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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第14章 天使編
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第311話 原典

――――カバラの『三大原典』


 カバラとはヘブライ語で「伝統」「伝承(口伝)」を意味するユダヤ教の神秘思想、または秘法を伝承していく宗教結社を意味する。


 このカバラで有名な書が3つあり、それぞれ『創造の書(セフェル・イエツィラー)(形成の書)』、『光輝の書(セフェル・ハ・ゾハール)』、『光明の書(セフェル・ハ・バヒル)』と言い、これらは『三大経典(・・・・)』とも呼ばれている。


 だが、これらはあくまで人間が記した書物であり、何の特別な力を持つものではない。


 『三大原典(・・・・)』は『三大経典』と同じ名前を持ちながらも、その本質は「3冊全てを持つ者は神にも等しい力を持ち、宇宙を創造する事ができる」というものだ。


 だが、俺の知る限りこの『原典』は存在はするが、何処にあるのか分からない“幻の『本』”だった。


 その為、詳細は不明だが3冊の内容を大まかに述べると以下の通りだ。



『創造の書』――――宇宙(世界)を創造する“力”、“奇跡”が秘められてある。


『光輝の書』――――偉大なる神の“叡智”が秘められている。


『光明の書』――――『生命の樹(セフィロト)』を創造法が記されているか、それ自体が“種”である。



 ここに出てくる『生命の樹(セフィロト)』、これには様々な解釈があり、「エデンに生えている“知恵の木の実”が生る樹」、「この世の理」、「生物が神に至る道筋」、「神の力そのもの」、「この世の全てを創造するシステム」等、様々な意見があり、その正しい答えは俺達も知らない。


 『生命の樹』の構造は10個の『天球(セフィラ)』とそれを繋ぐ22個の『小径(パス)』で成り立っている。


 『天球(セフィラ)』にはそれぞれ数字や色、宝石、惑星など象徴するものがいくつもあり、それぞれを守護する天使が存在するが、その辺りの話はここでは割愛する。


 尚、『生命の樹』には真逆の存在である『邪悪の樹(クリフォト)』があるとされている。







--------------------------


「『蛹屋』は既に『創造の書』と『光輝の書』の2冊を所有しているようだな。本当に面倒な話だ。」


「嘘だろ……。いや、『ラジエルの書(セファー・ラジエール)』がこの町にあるんだから、別におかしくない…のか?」


「確か、『三大原典』と『ラジエルの書』は同一の物と考える説もあるよね?」


「ああ、性質がよく似ているからな。というより……」



 “元”は同じなのかもしれないな。


 どっちも、創り主は同じ筈だし、伝承によれば同じ人物が所有していたとも云われてるからな。


 それよりも、仮に『ラジエルの書』と『光明の書』が同じ場所にあるとしたら、ラジエルは両方を狙っている可能性があるな。


 天界は今はアレだし、優位に立つ為に欲しがる天使がいてもおかしくはない。


 そのことを良則達に伝えると、



〈フラグ立ったな!〉


〈立ったな!〉



 トレンツとアルバスは頷き合いながら心で呟いた。


 それは何というか…



「面倒だな」


「分かってるなら言わなくていい」



 どう考えても厄介な流れにしかならない気しかしないな。


 神話級に取扱超注意な『本』が1ヶ所にある。


 幾らアメリカ政府が管理する施設に厳重に保管されていたとはいえ、今まで何も起きなかったのは奇跡に近いな。

 それもこれも、この国に大魔王一家が居たせいなんだろうけど。



「あのクソ親父…何でそん物を…!」



 泉希は拳をテーブルにぶつけながら悲痛にも似た声を漏らした。


 「親父」か…少なくとも、泉希にとって『蛹屋』は父親同然の存在なのだろう。


 そして『蛹屋』は、自分の目的等について泉希達には何も言わず、単独で目的を果たそうとしている。


 目的の内容は不明だが、あまり言い予感はしないな。



〈――――勇吾〉


〈黒?〉



 俺が『蛹屋』について考えていると、俺の後ろに戻った黒が俺達全員に《念話》で話しかけてきた。



〈どうした?〉


〈どうしたの?〉


〈勇吾、ギルドの公式記録によれば、『蛹屋』は――――だったな?〉


〈ああ……って、黒!?〉



 黒の質問に、俺は思わず声を上げそうになった。



〈どういう事だ?黒、お前は何を視たんだ(・・・・・・)!?〉


〈まだ確信は無いが、あの少年の記憶の中で奴が使っていた言語は――――だった。それに、より深く見ようとした瞬間、奴の仕掛けていた“術”に抵抗(レジスト)された。〉


〈おいおい、それって……〉


〈『蛹屋』、俺らが思ってるより大物じゃね?〉


〈どうするのよ?先にギルドに報告しておいた方がいいんじゃない?この流れだと、想定外の事態に発展する可能性があるわよ〉


〈うん、僕も連絡しておいた方がいいと思うよ。なんだか、急に嫌な予感がしてきたし…〉


〈フラグ確定したー!!〉


〈死亡フラグは立てるなよ?〉


〈そこ!五月蠅いわよ!!〉



 まさか、な……


 けど、そうだとすると『蛹屋』の行動にも、今まで捕まらなかったことも説明が付く、か?


