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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第6章 青の賛美者(イェグディエル)編
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第49話 幼馴染ボーイズ




 それは、街1つどころか都市を丸ごと飲み込む爆発だった。

 片や天上から降り注ぐ無数の流星、片や地上数十mから打ち出される同じく無数の拳撃、双方が天と地の境目と言えなくもない場所で激突、見た者の眼を一瞬で焼き尽くすかのような閃光と共に異界の名古屋全体を飲み込む大爆発が起きた。

 1ヶ所(・・・)を除き、アベルによって展開された異界の地表にあった物はその全てが原型を失い破壊され尽くされた。



「も~~~~~~~う!!今のは本気でビックリしたわよ!!!!」

「ぐ・・・・・・・キッツ~~~~~~!!!」


 避難場所ではリサ達が周囲に防御魔法を張ってどうにか爆発の被害から免れていた。

 防御魔法の適正が高いリサと晴翔が魔法を展開し、それを残ったミレーナ、慎哉、琥太郎がバックアップする事でどうにか防ぐことはできたが、リサとミレーナはともかく、魔力の低い慎哉達への反動は大きくかった。


「リサ、今の・・・・・・・あの技よね?」

「ええ、こういう無茶をするところは相変わらずよね。けど、あそこでやらなければこの程度(・・・・)じゃ済まなかったでしょうね。」

「・・・・・流石、七大天使の一角と融合しているだけはあるわね。多分、今のは大技だったとしても、全力(・・)じゃないでしょうね。向こうから、まだ彼の魔力が感じられるし・・・・・・・。」

「ホント、とんでもない奴よ!」


 結構見慣れている(・・・・・・)リサとミレーナにしてみれば、目の前の光景には最早あきれるしかなかった。


「あのう、勇吾さん達は大丈夫・・・・なんですか?」


 そこへ、亮介が凄く不安な顔で話しかけてきた。


「―――――平気よ!アイツ、今回みたいなことには何度も関わって慣れてるから死ぬ訳ないわ。第一、このゲームの主催者が『命を奪ったりはしない』って宣言しているしね。会ったばかりだけど、少なくとも嘘はついてはいないわね。」

「さっきの攻撃にも、殺意はなかったしね。それに、向こうで誰かが死んだ気配は1つもないわ。」

「そう・・・・ですか。」

「大丈夫よ!私達はここでしっかり観ていればいいのよ!」

「・・・・・ハイ。」


 後方からは「嘘だろ!?」「いや、死んでるでしょ!」「余裕すぎるだろ!?」などの声が聞こえてきたが、リサは他の者達と一緒に未だ続く戦いを見届けていった。







 戦場では、アベルが全くの無傷で飛んでいた。

 仮面の奥に隠れたアベルの目は、今だ視界を遮る土煙の中にいる良則達(・・・)の存在を捉えていた。


『――――――――先程の技、『閃光の王』の使っていた技のどれにも当て嵌まりません。よもや、先人の技を元に新たな(オリジナル)を創りだすとは―――――――――。』


 アベルは良則に対し、純粋に感嘆していた。

 良則の使う《閃拳》は本来彼のオリジナルの技ではない。

 《閃拳》が生み出されたのは今から50年以上前、後に『閃光の王』の二つ名で呼ばれる当時16歳だった日本人の少年、良則と馬鹿の大叔父(・・・・・・)が独自に編み出した技であった。


『『閃光の王』直々に教わったのでしょうが、その若さでここまで磨き上げるとは・・・・・もはや感服するしかありませんね。』


 そう言うと、アベルは風を起こして邪魔な土煙を掃った。

 視界を遮るものがなくなると、アベルの視界には巨大な氷山(・・・・・)が建っていた。

 所々欠けていた氷山の中の空洞に、3人(・・)の姿があった。


『攻撃魔法を応用した防御、いいアイディアですね。そして、あの僅かな時間の間によく間に合いました。あなた方にも感服いたします』


 アベルの視線は氷山の中の3人、良則と勇吾、そしてトレンツに向けられていた。

 特に注目したのは、この氷山を造ったであろうトレンツだった。


「うわあ、あんなに派手に爆発したのに無傷かよ!?」


 トレンツは呆れながらぼやいた。


「それにしても、相変わらずトレンツは無茶な事をするよ。僕らに直接攻撃魔法を放つなんて・・・・。勇吾の防御が間に合わなかったら死んでたよ?」

「―――――お前は死なないだろ?」

「そうそう、これ位の事は俺らには普通だろ?それに、空洞を作るくらいなら、勇吾が間に合わなくてもお前だけでも余裕だったろ?」

「・・・・・そうだけど。」

「その話はここまでにしろ!向こうは俺達が出てくるのを待っているみたいだぞ。」


 勇吾は布都御魂剣を魔力を込めながら握りしめると、内側から氷山全体を切刻んでいった。

 火属性を込めた斬撃は、トレンツの攻撃魔法で造られた強固な氷山をバターを切るかのように易々と切裂いていき、勇吾が斬るのを止めたのと同時に大きな音をたてて崩れていった。


