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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第14章 天使編
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第316話 VSアザエル①

『――――』


『人間…神龍に神狼……』


 勇吾達の初撃を防ぎ切ったのは熾天使サリエルと、堕天使アザエルだけだった。


 それ以外の下位の天使と堕天使は今の勇吾達の攻撃を受け、ある者は深手を負い、ある者は実体化が解け、ある者は消滅した。

 元から神クラスである黒王は当然だが、今の勇吾達の力は下位の天使や堕天使を軽く圧倒するだけの力があった。


 魔力だけなら最低でも中位の上、黒王に至っては上位の上、サリエル達と同等以上はある。


 そこへ更に、今ここにはいない仲間の規格外の能力により手に入れた数々の能力が加わり、並の天使や堕天使など歯牙にもかけないレベルとなっていた。


 サリエルやアザエルは、そんな勇吾達の強さをすぐに理解し、この先に進むには彼らを排除しなければならないと武器を構えた。



『―――()から察するに、“黒”の王族……そうか、貴様が新しい『黒の龍王』か?』



 両手に剣を構えたアザエルは黒王に話しかける。


 アザエルは堕天する以前から現世を監視する役目を持ち、それ故に現世の情報には他の堕天使よりも精通していた。


 故に、先日龍王の一角が代替わりした事も知っていた。



『――――『神により強くされた者(アザエル)』、『神の命令(サリエル)』、お前達を排除する』


『…………!』


『――――』



 一方の黒王は、話し合いで解決できる相手ではないと早々に割り切っていたので、軽く返事をすると同時に二撃目を放った。


 同時に、勇吾達3人もアザエルとサリエルを挟み込むように横に回り攻撃を再開する。



――――キンッ!



 黒王の2撃目をかわしたサリエルは勇吾と鎌と剣を交える。


 一方は天界で最高硬度を誇る金属でできた神器、一方は日本神話に登場する2振りの神剣、どちらも武器としての性能は負けず劣らずで、数秒ほど拮抗していたが、持ち主の現状の力(・・・・)の差により拮抗はすぐに崩れ、サリエルは鎌ごと弾かれた。



『――――っ!』


「はああああ!!」



 勇吾は一気に加速する。


 魔法で極限まで強化した肉体が生み出す速度は音速を優に越え、傍からは姿が消えたように見える域に達した。


 そして2振りの神剣による猛攻に続く猛攻、間に詠唱を破棄した魔法も混ぜながら勇吾はサリエルに攻撃を続けた。



(大分、今の力にも慣れてきたようだな。この分なら、暫くは1人でも問題ないだろう。サリエルが“奥の手”を使うまでは……)


『異教の龍よ、消え――――』


『遅い』



 黒王は蠅や蚊を潰すかのように初撃で消えなかった天使や堕天使達を倒していた。


 勇吾と真の契約を結んで以降、龍王を継承した際に受け継いだ力や、とある反則的な力も加わった黒王はそれ以前までよりも遙かに越える力を存分に発揮させる事が出来るようになっていた。


 元々黒王は龍族の中でも「古代種」とも呼ばれる氏族の1つ、「黒の氏族」の王族であり、並の龍族とは比較にならない程の潜在能力を秘めており、同時に龍族の中でも歴代最短記録に近い年月で『神龍』に至った天賦の才も持っていた。


 周囲からはあと数百年で黒の氏族の始祖である『永久(とわ)と闇天の龍神』に次ぐ新たな龍神になるのではと囁かれていたが、最近の血気盛んな若い龍族には珍しく落ち着いた性格の黒王はそういう事にはあまり興味はなく、ほんの数年前までは故郷の森の奥で静かに瞑想を続ける日々を過ごしていた。


 黒王は理解していた。


 殆どの人間からすれば永遠とも言えなくもない時間を自分は持っており、10年や100年を生き急ぐように過ごす意味など自分には無いということを。


 それ故、神龍に至って以降は静寂の中で100年以上の時を過ごすつもりでいた。


 だが、その静寂は100年も続かず、当時まだ幼さの残る1人の少年によって破られた。


 それから5年以上の月日が過ぎた現在、黒王は龍族全体から見ても明らかに異常な速度で力を増していた。



『《龍鱗を断つ雷刀(ネレ・スパダ・ディ・フルミネ)》!!』


(《滅龍魔法》か)



 堕天使の1人が放ったのは、対龍族用に特化した魔法だった。


 高い戦闘力を持つ龍族を殺すためにあるその魔法は、無数の黒い雷の刃となって黒王の全身をバラバラに解体する、ことはなかった。



『―――――』


『ギャガッ――!?』



 堕天使もさぞ想定外だっただろう。


 龍を殺す魔法、それも100万を越える魔力をこめられた、下手をしたら(結界内の)サンフランシスコどころかカリフォルニア州を壊滅させられるほどの威力のある天使の大魔法を平然と防がれたのだから。


