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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第15章 黎明の王国編
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第380話 勇吾VSエリオット ③

――古戦場ステージ(だった場所)(勇吾視点)――


(やっと、通じたぞ!!)


 1㎜、たったの1mmだがエリオットに傷を与えることが出来た。

 向こうが《神龍武装化》(のおそらくは上位互換能力)を使う瞬間、俺の布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)から放たれた刀剣の豪雨は確かに奴に届き小さな傷を負わせるに至った。

 ハッキリって黎明の王(エリオット)は人間を辞めているんじゃないかと思いたくなるほどの化け物だと、直に戦うことで改めて思い知らされた。


 やつが唯一命に見えて装備している神器グラム、見た目は1本の魔剣に過ぎないが、実際にはあの剣の中には異空間が存在し、しかもそこは夥しい数の『神器』の保管庫となっていた。

 その殆どは地球世界の神話や民話で語られている代物だが、3割近くは他世界のものらいしき物が混ざっていた事から、奴らが地球世界に限らず多くの世界で『神器』の収集を行っている事が窺える。


 今の処は北欧神話系を始めとした欧州系の『神器』ばかりだが、拒絶反応も無く極めて高い親和性の下で扱っている事実には度肝を抜かされた。

 俺の布都御魂剣もそうだが、『神器』の中にはそれ自体が神格を持ち、更には自我を持つものも少なくは無い。

 特にグラムのような魔剣系の『神器』は使用者の身体を乗っ取ろうとする凶悪な意志が宿る場合がかなり多く、常人なら持った瞬間に自我を失って身体を魔剣の意志に奪われる。

 にも拘らず(エリオット)は平然とした顔でグラムだけじゃなく光神ヘイムダルの『神器』や雷神トールのミョルニルを表情一つ変えずに使いこなしてくる。

 今頃、観客席にいる(バカ)辺りは「チートだ!」だの、「何、この無理ゲー☆」とかほざき、勝手に俺の冥福を祈り始めているんだろうがそうはいかない。

 予め想定していた展開で折れるほど俺は軟じゃない!!


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

『――――一気に力が増したな。まさか、今までは芝居だったか?』


 俺の拳が奴の拳とが衝突する。

 周囲の温度が有り得ない程までに上昇しているが今はそんな些事(・・・・・)に気を配っているほど暇じゃない。

 今は二撃目、三撃目をどうやってぶつけるかに集中する。

 第一、今の俺は例え太陽の中でも活動する事には問題は無い。

 龍族の中でも最高位の強さを誇る古代種の血を引く黒の力の全てと一つになった俺には「只の超高温」など致命傷にはなりえないからだ。


『京都での“神殺し”、あれはギリギリ及第点だったが、その後のシャルロネーアとの一戦は見事だった。何やら一皮剥けたようだが、それが此処までお前を成長させるとは大したものだ。宗……王家にも引けを取らぬ偉業に等しい』

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

『……この姿を見せた以上、最早加減はされないと思え――――天雲勇吾!黒王(ヘイウォン)!』


 余裕丸出しに――何というかワザとらしい感じに――話しかけてきた奴だったが、最後に俺達の名を叫ぶと同時にそれまでの雰囲気が嘘のように豹変した。


『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッ!!』』


 それは正しく王者の――覇者の咆哮だった。

 時空間を震撼させ、軟弱な魂は瞬時に粉砕するその咆哮に俺も圧倒されそうになるが、そこは意地と根性で乗り切る。

 生憎と、そう言うのには慣れているんでね!

 むしろ俺は滾ってくる!



――――ニッ!



 俺と黒の意識が完全に同調、俺達の思考は一つになり奴らに向かってニヤリと獰猛な笑みを向けた。

 正直自分でも驚くほどの野性味の溢れる笑みだなあとも思ったが、それも俺という男の一面なのだとあっさりと受け入れる。

 俺はもう自分を押し殺したりはしないと決めたからだ。


『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――ッッ!!』』


 それは無意識だったが、俺は奴らと同じように咆哮を上げた。

 そして同時に背中から広がる巨大な黒翼。

 色彩的に悪魔っぽいがきっとこの姿を観客席で見ている連中は誰もそんな印象は持たないだろう。

 それほど、今の俺達が放っているのは龍の王のそれだからな。

 まあ、(バカ)は「Oh~! YU~GO~が堕天(フォールダウン)~!」とか騒ぎ、悪乗りしたバカ龍王は「悪魔(デビル)モード~?」とかやってるだろうが。


『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッッ!!』』


 更に咆哮を上げながら空いている手の甲から神度剣を出現させて奴に突き刺す。

 が、その刃は軽く躱されてしまう。



――――炎龍哮



 そして奴の咢から一発のブレスが放たれる。

 超高密度の魔力と新種の闘気(・・・・・)が練り込まれた紅蓮のブレスが俺達を飲み込もうとし、俺は咄嗟に《転移》で避ける。

 だが直後に奴の拳が俺に襲い掛かってきた。


『ガッ―――――!?』


 周囲にも大規模な衝撃が生じた事など頭に入らなかった。


『――――《無限連赤拳(コンティニュアス・ブレイズ)》』


 入る余裕が無い程、そのあまりにも重すぎる拳の嵐が猛威を振るったからだ。

 真上から、真横から、真下から、斜め上から――――《転移》を使おうとしても空間を貫いて俺の全身に真っ赤に燃え上がった奴の拳が襲い掛かる。


 連撃(ラッシュ)

 連撃(ラッシュ)

 連撃(ラッシュ)

 連撃(ラッシュ)

 連撃(ラッシュ)



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッッ!!』



 避ける事も許されず、反撃する事も許されず、意識を失う事さえも許されず、俺は、俺達は奴らの赤い猛威に蹂躙されそうに(・・・・・)なりかける(・・・・・)まで一方的に追い詰められていった。

 これが王、『黎明の王国』に君臨する覇者の、アベル達さえも超える王の圧倒的な力……!!