 何時もの事ながら、予想以上に事態が複雑且つデカくなってきたな。


 最初はラジエルの調査をしつつ、ロトの父さんの手掛かりを見つけるつもりだったのに、これじゃあまるで………



「――――取引がしたい!」


「!」



 俺達が念話会議をしていると、泉希が覚悟を決めた顔で俺に取引を持ちかけてきた。


 コイツラも『蛹屋』の件とラジエルの件が繋がっていると勘付き、互いに知っている情報を相応の対価(情報か金銭等)で交換するという内容の取引だ。


 向こうも本気らしく、さっき黒が勝手に《龍眼》で北星の()を覗いて得た情報を自分達の前払いだと強気で押してくる。


 黒の方は最初からそのつもりらしく、俺を一瞥して《念話》で確認してから泉希達に俺達がこれまでに集めた情報を伝えていった。


 そして先程慎哉から届いたばかりの情報を伝え終えると、泉希達の目付きが変わった。


 具体的には、昨夜、ラジエルが地上に下りようとした際に何者かの妨害を受けた辺りからだ。



〈あの顔は、心当たりがありそうね?〉


〈ああ、この様子だと、昨夜にラジエルを妨害していたのは『蛹屋』の可能性が高くなってきたな。そういえば、慎哉達を待たせっぱなしだな?〉


〈僕だけでも先に行った方がいいんじゃないかな?〉


〈そうね。このままだと、待ちきれなくなって独断で動きだしたりしそうな気がするわ。〉



 リサの言うとおり、慎哉(というかあの双子)の性格上、放置しっぱなしにしていたら独断で動き出す可能性はかなり高い。


 泉希達の取引は一旦中断して一緒に町の図書館に向かうか、最低でも1人を慎哉達の下に行かせた方がいいだろう。



「なあ―――」


「ちょっと―――」


「ドーナッツ食う?」


「パイ食べる~?」


「「…………」」



 俺と泉希がほぼ同時に口を開いたのと同時に、横から大量のドーナッツの入った紙袋を抱えたバカと、同じく大量のパイを抱えたバカが空気を読まずに割り込んできた。


 何でお前はこういう事に(・・・・・・)全力を注ぐんだ。



「……誰だ、コイツラ?」


「「「さあ?」」」



 (黒を除く)俺達は声を揃えて他人のフリをした。


 その事が気にくわなかったのか、ダブルバカはギャアギャア騒ぎ出した。



「さあ?って何だよ!俺ら、ベイビーの時から下着を共用した中じゃね―――」


「「「死ね!!」」」



 バカは1人死んだ。


 ドーナッツと一緒に空を舞いながら。



「お前ら、そういう……」


「変…」


「「「本気にするな(しないで)!!」」」



 この後、俺達は誤解を解くのに必死になった。


 本当に必死だった。


 その様子をパイを食べながら観賞しているバカその2には本気でイラッときた。


 あのバカ、後で締める!!



「みんな大変だね~。ん~?」



 物凄く他人事なバカは、不意に視線を町の中心部…より少し北に向けた。


 あの目、アレは何か不吉なものを見る時の目だな。



「魔女っ子大生~?」


「「「は?」」」


「おいバカ2、何を見つけたんだ?」


「ん~、魔女っ子女子大生がカトリックDTとセ○ク……睨まないで~殺気出さないで~。え~と、…しながら魔女儀式?」


「何だと!?」


「あ、成功した~!」


「って、おい!!」


「冥界へのゲートオープンした~!あ、ペ〇シが空になった」


「「「それはどうでもいいだろ(でしょ)(よ)!!」」」



 ほぼ全員で空になったペットボトルを振っているバカをツッコんだ。


 女子大生が魔女儀式しているよりペ〇シコーラが空になった方が重大なのか、お前は。


 いや、そんな事より―――



「あ、PTAがお祈りで天界の門をオープンした~!」


「「「はあ!?」」」



 女子大生の悪魔召喚の次はPTAが礼拝で天使召喚かよ!?


 大丈夫か、サンフランシスコ!?


 俺達は思い思いにツッコみをバカの意味不明な言語に混乱する中、それは空と地下の両方から同時に襲い掛かってきた。




―――――――――――!!!!




 その日、サンフランシスコの天と大地が震え、2つの“門”が同時に開いた。









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