 それは黒王の《中立たる龍神の天鎧》の防御効果によるものだが、その堕天使がその事に気づくことはなかった。


 気付く暇など与えられず、全身を黒い雷に変えた黒王の一閃で消し炭になったからだ。



(―――依り代。若気の至りだろうが、安易な事をしたものだ……)



 堕天使の魂が消滅し、あとに残された堕天使の器にされていた青年の体を拾った黒王は半ば呆れつつ、気を失っている青年を結界の外へと転送した。



『――――まだ、戦うか?』


『『『――――ッ!!』』』



 天使と堕天使達は畏縮していた。


 この場にいるサリエルとアザエルを除いた天使と堕天使は片手の指で数える程度しかいない。


 4人の初撃に耐えただけはあり、全員中位クラス以上の天使と堕天使だが、黒王との圧倒的な力の差を前に恐怖していた。


 既に彼らに勝機は無い。


 だが、戦いはまだ終わってはいない。


 黒王は天使と堕天使達が自分の言葉で萎縮して作った大きな隙を突き、《龍王之仙術》で魂を瞬時の拘束する。



『――――《神龍之煉獄炎(パーガトリアル・ブレス)》』



 一瞬だった。


 ほんの一瞬の紅蓮の炎により、天使と堕天使達は消滅し、残ったのは堕天使達が器にしていた人間だけだった。



(ここは終わった。後は……)



 黒王は攻撃の手を止めたが警戒は解かなかった。


 上では良則達が、すぐ横では勇吾達が戦闘を続けている。


 そして真下では、殺気こそ無いが、少々荒れた空気が伝わってくる。



(…ラジエルはまだ現れないか)



 黒王は戦場の外の警戒も怠らなかった。


 今回の本来の目的から言えば、現状の敵はおまけでしかなく、本命は未だに姿を表さないラジエルである。


 余程余裕があるのか、それとも目的が『ラジエルの書』の回収以外にあるのか、全く動きを見せない。



(気にはなるが、今は――――)



 今は熟考をすべきではないと、黒王は意識を戦いに集中させた。






--------------------------


――慎哉サイド――


『オラアアアアアア!!』



 目の前の堕天使野郎に爪撃を飛ばす。


 超低温で岩も鉄も粉砕する一撃だが、何故かさっきから敵に当たらずはずしてしまう。



『――――クソッ!!』



 冬弥も同様だ。


 爪も牙もブレスも、さっきから一発も当たらない。


 敵の攻撃を回避する能力でも持ってるのか?



『…力は強大だが、それを十分に生かすだけの技量は無いようだな。『白狼(ホロケウ・カムイ)』の御子とはいえ、所詮は子供か』



 あ、なんか敵の全てを見切ったみたいな目をしてやがる。


 漫画やアニメでよくいる自称頭脳はキャラみたいな堕天使だな?



〈実際、アザエルは智に長けた堕天使だ〉


〈―――(ヘイ)!〉



 頭に黒の声が聞こえてきた。


 あっちは終わったのか?



〈堕天する以前のアザエルはエジプトの守護天使であり、同時に魔術に長けた“水”をシンボルとする智天使の1人でもあった。人間に魔術を教えた罪で堕天使になり、その後はお前達も知っているソロモン王に知恵を授けたりもした、武力よりも知力に秀でた堕天使だ〉


〈水?そういえば、なんだかちょっと湿っぽい様な感じがするな?〉


〈締めっぽいっていうか、さっきから霧か靄みたいなのが見えないか?〉


〈それはアザエルの魔術《惑い蝕む妖霧(ルーラー・オブ・ミストメイズ)》、その霧の中では魔力の方向(ベクトル)を支配され、魔力による攻撃は全てアザエルに当たらないと聞く。さらにはその霧を吸飲した者は体内を侵食されるとも……〉


〈〈それ、ヤバくね?〉〉


〈――――考えろ〉



 黒、厳しい!


 なんて思ってたら、急に気分が悪くなってきた。


 なんか、体内の魔力が澱んできてるというか、別物になってきている気がする。


 これが侵食ってやつか。



『グッ……!』


『如何に優れた力でも、お前達には宝の持ち腐れだったな。消えろ!』



 魔法の集中砲火が襲ってきた。


 俺達の行動を先読みしてるかのように全部命中する。



『『グアアアアアッ!!』』



 激しい激痛が俺達を襲う。


 攻撃範囲…いや影響範囲を固定しているせいか、一発一発の攻撃の威力が凝縮されていて大きい。


 それが数十、百と全部命中、防御を全開にしてもとても防ぎきれるものじゃなかった。


 しかもこの攻撃、俺達の魔力も同時に削ってる!



『―――他愛ない。だが、お蔭で魔力を温存……何?』


『これで、終わりなわけ……』


『ねえだろ!!』


『――――!!』



 俺達は目の前を噛みついた(・・・・・)


 奴の言ってる通り、俺達は勇吾達よりもずっと未熟だ。


 デカい力もまだ十分に使いこなせてはいない。


 けど、それと戦いの勝敗は別だ!



『これは!?』


『食い尽くさせて貰うぜ!!』


『お前の全てをな!!』



 さあ、反撃開始だ!






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