッ!
2人のカースは同時に指を鳴らした。
その直後、勇吾達の眼前に黒い炎の塊が出現した。
「黒!!」
『分かっている!』
炎の前に立ち、黒王は正面に闇色の壁を出して直撃を防いだ。
その直後に、勇吾と良則は揃って前に飛び出し、炎に隠れて突っ込んできた《真の大罪獣》の攻撃を剣と籠手で受け止めた。
「――――――――――ッ!?」
「凄い力だ!!」
2人がかりなのにもかかわらず、プライド・レックスのパワーは勇吾達に押し負けてはいなかった。
『グル・・・ル・・・コ・・・ロ・・・ス!!』
「――――――良則、動揺するなよ!」
「大丈夫、もう気付いている!」
目の前の大罪獣が初めて言葉を発したのに驚きつつも、勇吾はこういう状況に誰よりも動揺しやすい性格の良則を心配した。
だが、ここに来る以前に「確認済み」だったらしい良則は全く動揺を見せず、勇吾と共にプライド・レックスを押し返していった。
「「ハアッ!!」」
息を合わせ、黒い斬撃と白い拳撃を同時にぶつける。プライド・レックスも今度は押し負け、全身を勢いよく地面にぶつけた。
それに続き、2人の背後から黒王とアルビオンが頭上を飛び越えてプライド・レックス、そしてカース達に攻撃を仕掛けていく。さらに後方ではトレンツが《攻撃魔法》をいつでも放てるように構え、その隣では馬鹿達が応援歌を歌っていた。
『―――――《白龍光破》!!』
『―――――《邪を絶つ黒爪》!!』
アルビオンはカースに、黒王はプライド・レックスに《神龍術》をそれぞれ放つ。そこには手加減など全くなく、特にアルビオンは純粋な攻撃系の術を容赦なく放つ。それはそれ位の攻撃でなければ効果がないと知ってるからこその行動だった。
アルビオンの口から放たれた波動は、光速で逃げる間も与えずカース達に直撃する。同時に黒王の右手の先から伸びた黒い巨大な爪がプライド・レックスを切裂いた。
ド―――――――――――――――――――ン!!
確かに攻撃は直撃し、カースは白光に飲み込まれていった。
そのはずだった。
だが―――――――――――――――――――
『『―――――――――――――――――ルシフェル――――――――――――――――――』』
その瞬間、カースを飲み込んだ光は闇に反転した――――――――――――――――――。
・以前から考えていた事ですが、土日祝日の更新は今までなら9時と12時でしたが、今後は12時と18時になるかもしれません。どちらにするかはまだ検討中ですが、決まり次第活動報告などでお知らせしたいと思います。




