表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第6章 青の賛美者(イェグディエル)編
50/477

第47話 願望

・ゲーム開始です。鬼ごっこと言うよりは、普通にバトルですけど。



 異空間の中を爆音と衝撃が襲った時、亮介は誰も歩いていない道の上でしゃがみこんでいた。


「お、おさまった・・・・!?」


 大地震のような揺れが次第に弱まりまだ僅かに揺れる中、亮介はおそるおそる立ち上がる。亮介の周りにはさっきの衝撃で砕け散った住宅のガラス片が飛び散っていた。


「――――――何が、起きてるんだ!?」


 亮介は今の現状が理解できずにいた。



 10分ほど前、自室で勉強をしていた亮介は何が起きているのかも分からないままこの世界に捕り込まれてしまった。最初は勇吾達がまた来たのかと思った亮介だったが、数分経っても誰も来る気配はなかったので外に出て自分で状況を調べる事にした。

 外に出て最初に見たのは、中心部から立ち上る青い光の柱だった。《創造魔法》を使える亮介とは言え、魔法に関しては全然素人だった彼には視線の先で立ち上る光の柱がどれほどのものなのか気付く事は出来なかった。

 そして突然光の柱が弾け、視界が閃光に包まれ何も見えなくなってしまう。目が開けられない時間が十数秒間ほど続き、ようやく目を開けられるようになった直後、亮介はそれを見て呆然と立ち尽くした。


「て、天使――――――――――!?」


 亮介の目には、宙に浮かんだ天使の姿が何故かハッキリと映った。そしてその天使は、2日前に亮介が会った青い仮面の男でもあった。

 天使の浮いている場所と亮介が今いる場所は何kmも離れている。本来なら精々宙に浮かぶ点にしか見えないはずが、亮介の目には近くで見ているかのようにハッキリと天使の姿が見えていた。更には姿だけでなく、声までも聞こえてきた。


「え・・・・・・浮いてる!?」


 そこで亮介は、自分が何時の間にか天使のすぐ近く、中心部の街の空中に浮いている事に気が付く。真下を見下ろすと、そこには数時間前に会ったばかりの勇吾と慎哉、それに亮介はまだ会った事のない良則達の姿もあった。横の方も見回すと、自分以外にも同じように空中に浮いている人の姿がいくつか見えた。


「勇吾さん!慎哉さん!」


 亮介は勇吾達に向かって叫ぶが、勇吾も慎哉も亮介の声に気付かなかった。すると、周りにいた何人かが、同じように亮介の知らない名前を叫んでいたが、そっちも気づかれる事はなかった。一瞬、ニヤニヤした馬鹿が視線を動かして亮介の方を見たが、すぐに他の方へ移していた。


(もしかして、意識だけが移動してる・・・・・・・?)


 亮介の予想は当たっていた。

 ここには今、アベルによって覚醒者になった少年少女達が、彼の力によって意識だけこの場所に集められていた。

 勇吾達とアベルの会話は続き、アベルが亮介達を覚醒者にした方法についての話になった。そこで亮介は、自分の《創造魔法》が自身の願望から生まれた者であると知る事になった。


(僕の・・・・・願望・・・・・・?)


 だが、亮介には自身の願望に心当たりがなかった。アベルに会ったあの時、亮介は単純に「何かいい事がないか」としか思っておらず、それは《創造魔法》に繋がる願望とは何となく思えなかった。


『不本意な方もいるでしょうが、あくまでこれは私の挨拶も含めていますので命を奪ったりはしません。ですが、本気を出さないと大怪我をするかもしれませんのでご注意を。』


 会話はゲームの話になったが、途中から聞いていた亮介には何の事なのかさっぱりわからなかった。


『―――――制限時間は今からちょうど時間です。では、スタート!!』


 アベルがゲーム開始を宣言した直後、強い衝撃と共に亮介の意識は真っ白に染まった。

 そして話は冒頭に戻る。





「確か、ゲームって言ってた・・・・・・・。」


 少しふら付きながら、亮介は無人の街を歩いていた。最初は自転車を創って移動しようとしたが、道路はガラスやがれきの破片が散乱し、徒歩で移動するしかなかった。

 どこまで歩いて行っても人がいる気配はしない。ここに捕らわれてまだ十数分しか経っていないというのに、亮介は孤独と不安に襲われ始めていた。


『―――――お久しぶりです。』

「―――――――!?」


 不意に知っている声が聞こえてきた。

 だが、横を振り向いていても誰もいない。


『ここです。』

「うわっ!」


 横ではなく上を見ると、そこには天使の姿をしたアベルが飛んでいた。


『何だか、最初に会った時と同じ展開になってませんか?』

「―――――――あれ?」


 亮介は首を傾げるが、すぐに頭を切り替えた。


「あの!さっきのって――――――!」

『ええ、私が皆さん(・・・)の精神をあの場に招待しました。本当はもっと早く招待するつもりでしたが、つい彼らのペースに流されてしまい―――――――――――』


 その後、アベルは亮介に数分前から開始したゲームの内容を説明していった。ただし、勇吾達に話した事とは別に、亮介を含めた覚醒者達も強制参加されている事も付け加えられた。


「む、無茶苦茶だ!」

『分かっています。あなた方にとってこのゲームは何のメリットもありません。そもそもこれは、私が始めた余興のようなものですので、あなた方には観戦していただければ十分ですが、参加していただいても構いません。』

