第40話 創造魔法
・スサノオ様、機会があったら登場させたいです。しばらくは名前だけの人になります(笑)
【依頼名】『名古屋近辺の異変調査と解決』
【依頼主】名古屋の神一同 代表:素戔嗚尊
【募集期間】――
【募集人数】指名:天雲勇吾 他5名
【ランク】B
【内容】一昨日の晩に名古屋に何者かが侵入した。侵入者は名古屋を中心に十数ヶ所を移動、その各所で『覚醒者』が現れた事が確認された。その全てが稀有な能力者らしい。侵入者の正体と目的、および覚醒者の発生による影響の調査と解決を即時求める。なお、詳細情報は別添付。
「・・・・・・ここまでやるか。」
勇吾は引き攣った顔で呟いた。
あの脅迫同然のメールが着信されてすぐ、冒険者ギルドからの指名以来の連絡が来た。
まさかの神様軍団からの依頼である。
「神様って――――。」
呟いたのは琥太郎だった。
今の琥太郎の表情は、夢と現実のギャップの差を目の当りにしたような顔だった。無理もない、全国的に有名な神の1柱がこんなキャラだったのだから。
「神って時に残酷だよな~~~~。」
「お前は黙って食ってろ!!」
空気を読まない馬鹿の口にな〇やんをぶち込んだ。
勇吾は添付されている資料を見る。それは名古屋周辺の地図だった。そして、地図の複数のヶ所に×印がついており、そこが問題の『侵入者』が現れ、『覚醒者』が出現した場所である事が分かる。
「思ったより広範囲に散らばってるわね。」
「見た感じだと、住宅街とかに集中してるな。ま、考えてみれば当たり前だけどな。」
「うん、だけどこれだけじゃまだ情報不足だから―――――」
「――――直接、行って調べるしかないな。」
冒険者組は、馬鹿を除いて真剣に僅かな情報を分析していく。
「おお!何か探偵みたいだな!?」
「慣れてるって感じだよね?本職だから、当たり前なんだろうけど・・・・。」
「――――――こいつら、同年代だよな?」
残された馬鹿以外の3人は、各々に冒険者モードの勇吾達の感想を呟いて行った。
その後、やはり範囲が広いと言う事で何組かに別れて行動する事になった。
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――名古屋市某所 とある廃工場――
高岡亮介は近所の廃工場に来ていた。
ここは倒産してそのまま10年以上放置され、今では不法投棄物の溜まり場となっていた。使われなくなった家具や壊れた家電、中には廃車となったトラックまでもが投棄されている。警察や区役所の建てた投棄防止を訴える看板も意味をなさなかった。
山のように積まれた投棄物、その前に亮介は立っている。日曜の午後は隔週で進学塾に通っていたが、今週は休みだったので、親には適当に言い訳をしてここに来ていた。
「これ位あれば十分かな。」
山積みにされた投棄物を見上げながら呟いた。
一昨日の夜以降、亮介は時間があれば家の自室で様々な『実験』を行っていた。実験と言っても、実際は手に入れた『力』と『知識』の実践する事だった。
「――――《分解》!」
亮介が一言唱えると、投棄物の一部が光に包まれ、包まれた投棄物は一瞬で光の粒子に分解されて拡散する。
拡散した光は地面の上で幾つもの集合体に別れていった。
「ふう、分解完了!」
光が止むと、地面には幾つもの塊ができていた。
塊のサイズは様々で、小石サイズの物から大きい物ならドラム缶サイズの物まであった。
「鉄、銅、アルミニウム、マンガン、チタン・・・・・希少金属も少しだけ――――――」
亮介は地面に並べられた塊をひとつずつ確認していった。そのどれもが、不純物を含まない純粋な物質ばかりだった。
亮介は、魔法を使って不法投棄物を資源に還元したのである。だがこれは、彼が手に入れた『力』の一部でしかなかった。
「今日はこれ位でいいな。じゃあ、次は――――――」
亮介は空中を指でタッチする。すると、そこにPSが複数展開された。
PSには何かの写真や設計図が表示されていた。
「《創造》!」
直後、幾つかの塊の一部が光になって拡散し、亮介の足元でひとつに混ざって形成していく。
「よし、成功だ!」
光が止み、そこには1台のノートパソコン一式があった。
それはPSに表示された設計図や写真と寸分違わない完成度だった。本体にはしっかり某大手メーカーのロゴが入っている。
「やっぱりだ!材料と設計図をあらかじめ用意しておけば、魔力の消費も少なくて済むんだ!」
自信の仮説が証明され、亮介は喜びの声をあげた。
亮介の得た力、それは『創造魔法』と言うチートな能力だった。
読んで字の如く、これは何でも創造してしまう魔法である(ただし、生物は除く。)。魔力さえあれば、ネジから船まで創造でき、例えこの世界に無い物でもそれは可能だった。
