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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第8章 転生者編
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第58話 諸星 蒼空(もろぼし そら)

・前回は過去が舞台でしたが、今回からは現代に戻ります。(主人公は前回に続いてお休みです。)



―――――ピピピピピピピ・・・・・・・




 目覚まし時計の音と共に、俺の意識は覚醒した。



「―――――――――また、あの夢か・・・・・・・。」



 頭に響く目覚まし時計を止め、俺はしばらく天井の向こうを見上げていた。


 今でもたまに見る事がある前世の夢(・・・・)、その中でも今回見たのは決して忘れられそうにない最期の記憶だった。


 あの日、ライナー=レンツは未知の実験の犠牲となって死んだ。


 それから――この世界の時間で――54年、俺は再び人間として生を受けた。


 ライナー=レンツではなく、諸星(もろぼし)蒼空(そら)と言う1人の日本人として――――――




--------------------------


 前世の記憶を思い出したのは4歳を迎える少し前の事だった。


 不意にライナーだった時の記憶の全てが蘇り、しばらく呆然としていた事を覚えている。


 流石に数分間は戸惑ったが、その後はすぐに状況を理解する事ができた。


 俺は幻魔師の―――――いや、組織の実験で転生させられたのだ。



 状況を理解した後は、すぐに今の自分(・・・・)の立場や状態を調べる事にした。


 幼い新しい体で動くのには苦労したが、この世界のメディアがある程度発達していたお蔭ですぐに情報を集める事が出来た。



 今の俺、諸星蒼空が生まれた諸星家は横浜に暮らす中流家庭だ。


 家族は俺を含め、両親と兄、当時は生まれたばかりの弟の5人家族だった。


 父は地方公務員、母は薬剤師の共働きで、現在は日中のほとんどを留守にしている。


 兄は俺より3つ上で今は中学3年で、受験勉強真っ盛りだ。ちなみに、若干ブラコン気味である。


 祖父母に関しては全員健在で、父方の方は俺が生まれる前までは同居していたが、俺が生まれるのを機に両親は新居を買って引っ越した。


 今では週末などに遊びに来たりと、どうやら比較的円満な家庭に転生したようだ。



 次に時代に関しては予想以上に時間が経っていた事に驚かされた。


 俺が死んだのはこの世界での時間で半世紀以上も前、戦争が終結した年だった。


 あの時は直接的には関わらなかったが、組織は――特にカースの野郎――この世界でかなり性質の悪い事をしていたのを覚えている。


 ライナーとして死に、蒼空として生まれるまでの間が50年以上、転生に何故ここまでの時間が空いたのか、今では調べようのないことだ。


 だが、組織にいた頃に読んだ文献には確か、『魂の循環は、現実の理に束縛されにくい』と書いてあった事から推測すると、転生する時と場所は極めてランダムに近いと言う事なのかもしれない。



 だが、すぐに俺は別の可能性に切り替えた。


 あの時、カースは『実証実験』と言っていた筈だ。


 ならば、ただ転生させるのではなく、転生させる時と場所を自由にコントロールする実験だと考える方が現実的だ。


 何より、組織の性格上絶対そうだという確信が俺にはあった。



 現状を把握した後、俺は家族の目を盗んで家を抜け出し、人気のない場所である実証実験を使った。


 それは、前世の能力――――つまり魔法の使用が可能かの確認である。



 結果から言えば全部使えた。それどころか、更に強くなっていた。


 魔力の総量もかなり上がり、前世で魂にインストールしておいた魔法も問題なく使用できた。


 その中の1つ、前世で死ぬ直前にカルを倒した男(・・・・・・・)が開発した汎用魔法ステータスを使用すると(当時は)以下のようになった。



【名前】諸星(もろぼし) 蒼空(そら)

【年齢】3 【種族】人間

【職業】――― 【クラス】転生者

【属性】メイン:土 サブ:水 風 空 木 光

【魔力】6,992,000/6,992,000

【状態】正常

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv3) 補助魔法(Lv5) 特殊魔法(Lv4) 土術(Lv4) 水術(Lv2) 風術(Lv2) 空術(Lv3) 木術(Lv3) 光術(Lv2) 錬金術(Lv5) 体術(Lv3) 剣術(Lv2) 千里眼 智と導きの環(ワイズリング) 過去の遺産への鍵(プライベートラボ・キー)

【加護・補正】魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv3) 土属性耐性(Lv3) 輪廻を超えし契約者 幻獣の契約 霊視の瞳

【開示設定】OFF



 正直、他人のステータスではないかと最初は思った。


 前世の時と同じモノもあったが、いろいろツッコむところが多すぎる。


 まず、魔力が多すぎる。凄く異常だ!


