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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第16章 創世の蛇編
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第442話 エピローグ2

――凱龍王国 海門 天雲家――


 ロトは笑顔のまま外に飛び出し、直後に固まった。


 勢いよく開けられた扉の向こうに立っていたのは、まだ青年と呼べるほどの若い偉丈夫だった。


 ロングコートを見に纏ったその男の首からは銀色のペンダントが下げられており、その形はロトが今も身に(・・・・・・・)付けている物(・・・・・・)と寸分違わなかった。


 その静かな黒い瞳は真っ直ぐとロトの方へ向けられていた。



「―――――ロト」



 その一言で十分だった。


 たった一言、ロトの名前を呼ぶその一言だけで男の正体を証明するのに十分だった。


 少なくとも、目を丸くして固まっている息子(ロト)にとっては。



「………お父さんっ!!」



 涙声を上げながらロトは父親(シド)の胸に飛び込み、シドはそれをしっかりと受け止めて抱きしめた。もう手放さないという思いを込め、優しく力強く。



「ロト……!」



 嗚咽が混じりそうになるのを必死に耐えながら息子(ロト)をギュッと抱きしめるシドはその温もりを記憶だけでなく魂にも刻み込んでいく。決して失ってはいけないこの温もりを、自身が死んでも決して忘れる事が無い様にと。


 最後に見た時よりも大きくなった息子の成長をその両腕でしっかりと受け止めるシドの顔は嘗て無いほど穏やかな表情になっており、彼がどれ程までに息子を愛しているのかを表していた。



「……お父さん、お帰りなさい!」



 ずっと溜め込んでいたのだろう。


 微かな記憶にしかない、写真越しでしか知らない父親と再会できたことでロトの涙腺は決壊、大粒の涙を沢山零し続けながら父親(シド)の胸に顔を鎮める。ずっと求め続けてきた親の温もりに包み込まれながら。


 互いに思い求め続けてきた親子は雪の降る冬空の下で抱擁を続けていった。冷たい筈の冬の夜風は、不思議と温かく彼らを包み込んでいた。



「……良かったな、ロト」



 再会を果たした親子の様子を、少し離れた場所から勇吾は見ていた。


 《盟主》の悪意によって引き離された親子はこの時を以って再会を果たした。


 2人の父子の中で止まっていた時計は再び動きだし始めたのだ。


 悪意によって齎された悲劇がまた一つ救われた。


 そして、あの焦土の街での約束がようやく果たされたのだった。



「お互いに思い合っているなら、一緒になった方が良い。俺の独り善がりかもしれないが、これからは一緒に暮らして幸せな思い出を作っていけばいい。ロト、お前にはこれから沢山の幸せが待ってるん――――」


