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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第4章 十種神宝編
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第28話 幼馴染達+α 動く!  in 異世界 Ⅱ

久しぶりに勇吾の幼馴染のお話です。

度々話に出てくる馬鹿も登場します。

――凱龍王国 竜江――


 勇吾達がアンドラスを倒してから3日後、異世界の凱龍王国の首都竜江に建つ城、通称凱王城(がいおうじょう)の中を1人の少年が歩いていた。


 凱王城は王族の住居ではなく政治の中枢と言う面が強く、城内で暮らす王族も基本的には現国王のみである。その国王も1年の多くは場外に建てられてある離宮――――と言うより別邸で暮らしており、城は専ら政治家たちの職場となっている。


 この国の政治は議会制をとっており、議員に選ばれるには国王以外の王族でも選挙で国民に選ばれないといけない。そして議会における国王の立ち位置は基本的に議長と同等となっている。国王は直接意見する事もでき、その意見に議員達は自由に意見する事ができる。そうやって作られた法律等を最後に国王が承認するのがこの国の政治の基本的な部分である。


 近年の国王は名君と呼ばれる者が多いため王族全体の評判も高く、政治に携わらない者でも自由に出入りする事が可能である。ただし、最近は色々あって王族に関係なく自由に出入りしているのではあるが―――――。


 場内を歩く彼は王族だった。幼い頃から家族に連れられて場内を歩いているので城内で働く者達とも今では親しい者が多く、今日も周囲から笑顔で出迎えられた。



「おはようございます。良則殿下(・・・・)。」


「おはようございます!白門(はくもん)さん、兄さんは執務室ですか?」



 スーツを着た初老に見える男性から挨拶を受ける少年、護龍(ごりゅう)良則(よしのり)はいつも通りの挨拶を返して目的の人物の場所を訊く。



「ええ、陛下(・・)は今朝から執務室に――――。本日は出発前の挨拶ですか?」


「ハイ!みんなも(ここ)の転送装置で出発する事になったので、その手続きも兼ねて来ました。」


「そうですか。・・・・あのう、非常に言いにくいのですが、本当にあの方(・・・)も・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・はい、まあその――――――――。」



 ある人物の話になった途端、良則も白門と言う男性も複雑な表情になる。



「――――――――しばらく仕事が増えそうな気がします。」


「・・・・すみません。僕の従兄弟が毎回ご迷惑をお掛けして――――。」


「い、いえ!殿下がお気になさる事では―――――!!」



 頭を下げて謝罪しようとする良則を白門は慌てて止め、件の人物に関する話を無理やり終わらせる。その後は適当な世間話を簡単に済ませて別れた。


 城内を移動すると女性職員からの視線が痛かった。敵意ではなく、そのあまりに好意的な視線が良則は痛かった。



「(見て!良則様よ!!)」


「(ラッキー!朝から殿下の顔が見れるなんて、今日はいい日になるわ!)」



 良則は基本的に美形である。


 良則に限らず、この国の王族は基本的に美男美女であるため、政治の場だけでなく娯楽の場でも人気が高い。特に良則の姉は国民的アイドルであり、実際、数年前からは実力で歌手デビューを果たしている。


 良則もまた、顔も性格も良く、更には頭脳明晰で戦闘力も高いため上の兄弟同様に信頼も人気も――特に女性から―――極めて高いのである。


 いろいろ苦労もあり、凱王城の上層階にある部屋の前に来た良則は、中の

気配を確認したうえで扉に付いた呼び鈴を鳴らそうとする。



「―――――そのまま入っていい。」



 中からの声を聞いた良則は、その言葉通り遠慮なく扉を開けて中に入った。


 執務室の中は広く、中央にある執務机から両端の壁までの距離は軽く10m以上はあった。その部屋の中を大小無数のPSが展開され、それらはネット上の情報やテレビ映像から各所から送信されてくる情報まで多種多様なものだった。


