第41話 奇跡の少女
・6章、思ったより難航しています。3章までは長くても順調に書けてたのですが・・・・。
・この辺りから登場人物が増えていきますが、誰がレギュラーになるかはまだ未定です。女の子は増やしていきたいですね。
――名古屋市 某住宅街――
勇吾と慎哉はある住宅街に来ていた。
あの後、馬鹿がなご〇んを食っている隙に、話し合いで班分けを行い、勇吾と慎哉、トレンツとリサ、良則と晴翔、ミレーナと琥太郎、そしてライと馬鹿の計5組に別れて調査に移った。馬鹿については、リスク承知でライに
丸投げである。
勇吾と慎哉は、神情報の地図に載ってあった、侵入者が最初に出没した町で調査を始めていた。調査と言っても、神情報は大雑把な位置情報のみで正確な位置までは分からなかったので、人目を避けながらの探知魔法による覚醒者探しがメインになっている。
「(――――《魔力探知》!)」
勇吾は周囲に聞こえない小声で詠唱をし、周囲一帯の魔力を探知した。
《魔力検知》――――――――補助魔法に属し、その名の通り使用者を中心に周囲の魔力を探知する魔法である。探知できる範囲や精度は、使用者の適正度や練度、使用魔力に比例し、今の勇吾の場合は最大で半径15km圏内ならほぼ全ての人間の魔力を探知する事ができる。ちなみに、本気の良則と馬鹿の場合、名古屋どころか日本全土を探知する事が可能である(しかも、数㎞圏内なら魔法なしでも可能)。しかし、今回のように正体の知れない敵がいる場合、無闇に広範囲検知すると相手に察知される恐れもある為、今回は侵入者の出没地点を中心に小範囲で探知していく事にしたのである。
「――――!いた!!」
「お、早速か!?」
半径1kmを探知した直後、勇吾は他の住民より明らかに強い魔力を持つ人間を見つけた。
「ああ、これは間違いなく覚醒者だな。魔力が1万を超えている。」
「マジで?覚醒して2日経ったかどうかだろ?」
「――――それも含めての調査だからな。それより、お前も自分で探知したらどうだ?使えるようになっただろ?」
「う・・・。俺は精々100mしか探知できないんだから意味ねえじゃん。」
「使わないと練度が上がらないと言ってるんだ。」
「ホ~~イ!」
慎哉は渋々探知を行う。慎哉の補助魔法の適正は人並み以上ではあるが、探知系でも魔力探知は苦手としていた。
適正レベルと言うのは、あくまで項目別の平均値みたいなもので、例えば慎哉のように補助魔法の適正がレベル2だとしても全ての補助魔法の適正がレベル2と言う訳でない。これは《ステータス》が慎哉の中の全ての補助魔法の適正レベルの平均値を出した訳であり、同じ補助魔法でも得手不得手があるのである。慎哉の場合、《追跡》や《生物探知》はレベル3クラスの適正があったが、逆に《魔力探知》は人並みレベルで得意ではないのである。
「あ、端っこにギリギリ引っ掛かった!マジででかいな!?」
「じゃあ行くぞ!」
そして2人は覚醒者(候補)のいる場所へと向かった。
ちなみに、現在の慎哉のステータスは以下のようになっている。
【名前】北守 慎哉
【年齢】15 【種族】人間
【職業】中学生(3年) 【クラス】冒険者見習い
【属性】メイン:氷 サブ:水 風
【魔力】247,500/251,000
【状態】正常
【能力】防御魔法(Lv1) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 氷術(Lv4) 水術(Lv2) 風術(Lv2) 剣術(Lv1) 体術(Lv3) 白狼の手甲鉤
【加護・補正】物理耐性(Lv1) 魔法耐性(Lv3) 白狼の加護
【開示設定】ON
現実時間の何倍も修業している甲斐もあり、魔力も大分上がっていた。《剣術(LV1)》、《特殊魔法(Lv1)》は琥太郎や晴翔に触発された結果新たに増えた能力である。
100m程歩き、一軒の住宅の前に辿り着く。
「―――目立った異常は見当たらないな。」
「―――2階の方か?」
慎哉は住宅の2階の方を見上げる。微かであるが、2階のとある窓から魔力が漏れているのが視て感じられたのだ。
「そのようだな。中にいるのは、1階に大人が1人、2階に子供が1人のようだな。」
「そこまで分かるのか?」
「これは経験だな。気配にも個性があるから、大体の年齢位ならお前も分かるようになる。」
「お~~~!なんかカッコいいな?」
勇吾はもう一度2階の方を探知する。間違いなく、あそこに覚醒者がいると確信した。
「慎哉、ここの住人について調べるぞ。」
「おう!」
勇吾は焦らず、慎重に調査を進めていった。
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――名古屋市内 某病院――
同じ頃、良則と晴翔はとある病院に来ていた。
良則の規格外の探知のお陰で、覚醒者の正確な位置はすぐに分かった。
