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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第8章 転生者編
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第79話 属性融合

・年末年始の忙しさで執筆が遅れましたが、今日も無事に更新する事が出来ました。


「―――――見た目通りの木属性、操作されているみたいだけど・・・・・?」

『おそらく、特定の命令を優先して動く様にされているのでしょう。ミレーナに見つかった直後に現れた事から、私達に気付かれる、または先程のネズミ型を倒した直後に活動する命令だったのかもしれません。」

「・・・勝って喜んでる所に不意打ち、『幻魔師』がやりそうなことね。」


 ステータスを見ながらリサは不快な表情で呟く。

 目の前に聳え立つ《大罪獣》、《淫蕩の女王薔薇(ルードネス・クイーンローズ)》は未だに成長を続け、出現当初ほどの勢いはないものの、確実に空に向かって伸び続けていた。

 その先端では、鮮やかな紅いバラが美しく咲き誇り、それを守るように鋼のように鋭い棘を持った茨が周囲を囲んでいた。


『とりあえず、俺は役にたたねえんじゃねえか、相性的に?』


 レアンデルはやる気が減ったように呟いた。

 レアンデルの属性は水、木属性の相手では相性が悪い。例えるなら、植物に水を与えれば元気にさせるだけになるのと同じである。もっとも、根腐れ起こすくらい与えると言う手もあるが、それは賢明ではなかった。


『―――――そうも言ってられないようですよ?』

『-――――――へ?』


 その直後、地上から無数の根が一斉に襲い掛かってきた。


『うおおおおおおおおお!?』


 慌てて避けていくレアンデル、その横でゼフィーラは余裕でかわしていく。

 ルードネス・クイーンローズは次の獲物を欲するかのようにしつこく襲い掛かってくる。


『茨の方からも来ます!』


 本体の方からも、棘を鋭く光らせた茨が襲い掛かってきた。



      ドドドドドドドドドドドド・・・・・!!



「――――――あれは!?」


 今度は周囲の至る場所から根や茨が次々に出現し、その全てがリサ達に向かって襲い掛かってきた。その数は時間と共に増えていき、視界のほとんどが襲い掛かる茨や根で埋め尽くされていった。


「嘘でしょ――――――!《ファイヤアロー》―――――!!」

「《ウィンドアロー》!!」


 リサとミレーナは魔法で攻撃していくが、茨や根に《強化魔法》でもかかっているのか、直撃しても効果は見られない。


「効いてない!?」

『ま、初級の攻撃魔法くらいじゃそんなもんじゃねえの?』

「他人事ね!?」

『おそらく、あの植物型は防御に特化しているのでしょう。攻撃の手段は限られてますが、その分強固な体を持っているようです。元々攻撃力の低い私達では傷つけるのは至難でしょう。』

『俺はサブ属性を使えばいけるけど、結構消耗しちまうぞ?』


 考えている間にも攻撃は続く。

 リサとミレーナは攻撃向きではなく、防御や後方支援を得意としている。まあ、勇吾達の攻撃力がずば抜けているのが原因でもあるわけだが・・・・。


「・・・どう、ミレーナ?」

「―――――――その手で行くしかないわね・・・・。」


 ミレーナはレアンデルのステータスを確認しながら答えた。



【名前】レアンデル

【年齢】18

【種族】龍族(水獣種)

【職業】海守

【クラス】碧の旅人

【属性】メイン:水 サブ:氷 雷 風 時

【魔力】5,243,000/5,243,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv3) 補助魔法(Lv1) 特殊魔法(Lv2) 属性術(Lv4) 人化 錬金術(Lv2)

【加護・補正】契約した龍 魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv4) 火属性耐性(Lv4) 雷属性耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv2) 海王の加護

