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第2話 説明会1

 慎哉は目の前の光景を呆然としていた。

 


 あの後、当然のごとく体育教師だけでなく担任に説教され、教室でも心配していた同級生に叱られた。だが、何処に行っていたのかと聞かれても空の上とは言える訳もないので適当に誤魔化した。


 そして放課後、この時期になると3年生の多くは部活を引退し始め、進学校への進学を希望する生徒の多くは学校が終わるとすぐに進学塾などに向かっていく。成績がほぼ平均的な慎哉はそれほど真剣に進学の事を考えてはおらず、受験勉強も秋以降になってからいいだろうと楽観していた。



「校門前と・・・!」



 靴を履き替え、校舎を背にして待ち合わせ場所へ向かう。


 正直、あの2人|(一人と一匹?)が校門の前にいると考えると落ち着かない。最初から勇吾と黒王が見えてていた慎哉は、あの2人が魔法などを使って姿を隠していたことなど知らないのでどうやって待っているのか予想できなかった。


 2人が聞いたら間違いなく睨まれそうな光景を想像しながら校門のへ向かうとそこには何やら人だかりができていた。



「何だ?」



 足を止めて見てみると、校門の前に十数人の生徒(全員女子)が携帯電話を片手に持ってパシャッ!何かの写真を撮っていた。



(あ、俺のクラスの女子もいるよ。イケメンでも来てるのか?)



 人だかりの中にイケメン好きなクラスメイトも交じっているのを見つけると、だれを撮影しているのかと覗き込む。


 そこにいたのは見覚えのある少年と見覚えのない青年の二人が立っていた。



(勇吾・・・・!!と、誰・・・・・!?)


 

1人は待ち合わせをしていた勇吾だった。最初に会った時と同じ服装のまま、何処か不機嫌そうな表情をしながら立っていた。


 その隣、勇吾の隣に立っていたのは見覚えのない青年だった。背は勇吾よりもずっと高く190㎝はありそうだ。艶のある綺麗な黒髪は前は少し短かったが後ろは片よりも下に伸ばしているのを紐で束ねていた。顔だちも整っており、簡単に言えばモデルのようなイケメンだった。



「あの、もう一枚撮ってもいいですか!?」


「もしかしてここのOBですか!?」


「ちょっと押さないでよ!次は私の番なのよ!」


「キャッ♪こっち向いたわよ!!」



 女子達は目の前のイケメン・・・よく見ると青年の方だけじゃなく勇吾の方も絶え間なく撮影している。慎哉は気づいていないが、女性の視点から見れば勇吾もイケメンの部類に入るのである。