「何カッコつけてるのよ!このマセガキ!」


「痛っ!?」



 安堵と寂しさの混じった顔でアカツキ親子を見守っていた勇吾の横腹に手痛い一撃が入る。


 完全な不意打ちを受けた勇吾が慌てて体勢を取り直すと、目の前には彼の2人の姉たちが立っていた。



「姉ちゃん……」


「姉ちゃんじゃない!何、カッコつけて物陰に隠れながら自分の家を覗き見してるのよ!バ……誰かに見られたら通報されるわよ!」


「ご、ゴメンなさい!」



 次姉の鈴音に説教され、勇吾はほぼ条件反射に謝罪する。


 その直後、勇吾の頭を鷲掴みしていた手が放され、そのまま勇吾の頭を撫で回していく。



「……よくやったわね。流石、私達の自慢の弟よ」


「ね、姉ちゃん!?」


「姉さんもそう思うでしょ?」


「ええ」



 鈴音は勇吾をギュッと抱きしめて自分の胸に沈め、隣にいる姉も妹の思いに同意しながら弟の頭を優しく撫で回していった。



「本当に、ロトくんのお父さんを連れてきたのね。約束、ちゃんと守ってあげたのね?」


「う、うん」



 若干パワフルな鈴音とお淑やかな汐南のに撫でられ勇吾は全身が汗だくになりそうなほど温まっていった。


 2人の姉は知っていた。自分達の弟がどんな覚悟でロトの父親を捜していたかと云う事を。どれ程までに家族の絆を大事にしているかと云う事を。



「「ありがとう。勇吾」」



 2人の姉は口をそろえて勇吾に感謝の言葉を贈った。


 彼女達にとってもロトは大事な家族、愛するもう1人の弟なのだ。その弟に最高のクリスマスプレゼントを持ってきてくれた弟に、精一杯の感謝の気持ちを伝えたのだった。



(感謝したいのは俺の方だよ。姉ちゃん……)



 そして勇吾もまた、内心では2人の姉に感謝をしていた。


 異世界から勝手に連れてきたロトとアリアの2人を快く受け入れてくれたこと。自分が家を留守にしている間も家族の一員として接していてくれたこと。手掛かりが殆ど無い状態の中で、ロトの父であるシド=アカツキを捜し当てる事を信じて待っていてくれたことを。人間を辞めた(・・・・・・)ことに気付いて(・・・・・・・)いながらも変わらずに接してくれることに。


 自分は最高の姉達に恵まれたと、勇吾は久しぶりの家族の温もりを感じながら思った。



「さあ、勇吾も中に入りなさい。お母さんが勇吾の分も御馳走を用意してくれているから。ロトくんのお父さんにも中に入って貰わなきゃね?」


「うん。そうだな」



 まるで幼い頃を思い出すように、天雲家の姉弟は手を繋ぎながら我が家へと戻っていった。ちなみに、汐南と鈴音の婚約者達は空気を呼んで家の中で待機していた。置いてけぼりにされがちだが出来る男たちなのである。


 余談だが、この後パーティを再開させた天雲家は今回の事のあらましを少し酒の入ったシドの口から知る事になるのだが、その想像の域を超えた内容に絶句するのだった。



「はああああああああああ―――――!?《真なる眷属(オリジン)》とサシで戦った挙句に一回死んで龍神様に『凱龍王』を召喚~~~~~~!?勇吾、あんた一体何やってるのよおおおおおおおおお!!!!」



 勇吾の家族が爆発したのは言うまでも無かった。


 絶望的に強い相手と戦った挙句に一度は死に、運良く蘇生された後も『黒の龍神』や凱龍王国の建国王であり王国民の始祖である『凱龍王』を召喚して力を借りた等、少なくとも凱龍王国内では非常識の極みなのである。


 そもそも、幾ら神々と契約して共闘していたとはいえ、その気になれば個人で世界の1つを滅ぼせる敵に対して討伐軍を編成せず、神々や黒王を除けば勇吾1人だけで挑んだも同然である。蒼空を始めとする助けが無ければ本当に危なかった。



「いや、確かに結果的には拙かったけど、ちゃんと作戦を練って……」


「その結果死んだんでしょう!勇吾、床に正座!!」


「は、はいぃぃぃ!!」



 結局、最後の最後で家族に心配をかけてしまった勇吾は他の皆が美味しそうにケーキを食べている間、リビングの隅で正座を組まされたのだった。


 完全に納得した訳ではなかったが、勇吾も自分が相当な無茶をしたという自覚はあったので甘んじで罰を受けるのだった。


 この約1時間後、国営テレビを通じて今回の一連の事件のあらましが報道され、勇吾達の名前も凱龍王国だけでなくこの世界の全ての国家に知れ渡ることとなるのだが、それはまた別の話である。



(くっ……あのバカが言っていたのは、この事だったのか……!)