「けど、本当にゴメン。僕達の問題に巻き込んじゃって。」
「気にしてねえよ。こう言うことに関わるのが分かって来てるんだからよ。」
そう言うと、晴翔は自分が琥太郎と共に覚醒者になった時の事を思い出した。
あの日、晴翔が入院して目が覚め勇吾達が見舞いに来た時の事、2人は勇吾と黒王から大体の事情を聞き、自分達が一般人ではなくなった事を知った。最初は呆然としたが、次第に勇吾達のいる世界に惹かれていった。
その後、家を馬鹿に改造される事件を経て、最初は魔力の暴発を防止する為の基本を習う事になった。
当初は軽いノリで始めたが、晴翔はすぐに夢中になり、今では日常の多くをこちら側にいる事が多くなっている。魔法限定ではあるが、晴翔もほぼチートに近く、基本魔法も1時間で全部使えるようになり、魔法の適正も、最初はレベル2だった《補助魔法》とレベル3の《特殊魔法》も何故かレベル4にまで上がる事態となった。これは、後天的に上がるケースのひとつで、よくある事だと勇吾から聞いた。
魔力の上がるペースもかなり早く、その差は僅かだが、既に慎哉を越える程の量となっていた。
(考えてみれば、あんなに夢中になった事ってなかったな・・・。)
受験勉強ばかりしていた頃と違い、勇吾達は(馬鹿はいるが)みんなイイ人達ばかりだった事もあり、何より琥太郎と一緒にやり直そうと誓っていた晴翔は彼らと共に行動する事を決意するのに時間はかからなかった。
「じゃあ、看護師さんから聞き込みをしていこう。」
「あ、ああ!」
良則の声で意識を戻し、晴翔は良則と共に病院の中へはいっていった。
なお、今日の時点での晴翔のステータスは以下の通りである。
【名前】神宮 晴翔
【年齢】16 【種族】人間
【職業】高校生(1年) 【クラス】見習い魔術師
【属性】メイン:雷 サブ:空 風 土 火 水 氷
【魔力】261,800/261,800
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv4) 防御魔法(Lv4) 補助魔法(LV4) 特殊魔法(Lv4) 槍術(Lv1) 体術(Lv1) 属性術(Lv1)
【加護・補正】魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv1) 麻痺耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv2) 空属性耐性(Lv1) 火属性耐性(Lv1) 雷神の加護
【開示設定】ON
「そうなのよ!治療法がまだないって、先生達も諦めていたのよ?それが一晩で歩けるようになるまで回復しちゃったのよ!」
「凄いですね!それって、テレビに投稿したら話題になるんじゃないですか?」
「そうそう!私もそう思うんだけど、仕事上、それはできないのよ!」
「守秘義務があるのよう。」と、三十路を過ぎた看護師は良則に話していった。
何人にも聞き込みを行うつもりでいたが、最初に良則がこの看護師に話しかけたら――良則の顔とオーラで――一発で情報を得る事が出来た。看護師は良則にうっとりしながら、最近この病院で起きた奇跡のような出来事について話していった。
話によると、事が発覚したのは昨日の早朝の出来事だったらしい。この病院は、中京地区でも有数の難病医療を行う病院で、事が起きた病棟も重度の――国指定のあるないに問わず――難病患者が何人も入院していたそうだ。
その中の1人、もうすぐ14歳になる少女もまた若くして病に苦しめられた患者の1人だった。彼女は幼少期は問題なく日常生活を送る事が出来たが、小学校に入学した頃から症状が現れ始めたという。
「――――最初はね、ちょっと転びやすかったり、息切れがし易かったりするだけのものだったのよ。」
「神経系の疾患ですか?」
「そう!あの頃は私もここに赴任したばかりだったからよく覚えているわ。最初の症状から半年位で症状が悪化していってね、8歳になる頃は1人で歩けなくなったのよ。今じゃ、筋力が低下して手足もほとんど動かせないし、機械のサポートなしじゃ呼吸も満足にできない状態だったのよ。」
「―――――それが、一晩で回復したんですか?」
「そうなの!あの子が立って歩いてた姿を見た時の担当医の顔がまだ頭から離れないのよう?」
何かを思い出したかのように笑いを零す看護師。
その後、他の(男性)看護師に見つかってしまい、話はそこまでとなった。
「で、その病室に行くのか?}
「うん、おそらくその患者さんが『覚醒者』だと思って間違いないよ。能力が覚醒した影響で持病が回復するケースは色んな世界で確認されているから。」
良則は確信した表情で答える。
2人は今、件の少女が入院している病室を目指していた。
「ハッキリした条件はまだ分かってないけど、潜在能力がかなり高かった・・・ああ、潜在能力っていうのは適正レベルと考えてくれていいよ。覚醒した時に現れる能力の中に適正レベル4以上のものがある人に多くあると統計上は出ているらしいよ。」