 もう一歩近づくと、青年の方が慎哉の方へ視線を向けた。その眼は、何処か爬虫類のような鋭さがあった。



「・・・・来たか。」



 その声を聞いた途端、慎哉の中に電撃が走った。



「エエッ!!??まさか黒王!!!???」



 その声を聞き間違えるはずがなかった。


 見た目は人間の姿をしていたが、その声は数時間前に背中に乗っていた黒龍のものだった。



「え、北守君の知り合いなの!?紹介して!!」


「詳しいプロフィールとかも教えてくれない!?」



 お前ら塾とはいいのかよ!と突っ込みそうになった。



「やっとか・・・・。さっさと行くぞ!」


「あ、待てよ勇吾!」



 これ以上この場にいたくないのか、勇吾は1人で先に歩き始めた。


 それを見ていた黒王も苦笑しつつ、ついて来いと言いそうな視線を慎哉に送ると勇吾の後を追っていった。



「ねえ、メルアドとか知ってるの!?住所は!?あと2人とも彼女といるの!?」


「その前に名前でしょ!ねえ、あのイケメン誰なの!?」


「だぁぁぁぁ!!押すな!引っ張るな!これから用事があるんだから今度にしろ!!」


「あの2人って兄弟なの?」


「話聞け―――――――――!!!」



 しつこく詰め寄ってくる女子達(特にクラスメイトの女子二人組)を必死に振り払い、先に進んでいった2人を追いかけていった。









--------------------------


 勇吾達を追いかけて着いた先は繁華街の裏側にあるカラオケボックスだった。


 先に着いていた勇吾は受付を済ませており、店員に案内された個室に入る。適当にドリンクを注文し、ソファーの一つに腰かけると大きく息を吐いた。



「フウ・・・・・・。」


「なあ、もしかして勇吾は女が苦手なのか?」



 校門前でのことと目の前の勇吾の様子を見た慎哉は小声で黒王に問いかけた。



「いや、女そのものが苦手と言う訳ではないが・・・・・・・まあ、いろいろあったからな。」



 何か嫌な事を思い出したのか、黒王は何処か引きつったような表情をしていた。


 慎哉は知らないが、勇吾は女性が苦手な訳でも囲まれて騒がれるのが嫌で不機嫌になっているわけではない。彼が不機嫌な理由には彼の故郷にいるとある馬鹿(・・・・・)が原因であった。勇吾はその馬鹿に散々振り回され続け、校門前の事もその馬鹿とと嫌な思い出を思い出されたからであった。



(あの馬鹿、今も何処かであんな事(・・・・)を・・・・・・。さて・・・。)



 運悪く巻き込まれているであろう見ず知らずの被害者達に同情しつつ、慎哉の方に視線を向けながら本題に入ることにした。



「じゃあ、これから俺達について話すがこれはあくまで他言無用だ。家族だろうと友人だろうと関係なくだれにも話すな。わかったな?」


「お、おう!」



 最初に会った時のような威圧感のある声に頷きながら答える慎哉。と、ここで彼は先程抱いていた疑問をぶつけてみた。



「あ、先に聞きたいことがあるんだけど?」


「黒の事か?」



 すると、予想していたのか、威圧感のある表情を緩めてニヤリとした。横を見ると別のソファーに座っていた黒王も同じような表情をしている。



「そうだよ!黒王・・・黒ってドラゴンだったろ!?何で人間になってるんだ!?」


「簡単なことだ。俺は人間に変身することができるドラゴンと言う事だ。」



 答えたのは黒王自身だった。



「お前の言うドラゴンは龍族と総称(・・)されている。そして龍族の中でも一部の種族は俺のように龍としての本来の姿とは別に、お前や勇吾とかわらない人間の姿を持っている。普段は龍の姿をとっているが、今の俺の様に人里にいるときは人間の姿になって紛れ込んでいると言う訳だ。何せ、龍族は基本的に巨体のものが殆どだからな、そうでもしないと色々と不便だからな。」


「へぇ~~~~~~。」


「それに人の姿をしていれば食料も人間と同じか少し多い程度で済む。考えても見ろ、俺のようなドラゴンに龍の姿のままで腹を満たし続ければ生態系があっという間に崩れる。特に草食動物あたりは一気に絶滅していくだろうな。」


「あ、確かに・・・・。」



 ドラゴンが手当たり次第食事をする光景を想像し、確かに動物どころか人間も危ないなと思った。と言う事は、知られていないだけで世界中には黒王のような龍族が人の姿で人間の中にたくさん紛れ込んでいるのではと考える慎哉だったが、そのことを問う前に答えが返ってきた。



「最も、今現在この世界(・・・・)にいる龍族は俺以外には精々2、3人程度といったところだろうが・・・・。」


「この・・・世界・・・・?」



 黒王の「この世界」という言葉に反応する。



(この世界にはって、他にも世界があるような言い方だよな・・・・。はっ!この流れからするともしかして・・・・!?)



 慎哉は頭の中である発想に思いたる。


 そして顔から慎哉の考えていることを読み取った黒王はそれを肯定するように答える。



「そう、龍族のほとんどはこの世界ではなく異世界に存在する。」


「おおぉぉぉぉ!!!!!」



 慎哉は興奮しながら立ち上がった。


 彼は普段から漫画やライトノベルを愛読しており、ファンタジーな世界に憧れていた。もちろん、一般常識もちゃんと理解していたのでそんなものは存在しないと今までは思っていた。だが、この数時間の間に起きた出来事でその一般常識の一部は彼の中で崩れ始めていた。


 ドラゴンが存在するならば、という感覚で彼は様々なことを思い浮かべ期待を膨らませていった。そのニヤけた顔を見て、勇吾は苦笑しつつ黒王の説明を引き継いだ。



「ここからは俺が話す。」



 そして慎哉への説明会(チュートリアル) は進んでいく。








「とある馬鹿」はいずれ本編にも登場します。

ヒロインも早く出したいなあ。


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