「―――――――――さっさとゲームを終わらせようか。アベル=ガリレイ!!」

『急がなくとも、まだ時間は半分も残ってます。焦らずに策を練ってからの方が良いのではないですか?』

「―――――――たかが10分や20分考えた位の策で勝てるとは思ってはいない。お前ほどの奴には、全力でぶつかるしか勝機はないだろ。」

『ハハハ、これはゲームなんですからそこまで真剣にならなくてもいいのですよ?』

「ただのゲームで、ここまで(・・・・)やる奴のセリフとは思えないな。お前は、俺達に本気を出させてあいつら(・・・・)に観させたいんだろ?」

『――――――――分かりましたか?』

「何を企んで―――――――いや、さっさと勝って吐かせる!!」


 勇吾は宙を蹴り、渾身の力を込めてアベルに斬りかかる。

 アベルは避けようとはせず、前と同じように障壁を張って防ぐ。


『先程より強いようですが、あなたの剣は私には届きません。』

「――――一発だけならな。」

『――――――!?』

「斬り裂け!布都御魂!!」


 勇吾の声とともに、空と地上から数百もの剣がアベルに襲い掛かってきた。

 無数の剣は次々に障壁に突き刺さり、その防御を削っていく。


『――――これが、神代に名高き神剣、布都御魂剣の力のひとつですか。イェグディエルの力すら削るとは驚嘆に値しますが、それだけではまだ足りませんよ?』

「いや、まだだ―――――――《百影天殺斬》!!!」


 今度は襲いかかる剣の陰から勇吾の分身百体が現れ、一斉にアベルに向かって黒い斬撃を放った。


『く・・・・・・・・・!』


 アベルはここにきて初めて焦りの声を漏らした。

 鉄壁に思えた障壁には亀裂が走ってゆき、もはや本来の防御力を失いつつあった。

 そこへ、障壁が修復される隙を与えないように新たな攻撃が加わる。


「うおおおお!《氷龍牙砕破(アイスファングブレイク)!!》」


 離れた位置から、トレンツの攻撃魔法が放たれ、氷でできた九頭の龍の咢がアデルに襲いかかる。

 ちなみに、この魔法は別の魔法をトレンツが応用し、自分好みに創った魔法である。


『クッ!もはや障壁だけでは駄目のようですね。―――《エレメントフェザー》!』


 アベルは羽を羽ばたかせて羽根を舞い散らせ、その羽根は様々な属性に姿を変える。


(またあの技・・・・・いや、違う!?)

『行け、七大の眷属―――――《二羽の天兵(ヘブンズアーミー)》!』


 勇吾達の目の前で、あらゆる属性に変わった無数の羽が今度は1対2枚羽の天使に転じていく。全身が白い甲冑で覆われ、その羽も炎や水といった各属性でできているそれは、天使と言うよりは、天使を模したロボットといった印象を持つそれらは、片手に剣、もう片方の手には盾を持った兵隊だった。その数は優に千を超えている。

 アベルが前に手を振り下ろすと、天使の兵隊達は襲い掛かる氷の龍とそれを繰り出すトレンツに向かって飛びかかって行った。


「トレンツ!!」

「ハッ!まだまだあるぜぇ―――――!!」


 叫び声と共に、氷の龍はさらにその数を増やしていった。

 最初は9頭だった龍は10を超え、20、30と増えていき襲い掛かる天使の兵達に突っ込んで行った。


『ハハハ、これは凄いですね!』


 アベルは襲い掛かる氷の龍を軽やかに避けつつ、背中の羽から雷撃を放っていく。

 一発でも直撃すれば致命傷になり兼ねない雷撃を、勇吾は自身の最高速度と神経を研ぎ澄ます事で回避していく。避けきれない場合は目の前に闇の壁を出して防御しどうにかアベルに接近しようとするが、混戦した状況では相手の方が明らかに上だった。

 アベルは常に冷静に状況を判断し、自分に接近しようとする勇吾を余裕であしらいながら雷撃で攻撃していく。その激しさゆえ、爆発によって更地と化してしまったいる地上は雷撃によって切り裂かれ、天使の兵に破壊されて降り注いでくる氷の龍の残骸が突き刺さるなどさらに無惨な姿になっていった。