「ああ、そう言えば、俺も最近体調がいいな?」
自分にも似たようなことがあった事に気付く晴翔。
そして2人は問題の少女のいる病室に辿り着いた。
「――――誰?」
ドアを開けると、そこには痩せ細った少女がいた。
彼女は突然の来訪者に驚き最初は警戒するが、良則を見た途端、頬を紅く染めながら警戒を解いて行った。
「あ、あの・・・・・・・!」
「―――牧原美咲さんですね?」
「ハ、ハイ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
病室の少女、牧原美咲はあからさまに良則に一目惚れしていた。それを見ていた晴翔は「爆発しろ!」と心の中で叫びながら、2人の様子を見守っていった。
しばらく世間話が進むうち、彼女は一昨日の夜に起きた事も話し始めた。
「――――――青い死神?」
「あ、違うんです!死神ですかって聞いたら、『むしろ逆です。』って言ったんです!」
「――――逆?」
良則が訊き返すと、美咲は順を追って話していった。
あの夜、美咲以外誰もいない病室に現れた男は、ほとんど動かない彼女の手に自分の手を重ね、『祝福を――――』と呟くと、呼吸も苦しかったのが一瞬で楽になり、それどころか全身に力がみなぎる感覚がしたという。気づけば、全身に付けられた点滴の針や人工呼吸器などが全部外れ、無意識のうちに自力で起き上がれるようになった、と彼女は語った。
「体力はまだ戻ってないんですけど、少し位なら1人で歩けるようになったんです!」
「・・・・そのう、他に変わったところとかはなかったの?」
「・・・・他?」
美咲は言っている意味が分からないといった顔をしていた。
「(なあ、もしかして――――――)」
「(うん、自分が『覚醒者』になっている事に気付いていないみたい。このまま普通に暮らせるならそれに越した事はないけど、自覚なしだと危険に巻き込まれるリスクの方が高いと思う。特に最近はそういう事件が増えてるから――――――)」
「(教えた方が良いってことか。)」
「あのう・・・・・・・・?」
ヒソヒソと話す良則と晴翔の姿に美咲は僅かに不安を抱いた。
話が終わると、良則は真剣な表情で美咲と向き合った。
「――――牧原さん!」
「ハ、ハイ!!」
(―――告白かよ!?)
美咲に呼びかけ、それに緊張して答える美咲、知らない人が見れば確実に誤解を招く光景だった。
「これから少し驚く事になるけど大きな声を出さないでくれるかな?」
「ハ、ハイ!!」
(聞こえてないんじゃないのか?)
晴翔の勘は当たっており、美咲は真剣な表情の良則に心を奪われ言ってる事をハッキリ聞いてはいなかった。
そんな事など気づいてないのか、良則は「《ステータス》」と小声で呟いた。
「――――え!?」
「――――これって・・・・!?」
そのこに表示された内容に、良則も息を飲んだ。
【名前】牧原 美咲
【年齢】14 【種族】人間
【職業】中学生(2年) 【クラス】覚醒者
【属性】メイン:土 サブ:木 水
【魔力】7,400/7,400
【状態】筋力低下(弱) 体力低下(中) 呪い後遺症(微)
【能力】特殊魔法(Lv5) 体術(Lv4) 調合術(LV2) 病魔調伏
【加護・補正】魔法耐性(Lv1) 状態異常耐性(Lv2) 強健 医薬神少彦名の加護 疫病神の残滓
【開示設定】ON
「――――呪い!?」
「ハア、疫病神だぁ!?」
「えええええ!?」
3人の驚愕の声が病室中に響いた。
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同時刻―――――――――――
「確保だ―――――――――――!!!」
「わ――――――!!??何なんだお前らぁぁぁぁぁぁ!!!???」
良則と晴翔が美咲と会っていた頃、馬鹿はとある裏路地で1人の少年を追い掛け回していた。
意味も分からず追いかけられる少年、そこに、ビリッと何かが落ちてくる。
「グアッ―――――!!??」
「よし、今だ!!」
「ゲ~~~~~~ット!!」
全身が痺れて動けない少年を馬鹿は縄でグルグルと縛り上げた。
哀れな勤労少年は、馬鹿コンビの餌食となってしまったのだった。
――良則の補正――
【ハーレムの器】
・多くの異性に、自身の外面や内面の魅力が伝わりやすくなる。
・初対面の相手にでも好感度が凄く上がりやすい。
・複数の異性と一緒にいても嫌われる事はなくなる。
・一言で言うならフラグメーカー!!幼女だろうと老婆だろうとモテまくってしまう!同性からは爆発を望まれるが気にするな!これこそ男のロマンだ!!
・少彦名:外国から渡来した神と言う奇説もある神様です。いろんなご利益のある神様で、一般的には医薬や交易の神様として知られています。祀られている神社も多々あり、北海道から中国四国まで各地にあるそうです。




