第34話 チート(馬鹿)大活躍・・・・・・!?
・前章の翌朝の話です。良則達が来日してから勇吾達と合流するまでの間にあった事についてと、チートの実力発揮な内容です。
――2011年7月16日 日本 東京――
良則達が日本に来た翌朝、昨晩は宴会状態になるわ、途中からライが(神社からパクった)酒を持って乱入するわのドンチャン騒ぎになった。
久しぶりの馬鹿騒ぎで今朝は少し起きるのが遅くなった勇吾だったが、それでも日課の鍛錬は欠かさなかった。なにせ、勇吾は昨日、圧倒的な力の前に為す術も無く結果的に完敗したばかりなのだ。より強くなる為にはもっと鍛錬が必要なのだ。
「ハッ!ハッ!ハッ!・・・・・」
重く設定した修行用の剣を振り続ける。
そこへ、幼なじみの一人がやってきた。
「こっちでも欠かしてないんだね。」
「当たり前だ。1日の遅れは3日かけないと取り戻せないからな。それより、もう起きたのか?」
「僕だけじゃないよ。丈も起きて朝食を作ってくれてるよ。」
「・・・あの馬鹿、料理してる時しかまともな時は無いな。」
「ハハハ・・・・・・・。」
良則も苦笑しながら勇吾に同意する。
あの馬鹿、丈は料理をする時に限っては安全なのだ。ただ、調理後は何かを混入させたりする危険性があるのだが――――――。
「そう言えば聞き忘れてたが、アイツ、昨日は何をしたんだ?」
「えっ!?」
勇吾の質問に顔を引きつる良則。
「気づかないとでも思ったか?お前等、あの時間にこの世界に来て俺の所に来た訳じゃないだろ。こっちにはもっと早く来ていたが、馬鹿が寄り道をして気づいたら夜になってたんじゃないのか?しかも、来た早々に何かやらかして!」
「・・・・・・・・うん。」
勇吾の鋭い指摘を前に、良則は正直に答えるしかなかった。
良則によると、昨日、東京に着いた直後に馬鹿が勝手にアキバに直行してしまったらしい。そしてアニ〇イトや〇の穴でマンガや同人誌、いろんなゲームを買い漁っていった。
そこまではまだいい。その後、メイド喫茶に行くとチンピラに絡まれた猫耳メイドを見つけ、魔法は使わず素の実力でチンピラを瞬殺したのだが、喫茶店をでるとそいつ等が仲間を連れて絡んできた。そいつ等はリサとミレーナをさらって犯そうとしていたが、逆に2人に(タマを潰されたりして)全滅させられた。後は警察に突き出すだけだったが、そいつ等の懐からヤバい物が出てきてややこしくなった。
馬鹿は余計なスイッチを入れ、アキバのメイドを救うクエストを勝手に開始したのである。その結果、チンピラだけでなくヤクザや某国の売人にまで関わる事となった。しかも、馬鹿はアキバの仲間を集めて変な軍団を創り、そこの初代ボスにまでなったのである。
「何やってるんだ、あの馬鹿は!?」
勇吾は頭痛を抑えながら話の続きを聞いていった。
「その後なんだけど、ヤクザが初○○クのハリボテに唾を吐いたのがキッカケで聖戦が始まって・・・・。」
「こっちに来て数時間で何でそんな事になるんだ・・・・。」
「しかも、何だか軍用品を売りに来たアメリカ兵や裏取引に来た官僚や政治家の秘書も巻き込まれたみたいで・・・・・。」
「・・・カオスだな。」
勇吾はだんだん疲れてきた。
「その後警察も動いたりして余計にややこしくなったところで丈が魔法を使っちゃって・・・・・。」
「おい!!」
それは不味かった。異世界の、それも日本の大衆の目の前で魔法を使うのは法律的にもこの世界的にも不味すぎる事だった。
そこへ、問題の馬鹿がエプロンを着けて2人の所へやってきた。
「お前ら来いよ!テレビで俺の活躍が映ってるぜ!!」
「「・・・・・・。」」
勇吾も良則も嫌な予感しかしなかった。
覚悟を決め、手を振ってくる馬鹿の元へ行く。すると、テレビのニュースに大きな見出しが表示されていた。
『暴力団員&米兵 首相官邸で全裸で逮捕』
「「・・・・・・・。」」
「見ろよ勇吾!あれ、俺がやったんだぜ!」
馬鹿は胸を張って自慢する。
ニュースの内容に2人は口を開いたまま固まった。
『―――――昨日の午後、官邸内で拳銃と麻薬を所持した暴力団員とアメリカ兵と民間人数名が発見され、その場で逮捕されました。』
それによると、昨日の午後、首相官邸の内閣総理大臣が仕事をするその部屋に全裸の男の集団が突然現れたらしい。幸い、総理は所用で留守にしてたが、現れた男の中に拳銃を所持している物がいた事と、何より全裸だった事からすぐに取り押さえられて逮捕となった。
なお、「民間人数名」とは訳アリの人物達の事を指しているのだろう。公表したら政界が大きく揺らぐに決まってるのだから。
「―――――――――丈?」
「いやさあ、何だかいろんな人が入り乱れちまってよう、そしたら怖そうなオッチャンが銃を出して俺を脅してきたんだよ。他にも何だか胡散臭そうな兄ちゃん達とかいたからこれはヤバいと思ってさあ!」