「――――――そう、ですか・・・・・。」

『―――――――気付いてないようですね、自分の事について?』

「―――――――――!?」


 アベルの指摘に、亮介は唖然とした。

 まるで顔を見ただけで亮介の心を見透かすかのように話すアベルに対し、亮介は返す言葉もなかった。


「ですが、それは今すぐ知らなければいけない事ではありません。これから始まることを見ながら、ゆっくりと自分自身と向き合ってみるのもいいでしょう。」


 そう言うと、アベルは視線を亮介から空へ移し、そのまま上昇していった。

 そしてその直後、黒い何かがアベルに向かって飛んできた。


『来ましたか!』

「《黒翔突(こくしょうとつ)》!」


 布都御魂剣を前に突き出し、全身に闇を纏った勇吾がアベルに向かって突っ込んで来た。

 時速100kmを軽く越える勢いで突っ込むが、アベルの2m手前で障壁が発生し、そこに轟音とともに衝突する。勇吾は攻撃を妨げる障壁を力ずくで破ろうとするが、それをアベルは涼しい表情で見ていた。


『思っていたより早かったですね。ですが、正面からの突撃だけではゲームには勝てませんよ?』

「ああ、そうだろうな!」

『―――――――!!』


 勇吾が不適に微笑んだ直後、アベルの背後から数十本の閃光の矢が走ってきた。

 アベルは瞬時に前だけではなく、全方位に障壁を展開する。それと同時に、勇吾は後方へ飛び退き、その直後に、全ての閃光の矢が障壁に着弾していった。



   ドドドドドドドド―――――――――!!!!



 着弾と同時に、まるで閃光弾が弾けたかのように辺り一面が真っ白に染まった。

 地上にいた亮介は反射的に目を閉じ閃光に背を向ける。その時、動かした肩が何かにぶつかった。


「つかまっていろ!」

「ゆ、勇吾さん!?」


 ぶつかった相手は勇吾だった。

 勇吾は剣を持ってない方の手で亮介の胴体をしっかり掴むと、そのまま空へと飛び上がった。


「うわあ!!」

「慌てるな、しっかりつかまってろ!」


 いきなり足場がなくなり、体が空に投げ出されたかのような感覚に襲われ慌てる亮介を勇吾はしっかりと掴みながら飛び、その場から離れていった。





『噂に違わぬ威力、見事な技です。護龍良則君。』


 閃光が収まり、感嘆とした表情でアベルは離れた先からこちらを見ている良則に誉め言葉を贈った。

 アベルの視線の先、1km先の空中には両手に金色の模様を付けた白い籠手《龍皇の籠手》を装着した良則の姿があった。


『―――――少し誤解があったかもしれませんが、彼ら(・・)には手は出しません。かわりに、あなた方には少々本気を出させてもらいます。』


 そう言うと、アベルは障壁を解除し、背中からは得た18枚の羽を羽ばたかせ、自身の周囲に数多の羽根を舞い散らせ始めた。


『――――――《元素の羽根(エレメントフェザー)》――――――』


 アベルが唱えると同時に、周囲を舞う羽根は何色にも別れて輝きだしその形を変えていく。赤色に輝いた羽根は炎、青色に輝いた羽根は水、緑色に輝いた羽根は風、茶色に輝いた羽根は土、黄色に輝いた羽根は雷、水色に輝いた羽根は氷へと、あらゆる属性に瞬く間に変わってゆき、それらはアベルを中心とした何重もの円環を描く様に並んだいった。



『――――――《元素の鉄槌(エレメントジャッジメント)》――――――』



 その詠唱の直後、円環状に並んだ炎や水、風などは一斉に良則に向かって天災のごとく襲い掛かる。

 炎は劫火の如く、水は洪水の如く、風は竜巻の如く、土は土砂崩れの如く良則に向かっていく。その中で一番早かったのは百雷とも言うべき雷の嵐だった。

 雷の速度は秒速200kmにも及ぶ。アベルの詠唱が唱えられると同時に、雷の嵐は瞬く間もなく、その全てが良則に直撃し多様に見えた。


『―――――――!』


 その瞬間を、0.1秒にも満たない時間の光景をアベルは見逃さなかった。

 雷は良則に直撃する事はなく、良則の10m以上手前に現れた漆黒の壁にひとつ残らず飲み込まれていったのだ。

 そして漆黒の壁がすぐに消え、次々に襲い掛かる劫火や洪水の嵐に対し、良則は両手の拳を白光を放ちながら構え、声を上げて拳をふるった。




「――――――《千を超える閃拳(サウザンド)》!!!」



 良則の拳が消えたように見えた瞬間、拳があった場所から夥しい白光の矢が放たれる。両手の拳に凝縮した光属性の魔力が、良則の純粋な体術による拳撃により、まるで機関銃(マシンガン)の弾丸のように放たれたそれは、1秒にも満たない間に千を超えるかのような夥しい数だった。

 良則の拳から放たれたそれは、白い軌跡を残しながら、まるで光の矢、光の流星のようにアベルの放った劫火や竜巻の嵐と激突する。





     ドゴオ――――――――――――――――――ン!!!!!





 万雷のごとき轟音とともに、原爆やハルマゲドンを連想させるかのような大爆発が起きた。




――――――――制限時間 残り49分







・良則もアベルも戦闘力は規格外です。その気になれば、1人で地球の軍隊全てを壊滅させることだってできます。まあ、今回はどちらもそこまで本気は出さないかもしれませんね。

・また長くなってきた第6章青の賛美者編、今週中に終われるように頑張ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