 ライナーだった時の俺の魔力は精々500万を超えた程度だったはずが、今は200万近く増えている。


 次に能力、数も増えた事もあるが、適正レベルが前世(まえ)より高くなっているし、スピリットウェポンが2つもある。


 詳細を見てみると――――――



智と導きの環(ワイズリング)

・今は亡き賢者の1人が輪廻の中に隠した、知る人ぞ知る伝説の指輪。

・魔法を強化し、魔法の術式を視覚情報に解析し干渉する事ができる。

・直接触れた対象に関する情報を『アカシックレコード』から検索して閲覧する事ができる。

・装着中、周囲1,000㎞圏内で発生する異変を察知する事ができる。

・ワ~~~オ!これ―――――――――――



 最後に余計なのが入っていたが、無視だな。


 そして、もう一つの方は――――――



過去の遺産への鍵(プライベートラボ・キー)

・前世で作製した異空間を再び現世で開くための鍵。

・異空間の設定は前世死亡時のままであるが、空間内の備品などについては破損・紛失の可能性あり。

・最初の使用後、名称が【個人用研究室への鍵】へ変更される。

・テ――――――――



 前世の時も思ったが、この魔法を開発したあの男(・・・)の頭はどうなってるんだ?


 だが、この情報を見る限り、これらは転生の際の副産物であることがわかる。


 前者の方は、おそらく歴代の”あの賢者”の誰かが輪廻の理の中に封じた物が俺が転生された時に俺の魂の中に入ってきたものだ。


 後者の方は、前世の時に使っていた個人用の異空間が現世でも継続して利用するための道具だろう。備品などについてはまあ、死んでる間に異空間が一度解除され、また再構成される際に破損したりしたといったところだろう。


 次に加護・補正についてだが、さすがに加護は死んだ際にリセットされているが、補正の方はかなり良かった。



【輪廻を越えし契約者】

・転生者限定の補正。

・前世での契約をそのまま引き継ぐ事ができる。ただし、相手が死亡している場合はできない、



 これは正直うれしかった。


 どうやら自動で発動するらしく、既に《幻獣の契約》が表示されていた。


 ライナーだった時に契約したアイツは今も存命だった。



 永くなったが、以上が転生を自覚した当時の俺のステータスだ。


 確認した後は素早く帰宅し、何事も無かったように振る舞った。


 そして、それから8年近くが経過した。




--------------------------


――現在――


 着替えを終えて自室を出た俺は隣の部屋に入り、目覚ましが鳴ってもまだ起きない弟を起こしにいった。



龍星(りゅうせい)!もう朝だぞ!!」


「う・・・う~~~ん。もう・・・・・・?」



 目覚ましを止め、頭まで布団の中に潜っていた弟を無理矢理起こす。


 布団を力ずくで奪うと、寝惚けた声を出しながらようやく起き上がる。


 こいつが現世(いま)の弟、諸星龍星、今年で小学2年生になった。



「もう、じゃない!今日は終業式なんだから、今朝くらい自分で起きたらどうだ?」


「兄ちゃん、でも眠い・・・・・・。」


「夜更かしするお前が悪い。さっさと着替えろ!」



 俺は龍星の体を揺らしながら急かすが、未だ眠気が抜けない弟は今にも二度寝をしそうだ。


 仕方なく、俺は着替えを手伝って洗面所へ連れ出し、冷水で強制的に覚醒させた。



 ようやく覚醒した龍星を連れてリビングに行くと、既にほかの家族は食卓の前に座っていた。


 父親の諸星哲夫(てつお)と3つ上の兄諸星(れん)は先に食べ始め、母の諸星景子(けいこ)は俺と龍星の分の目玉焼きを焼いていた。



「よう、今日も寝坊か?」


「―――――龍星がね。」



 味噌汁を啜りながら蓮は俺に話しかけてきた。


 正直な話、俺はコイツとはあまり話したくはない。


 まあ、肉体的には俺の方が年下だが、精神的には俺の方が家族の中で圧倒的に上である事も理由の1つであるが、それに加えて蓮は若干ブラコン気味なのが俺にとって苦痛でしかなかった。