【開示設定】ON



『―――――おい、何か花の様子がおかしいぞ?』

「え!?」


 言われて見てみると、大きなバラの花から金色の粉末が噴き出しており、気流に流されながら地上へ降りそそごうとしていた。


『どう見ても、あれは有毒だな!』

『ええ、毒ですね。』

「「間違いないわね!」」


 リサとミレーナは声をハモらせながら言った。


『――――とにかく、俺は派手に暴れてくるぜ!』

「ちょ、レアン!?」


 襲ってくる根や茨を避けながら、レアンデルは大罪獣本体へと向かって行った。

 本体に近づくにつれ攻撃は激しさを増していき、本体目前にまで来ると全方位から攻撃が襲い掛かってきた。


『―――――フン、止まって(・・・・)な!』


 鼻で笑った直後、ミレーナを乗せたレアンデルの姿が消えた。

 と思ったら、一瞬にして本体の頂上、バラの花の前に移動していた。


「今のって!」

『・・・驚きました。時の属性をここまで使えるようになったようですね?』


 一瞬の出来事だったが、リサとゼフィーラは何が起きたのが瞬時に悟った。

 レアンデルは全方位攻撃の瞬間、自分以外の時間を数秒間停止させて移動させたのだ。

 “時”の属性は読んで字の如く時間を操作する属性であり、高位の者であればタイムトラベルも可能になる“光”“闇”同様に希少な属性であるが、使用難易度は全属性の中でも最も難しいとさえ言われる。なにせ、扱い方を失敗すると自分の時間を失い、一瞬で老衰してしまうリスクがあるのだ。

 レアンデルもまた、自身のサブ属性の中でも“時”属性だけは習得には一際苦労しており、リサ達の知る限りでは精々自分の時間を加・減速させる事しかできておらず、さっきの様に時間を停止させたことには揃って唖然としたのだ。


『――――――面倒臭えが、これ以上面倒な事になるのはもっと面倒臭えから決めさせてもらうぜ?』


 目の前のバラの花に向かって呟くと、バラの周りの茨が怒ったかのように襲い掛かってきた。


『―――――――《五属性融合》。』



          ドッ――――――――――――!!



「え・・・・レアン!?」


 無数の茨が襲い掛かった直後、レアンデルの全身から5色の混ざった魔力が放出され、襲い掛かる茨の全てを破壊(・・)した。

 それは火の中に紙を放り込んだ時の光景に似ており、まるでレアンデルは全身を異色の炎で包んでいるかのような姿になっていた。


『お前らにも見せるのは初めてだから、ようく見ておけよ!』


 口を大きく開き、レアンデルは大罪獣に向かって光線(ブレス)を放った。


『―――《時をも乱す海色の光嵐(タイムブレイクテンペスト)》!!』


 光の柱が大罪獣を飲み込み、咲き誇っていたバラの花は見る見るうちに萎れて散っていった。

 花が枯れると同時に、街中に伸びていた茨や根も変色して枯れていき、最後に残ったのは痩せ細った茨に包まれた、黒い巨大な1個の種子だった。


「――――――あれが“核”!?」

『ハァ、ハァ、ハァ・・・・・!今だ!!』


 レアンデルは頭をふら付かせ、息も乱しながらリサとゼフィーラに向かって叫ぶ。


「―――――ゼフィ!!」

『ええ、再生する前(・・・・・)に片付けましょう。』


 ゼフィーラの視線の先、黒い種子の周りでは変色した茨が脈打つように動き、その隙間から新しい茨が伸び始めていた。

 それはまだ健在な“核”から魔力を供給されて自己再生、そして再増殖しようとする大罪獣(ルードネス・クイーンローズ)の抵抗だった。

 もし、大罪獣がカースに操作されずにいたら、再生を後回しにして逃走をはかっただろう。しかし、決まった命令通りにしか行動できない以上、それは始めから存在しない選択肢だった。