 反省させられている最中、勇吾は数時間前にバカな幼馴染達に告げられて言葉の意味を思い起こしていた。







----------------------------------


――回想――


「――――言っている意味が全然解らないぞ?」


「『勇吾はAHOなの?』」


「……」


『ちょ!勇吾、落ち着け!それ以上は止めろ!血濡れのクリスマスになっちまう!!』



 今にも丈と銀洸を刀の錆に変えてしまいそうな勇吾をライが抑え、その間に他の面々が2人に痛い一撃を与えて軽く説教をする。そんな何時もの光景があった後、バカ2人に指を刺された者の片割れであるシドは怪訝な顔をしながら丈に先程の言葉の真意を尋ねた。



「え!ロトパパもAH……」


『『『……』』』


「OK!OK!一から十まで説明するYO!」



 周囲から鋭い視線を浴びせられ、丈は両手を上げながら先程の言葉「大変なのはこれから」の意味を話し始めた。銀洸は死んだフリをしていた。



「YOUた……ロトパパ達はこの後、《ガーデン》で皆と合流して後始末をしたり報告したりした後はどうする?まあ、当然家族の下には帰るんだよな?」


「……ああ」


『そうだな』



 丈の問いに2人は肯いて答える。


 今回の戦闘は一先ず終わったが、この後は全員と合流して結果などを報告、必要な情報を共有し合いながら急いで後始末を開始する事になる。今までとは違い、今回の事件はこの世界の多くの人々に目撃され、最早隠蔽は不可能に近いからだ。


 日本に出張所を置いてある冒険者ギルドは勿論のこと、良則や丈を通じて凱龍王国にも詳細報告をしなければならない。あとこれは今後の状況にもよるが、この世界の各国政府や専門機関(・・・・)にも情報提供を行って事態の収束に協力を要請しなければならないが、これは勇吾達よりも専門の機関が動く可能性が高い。


 幸か不幸か日本は今回の件での死傷者は他国と比べて少ないので混乱も少ないが他国は異なる。欧州やアジアの各地では『鬼神』の一派による死者の数が凄まじく、運の良かった一部は龍族によって治癒や蘇生を受けて助かったが、それも全体の死者の数は4桁を超えていた。それらの処理だけでも数ヶ月、長ければ数年の歳月が費やされるのは間違いない。


 これまでの様な一都市レベルの事件ならば強引に情報操作や記憶操作で有耶無耶に処理する事も出来たが、此処までの規模となればそれも難しい。


 無論、その気になれば60億人以上の人間全ての記憶を(*一部を除く)操作することも不可能ではないのだが、死者が生き返る訳でもなく、遺族は意味も分からず身内を失った悲しみに沈む事になり、そういった意味でも法的にも倫理的にも異世界では禁じられているのでまずそれはあり得ない。よって隠蔽は実質不可能なのだ。


 これらの事を考えるだけでも頭が痛くなるのだが、少なくとも今日中にこれらの事後処理を勇吾達だけで行う訳でも無いので彼らにも多少は自由な時間は残っている。聖夜を家族と共に過ごす程度には。


 シドもヴェントルも内心では今すぐにでも家族の下に帰りたかった。シドは今直ぐにでも一人息子のロトの下に駆け付けたい衝動を抑え込んでおり、ヴェントルも無事に救助された瑛介は勿論のこと、家に残してきた妻子に会いたくてたまらなあった。


 その心情を見透かしているのか、相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべながらビシッと丈は2人に指を突き付けた。



「だが、しかし!帰った処でお涙頂戴の大感動な家族の再会は待っていないのである!!」


『どーん♪』


「『……は?』」



 丈の背後で謎の効果音とともに爆発が発生する。



「何年も行方不明だったパパが聖夜(クリスマスイブ)にサプライズ帰宅!ドラマだったら皆号泣のシーンだけど、現実的に考えて、本当にそんな展開がロトパパ達に待っていると思う~?」


「……バカ、何を言ってるんだ?」


「勇吾~想像してみなよ~!死んだと思っていた父親が突然帰ってきて、「ゴメン、死んだの嘘でした」って言って帰ってきたとして……泣ける?」


「……」



 丈の質問に勇吾は答えなかった。


 勇吾の父親は『神話狩り』によって彼が幼い頃に殺されているが、それがもし嘘で、実は五体満足で生きていて突然笑顔で帰ってきたらどうなるか。ドラマのようにいきなり泣いて飛びつくか。いや、まずは驚愕のあまりに呆然と立ち尽くすだろう。少なくとドラマの様な感動的シーンにはならないと勇吾は思った。


