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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第6章 青の賛美者(イェグディエル)編
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第39話 神からの依頼(強制)

――《ガーデン》――


 それは、ある日曜日の出来事だった。


 きっかけは馬鹿の発言からだった。



「なあ、昼飯、ウナギ食いに行かねえ?俺の奢りで。」



 馬鹿はグルメ雑誌を読みながら唐突に言った。


 勇吾達は今、ガーデンの天雲邸(馬鹿命名)の修行棟で修行に明け暮れていた。勇吾は琥太郎と剣の修行、良則は慎哉と体術の修行、それ以外は魔法の修行をしている。最初は初心者の琥太郎と晴翔に基本をレクチャーしていったが、2人とも適正レベル(さいのう)が高かったのであっと言う間に終える事ができた。その過程で、琥太郎は剣術、晴翔は魔法に特化している事が判明した。


 慎哉は覚醒直後は魔法の適正はなかったが、勇吾の容赦ない修行で後天的に適正に目覚めたが、琥太郎は結局補助魔法の適正しか得られなかった。逆に晴翔は近接戦闘系の適正はほとんど得られず、魔法関係中心の適正となった。馬鹿の言葉を借りて言えば、琥太郎は「戦士(ファイター)系キャラ」、晴翔は「魔法使い(マジシャン)系キャラ」と言うことになる。ちなみに、慎哉は「盗賊(シーフ)系キャラ」と言われた。


 話は戻り、馬鹿の突然の提案に全員が修行の手を止める。現在、棟内の時間加速は解除されて現実世界と同じになっている。棟内には、現実時間を表示する時計と内部時間を表示する時計の2種類の時計が設置されており、前者の時計は正午近くを表示していた。



「どうしたんだ、唐突に?」


「ん~~~、今って夏じゃん?日本の夏と言ったらウナギだって祖父ちゃんが言ってたのを思いだしちまってよう、そしたら無性に食いたくなっちまったんだよ!」


「ああ、確かに言ってたね。」



 良則も、実家での祖父の言葉を思い出す。彼らの祖父は、頭がアレだが、基本的には家族想いの好感を持てる人物だった。バカな事をしなければがだが。



「いいんじゃない?折角日本に来たんだから、夏の風物詩くらい私も食べたいし!」


「私はウナギは多分初めてかな?」


「奢り何だろ?いいんじゃねえか?」


「「俺もサンセー!!」」



 リサ、ミレーナ、晴翔が順に賛成し、慎哉とトレンツも声を揃えて馬鹿に賛同する。


 だが、勇吾はそんな彼らにまったをかける。



「お前ら落ち着け!(バカ)の奢りだぞ?金の出所が胡散臭い!」


「「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」」



 勇吾の指摘に、馬鹿以外が沈黙した。


 すると、馬鹿は怒って反論する。



「おい!胡散臭いって何だよ!?ちょっとギャンブルで儲けた金だからクリーンだよ!!」


「十分胡散臭いだろ!!どのギャンブルだ!?」


「・・・・、ロト〇だ。」


「最初の沈黙は何だ!?」



 その後、どうにか馬鹿から金の出所を吐かせ、取りあえず安全な金だと判明する。


 詳細はあえて書かないが、馬鹿は来日以降、《幸運》のパッシブ効果によって財布がかなり潤っている。王族とはいえ、馬鹿の個人資産はあくまで冒険者稼業の収入のみなのだが、チートなのでどの世界でも金には困らないのだった。



「それで?出前で頼むの?」



 リサが問うと、馬鹿はチッチッチと指を振りながら答えた。



「馬鹿だなあ。ウナギつったら、浜松や名古屋に決まってるだろ?今日は名古屋でひつまぶしだぜ!!」



 そう言うと、さっきまで読んでいたグルメ雑誌を見せる。開いたページには「本誌推薦!今年一番のひつまぶし!!」と云う見出しと、食欲をそそるひつまぶしの写真が載っていた。