「《浄の一刃》!」

『《浄化の風》!』


 リサの風の刃とゼヒィーラの光を粒子の混じった風が“核”に直撃し、まっぷたつに裂けて霧散した。


「やったわ!」


 周囲では枯れた茨や根が一斉に霧散して消えていった。

 同時にバランスを崩したビルや道路が崩壊し、重低音を響かせながら街の姿は原型を失っていった。


『ハア~~~~、やっぱコレキツイな~~~。』

「大丈夫なの!?」


 レアンデルは疲れ果てたかのように地上へと降下していく。


『威力は申し分ないんだけど、反動がしんどいんだよ、コレ!』

「・・・消耗(・・)って、魔力じゃなくて体力って意味だったのね。」


 ミレーナは今になって自分の勘違いに気付く。

 レアンであるが先程使用した魔法、この場合は技術と言った方が適当だが、あれは『属性融合(エレメントフュージョン)』と呼ばれる複数の属性を1つに融合して爆発的な力を生む高等技術の1つである。

 元々相性のいい属性、例えば“水”と“風”を融合させて“氷”を生み出すこと自体は保有属性次第では誰にでも使用はできる。

 だが相反する属性、“火”と“水”、“光”と“闇”といった組み合わせとなると難易度は一気に上がってしまう。下手をすれば暴発、最悪の場合は周囲を巻き込んだ大惨事になり兼ねない、それほどの力を生み出す技術なのである。

 今回、レアンデルは自分の持つ五属性全てを融合させ、《淫蕩の女王薔薇(ルードネス・クイーンローズ)》を一撃で“核”以外を破壊しつくしたのである。代償として、かなりの体力を一気に失ってしまったが、それでも賞賛すべき結果なのである。


『――――俺よりも、“あいつら”の心配をしたらどうだ。凄い数だぞ?』

「―――――――あ!!」


 地上を見ると、瓦礫で覆われた地面に大勢の人々が気を失って倒れていた。

 その中の1人は《淫蕩の女王薔薇(ルードネス・クイーンローズ)》の核だった人なのだろうが、その大半は《強欲の大群鼠(グリード・レギオンラット)》の核だった1万人近くの一般人だった。


「・・・・・・取り敢えず、安全な場所を造って全員保護よね?」

『―――――流石に、この数は大変ですね・・・・・。』


 リサとゼフィーラも呆然としながら、気絶した人々で埋め尽くされた地上を見下ろしていた。

 そして2人は、気絶した人々を保護するために地上に降りようとした。







――――――――――――隙ありだよ♪







「「『『――――――――――――――!?』』」」


 4人の頭に、鳥肌が立つような声が通り過ぎた。

 その直後、



『チチィィィィィィィィィ――――――――――!!』



 駅の廃墟から、巨大な鼠が赤黒い眼光を放ちながら出現した。


「あれは―――――――――!!」


 それは、《淫蕩の女王薔薇(ルードネス・クイーンローズ)》に一匹残らず吸収されたはずの大罪獣、《強欲の大群鼠(グリード・レギオンラット)》だった。


「嘘!もう、一匹も残ってなかったはずよ!?」

『残ってたんだろ?大方、幻術か何かでこっちの探知を誤魔化してたんだろ。』

「―――――ッ!幻魔師!!」


 先程聞こえた声と合わせ、ミレーナは自分達が敵に遊ばれていたのだと気付く。

 ルードネス・クイーンローズが出現する直前、紛れ込んでいた(・・・・・・・)カースはレギオンラットを1体だけ、おそらく本体をこっそり《幻術》を使って隠し、ついでに力でも注いで巨大化させていた。


(――――私の馬鹿!!敵の情報はちゃんと頭に入っていた筈なのに!!)

「ミレーナ!!」


 後悔している間に、レギオンラットは地上で横たわるレアンデルと、その横に立つミレーナに向かって襲い掛かる。

 リサとゼフィーラは風を放って防御しようとするが、僅かにレギオンラットの方が早かった。


『・・・・・・クソッ!』

「―――――――――!」



 そして、駅前一帯を1つの轟音と震動が襲った―――――――――――――。








・次回は主人公のターンです。



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