 一方、勇吾の反応を見て動揺したのか、シドとヴェントルの死んだフリコンビは顔に焦りを見せ始めました。



「ロトたん、お母さんが死んで1人ボッチになったんだよ?物心がつき始めたばかりの男の子にスラムでサバイバルって、無理ゲーじゃね?」


「……」



 改めて丈に指摘され、シドの顔に冷たい汗が浮かび上がる。


 息子の現状は独自のルートでも知ってはいたが、直に見てきた者の口から聞かされることで息子の境遇がどれ程のものか理解されたのだ。



「瑛介、家計を支える為に年齢を偽称してバイトを掛け持ちしてしてたぞ?天使(笑)から貰ったチートスキルもバイトの数を増やすのに使っていたし、食べ盛りの弟妹の為にかなり青春☆を削っていたぞ?あと、人間の人生捨てちゃったぞ♪」


『……』


「あと、奥さんも言い寄る男が複数いたにも拘らず、再婚もせずに女手一つで瑛介達を育ててたぞ?」


『………………』


「そうそう、小学校の運動会の借り物競争で“お父さん”て書かれた紙を引いて泣き顔で立つ尽くしたという事があったってさ!」


『…………………………』



 ヴェントルの全身に大量の汗が流れ落ちる。


 ヴェントルが死を偽装して姿を暗ました当時、瑛介は10歳、他の弟妹もまだ幼く末っ子に至っては父親の記憶自体があやふやな齢だった。


 父親が居ないという理由だけで周囲から心無い目で見られる子供は決して少なくは無い、特に学校の行事では児童が父親と参加するものも多く、他の子供達が父親と仲良く参加する中で瑛介たち兄弟は……ヴェントルは今更ではあるが嫌な想像を思い浮かべてしまった。



「あ、ロトたんも父兄参観の日に――――」


「……………」


「おい、その辺で止めろ!2人とも固まってるぞ!」


「え~?でも、普通に考えて残された家族は苦労が一杯!ストレスも年中大漁だよ~。最悪、恨まれて出会った途端にブスリ!もあるんじゃね?」


「ねえよ!ロトはそんな子じゃない!」


『うわ!ブラコ~ン☆』


『確かに刺される動機には十分ね。私達の業界でも無くは無いし?』


「ジルニトラも余計な事を言うな!2人が完全に固まってるだろ!」



 勇吾が指差した先では、つい先程まで勇敢に戦ってきた最強コンビがこの世の終わりの様な表情をしたまま石像のように固まっていた。



「え~、でも~、楽観的な気持ちでいってしまうよりマシじゃん!勘当の再会のつもりが、直後に離婚とか勘当とかされたら目も当てられないじゃ~ん♪」


『それはそれで面白そうだけどな♪』


『でしょ~?』


「くぉら!」


「それに勇吾は知らないの?この前瑛介の家に侵…遊びに行ったらさ~、今に何故かメリケンサック(・・・・・・・)が置いてあったんだよね~。誰が、誰に使うつもりなんだろうね~♪」


「……本当(マジ)で?」


「『本当(マジ)☆』」



 まさかの新事実に勇吾も目を丸くする。


 どうやら瑛介の母親――――ヴェントルの妻は夫の帰宅に備えて色々と準備を整えているようだった。伊達に龍王の妻ではないようだ。



「あと、ロトたんも……」


「ロトもメリケンサック!?」


『勇吾、流石にそれは無い。少し落ち着け』


『でも見てみた~い♪』



 勇吾は可愛い義弟がメリケンサックを付けて父親(シド)を殴る光景を想像してしまう。実現したら誰かが動画配信しそうだ。



「サンタさんに手紙で「クリスマスにお父さんください」って書いてたよん♪あれ、どういう意味かな?生き別れのパパンに帰ってきてほしいの?新しいパパンがほしいの?勇吾はどう思う?」