「どうやって行くつもりだ?今日は黒はいないぞ。」



 そう、黒王は本日は所用の為、終日留守にしていた。



「んなの、俺の力(ワープ)であっという間だぜ!」



 馬鹿は親指を立てながら、当たり前のように言う。勇吾はため息を吐き、それ以外も適当に反応する。


 そこへ、呼んでもいない奴まで現れた。



「俺も行くぜ~~~!!」


「ライ、お前もか・・・・・。」


「ようし、早速出発ーーーー」


「待って!行くなら着替えてからにして!」


「コクコク!」



 勝手に出発しようとする馬鹿の口をリサが手で塞いで制す。その後、修行で汚れた体をシャワーで洗い、着替えなどを済ませ、一同は馬鹿の力で名古屋へと向かった。




--------------------------


――名古屋――


 その後、無事に名古屋に着いた一同は、雑誌に載っていた店でひつまぶしを堪能した。


 馬鹿はひつまぶし以外も注文しまくりそうになるが、幼馴染み組が山葵攻めで止め、馬鹿が苦しんでいる隙にデザートを注文しまくった。



「あ~美味しかった!」


「うん、来てよかったよ。でも、デカ盛りが来た時は正直ドン引きだったけど・・・・。」



 琥太郎は、馬鹿とライが注文したDXひつまぶしを思い出す。明らかに1人では食えそうにないのが出された際、2人以外は絶句した。


 片方は神、もう片方も規格外だったので完食したものの(しかも、馬鹿は追加注文までしようとしていた。)、正直あれは何度も見たくないと思う常識人だった。



「なあ、この後はどうする?俺、観光とかしたいんだけど?」



 トレンツは何気に話してきた。



「ようし!名古屋城に行こうぜ!」


「シャチホコ盗る気だろ!?」



 馬鹿の提案は即却下され、名古屋の宝は盗られずにすんだのだった。


 その後、女子2人が勝手にショッピングを決め、勇吾達はそのパワーで無理矢理付き合わされる事となった。


 途中、馬鹿も食料品店に寄り、料理に使う「たまり醤油」や「豆味噌」などを買っていった。馬鹿にしては比較的まともな買い物ではあった。サイズが普通だったらではあるが。



「そう言えば、ライは何で来たの?」



 問いかけたのは良則だった。



「何でって、名古屋飯を食べにだが?」


「嘘だよね?」



 良則は真剣な表情で言う。その後ろでは勇吾が無言で2人を見ていた。



「・・・・・・。相変わらず凄い直感力だな?」


「俺は、お前が勝手に来た時点で怪しとは思ってたけどな。」


「ヒデエな?契約者なら、もっと信用してくれよ?」


「どの口がほざく?」



 ライが勝手に来る時は、厄介事があるか、遊びに来るかの2つに1つだ。それを十分に理解している勇吾は、ライの言葉を適当に流し、「さっさと言え!」と視線を送った。



「ん~、実は今朝の事なんだけどよ、俺の居る神社にスサノオの遣いが来たんだよ。」


「ハア!?」


「スサノオって、あのスサノオのこと!?」


「有名人・・・じゃねえ、有名神じゃねえか!俺だって知ってるぞ!!」


「あれだろ?ヒャッハーしまくって勘当されたり、自分の女さらった蛇を斬ったりした神様?」


「・・・トレンツ、間違ってないが、誤解を招く言い方するな。」



 勇吾は唇を引きつりながらツッコんだ。


 日本では有名すぎる神様の名に、日本人組は固唾を飲む。素戔嗚尊(スサノオ)と言えば、アマテラスとツクヨミの弟であり、草薙剣(くさなぎのつるぎ)の話で有名な日本屈指の軍神である。



「いやさあ、俺と一緒に祭られてる奴の一人がスサノオの娘の旦那なんだよ。そのせいで、アイツ、よくスサノオから厄介事押しつけられたりしててさあ、そしたら、俺も巻き添え食っちまったんだよ。」