--------------------------


――闘技場(選手用観客席)――


 その戦闘風景を前に、今までなら大歓声が沸き起こっていた筈の闘技場はまるで正反対の静寂に包み込まれていた。

 観客の誰もが自分達の王の圧倒的な力に言葉を失い、かと言って畏怖や忌避を抱く事も無く、只無言のまま王の戦いに魅入っていた。

 そして良則や慎哉達は、圧倒的な力を揮う王と、彼に一方的に追い詰められている勇吾の姿に同じように目を奪われていた。


「……私だったら一撃で死んでいた……わね」


 両目を丸く見開いたままリサが呟いた。


「あの炎、温度と色が違くね?」

「確か高温になるほど透明になったり蒼くなるんだっけ?」

「それは自然界の炎の場合だろ?魔力とかが込められている炎の場合は、温度じゃなく魔力の質や量によって色が変わるんだよ。赤龍の場合は大抵赤系統の色で統一されるのが殆どだし、俺の場合は普段は赤やオレンジだけど、本気の時は基本的に白一色だぜ?」


 双子――慎哉と冬弥の疑問に答えるのは七大天使のウリエル、彼は周囲の空気に流される事無くスナックを食べながら観戦している。

 その横では逆さ張り付けから抜け出したバカの姿もあった。


「エリオット、マジ☆チート!」

「ムリゲ~♪」

「「南無三☆」」


 相変わらずの好き放題だった。


「アルビオン、全部視えてる(・・・・・・)?」


 そんな中、良則は視線を戦闘映像に向けつつ、冷や汗を流しながら隣に座っている相棒(アルビオン)に問いかけ、アルビオンは視線を動かすことなく両腕を組んだまま口を開く。


「――――速いな。最大速度でないだろうが、既にお前の全能力解放時の最高速度に達している上に、一撃の重さは優に超えている。何よりも、魔力量と各能力が(神の基準でも)異常過ぎる(・・・・・)

「やっぱり、神殺し?」

「いや、それ以上だ。奴は神殺しの更に上、『神滅者』。単独で10柱以上の神を葬った神の天敵、神すらも己の糧とする覇王だ」

「覇王……」


 アルビオンは両目を細める。

 その瞳に映ったのは、昨日の謁見の際に勇吾達には詳細まで閲覧する事の出来なかった『黎明の王』の現在のステータスが映っていた。



【名前】『黎明の王』エリオット=M=ゴッホ

【年齢】253  【種族】人間

【職業】王  【クラス】超越王

【属性】無(全属性)

【魔力】16,080,000/9,800,000(+120,000,000)

【状態】神龍武装化-極-

【能力】神越魔法(Lv5) 属性術(Lv5) 神龍闘気術(Lv5) 武龍術(Lv5) 隠遁術(Lv5) 古代精霊術(Lv5) 次元眼 神代之王権(ジ・レガリア) 事象断定 覇者の咆哮 完全同調 聖浄化 完全模倣 昇華 万能なる神雷(パーフェクト・ソー) 神字編纂(ルーン・マスター) 叡智回廊 絶命の一閃(ジエンド・ストライク) 夢幻の編み手 闘神化 完全看破 万物鑑定 神の宝物庫 神王鍛えし猛き剣(グラム) etc

【加護・補正】物理攻撃無効化 魔法攻撃無効化 精神攻撃無効化 全属性無効化 全能力異常無効化 完全詠唱破棄 並列思考 神速回復 神速再生 不老長寿 天下無双 不撓不屈 王の器 黄泉返り 超越者 知識者 断罪者 神滅者 竜滅者 龍殺し 巨人ハンター 魔獣殲滅者 魔王ハンター 天魔ハンター 悪魔殲滅者 神器収集者 開拓者 建国王 英雄 救世主 王者 聖人 絶望を破る者 蹂躙する者 偉大なる契約者 龍王ルベウスの契約 最高神オーディンの契約 雷神トールの契約 光神ヘイムダルの契約 始神ユミルの契約 etc



 あまりに桁違いなスペック、あらゆる攻撃が無効化され、例え傷を負わせる事が出来ても《神速再生》という肉体再生系補正の中でも最上位の補正がある限り瞬時に傷が消えてしまう。

 体力や魔力も《神速回復》により常に回復されてしまう。

 更には契約している数多の神々との契約補正により全能力が底上げされ、神を殺し手に入れた数多の権能が彼に牙剥く者を許さない。

 京都で神を殺したことのある勇吾とは土台が違いすぎる相手、『黎明の王国』の誰もが勝利を疑う事の無い絶対的な強者であるとこのステータスは告げていた。


(だが…………)


 アルビオンは映像の中の勇吾を見つめる。

 爆発に爆発で観客の殆どが彼らの動きを捉えることができない中、彼の目は自身の最高速度さえも超えようとしている彼らの戦いをハッキリと捉えていた。

 それは常人が見れば誰もが勇吾が蹂躙されているだけの光景にしか見えないが、アルビオンはその光景の“本質”を看破していた。


(相手が「至高の炎」を支配するならば、対するあの2人は「真の闇」で反撃するまでだ。見せてみろ、お前達の全てを――――)


 この1秒後、赤い炎で埋め尽くされた戦場は黒一色に染め上げられる。

 そしてそれは闇ではなく、闇色の炎だった。










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