第6話 慎哉、覚醒する!
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今日は順調なのでもう1話投稿します。
――北守家――
北守慎哉は5人家族である。
父と母、兄と姉そして慎哉の構成である。
「はあ………」
慎哉はテレビでニュースを観ていた。
ニュースでは5年以上逃亡していた指名手配犯が匿名の通報により逮捕されたと報道していた。もちろん、匿名の通報者は慎哉の事である。
あの後、すぐに警察に通報すると逃げるように家に帰ったのである。匿名にしたのはなぜ気づいたかと聞かれたとき困るからである。魔法だとはとても言えない。
「あ、珍しくニュース見てるじゃない?」
「姉ちゃん……」
背後から姉が声をかけてきた。
ブラシで髪を整えながら慎哉からリモコンを取り上げ、毎朝観ているチャンネルに変えた。
(・・・・ステータス!)
何となく《ステータス》を姉に向かって使ってみる。本当は昨日のうちにやってみるつもりだったが、指名手配犯の事で慌てていた事と兄も姉も帰りが遅かったことが重なってまだ試してなかった。
【北守 杏香】
【年齢】17 【種族】人間
【職業】高校生(3年) 【クラス】一般人
【属性】メイン:氷 サブ:水 風
【魔力】710/710
【状態】二日酔い(微)
【能力】――
【加護・補正】魔法耐性(Lv1) 白狼の加護
【開示設定】ON
(あ~~~、姉ちゃん隠れて飲んでたんだな。)
ちなみに、属性は大半が家族から遺伝するのが一般的なので慎哉と一緒である。補正にある魔法耐性は、慎哉のように直接干渉を受けた訳ではないが、慎哉が受けた干渉が大きかったため、その余波で間接的な感じで魔法耐性を得ているのである。
「何見てるの?」
「べ、別に……」
弟の視線に違和感を覚えているようだが、すぐ興味がなくなりテレビの方に視線を戻した。
しばらくテレビを独占するだろうと、さっさと朝食を済ませることにする慎哉だった。
そして用意された朝食を半分ほど済ませると携帯電話から着信音が響いた。食べている物を牛乳で胃に流しながら見ると、そこには覚えのないアドレスからのメールが届いていた。見てみると、差出人は勇吾だった。
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From:*******@*****.**.**
Sub:勇吾から
おはよう。
とりあえず用件だけ伝える。
ステータスを見ればわかるが、お前は能力が覚醒している。
すぐに試したいと思うだろうが、今日の放課後までは使うな。
《ステータス》も使うなら怪しまれない程度にしろ。
あと、ステータスには表示されないが今のお前には「霊感」みたいな感覚が備わっている。
わかりやすく言えば、人や物から出ている魔力やオーラが見えるようになったと思えばいい。
すでにそれらしいのを見ているだろ。
個人差はあるが、幽霊も見える場合もあるが気にしないでおけ。
それと、学校に入ったら何を見ても自然に振る舞え。
詳しい事は後で連絡する。
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(あれ?メルアド教えたっけ?)
昨日の記憶を思い返す。そう言えばメルアドも電話番号も交換していなかったと今になって気づき、何で勇吾が自分のアドレスを知っているのかと疑問に思うが、たぶん魔法か何かだろうと深く考えないことにした。それより、メールの内容を読み返してみる。
メールで指摘された通り、今朝起きた際、自身の五感の異変に気づいていた。視力は少し上がり、聴覚や嗅覚もいつもより鋭くなっている事にも驚いたが、何よりも驚いたのは今まで見えなかったものが見えるようになっていたことだ。
最初に見たのは朝食を作っている母親から出ているオーラだった。全身から薄い水色の湯気みたいなものが出ているように見えた。そしてようやく、それが自分の体からも出ているのに気付いた。気づいた直後は多少戸惑ったが、漫画やアニメで得た知識からオーラか何かと判断したためすぐに気にしなくなっていたのだった。
メールを読んで納得すると、今度は自分のステータスを見てみる。
【名前】北守 慎哉
【年齢】15 【種族】人間
【職業】中学生(3年) 【クラス】能力者
【属性】メイン:氷 サブ:水 風
【魔力】980/980
【状態】正常
【能力】氷術(Lv4) 体術(Lv3) 白狼の手甲鉤
【加護・補正】魔法耐性(Lv3) 白狼の加護
【開示設定】ON
昨日まで何もなかった能力の欄に3つの能力が表示されている。クラスも「能力者」になり、魔力も少し増えていたがあの2人と比較すれば微々としか見えなかった。
せっかくなので増えた能力の説明を読んでみることにした。
【氷術(Lv4)】
・氷や雪、冷気を生み出し操ることができる。
・ヒャッハーー!!天才なんてレベルじゃないぜ!チートだ!!魔力次第で世界中を氷河期にできちゃうぜ!!努力すれば間違いなく神クラス!神も仰天しちゃうぜ!!