「・・・嫁の父にコキ使われてる神って――――――。」


「(大国主か・・・・・・。)」


「(だよね?)」



 勇吾と良則は小声で呟きあう。



「――――それでよう、今回の厄介事ってのが名古屋で起きた事なんだよ。」


「――――ああ、名古屋にはスサノオを祭る神社が多いからな。特に熱田神宮(あつたじんぐう)は、草薙剣と一緒に祭られてるからな。」


「へえ、そうなんだ。」


「そう言うこと!で、遣いの話だと、一昨日の晩、何者かが名古屋周辺で何かをしまくったらしいんだってさ。そんで、何があったか調べろって事らしいんだとよ?」



 面倒臭そうに言いつつも、どこか楽しそうにも感じられる。


 すると、そこで慎哉は当然の疑問を言い出した。



「なあ、神様なら自分で解決できるんじゃねえの?」


「ああ、それは―――――――」



 と、勇吾が答えようとすると、横から馬鹿が割り込んできた。



「そんなの嫌がらせに決まってんだろ?嫁の父ちゃんってのは、婿をイジメルのが大好きなんだよ♪」


「――――お前は黙ってろ!!」


「イテテテテテテテ―――――――!!!」



 勇吾は馬鹿の耳を引っ張って、後ろに捨てた。



「―――――今の神は、基本的に人の世に干渉する範囲は限られてるんだ。分かりやすく言えば、お参りしてくれた人にご利益を与える程度のな。」


「・・・・・干渉しまくってる奴がここにいねえか?」


「・・・・・・・。ライの場合はその枠に収まらない。神の中でも、現世の人間と直接契約している場合はある程度自由に動く事ができる。最も、神と契約できるほどの人間は限られてるけどな。」


「スサノオクラスの神となると、数百年に1人くらいだろうな?」


「そうだね、日本だけじゃなく、色んな世界でもそれくらいだったはずだよ。」


「うわあ、それって激レアってことか?」


「そうなるな。(目の前にいるが・・・・・・。)」



 勇吾達の説明に納得する慎哉達。


 だが、ここにはその『スサノオクラス』の『神』と余裕で契約できる人間(チート)が複数いるのだが、勇吾はあえて言わなかった。



「―――――つ~~訳で、手近で人間と契約している神って事で俺が巻き込まれちまったってことよ!」


「俺達もな。」



 軽い調子で言うライに溜息を吐く勇吾。


 その後、買い物を終えた女子2人が合流し、改めて事情を説明をする。



「――――――また・・・・。」


「おいおい!今更じゃねえか?」


「自分で言わないの!」


「痛っ!?」



 リサはライにチョップを与えた。




「つ~~~!まあ、別にばっくれてもいいんだけどな。困るのは俺じゃねえし!」


「おい!」


「誰も、神様があんなこと言うとは思わないよね?」


「―――――知らぬが仏だな。」



 その時、一同の前にひとつのPSが展開された。


 メール用のPSであったそれには―――――


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

From:☆SUSANOO☆

Sub:逃げんなよ?

 おい、勝手に逃げられると思うんじゃねえぞ?

 名古屋(こっち)でも姉ちゃんの目が厳しくて俺もヤベエんだよ!

 さっさと形だけでも解決してきやがれ!!<`ヘ´>

 バックレたりしやがったら関東一帯に天変地異起こすぞ!!

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 届いたメールは脅迫文だった。


 しかも、日本人なら誰もが知る神様からの――――



「「「「「「―――――――――――。」」」」」」



 馬鹿以外の沈黙がしばらく続いた。



「ありゃぁ~~~!逃げられねえな?」



 一同の背後で、「なご〇ん」を頬張る馬鹿の声だけがその場に響いていた。


 どうやら、誰も逃げられなくなってしまったようだ。








・アマテラスを祀る神社は全国にあるのでスサノオは姉の目からは逃げられません。

・熱田神宮の祭神熱田大神は草薙剣(天叢雲剣)の神霊と言われてますが、スサノオやアマテラスといろいろ説があるそうです。


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