第353話 風神の契約
――観客席(選手用)――
第2試合がトレンツの勝利で終わった直後、トレンツは力の反動で倒れた。
ジュードにより勇吾達の下へと転送されたトレンツを全員が囲み、回復の行える者はすぐさま診断と治療を始める。
「しっかりしろ!!」
「トレンツ!!」
「おい!生きてるよな!?」
「物騒なこと言わないで!」
試合中は彼を信じていた幼馴染達も、明らかに体調に異変を来している姿に動揺していた。
約1名、例外の幼馴染もいたが。
「Kiss!こんな時は乙女のKissで復活(リボ~ン)☆てなわけで、リッサ、Go♪」
「死ね☆」
丈は宙を舞った。
何時もよりも綺麗に弧を描いて舞った。
「俺、復活☆」
「「チッ!」」
丈は綺麗に着地した。
そして再度、トレンツの下に来てジロジロと観察し始めた。
「あ、もうダメだこりゃ☆」
「諦めるの早えよ!!」
「星マーク付けんな!」
「てか、何時もの理不尽でお前が何とかしろ!!」
「え~?俺、チートじゃないよ~」
「「「チートだよ!!」」」
ほぼ全員が突っ込んだ。
このバカがチートと呼ばないのなら、一体だれをチートと呼べばいいのだろうか?
「てゆっか~、これって治療のしようがなくね~?もう全部終わって手遅れじゃん☆」
「……おい!」
バカはトレンツの体をツンツンと突く。
そして「あちゃ~」といった顔をしながら、取り敢えず黒王とアルビオンに視線を向けるが2人とも視線を逸らした。
次にポップコーンを食べているウリエルを向くと、彼は「やれやれ」といった顔をしていた。
「だって~、トレンツ、殆ど人間を辞めてる☆じゃん♪」
「「「……え?」」」
「やや人間っぽいけど、やっぱ人間じゃない☆じゃん?あと、不老不死☆」
「「「は!?」」」
「はい、《ステータス》♪」
【名前】黒河 トレンツ
【年齢】15 【種族】神人(多分人間?)
【職業】超越者(Lv1) 風神の眷属(Lv1) 冬の男(Lv1) 【クラス】氷嵐の神人
【属性】氷 風 水 雷 火 土 光
【魔力】837,000/8,250,000
【状態】正常
【能力】神人之魔法(Lv5) 神聖魔法(Lv5) 氷嵐術(Lv5) 豊饒術(Lv5) 仙術(Lv5) 隠形術(Lv5) 神聖武術(Lv5) 神憑神化 千風化身 龍人化 虚空君臨 天空眼 神門 白銀の清風 聖氷鋼の神龍靴 風王の武闘衣 無限凍獄 天変地異 天罰代行 武装錬成 超鑑定
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv4) 精神耐性(Lv5) 氷属性無効化 風属性無効化 雷属性無効化 水属性耐性(Lv5) 火属性耐性(Lv4) 土属性耐性(Lv4) 光属性耐性(Lv4) 全状態異常無効化 高速回復 高速再生 不屈の闘志 不老不死 空間認識 完全詠唱破棄 思考加速 並列思考 相乗成長 限界突破 子孫繁栄 永久の記憶 龍脈感知 超五感 直感 超越者 頑丈者 凍結者 武人 虚空に立つ者 神の弟子 神の代行者 冬の人 古の契約者 人間卒業者 風神の眷属 竜ハンター 悪魔ハンター 神の卵 凱龍王の加護 氷龍アルバスの契約 風神の契約(+3) 体と魔の成長期 職業補正 職業レベル補正
「「「……」」」
勇吾達は引き攣った顔をした。
ステータスは以前よりも遥かに変化していた。
それはもう、一般人レベルとは間違っても言えないレベルにまで。
「「多分人間?」って何!?何で疑問形?」
「微妙だから?」
「……アルビオン、確か『神人』って『半神半人』とは違うんだよね?」
「そうだ。『半神半人』は神と人間の混血か、生きた強者が神格化されて進化した存在だ。対する『神人』は、巫女や神官等の神に近しい者や神に相性が良く且つ気に入られた人間が強い神気――主に強い神の加護や寵愛――をその身に受けたりする事で進化した存在で、大抵は『半神半人』よりも人間よりなのだが……トレンツは……逆の、ようだな……」
「神寄り、なんだ……」
アルビオンは普段は誰に見せない複雑な表情でトレンツを見下ろし、良則は苦笑しながら彼の回復を続けていった。
「ぶあっはっはっは!!最高!!やっぱお前らは全員面白いな!!」
人間化中のウリエルは腹を抱えて爆笑していた。
あまりに珍しい現象がツボにはまったようだ。
「……取りあえずは、最悪の結果じゃない…よな?」
「……」
「黒?」
「……」
「何か言えよ?」
「……」
黒はそっと視線を逸らした。
何と答えればいいのか迷っているようだ。
「んじゃ、トレンツが目を覚ます前に記念の落書きタイムといくぜ☆」