だが、一見万能すぎるように見える創造魔法にも欠点がある。それは、創る物の難易度が高いほど魔力の消費が激しいことだ。まだ魔力が少ない亮介にとって、これは大きな難点だった。
しかし、その欠点も今の検証で一部が解消した。材料と設計図、どちらか一方でも揃っていれば、消費魔力は格段に下がるのだ。もちろん、これはあくまでこの世界にある物に限定されるが、今の亮介には十分だった。
「これで、大体は分かったな。」
正直な所、亮介は今の自分にまだ驚いていた。
あの夜、仮面の男と手を重ねた瞬間、亮介の中にいろんな知識や常識が流れ込んできた。それらの中には魔法、異世界の知識も含まれ、まるで初めから知っていたかのように理解できた。
それでも亮介は自分の変化に戸惑う事が多い。口調も無意識の内に少し変わってきた事もそのひとつだ。
「じゃあ、収納っと!」
亮介は持ってきたリュックを開けると、地面の上にあったノートパソコンや資材が中へと吸い込まれていった。これは、一昨日の内に創った、某長寿アニメ参考にした「四次元リュック」である。
仮面の男が呟いた『祝福』のせいなのか、亮介の初期魔力は―――この世界ではは多くても3000―――一万を越えていた。そして材料に既に持っていたリュックを使ったので、最初から便利な物を創造できた。
「取り敢えず、資材はこれ位でいいな。足りなくなったら、また来ればいいし。」
何分、ここにあるのは近所迷惑でしかない不法投棄物、多少無くなった処で困る人もいない。時間が経てばまた増えるので減ったこと自体気付く者もほとんどいないだろう。気づいたところで、おそらく住民は役所が処分したと思うだろうから問題ないと亮介は判断した。
(――――それにしても、やっぱり魔法って凄いなあ。異世界にも行けるといいんだけど。)
亮介は心の中で色々考えていた。
与えられた異世界の知識の中には、当然異世界の存在そのものに関する情報も含まれていた。そして、異世界への移動方法についても―――――――。
今の亮介の魔力では、異世界へ移動するには全然足りない。だが、何時かは行ってみたいと心から願う亮介だった。
亮介が家に帰宅すると、リビングで海外ドラマを観ていた母親がテレビを止めて彼の元へやってきた。
「ただいま。」
「お帰りなさい。問題集は買えたの?」
母親に訊かれ、亮介はリュックから書店のロゴが入った紙袋を取り出す。それは、廃工場に行く前に寄った書店で買ってきた問題集だった。
「うん、ちょうど1冊残ってたからギリギリ買えたよ。」
「そう、それは良かったわね。やっぱり人気の高い学校の問題集だからかしら、売れてるのね?」
「そうみたい。今度からはネットで注文した方がいいかもしれないよ?」
「分かったわ!今度からはお母さんが買っておくから、あなたは勉強に集中しなさいね?」
「ハイ。」
相変わらず、子供には勉強のみを押し付ける母親を適当にあしらい、亮介は自室へと向かった。
自室に入ると、そこは外見上は2日前とほぼ同じ部屋だった。だが、実際は亮介の創造魔法でいろいろ手が加えられていたりする。
「―――――よし!」
机の上に先程創ったノートパソコン一式を設置すると電源を入れた。その横に、頭の知識を元に創ったPSTを置いた。
どういう基準で与えられた知識なのかは不明だが、『そう言う物がある』と言う認識と一緒に与えられた知識の中に「PSTの設計図」も含まれていたのだ。
亮介は、ノートパソコンとPSTをUSBケーブルで接続する。そしてノートパソコンにPST内のデータを転送した。
(―――インストール完了、起動!)
ノートパソコンの画面には、『PST同期中』と表示され、PSによる作業をパソコンで代行できるようになったことを示していた。流石に、人前でPSを使用すれば嫌でも目立つが、ノートパソコンを介してなら問題なく使用できると思いついたのだ。
「これで一通り大丈夫かな。」
問題なく動作するのを確認し、開かれたウィンドウを全て閉じ、インターネット用のブラウザを開いていくつかの操作をする。そしてあるサイトに接続すると、いくつかのソフトをダウンロードしてそのままインストールを済ませた。
「じゃあ、ゲームスタート☆」
カチッと、マウスをクリックし、亮介は生まれて初めてのMMORPGを始めた。
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同時刻――――
「―――この辺りだな。」
亮介がネトゲを始めた頃、同じ町に勇吾と慎哉が到着していた。
・『創造魔法』、かなりチートな魔法ですがリスクなどもあります。まあ、魔力が沢山あれば関係ないものですが。『分解』は、創造魔法を構成する魔法の一部分を亮介が抜き取って創った魔法です。他にも、『精錬』『合成』などの魔法も創ってあります。
・感想お待ちしております。