【体術(Lv3)】
・魔力を加えた体術・格闘術。使用者の熟練度に大きく依存する。
・世界チャンピオン級の天才だな。達人になるのは決定!どんな格闘技だってどんどん覚えていくぜ!魔力なしでもアー〇スト・〇ーストにだって勝つのは夢じゃない!!
【白狼の手甲鉤】
・《白狼の加護》を受けたものの中で稀に与えられる、白い手甲鉤形状の武装。両手に装着し、魔力を込めることで岩や金属も切り裂く事ができる。霊的存在にも有効。
・レアじゃね?ていうかフラグだな。こういうのを持っている奴って例外なくトンデモ出来事に巻き込まれるんだよなあ~。こうなったら目指せヒーロー!!そしてハーレム!!
あい変わらずふざけているんじゃないかと思いたくなる。
慎哉は自分の能力がチートに入るんじゃないかと思うが、昨日の勇吾の言葉を思い出す。本物のチートはもっとすごいらしいので、自分は精々普通より少し恵まれている程度だろうと考えた。
(けど、何かレアな武器が使えるってラッキーだよな?)
《白狼の手甲鉤》の説明を読むとどうやらレアな武器のようだが、なぜ武器が能力の欄に表示されているのかわからない。勇吾も鎖の付いた大剣を持っていたが能力の欄にそれらしいものはなかった。ただ、《神剣の加護》というのはあったが。
慎哉はまだ知らないが、これは『魂の武装』と呼ばれ、その名の通り魂の中に宿っている武器の事である。主に加護や前世の影響で得られ、普段は持ち主の魂の中にあるが、持ち主の意志で自由に出し入れが可能な武器である。そのため、それ自体は武器に分類されるがどれも基本的にオンリーワンなどの理由から能力の一つとして認識されているのである。
上機嫌にステータスを見たいると、目の前から聞きなれた声が聞こえた。
「慎哉、何ボーとしてるの?早く食べていきなさい!」
「あ、うん!」
目の前で食事をしていた母親に叱られ、まだ食事中だったことと家族がいることを思い出す。家族から見れば何もない所を見ながらニヤけている姿は変に見えただろう。
すぐにステータス画面を閉じると、残った朝食を急いで平らげ、テレビの前のソファーに置いておいたリュックを背負って家を出て学校へ向かった。
この時、慎哉はメールの最後の部分に書かれていた事などすっかり忘れていた。そのため、学校に着いた途端に驚愕の声を上げてしまうのである。
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勇吾はビルの屋上から見下ろしていた。
通勤通学の時間帯と言う事もあり、また都会であるということもあり、大勢の学生やサラリーマンの姿が歩道を埋め尽くすように歩いている光景が広がっていた。
だが勇吾が見ていたのは人間ではなかった。彼が見ていたのは1つの学校の敷地、つまり慎哉が通う中学校の敷地を一人で見下ろしていた。普通の人から見れば学生が登校しているだけのなんら変哲のない光景にであっただろう。だが、勇吾に眼に映っていたのは異様な光景だった。
学校は赤に染まっていた。地表は炎の様にも血の様にも見える色の煙が舞台のスモークの様覆い、地表ほどではないが赤い靄が敷地内の空間に満ちていた。時々地表から小さい間欠泉の様に赤い煙が噴き出す光景は火事の様にも地獄のようにも見えた。
「一晩でここまで進むか。」
勇吾はわずかな点も見逃さないように観察する。
学校に広がる煙や靄は魔力である。
昨晩の時点で学校の建つ土地には本来の許容量を超える魔力が集まっていた。そして夜が明けたと同時に、ついに許容しきれなくなった魔力が地上に漏れ始めたのである。それでもなお、あの土地は周囲から魔力を吸収し続け、今の時点でその量は200万に達しようとしている。そのうち地上に漏れだしている魔力は全体の2割ほどではあるが、それでも異常な量であることに変わりない。生れつき過敏な人間なら体調を崩し始めてもおかしくないほどの魔力が漏れ出しているのである。
「念の為、校舎全体に防御魔法をかけておいて正解だったな。」
最も、彼は昨晩のうちに幾つかの手をうっていた。
校舎全体に防御魔法の一種をかけ、校舎内部には赤い魔力が侵入しないようにしておいたのである。これにより、耐性のない一般人でも校舎の中に入ってしまえば魔力による影響を受けることはない。体育を除けば基本的に授業のすべては校舎の中で行われるので今はこれで大丈夫なはずである。
念の為、校門から校舎までの一本道にも魔法を使って魔力のない空間を作っておいたのでこれでとりあえずはこれでいいだろうと勇吾は判断した。
数分後、勇吾は校門の近くで「うおっ!?」と驚愕の声を上げる学生がいるのに気付く。突然気勢を上げるその生徒に他の学生達は驚いて視線を向けているのが見える。
「あいつ・・・ちゃんとメールを読んでなかったな?」
折角の忠告の一部が無駄になってしまい、勇吾はため息をつくのだった。
ちなみに、お姉さんはヒロインにはなりません。地元の女子高生のままでいる予定です。
なお、お兄さんは家から公立大学に通っています。