第76話 大罪獣 Lv4
・あけましておめでとうございます。
・今年も本作品をよろしくお願いいたします。
それは、横浜の各所で吹き上がった。
ド――――――――ン!!
「キャアァァァ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最初は横浜ランドマークタワー周辺、若者や観光客で溢れる中で発生した。
歩道の1ヶ所から突然間欠泉のような物が吹き出し、その直後に付近一帯は濃霧に飲み込まれていったのだ。
そしてそれは、ここだけで起きている現象ではなかった。
ド―――――――――ン!!
それは横浜駅周辺数ヶ所だったり、
ド――――――――――ン!!
中華街のど真ん中だったり、
ド――――――――――ン!!
横浜港のすぐ横を走る、首都高速のすぐ隣など、市内数十ヵ所でほぼ同時刻に一斉に発生し、横浜市内は数分も経たずに全域が濃霧に包まれていったのだった。
同日 横浜市上空
「お~~~!あっと言う間に真っ白な海だな!」
『雲海みたいだな~~~、っと!』
濃霧の届かない地上1000m上空で、馬鹿と銀洸は霧に包まれ姿が見えなくなった横浜の街を見下ろしていた。
「これってヤバくね?予言回避失敗したっぽくない?」
『ん~~~~~、けどまだ怪獣は暴れてないからギリギリ間に合うんじゃない?』
「んじゃ!俺らが活躍する番だな!」
緊張感とはかけ離れた空気の中、馬鹿は濃霧に包まれた横浜の街全体を見渡すと、ニッと笑みを浮かべながら両手を開いて大きな声を上げる。
「《結界創造》~~~~~~~♪」
馬鹿の両手から光の波動が放たれ、横浜全体を飲み込んでいく。
カッ―――――――――――――!!
刹那、世界が白い光に包まれると、その直後には濃霧が消えたただの横浜の街だけが残されていた。
それは一見、《スローワールド》と変わらない異空間だった。
街からは騒音などが一切消え、静寂と濃霧だけが世界を満たしていた。
「――――――丈がやったようだな?」
「ああ、取り敢えずは現実の横浜が破壊される予知は回避できたと、言ったところか。」
勇吾は自分の体内の魔力の流れを感じながら黒王に答えた。
勇吾の魔力は、現実と全く同じ状態で流れている。つまり、ここは敵味方関係なく燃費の悪くなる《スローワールド》ではなく、馬鹿が即席で創った(妙にスペックの高い)『限定型』異空間であり、勇吾達は“敵”と、“それら”と一緒に現実空間から隔離されたのである。
『・・・・・ヤクザもセットみたいだがな?』
そう、芦垣組も一緒にである。
強面達はさっきまでの黒王とアルントの険悪な空気が不意に消えたことに戸惑っており、自分達が異空間にいることには誰一人して気付いていないようだった。
「――――――俺の結界の影響だろうな。」
「蒼空!」
屋敷の中から蒼空が出てきた。
「俺がこの屋敷に張った結界のせいで、敷地内にいる者全てが1グループで括られてしまったんだろうな。」
〈―――あり?俺のせいじゃなかった?〉
「黙ってろ、馬鹿!」
最初から参加してたかのように、馬鹿は念話で割り込んできた。
と、その時、近くで爆発音が聞こえてきた。
ドゴ――――――――――ン!!!
〈あ!モンスターがポップした!〉
「――――こっちもだ。」
勇吾の視線の先、そこには高層ビルと同じくらいの大きさの《大罪獣》が暴れている姿があった。
〈――――僕の所にも出たよ!〉
そこに、良則達も念話で割り込んできた。
〈俺の所もだぜ!あ、俺は港の近くにいるぜ。そっちは?〉
〈僕は“みなとみらい”のタワーの近く!〉
〈私とミレーナは駅周辺・・・・って、なんかいっぱい来た!?〉
〈俺は“かめ太郎”と一緒だぜ☆〉
〈〈〈何所!?〉〉〉
「馬鹿は後で竜宮城にでも行ってろ!!」
お互いの位置を確認しあうと念話を切り、黒王と共に塀を飛び越えて敵の下へと向かう。背後でヤクザ達の悲鳴などが聞こえたが、そのあたりは蒼空に丸投げである。
「・・・良かったのか?」
「ああ、どのみち誰かが守備の役をしなければならないんだ。状況からして、あいつが一番の適役だろう。《大罪獣》には俺の剣か、良則達でないと浄化はできないからな。」
「・・・・この数でもか?」
黒王は住宅街全体を見渡す。
屋敷の敷地内からは1体しか視認できなかったが、電柱と同じ位の高さから見ると、そこにはいずれも大型の《大罪獣》が軽く10体以上、異空間の街を破壊して回る光景が広がっていた。
「ああ、俺達が本気で戦えば十分可能だろ?どうみても、束になったところでアベルやルビーには遥かに劣るレベルだ!」
「・・・・“奴ら”と比較するのはどうかと思うがな。」
「だが、お前も同感だろう?」
「・・・・・分かっているなら言わなくていい。」
そして黒王は龍に戻り、勇吾と共に一番近くにいる、勇吾には見覚えのある大罪獣へと向かう。
(―――――《ステータス》!)