「蒼空、納豆混ぜておいたぞ!ちゃんと辛子とネギも入れておいたぜ!」


「また勝手に・・・・・・。」



 こんなのはまだ序の口、コイツは俺や龍星によく絡んでくる。


 通学には毎朝同行しようとしたり、風呂に入ろうとすれば週に1度は一緒に入ろうとしてくる。


 お蔭でストレスは溜まる一方だ。



「―――――いただきます。」


「いただきます!」



 椅子に座り俺と龍星は一緒に朝食を食べ始めていった。



--------------------------


 朝食を済ませ、歯磨きも終えた俺達は普段より軽めのランドセルを背負って学校へと向かう。


 俺の後ろを流星がくっ付いて来る中、更に後ろから面倒なのが追いかけてくる。



「待てよ蒼空!俺を置いてくなよな~~?」


「あ、蓮兄ちゃん!」


「―――――チッ!」



 タイミングを計って家を出たつもりが早く追いついてきた。



「おい!今、舌打ちしなかったか?」


「―――――――別に・・・・・。」


「兄ちゃん、何でいつも蓮兄ちゃんの前だと暗いの?」


「そうだぜ蒼空?兄ちゃんみたいに明るく元気にならないと病気になるぜ!大丈夫か?」


「(お前に言われたくはない。)」



 俺は蓮には視線を合わせないようにしながら前を歩いて行く。


 ハッキリ言って、精神的にずっと年下の奴に兄貴面されるのは抵抗がある。しかもブラコンに!



「兄ちゃん待ってよ!」


「あ!ゴメン!」



 何時の間にか早足になってたらしく、龍星が走って追いかけてきた。


 どうやら中学校への分かれ道も過ぎていたので、もう蓮に追いかけられる心配はない。


 う・・・!こっちに手を振ってきてる。



「大丈夫か龍星?もっとゆっくり行くか?」


「うん。ねえ兄ちゃん、何で僕とだけいる時は喋り方が違うの?」


「そうか?俺は同じように話してるつもりだが?」



 それは嘘だ。


 俺は両親や連の前では怪しまれないように、年相応の口調で話している。


 最初はうまくやるつもりだったが、思いの外精神年齢の高さが足枷となっていた。


 無理をして作り笑いをしたり、子供っぽく振る舞ったりするのは辛くなり、次第に3人と距離を置くようになっていった。


 その一方で、龍星といる時は気持ちが楽だった。


 心身共に年下だった事もあるが、幼い頃から俺を兄として純粋についてくる龍星に、俺も自然と弟として愛せるようになった。


 龍星といる時だけは、俺も自然に振る舞える事ができ、今では家の中でも龍星といる時だけは素で会話ができるようになった。


 まあ、そのせいでさっきみたいな質問をされる事も増えてきたが、とりあえず問題はない。



「兄ちゃん、学校が終わったら夏休みの宿題手伝ってくれる?」


「もうか?まずは自力で頑張れ。工作なら後で手伝ってやるよ。」


「ホント!?やった―――――!」


「全く・・・・。」



 今からハシャギ出す弟に、俺は呆れながらも笑みをこぼす。


 そんな会話が続き、俺達は学校へと向かって行った。


 これが今の俺の朝の日常だ。


 明日からは夏休み、自由な時間も増えるから仕事(・・)もやりやすくなる。


 最近はいろいろ物騒だが、この町は今の所は大丈夫だ。



 今となっては組織への未練もない。


 一抹の不安はあるが、もう戻る気はない。


 どこかの組織に属する気も今はない。


 今はただ、この新しい人生を自由に過ごせればそれで十分だった。







・よくある、転生したらチート?な感じです。

・蒼空も微妙にブラコンかもしれない。

・この話は第51話の翌日の話、第7章の前にあたります。


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