 良則は執務机で仕事の手を休めて紅茶を飲む人物に笑顔で駆け寄った。



竜兄(たつにい)ィ―――――!」


「よく来たな、良則。」



 笑顔で迎える良則と同じ黒髪黒目の青年は凱龍王国現国王(・・・)であり、良則の一番上の兄でもある護龍(ごりゅう)竜則(たつのり)だった。彼は昨年、若干18歳の若さで父親から王位を継承し、その才能を十二分に発揮してこの国はおろか、この世界にその名を轟かせていた。



「良則、お前も今年で15なんだからこういう癖は控えたらどうだ?」


「あ、ごめんなさい。」



 そう言いつつ、弟の頭を撫でる竜則も嫌ではないらしい。

 良則は自身のPSや手に持っていた書類を渡し、当初の目的である手続きを済ませると竜則の入れた紅茶を飲みながら雑談をしていった。



「―――――と言う事だから、帰るのは不定期になると思うよ。」


「そうか、まあ、家族の事は心配するな。正則(まさのり)は寂しがるがだろうが、俺も基本的に毎日家に帰るから大丈夫だ。それに、最近は正則も友達といる方が楽しいみたいだからな。」


「ハハ、確かに正則は学校が終わってからも遅くまで友達と一緒にいる時間がながかったっけ?それはそれで問題なんだけど・・・・・。」



 2人は歳の離れた末弟の話をする。彼ら兄弟は五男一女の6人兄弟で、竜則は長男で良則は四男、良則より10歳下に末弟の正則がいる。



「―――父さんも、王位を退いてからは正則の育児と馬鹿の・・・・まあ、とにかく最近は正則は怒られる事が多くなったな。」


「そうだね、父さんは元々イイ意味で怒るのが得意だから近所の子供達も――――――あ!」


「兄様――――――!!」



 会話の途中で部屋の扉が開き、5歳児位の男の子が元気良く中に入ってきた。



「噂をすれば来たか正則!」



 入ってきたのは2人の愛すべき弟の護龍正則だった。良則をそのまま幼くしたような正則は竜則に飛びつき、竜則も正則を抱き上げて膝の上に座らせた。



「良則兄様、これから異世界に出発するんですか?」


「そうだよ。しばらく留守になるけど大丈夫?」


「ハイ!今日は剛則(たけのり)兄様が帰ってくるから大丈夫です!」


「そうか、剛則も帰ってくるの――――――――って、誰から聞い・・・・アイツか!?」



 無邪気な弟を撫でながら、正則が何所で兄のスケジュールを知ったのか気付き、開閉したばかりの扉の方へ視線を向ける。



「グッドモーニング!みんなのファミリー、丈君と――――――」


「やかましい!!」



 竜則は即座に厚い本を顔面に向かって投げつけた。


 鈍い音と共に入ってきた馬鹿な格好(・・・・・)をした少年、護龍(じょう)は竜則達の父方の従兄弟にあたり、良則と同い年生まれである。



「――――チッ!無傷か・・・・・。」


「おいおい、小さなプリンスを連れて来たガイドボーイにその仕打ちは酷くね?」


「黙れ馬鹿!ワザと間違った日本文化の格好しているガイドが何所にいる!!」


「ここだ!」



 また本が飛んできた。


 丈のしている格好はまさに竜則が言った通りの間違った日本文化像だった。頭にバカ殿のカツラと烏帽子、上半身に甲冑と羽織を着るなど時代もバラバラな格好、普通に考えれば異国文化を勘違いしていると見えるが、彼の場合はワザとやっている訳である。