「……お前、何でそこまで詳しいんだ?また覗きか?」


「『Yes!』」



 バカ共は殴られた。


 ちなみに盗撮もしているので普通に有罪(ギルティ)である。



「……」



 シドは真っ白になっていた。



「それと、瑛介の弟妹ってパパンの顔を覚えてるのか怪しくね?普通に帰っても知らないおじさんか、下手したら不審者扱いされて通報じゃね?」


『……』



 ヴェントルも真っ白になった。


 自覚があるのだろう。失踪当時、まだ幼かった下の子供達が自分の事を覚えている自信は無い様だ。可愛い子供達に「おじさん、誰?」と言われる場面を想像したのか、今にも死にそうな顔をしていた。



「家族だから何でも許されるなんて幻想だよな~♪」


『傲慢~♪』


「『『『お前らが言うな!』』』」



 笑いながら語る丈と銀洸に勇吾達の雷が落ちるも、当人達は相変わらず懲りるそぶりも見せずにシドとヴェントルを精神的に追い詰めていった。


 勇吾達は不安を煽る2人の口を止めようとするが、その一方で彼らの言っている事を一切否定することは無かった。皆、内心では「有り得る」と納得しているのだ。



「ねえ、手ぶらで帰るの?今夜は聖夜(イブ)なのに?世界の子供達はパパンからプレゼント貰うのを楽しみにしているのに?良いのかな~純粋無垢な子供心をこれ以上失望のどん底に落としちゃって~?」


『ドロドロ?昼ドラ的なドロドロ展開?』


「『どうする?ねえねえ、どうする~~~?』」



 ウザかった。


 バカコンビは本当にウザかった。


 しかし、言っている事には一理以上のものが有ったので結果から言えばシドとヴェントルはバカ共の前に折れてしまった。



「な!この後が一番大変だっただろ?」


「……お前らが大変にしたんだろ。クリスマスプレゼントの要望リストとか高く売りつけやがって……来るのが遅れたのはソレのせいか?」


「『~♪』」



 何時の間にアンケートを取っていたのか、丈と銀洸は意気消沈のシドとヴェントルに彼らの子供達がクリスマスに欲しがっている希望リストをボッタクリ価格で売りつけて懐をウハウハにした。仮にも一大国の王族と龍王なのに、やっている事は悪辣な詐欺師である。


 勇吾以下、その場に居合わせた一同は2人に対して憐憫の眼差しを送った。



「――――で、勇吾はこの後どうするの?曾お祖母ちゃんの家でレッツパーティ?」


「いや、京都の方へは行かない」


「え~、いいの~?きっと、曾孫が来るのを待ってるぞ?京都の老舗菓子店の総力を結集したクリスマススイーツが待ってるのに~!」


「そっちもチェック済みかよ!」


「勇吾は大変だな!実家の方もあるし!」


「……本当に他人事だな!まあ、実家の方には俺も行くけど。流石に俺も行った方がロトも混乱が少なくて済むだろうし」


義兄弟愛(ブラコン)、御馳走様☆」


「やかましい」


「けど、勇吾も勇吾で大変だよ~」


「……は?どういう……」


「『秘密♪』」



 丈と銀洸は不敵な笑みを勇吾に向ける。


 この時は理解できなかったバカ共の意味深な言葉の意味を、数時間後に勇吾は身を以って知ることとなる。









------------------------------


「勇吾、反省!」


「くぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「お父さん、お兄ちゃんは何で怒られてるの?」


「……ロト、男には疑問に思っても聞いてはいけないものがあるんだ。だから、そっとしてあげよう」


「?」



 姉に正座され反省させられる勇吾と、その光景を首を傾げながら指差すロトと数時間前とは逆に憐憫の眼差しを送るシド、聖夜の天雲家は随分とカオスな様相を見せるのだった。


 余談ではあるが同時刻、能天気に実家に帰宅した某王族の少年は、待ち構えていた親類一同からフルボッコに遭い大絶叫するのだが、最早年中行事に等しい出来事だったので三流ゴシップ誌にも載る事は無かった。






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