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第458話 悪魔ビフロンス

流石に1年以上更新停止は避けたかったので、短いですが最新話を上げます。

短いけど。

――????――


「……」


 冷静になっていく勇吾は思考を巡らせていく。

 思えば最初から違和感があった。

 何故、ペリクリス=サルマントはこの状況で自分の前に現れたのか。

 分身体と言ったが戦争の最中に一個人相手に力を削ぐ行為をするほど酔狂なのか。

 《盟主》の加護が有れば消耗を気にせず複数の分身体を生み出す事も余裕かもしれないが、奴ほどの強者()()()()()()()()するだろうか。

 それに、()()()()()()()()()()()()()。まるで何かを隠しているかのように。

 剣技だけで圧倒できるなら、手っ取り早く自分を殺せているのではないいか。


「……」

「――――暢気に考え事か?」


 ペリクリスの剣が勇吾の喉元を狙う。

 相変わらず勇吾が反応するよりも早い一撃を全身から魔力を放出する事で強引に避ける。


(……()()()()、か)


 それは殆ど直感に近いものだった。

 大抵の者ならばこの一方的に押されている状況を見てその考えに至る事は無い。そもそも疑念すら抱く余裕すら無いだろう。

 そうして、多くの者達は()()()()()のだ。


(ここは俺の勘に賭ける、か!!)


 勇吾の顔に笑みが浮かぶ。

 剣を握る力が上がり、迫り来る斬撃の嵐に向かって飛び込んでいった。


「捨て身か」


 それを見たペリクリスは表情を変えない。

 一切の動揺を見せる事無く一言呟くと、飛び込んでくる勇吾に向けて無慈悲の一閃を放ち、一本の軌跡が勇吾の首を横に奔った。

 勇吾の首が飛ぶ――――そう思われた。



―――――《破幻ノ太刀(はげんのたち)虚斬(うつろぎ)り》



 その直後、彼らの間で暴風が吹き荒れ、同時に周囲の景色が歪み始めた。

 間合いに踏み込んできた勇吾の首を斬りおとしたかのように見えたペリクリスの姿は、まるで風に当てられた煙の如く消滅していったのだった。

 そして暴風は更に吹き荒れ一帯を飲み込んでいく。



























『………参考マデニ、何故バレタノカ教エテ貰エルカ?』



 暴風が止み、其処にはペリクリスの姿は無く、代わりに辛うじて人型を取っている黒い炎の塊が立っており、その背後には片膝を付いた灰装束の剣士の姿があった。

 剣士の男は信じられないと言う表情で炎の塊と対峙する()()()()()を睨む。


「ハァハァ…………な、何故だっ!?」

『フム。我ガ契約者モ知リタイヨウダ。答エテクレルカ。人デアリナガラ人ノ域ヲ越エシ強者ヨ?』


 1人興奮する剣士の男――――自らの契約者の共感する素振りをしながら訊ねるが、勇吾には相手が聞くまでも無く理解しているように見えた。


「……極めてよく出来た幻術(・・)だった。だが、騙すならもっと化ける相手を選ぶべきだったな。そもそも、あの設定(・・)にも無理があったそれだけだ」


 そう、先程まで戦っていた『神話狩り』ペリクリスは目の前の2人(?)が生み出した幻だった。幻と言っても斬られれば痛みもあれば傷も出来る。剣技も寸分違わず本物と同じだった。全身から放たれる覇気も、口から出る声の重みも全て勇吾の知るペリクリス=サルマントと全く同じだった。

 とても高度な幻術だった。状況次第では見破る事は至難の業だっただろう。だからこそ、今回勇吾は気付く事が出来た。


『――――ダソウダゾ。契約者ヨ。《盟主》ノ加護ヲ得テ慢心スルカラコソ失敗スルノダ。ソモソモアノ化物ガ剣術ダケデ戦ウナド有リ得ヌ事ダ。仮ニ()()()()()ナラ――――()()()()()()()()


 人型はこの場に居る全員が理解できる内容で契約者に指摘する。

 先程まで彼らが扮していた「幻のペリクリス=サルマント」は確かに圧倒的だった。にも拘らず、戦闘に時間を掛け過ぎ、加えて戦い方も剣術のみで、他には魔法や能力を使う素振りが一切無かった。