「―――丈、もしかしてその格好で行くの?」


「だって日本だぜ?俺らの祖父ちゃんの故郷なんだからそれなりの格好で行くのが礼儀じゃね?」


「「やめろ(て)!!」」



 竜則と良則は本気で嫌がる。丈は顔も頭もいいが、やる事なす事が馬鹿すぎるのが全部台無しにしていた。


 正則は竜則の膝の上でポカンとしていた。



「―――兄様?」


「―――正則、ああいう人間にだけは絶対になったら駄目だ。人間として!」


「正則、お兄ちゃんはこれからバ――――丈達と一緒に行くけど、竜兄達の言う事をちゃんと聞くんだよ!」


「・・・・?うん。」



 2人は弟に悪影響が無いように念入りに注意し、正則も兄達の表情から何となく察して肯いた。


 竜則は正則を抱き上げ、そのまま執務室から出ようとした。



「―――――正則を友達の所まで送ってくる。良則、ついでに丈も『奴ら』には注意しろよ。」


「うん!」


「オーケー!」


「それと、まだ詳細は不明だが向こうの各地で『奴ら』以外の組織のものと思われる時空転移が確認されている。そっちにも注意して行動するんだぞ。」


「マジで!?ここに来て新組織って、行った直後に関わっちゃうパターンじゃん!」


「お前なら関わっても死なないだろ?」


「扱い酷くね?」



 それ以上は何も言わず、竜則はそのまま出ていった。




--------------------------


 その後、良則は丈と共に執務室を出て行った。途中、丈を無理矢理―――職員達も加わって―――着替えさせ、城の下層部にある転送装置のあるエリアに来た。


 そこには旅の同行者が既に集まっており、良則を見ると手を振って呼びかけた。



「おーい!早く来いよヨッシー!」



 幼馴染の1人、黒河トレンツが大声で呼びかけ、丈は大きく両手を振りながら駆け寄って行った。良則も後から走って行き、旅の同行者3名と合流した。



「ゲッ!やっぱり来たのね、この馬鹿!?」


「あれ?それってツンデレってや――――――グホッ!」


「ち・が・う!!!」



 丈は痛い場所(・・・・)に一発入れられて床にのた打ち回った。


 良則達3人はいつもの光景に苦笑しつつ、とりあえず異世界への出国手続きに入る。国内を移動する際は必要ないが、異世界へ移動する際は移動先でのトラブルに迅速に対応するためこの世界の住人全員に正規の手続きが義務付けられている。それは王族といった身分に関係なく行われ、その情報は厳重に管理されている。


 良則達は荷物を引きずり(・・・・)ながら手続きをスムーズに済ませ、異世界移動用の転送装置の前まで来る。装置は半径20mの円型のステージの周囲を十本の柱が囲んだものだった。良則達は職員の指示に従って装置の中に入って行った。



「あ、そう言えばロト君達は大丈夫なの?」



 良則は思い出したようにリサに問いかけた。



「大丈夫よ。出て行く時も挨拶していったし、今は正則君とかいるから心配ないわよ。」


「――――そうだね、ちょうど今頃は一緒に遊んでるだろうし。」


「そういや、ヨッシーの兄ちゃんがマサ坊と出て行く気配がしたな。」


「トレンツ、王様ってよばなきゃ・・・・・。あ、ロト君達って、例の勇吾が連れて来たって―――――。」


「そう言えばミレーナはまだ会った事なかったわね?あの子達は――――――――――。」



 ミレーナはここには居ない子供達の事を問いかけ、リサがそれを簡潔に説明する。自分達にしか聞こえない様に注意しながら――――――――――。


 と、ここで馬鹿が起き上がった。



「なあなあ、いっそ連れてけばよくね?」


「―――――駄目よ!」


「そうだよ。今の地球は色々危ないし、それに勇吾が許さないって!」


「別の意味だと、良則も駄目だと思うぜ?」


「うっ・・・・・・・。」


「よし、お前も俺の仲間だな!!」


「「一緒にしない!」」



 馬鹿を少女2人がツッコみ、それをトレンツは笑いながら眺めた。


 雑談が進む中、足元の転送装置が光り始めた。装置を囲む柱も発行し始め、異世界への移動が始まった事を知らせた。



「よっし!じゃあ、勇吾の驚く顔を見に出発だぜ!!」


「なあなあ、着いたらアキバに行かね?」


「「「ダメ!!!」」」



 直後、馬鹿への突っ込みが合図のように装置から光の柱が飛び出し、5人を飲み込んで異世界へと転送した。光は数秒で消え、後に残ったのは誰もいない装置だけだった。









・今の王族は美男美女が多いですが個性の強いキャラも多いです。丈もその中の代表格の1人で国家公認のバカです。

・感想お待ちしております。


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