「おい!勝者に何しようとしてんだ?」
「ほら~。ファインプレーをした奴にはイタズラするのは世界のマナーじゃね?」
「ねえよ!そんなマナー!」
「いいから、あんたは下がってなさい!!」
バカは再度飛んだ。
前の3倍ほど高く。
「あっはっはっはっはっは!!」
ウリエルは変わらず爆笑中だった。
「にしても、加護が強いとみんな人間卒業するのか?」
「なかなか卒業~しない人もいるよ~!けど、時間の問題~♪」
「ああ」
「奴か」
「……」
「誰のことだ?」
「さあ?」
慎哉と冬弥は首を傾げながら回復作業を見守った。
「あ!やっと《風神の契約(+3)》の詳細が見れた!うわあ……」
「これは……」
「ええぇ……」
回復と同時並行で行われていたステータスの解析の結果を目にし、勇吾達はまた顔を牽き吊らせた。
【風神の契約(+3)】
・風を司る神々の試練を全て勝ち抜き結ばれた契約。既に契約ではなく寵愛も同然。
・複数の契約が1つに統合されており、その詳細は下級神級以下では閲覧できないよう隠蔽されている。
・契約者が特定条件を満たすごとに契約の内容は更新されていく。
・現時点での契約内容は以下の通りである。
《風王神アイオロスの契約》
・風属性魔法及び氷嵐術使用時、使用魔力が3割減少し効果は3割上昇する。
・風属性と風属性無効化が追加され、この属性が半永久的に消えない。
・空気の存在しない場所でも常に新鮮な空気を供給される。
・風の精霊及び妖精を無条件で召喚・使役する事ができる。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給を受ける事が可能になる。
・師弟関係を結べる。
《北風神ボレアスの契約》
・風・氷属性魔法及び氷嵐術使用時、使用魔力が2割減少し効果は2割上昇する。
・氷属性と氷属性無効化が追加される。
・極寒地または冬季の環境下では攻撃力及び敏捷力が2割上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給を受ける事が可能になる。
《南風神ノトスの契約》
・風・火属性魔法使用時、使用魔力が2割減少し効果は2割上昇する。
・火属性と火属性耐性が追加される。
・極暑地または夏季の環境下では体力と防御力が2割上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
《西風神ゼピュロスの契約》
・風・土属性魔法及び豊饒術使用時、使用魔力が2割減少し効果は2割上昇する。
・土属性と土属性耐性が追加される。
・冷涼地または秋季の環境下では知力と精神力が2割上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
《東風神エウロスの契約》
・風・水属性魔法及び氷嵐術使用時、使用魔力が2割減少し効果は2割上昇する。
・水属性と水属性耐性が追加される。
・温暖地または春季の環境下では魔力と器用度が2割上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
《風神風天の契約》
・攻撃力・防御力・敏捷力が2割上昇する。
・乱れた大気の乱れを鎮める事が出来る。
・即死攻撃から護ってくれる。
・武術の習得能力が上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
・師弟関係を結べる。
《風神シナツヒコの契約》
・風属性魔法及び氷嵐術使用時、使用魔力が2割減少し効果は2割上昇する。
・回復力が上昇する。
・天候予知が出来るようになる。
・近くに居る仲間の風系統の能力が1割上昇する。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
《嵐神セトの契約》
・風・雷・水属性魔法及び氷嵐術使用時、使用魔力が3割減少し効果は3割上昇する。
・雷属性と雷属性無効化が追加される。
・戦闘時、全能力が3割上昇する。
・成長に限界の壁が無くなり、努力次第で何所までも成長できる。
・自身と同じ属性の存在と契約し易くなる。
・何時でも交信が可能になる。
・神力の供給が可能になる。
・師弟関係を結べる。
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全部で10柱以上の神と契約している事が判明した。
「「多過ぎだろ!?」」
慎哉と冬弥が全員の気持ちを代弁した。