 最初は分身ゆえの制約があるのかと思われたが勇吾は即座にその考えを振り払った。それは有り得ないのだ。

 相手は『神話狩り』の二つ名を冠する『創世の蛇』の最高幹部にして最高戦力、二つ名の通り、神話の存在を数多く、必然的にそれらから奪った能力(けんのう)の多くを所有している。例えば超高性能な分身を生み出す能力など。

 その様な者が欠陥のある分身しか出せないなど有り得ない。

 そして時間を掛けて戦う事などまず無い。可能なら瞬殺しているだろう。実際に勇吾は本物のペリクリスの戦う姿を目撃している、

 故に偽者であると勇吾は確信したのだ。

 絶対強者を扮した故の敵のミスであった。


「……ッ!この状況で説教か!」

『ヤレヤレ、丁寧ニ事実ヲ告ゲテイルダケナノダガナ』


 まるで勇吾の存在を忘れているように呆れるような所作をする人型だったが、その実、人型の意識が契約者ではなく勇吾に集中していた。

 その事には勇吾も気付いており、油断する事無く何時でも踏み込める体勢を取り続ける。


(………この感じは、ソロモンの悪魔だな。《盟主》の影響を受けているのか、今までのより遥かに力が増しているな)


 勇吾は人型の炎の正体を覗いて視た。


【名前】ビフロンス

【年齢】7801  【種族】悪魔

【職業】貴族 眷属  【クラス】《盟主》の眷属

【属性】闇 火

【魔力】6,972,000/7,600,000

【状態】眷属化(*サマエル)

【能力】攻撃魔法(LvMAX) 防御魔法(LvMAX) 補助魔法(LvMAX) 特殊魔法(LvMAX) 悪魔呪術(LvMAX) 古代幻影術(LvMAX) 古代死霊術(LvMAX) 恐怖ノ虚像 完全ナル模倣(パーフェクトフェイク) etc

【加護・補正】物理攻撃無効 魔法耐性(LvMAX) 精神耐性(LvMAX) 全通常属性耐性(LvMAX) 全状態異常無効化 形無き者 古の詐欺師 死霊を愛でる者 契約者殺し 天使殺し ソロモンの悪魔 偽神の眷属 堕天使サマエルの加護(+5)



(やはり、ソロモンの悪魔(ビフロンス)か。異様に強いのは《盟主》の眷属になった影響か。それに本来ある筈の《魔王の加護》が無い。どの道厄介なのは変わりないが)


 人型の炎の正体は『ソロモン王の悪魔』だった。

 序列46位の地獄の伯爵、魔術や死霊術を操る者達に信奉されてきた。

 幻影を生み出す事が得意とされ、召喚者の望む通りの幻影を生み出すが召喚者自身も幻影に飲まれてしまう油断できない存在である。

 先程まで勇吾が戦っていたペリクリスの幻は全てこのビフロンスの仕業であろう。しかし、ビフロンスの力は明らかに今まで戦ってきた悪魔の中でも突出しており、勇吾は《盟主》が復活し現世に顕現した影響を受けているのだと判断した。


(気になるのは《偽神(・・)の眷属》だが、今は気にしている場合じゃないな!)

『ム!』


 隙が生まれるのを待つのは無駄と、勇吾は正面から踏み込む。

 それに対し、悪魔(ビフロンス)は微かに驚いたような反応を見せるが、それと同時に全身を霧散させて勇吾の攻撃を避ける。


(――――そうするだろうな!)


 勇吾は動揺する事無く動き続ける。

 ()()()()()()()()()姿()をしていればそうするだろうと、そしてその場合の次の反応――――それを読んだ上で勇吾は第二撃を放つ。


「――――焔祓……」



――――死ヘノ誘イ(インデュース・デス)



 勇吾が剣を振るのと同時に、見えざる魔手が彼の心臓に迫っていた。

 ()()()をする勇吾に何の感情も向けない悪魔――――ビフロンスは呪力の籠った手で心臓を抉り取る。即死の呪術で相手心臓と共に魂を抉り取り、残された肉体を不浄の存在へと変えて己の眷属に変える、悪魔ビフロンスの十八番が発動した。






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