「―――――それで官邸に転送したと?」
「ほらさあ、俺も何故か怒られる時は城にいる王様のとこに直行じゃん?だから、取りあえず人目に付かない所に誘って気絶させてからこの国の一番偉い人のいるトコに送ったんだよ。これって手柄じゃね?」
「「・・・・・・・・・・・。」」
得意気に話す丈に、「お前が城に直行されるのは王族だからだ。」と突っ込みたくなる2人だが、それは既に何度も言っている事なのであえて言わなかった。
「そしたらよう、何か手違いで服だけアキバに残ってたんだけど、とりあえず逮捕されたから結果オーライじゃね?」
「なわけあるか――――――――――――!!!!!!」
勇吾の怒鳴り声が家中に響き渡った。
その後、勇吾と良則の手でOSHIOKIが開始され、他のメンバーが起きてきた頃には逆さ十字に磔にされて庭に放置されている馬鹿の姿があったとか―――――。
余談だが、首相官邸に全裸のアメリカ兵が現れた事で日米両政府で色々あったらしいが、アメリカ側は兵士を切り捨てて「そんな兵士は我が国に存在しない!」と無関係を主張したそうだ。
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今日は土曜日と言う事もあり、朝から慎哉がやってきた。もちろん、何時ものように修業を受けに来た訳だが、直前になって待ったが入る。
「ねえ、もしかして修業って《スローワールド》の中でやってるの?」
待ったを入れたのはリサだった。
「そうだけど?」
「勇吾!あんたまだあれ使ってたの!?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
リサは信じられないモノでも見たように驚いて勇吾の方を振り向くが、勇吾はすぐに視線を逸らした。
何だか嫌な予感がした慎哉はどういう事か聞く。
「あのねえ、勇吾のあの魔法は本当は初心者の修業用には使わないモノなのよ!!」
「そうなのか!?」
「そう!あの異空間の中は現実と時間の流れが違うから長時間修業はできるけど―――――、あそこって敵味方関係なく燃費が悪くなるのよ!」
「―――――――ハア!?」
「本当は敵だけ魔力の負担を上げるように創るつもりだったらしいけど、実力が追い付かなくて入ったもの全てが現実の数倍魔力をたくさん消費しやすくなるのよ。例えば、現実なら100回使える魔法が20回しか使えなくなったりとか――――――――。」
「何だよそれ!!」
リサの話を聞いた慎哉は今までの事を振り返る。勇吾達の魔力が凄すぎて感覚が麻痺していたが、500万以上の魔力の割には戦闘の派手さは物足りないと思う事はあった。それに昨日、あの遺跡の中では魔力の消費がいつもより低かったのに今になって気づく。考えてみれば、慎哉が現実空間でどうどうと魔法を使った機会は昨日ぐらいだった。
「――――――――仕方ないだろ。俺の適正レベルじゃそこまで万能にはできなかったんだから。」
勇吾は少しいじけた様な態度になる。
「・・・・まあ、確かに時属性でもないのに時間の流れが違うだけでも十分凄すぎるわね。」
「ある意味チートだよな。」
「本物の前でそれを言うな!」
ニヤつきながら言うトレンツに怒鳴る勇吾。一方、本物のチートの1人はただ苦笑するしかなかった。
と、そこへもう一人の馬鹿が十字架を背負ってリビングにやってきた。
「なあなあ!これから増築工事すんだけど見ていかね?」
馬鹿が話しかけたのは慎哉だった。
だが、それに答えたのは勇吾だった。
「待て、増築!?どこをだ!!??」
「馬っ鹿だなぁ~~~~、ここに決まってるだろ?住居と庭だけじゃ狭いしよう、ここは俺がひと肌脱ごうって思ったわけよ!―――――トゥ!!」
「「「「「脱ぐな!!!!」」」」」
本当に上半身を脱いだ馬鹿に全員がツッコみを入れ、うち数人はその辺にあった物を投げてブッ飛ばした。その際、馬鹿が背負っていた十字架が粉砕した。
馬鹿は床を転がっていくがすぐに起き上がり、リビングの窓から庭の方へ出ていった。
「・・・・何かやり始めたぞ?」
慎哉は心配そうに勇吾達に声をかける。
「・・・・・こうなったらあの場は止まらないからな・・・・・・。」
最早諦めに近い表情を見せる勇吾達―――――――。
そこへ、庭から馬鹿が戻ってきた。
「終わったぜ!」
「――――――早っ!?」
外に出てから1分も立っていないにも拘らず、馬鹿は何時間も働ないかのように首にタオルを巻いて汗を拭く動作をしていた。
「――――おい、あれは何だ?」
勇吾は外の方を見ながら震える声で馬鹿に問いかけた。
外を見ると、その景色は明らかに変わっていた。さっきまでのこの家の庭は超高層マンションから見下ろすかのような光景が見える空中庭園に近かった。だが、今の庭の向こうは明らかに地平線らしきものが見え、雲もさっきまでよりも遠くなっていた。庭と外を遮っていた壁もなくなっている。