『多対一とは言え、ここまで混戦してくれば私も隙を作ってしまいかねませんね。――――――そしてそこを、あなたが全力で突くと言う訳ですか!』


 アベルが自身の死角に防御を展開する。

 直後、そこに良則の拳が直撃した。


「――――――――――クッ!!」

『流石に、これはキツイですね!!』

「―――まだだ!《千閃拳撃乱舞(せんせんけんげきらんぶ)》!!」


 数多の残像と共に、アベルの全方位から白光を纏った拳撃の嵐が襲い掛かる。


「おおおおおおおおおおおお―――――――――!!!!」

『―――――――!?この距離ではっ―――――――――――!!』


 近距離からの攻撃を前に、アベルは防戦一方になっていた。

 もし、遠距離からこの攻撃が放たれていればアベルがここで追い詰められることはなかっただろう。アベルの、そして彼と融合している熾天使イェグディエルの戦闘能力は遠距離に傾いているため、どうしても近接での猛攻の前には防御に徹してしまうのだ。


(どちらが考えたのかは分かりませんが、これは間違いなく彼らの策なんでしょうね。どうやら、策を練る時間を当てる必要はなかったと言う訳ですね。)


 おそらくは氷山の中で大爆発を凌いでいる間に3人のどちらかが練った策なのだろうと、アベルは苦笑しながら考えた。


『―――ですが、ここで勝利を諦める私ではありません!』

「うわっ!!!」


 アベルは全身から魔力を放出し、その衝撃で良則を弾き飛ばした。

 そして放出された魔力は大量の水に変わり、激流となって良則に襲い掛かろうとした。


『奔流にのまれなさい!!』

「させるか!!」

「――――――勇吾!」


 そこに勇吾が斬りかかっていく。

 魔力を注ぎ込んで身の丈の倍以上に伸びた剣を振り下ろし、奔流ごとアベルを斬ろうとする。


『――――――無駄です!』


 だが、アベルは奔流を操って勇吾と良則をまとめてのみこもうとする。

 勇吾と良則は加速しながらかわしていくが、そこにトレンツに向かっていた天使の兵達の一部が戻ってきて2人に襲い掛かってきた。


「――――――クソッ!!(こうなったらアイツ(・・・)を呼ぶしかないか―――――――!?)」

『なかなかいい作戦でしたが、ゲームは私が勝たせてもらいます!!』


 アベルは勝利を確信したかのような声をあげる。

 良則は閃拳で天使の兵を撃破していくが、奔流が邪魔をしてうまく数を減らしていけない。彼の閃拳は光を纏った拳撃であったため、透明な水の奔流の前だと鏡面反射を起こしてその威力を激減させてしまうのだ。


『この空間の果てまで押し流されなさ――――――――――――――――なっ!?』


 その時、アベルは言葉を途中で止め、反射的に視線を勇吾達から自分の真上に移した。

 突然の事に、勇吾と良則も上空に視線を向けた。

 上空には幾つもの何かが光に照らされて金色に輝きながらこちらに向かって落下してきた。

 次第にその姿がハッキリ見えてくると、場違いなほど間抜けな声が響いてきた。




「シャチホコダ~~~~~イ~~~ブ~~~~~~~♪」




「「『――――――――――――――――!!??』」」


 空から大量の金のシャチホコと共に、馬鹿がアベルに向かって一直線にダイブしてきた。

 その時、アベルがどんな顔をしていたのかは本人以外は誰も知らない。だが、アベルが良識のある人間なら、青い仮面の向こう側はかなり素っ頓狂な顔だったに違いないと、後に勇吾は語った。


『―――――――姿が見えないと思ったら、何でシャチホコと―――――――!?』

「名古屋名物、金のシャチホコと共にあなたをタッチしま~~~~~す♪♪」


 想定外すぎる事態に冷静に対応できないアベルは、勇吾達に向けていた奔流を上空に向けて流した。

 だがそれは、勇吾達にとっては千載一遇の勝機だった。




「今だ!!契約の元、我が身の前に顕現しろ――――――――ネレウス!!」




 その直後、勇吾の目の前に巨大な間欠泉のような水柱が出現した。


『――――――な、あれは――――――――――!!』


 ダイブする馬鹿とシャチホコを防いでいたアベルは、その水柱を見て驚愕する。いや、正確には水柱の中にいた『影』を見て驚愕した。


『あれは、まさか――――――――――!!』


 驚愕の声を上げるアベルの前で、水柱の中にいたそれ(・・)は異界の名古屋にその巨大な姿を現した。



 100mは優に超える海のように青い鱗に覆われた手足のない巨体、眼光鋭くワニのような頭部、水飛沫と共に現れたそれは、巨大な大海蛇(シーサーペント)だった。







――――――――制限時間 残り21分








・勇吾はあらたなチートを召還しました。

・感想お待ちしております。



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