【名前】《嘆きの豪獣》
【種族】大罪獣(Lv4)
【クラス】怠惰
【属性】土
【魔力】1,970,000/1,970,000
【状態】操作
目の前にいる大罪獣は、カースと退治した時に見た、佐須と言う刑事を核とした大罪獣だった。
《大罪獣》化してからまだ1、2時間程度しか経ってないのにもかかわらず、かなりの成長を遂げていた。
サイズは先に書いた通り高層ビルに匹敵し、両肩からは黒曜石のような黒光りのする角が生え、2本だった腕は4本に増え、全身には装飾の施された赤銅色の鎧や鉄鋼などが装着させられている。
「―――――周囲の空間が少し歪んでいるな。」
『重力を操作する大罪獣なのだろう。《怠惰》と言うよりは《悲嘆》・・・いや、今風に言えば《憂鬱》の大罪を司っているようだ。』
「・・・・だな。とにかく、速攻で倒すぞ!」
『ああ!』
そして2人はグリーフ・ブルートへと攻撃を開始し始めた。
同時刻 異空間内 みなとみらい21(ランドマークタワー前)
同じ頃、日本一高い超高層ビルである『横浜ランドマークタワー』の前では、良則が“白い龍”と共に大罪獣と対峙していた。
『―――――――始まったようだ。』
「うん、勇吾の方は心配ないと思うから、僕らも目の前の敵に専念していこう、アルビオン!」
『だが、少々数が多いようだ。どうやら、作為的な配置のようだ。』
白い龍――――――アルビオンは目の前に並ぶ、50体近い大罪獣の群れを見ながら呟いた。
明らかに良則とアルビオンを袋叩きにしようと言う意思が感じられる状況だったが、2人とも恐れるどころか既に勝てるのが当然のような余裕の空気に包まれている。
『ガルルルルルルルルルル・・・・・・・!!』
痺れをきらしたのか、全身に炎を纏った獅子型の《大罪獣》が一歩前に出た。
『奴が先陣を切るようだ。』
大罪獣から放たれる熱波は良則達にも届く。
良則は相手のステータスを見てみた。
【名前】《灼熱の人喰赤獅子》
【種族】大罪獣(Lv4)
【クラス】傲慢
【属性】火
【魔力】1,900,000/1,900,000
【状態】興奮
「・・・・精神操作は受けてない?」
『―――――おそらく、無理矢理《大罪獣》になったのではなく、幻魔師にうまく唆されているのだろう。強い大罪を背負う者は奴に抗う術は無に等しいからな。』
「――――だけど、“あの力”は決して幸せは生まない。最後は他の《幻魔》みたいに・・・・・・」
良則は最後まで口に出す事は出来なかった。
《大罪獣》、つまりは《幻魔》になった人間の末路がどんなものか、良則は祖父母から直に聞いて知らされている。
だからこそ、良則は今の“彼ら”の現状を見過ごす事は出来ないのだ。
「―――――――これ以上、あんな悲劇を起こしちゃいけないんだ。アルビオン、行こう!!」
『・・・・・・おう!』
白い両翼を広げ、アルビオンは宙に飛翔する。
良則の目つきは戦士のものに変わり、両拳を構えてバーニング・マンティコアへ強い視線を送る。
「――――――行くよ!!」
良則のいる場所でもまた、戦いの火蓋は切って落とされた。
・アルビオンの名前はあえて説明しません。某作品の某ドラゴンとは関係ありませんのであしからず。