それを見た馬鹿以外の一同はすぐに外へと走っていった。
「「「「「「「ハァ―――――――――!?」」」」」」」
そこには世界が広がっていた。
見渡す限りの大自然、近くには川が流れ、森も広がっている。遠くには山も見え、空には雲の漂う青空と太陽が昇っていた。
「凄くね?取り敢えず力いっぱい創ってみたから北海道よりはでかいんじゃね?」
「どんだけ規格外なんだ!!!」
勇吾は大声で叫んだ。
「・・・・ねえ、森とかあるけど動物もいるの・・・・・?」
良則が恐る恐る問いかける。これで生物まで創ったとなると最早神の領域である。だが、チートでもそこまではできなかったようだ。
「まっさか~~~~!俺って神じゃねえし、植物とかも適当に外の方から種とか芽とかを転送して繁殖させただけだしよう。あ!けど、魚とか微生物とかはこっそり日本中の川や湖からパクって来たから釣りとかできるぜ?後は鳥とか猿とか虫とか、増えすぎてたり乱獲されているのをいくらか転送しておいたぜ!!」
「――――まあ、絶滅危惧種とかはここにいれば安全かもしれないけど・・・・・。」
「遅かれ早かれ気付かれるわね。」
面倒事が増えたと思う勇吾達だった。
鳩や烏なら減ったところですぐには騒がれないだろう。だが、絶滅危惧種の中にはその生息数を確認する為に発振器などを付けたりなどして常にその数を確認している。それが原因不明でいなくなれば、いずれはマスコミ沙汰にまで発展するだろう。まあ、その時は手段を選ばず誤魔化す事になるだろうと考える勇吾達だった。
「チートスゲェェェェェェ!」
慎哉は馬鹿のチートっぷりに大興奮だった。
「こりゃスゲエな!いっそ町でも作るか?」
「――――――お前まで馬鹿を言うな。」
トレンツに突っ込みを入れ馬鹿を見る。馬鹿は笑い声をあげながら野原を走り回っている。あれはもう細かい事など考えてない顔だった。
そこへ、さっきから一言も喋らず黙っていた黒が真剣な表情でやってきた。
「―――――この世界・・・狭間の中に創られてるな。」
「―――――――え?」
「しかも、この大地の端辺りには別の世界へつながる入り口らしきものが見える。これは、違う世界同士が殆ど地続きに近い状態で繋がっているな――――――。」
「ええ!?」
「ハァ――――――!?」
どこかに消えていった馬鹿以外の少年少女達は驚きの声を上げた。
その後、黒王は比喩も含めて説明していった。今いる世界を日本に例えると、異世界は他の大陸や島々になる。そして異世界同士の間には『狭間』と言う空間によって遮られている。これは地球でいう海にあたり、本来は地続きになっていないので行き来する事は出来ない。日本から外国に行くのには飛行機や船舶が必要なように、異世界に行くのにも相応の手段が必要となる。だが今回、馬鹿は狭間の中に、つまり太平洋や日本海のど真ん中に大地を造って他の大陸と地続きにするように、他の世界同士を歩いて行けるようにしてしまったのである。
「――――――――全部調べた訳じゃないが、おそらく『リンクワールド』へも繋がっているだろうな。」
「マジか!?」
「ウソでしょ・・・・・。」
「ありえないわね・・・・・・。」
「チート万歳?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ハハハ・・・・・・・・・・・・・。」
非常識すぎる所業に呆然とする勇吾達だった。
その後、勇吾は馬鹿を探すついでにこの世界の広さを測っていくと、その総面積は日本よりも広い事が判明した。そして調子に乗りすぎて魔力不足で倒れていた馬鹿を見つけると、これ以上余計な事をされないように拘束して家へと帰ったのだった。
【属性術(Lv5)】
・自身の持っている属性全てを己の意志で操る事ができる。
・お前はもはや創造神の生まれ変わりか何かだ!チートを超えるチート!己の意志で空を!海を!大地を生み出す事ができる!生み出せお前だけのユートピア!ドラ〇も〇がいなくてもお前だけの創〇日記が書けるぜ!
【次元龍の契約】
・世界の狭間を超え、あらゆる世界を旅する神龍????との契約。
・必要な時に????を自由に召喚可能になる。
・契約が続く限り、『狭間』への干渉がある程度自由になり、そこに新たな空間を創りだす事が可能になる。
・異空間を創る際の消費魔力が-50%になる。
・異世界へノーコストで移動可能になる。
・ちなみに、魔法や属性術などでの消費魔力は、(基本消費魔力)÷(適正レベル)となります。丈の異空間創造の場合、更に加護による補正で半減(-50%)するので通常の10%の消費で済みます。勇吾とは次元のレベルが違います。
・感想お待ちしております。




