第339話 黎明の王
――玉座の間――
【名前】『黎明の王』エリオット=M=ゴッホ
【年齢】――閲覧不可―― 【種族】――閲覧不可――
【職業】王 【クラス】――閲覧不可――
【属性】無(全属性)
【魔力】9,590,000/9,590,000
【状態】正常
【能力】――閲覧不可――
【加護・補正】――閲覧不可――
ステータス情報が殆ど閲覧できない。
辛うじて分かるのは属性と、圧倒的なまでの魔力量だけだ。
900万超えとはな………。
「「わあ~チ~ト~!」」
バカ共が何か騒いでいるが無視だ。
多分、俺には見えない『王』の情報がバカの“目”には見えているんだろう。
「――――フッ」
「!」
奴は俺を見て不敵に笑った。
俺の事等、全てお見通しだと言ってるかのような態度だ。
ムッとなったが、ここは抑えておく。
実際、単純な魔力量の差では奴の方が圧倒的に上だ。
それにアベル達の主人である時点で警戒すべき相手である事は明白だ。
招待にのって来たものの、安易に油断できない相手だ。
「――――警戒しなくてもよい。ここでお前達をどうこうしようとは思ってはいない……と言ったところですぐには信じてはくれないだろうな?」
「――――!」
「若いな。それなりに場数を踏んでいるようだが、こういう場でのやり取りはまだ未熟なのがよく見てとれる」
奴は面白そうに俺達の反応を見ていた。
その目は、どこか懐かしいものを眺めているようだった。
「なあなあ、記念にあの柱に名前彫っていかね?」
「10円疵~」
「やめろ!!」
「……斬られたいか?」
「空気読め!」
「バカ!!」
「ねえ、焼却炉は何処?」
「あそこにダストシュートがあるよ♪」
冗談抜きでバカをダストシュートに放り込んだ。
「さて、前置きはここまでにして、本題に入ろう」
空気が重くなった。
と同時に、奴の周りにさっきまで居なかった4人の姿が現れた。
「ジャン=ヴァレッド……」
1人は緑のマントを纏った甲冑の騎士、夏の終わりにあったスイスの一件で会った男だった。
あの時と変わらずといった様子で、俺達を見ても気にもとめてないように見えた。
「――――ディオン」
「………」
黒は俺の後ろで小さく呟いた。
ジャンの隣に立つ死神ピエロ。
北海道の事件で遭遇した黒の古い知人、ディオン=オミクレーだった。
ジャンと同様に今は神器を持ってないが、その立ち姿には隙がなかった。
「「あ!ファラフ!」」
俺達の一番後ろにいた双子、慎哉と冬弥はついこの間会ったばかりの……未だに性別不祥な天使の転生者、ファラフの姿を見て声を上げた。
ファラフの方も、慎哉と冬弥を見て軽くお辞儀をした。
そしてファラフの横には……
「あ、おっぱい!」
「……誰の、ことかしら?」
バカが戻ってきた。
そしてルビー=スカーレットをまた怒らせた。
アベルとジュードは笑いを必死に堪えている。
おい………
「お前達を招待した理由は3つ、1つは直にお前達を見てみたかった。2つ目は――――」
奴はバカを視界から消したようだ。
「――――お前達の持つ『神器』、その全てを譲り受けたい」
「「「――――!!」」」
俺達の持つ『神器』が欲しい、か………。
ここまでは予想通りだな。
『黎明の王国』は『神器』を集めている以上、俺達が持っている『神器』も狙う可能性は最初からあった。
俺が持つ『布都御魂剣』と『神度剣』、何時の間にかバカが所有することになった『ピナーカ』、どれも『神器』の中では格が高い代物ばかりだ。
世界中の名のある『神器』を集めていコイツラが狙うのは明白だ。
だが、その先が―――目的が不明だ。
単にコレクションにしたいという訳ではないだろうが……。
奴らの目的……神器……天使……黎明……考えろ、考えるんだ!
神器は神話の象徴、神の一部であり神の力そのもの、神を殺す武器、世界の理に干渉……まさか!
「――――“理”に、干渉する気か?」
「惜しいな。正解ではないが、不正解でもない」
「………」
奴は……エリオットは感心する目で俺を見る。
はずれはしたが、俺の読みを称賛しているかのようだ。
けど、正解じゃないが不正解でもないか……。
つまり、「“理”に干渉する」は過程の一部であるか、結果的に「干渉する」ことになる行為が奴らの目的ということだな。
「巨乳の姉ちゃんを超乳の女神にするとか?」
「陛下!あのバカの処刑の許可を!」
「落ち着け、ルビー=スカーレット」
「3サイズは~、上から順に……」
「――――」
「ぷぎゃ!」
バカその2はアルビオンに物理的に黙らされた。
あいつらを連れてきたのは不正解だったな
留守番をさせるのも不正解だが。
それはさておき、エリオットは俺の言葉を待っているみたいだな。
神器を集める理由……いや待て、そもそも神器は……!
「……お前、神を引き摺り下ろす気か?」
「ほう?」
「勇吾!それって……!」
「当たりか。意外と簡単すぎるベタな答えだな?つまり、お前ら『黎明の王国』は――――」
俺は、エリオットの笑みで確信し、導き出した答えを言った。
「――――お前ら、『創世の蛇』の《盟主》を本気で全員殺す気だろ?」




