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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第13章 神殺し編
304/477

第291話 一夜明け

――京都市内(慎哉サイド)――


 修学旅行3日目は班別自由行動の日だった。


 昨日は色々有り過ぎて今日に差し支えると思ったけど、神様達からの回復のお蔭で寝不足にもなることなく京都3日目を迎える事ができた。


 それと、神様達からは他にも謝礼を貰っている訳だが、それについてはまた後で説明する。


 兎に角、今日は存分に楽しむぞ!!



「京都グルメを食べ尽くすぞ!!」


「湯葉!!」


「ハモ!!」


「予算を考えろ!!でも食べたい!!」



 無茶を言う班メンバー達だったが、幸運にも(・・・・)土産物屋が並ぶ商店街で買い物をした時に引いた福引で「京料理満喫招待券」を当てた事により無茶が叶ったりする。


 いやあ、テレビでしか見た事がなかったけど、本当に美味しいんだな♪


 なんて幸せを感じながら次に向かったのは、有名な某映画村だ。



「松〇健は!?」


「里見〇太朗は!?」


「お前ら、京都に何を期待してんだ!?」



 そう都合よく俳優がいる訳ないだろう。



「あ!北守の弟!」


「え!?」


「慎哉?」



 俳優はいなかったが、代わりに弟がいた。


 どうやら、冬弥のところも今日は自由行動の日のようだ。



「うわあ!佐須・兄だ!!」


「マジで双子だ~!!」



 その後、俺と冬弥をネタに2つの学校の生徒達は仲良くなった。


 俺達は貸し衣装に着替えたり、体験学習をしたりと十二分に楽しい時間を過ごしていった。



「なあ、慎哉。」


「ん?」


「あれから考えたんだけどさ、今度、そっちの家(・・・・・)に行ってもいいか?」


「――っ!」


「やっぱさ、ずっとこのままって訳にもいかないだろ?」


「・・・だよなあ~。」



 俺は冬弥に同意した。


 昨夜の最後の1件は俺も冬弥も先にホテルに戻ったから直接立ち会えなかったけど、大まかな内容は今朝確認したメールを読んで知っている。


 まさか、すぐ近くに俺らと同じ境遇にあった奴がいるとは思いもしなかった。


 多分、あいつらは俺達以上にショックを受けているだろうな。



「それに―――いや(・・)、取り敢えず、俺の方から話しておく!」


「そっか。じゃあ、父さん達には俺の方から伝えておく!」



 俺らの場合、もう1つ解決しないといけない問題もあるからな。


 そっちは修学旅行が終わった後にでも、勇吾に訊いてみるか。



「―――おい!あっちに、沢口〇子がいたぞ!!」


「「マジ!?」」



 サイン貰わないと!!






--------------------------


――名古屋市 某飲食店(亮介サイド)――


「ほら、ミルクココアだ。それと苺のミルフィーユ。」


「・・・ありがとうございます。」



 僕は今、昨日訪れた瑛介さんがアルバイトをしているお店に来ている。


 隣には昨日と同じく渉くんがいる。


 昨日のショックから大分落ち着いてきているけど、それでもまだ完全には抜けきってはいないようだ。


 無理もない。


 僕だって、自分と瓜二つの人物に会ったり、その直後に出生の秘密を聞かされた時は頭が真っ白になってしまった。


 渉くんよりも早く立ち直れたのだって殆ど偶然、僕の双子の兄か弟の大輝くんと目が合って自分だけじゃないと気付けたからだ。



「それで、勇吾からはあの後連絡はきたのか?」


「うん、渉くんが生まれた病院の当時の担当医の人が『創世の蛇』と裏で繋がっていて、多額の謝礼を受け取って他にも違法行為を繰り返していたみたいです。僕の場合は、犯人が神様(・・・・・・)なので病院側は潔白だそうです。」


「そうか。しっかし、本当に迷惑な神もいたもんだよな。銀洸(バカ)に食われてしまえばいいのに!」


「それは・・・・。」



 僕の脳裏に、昨日の丈さんと銀洸さんの戦闘シーンが蘇る。


 『創世の蛇』の人達をバクバク、空に開いた穴から出てきた悪魔の腕をバクバク、そして敵陣から帰ってきたら口からゲロゲロ・・・・・・。


 あれは士郎さんから貰った能力(チート)らしいけど、結構酷いと思うよ。



「・・・・・・。」


「渉くん?」


「・・・死んだ父さん(・・・・・・)と母さんは(・・・・・)気付いてたのかな?」


「・・・・・・。」



 僕は何も言えなかった。


 両方の両親が生きている僕とは違い、渉くんの実の両親(・・・・)は彼が小さい頃に起きた火事で共に亡くなっている。


 渉くんの両親は正式には入籍はしておらず、お父さんは渉くんと同じ施設育ちで親戚は1人もいない。


 お母さんの方は役所に戸籍がないので親類がいるのか不明で、結局引き取り手が見つからず士郎さん達と同じ施設に入ったそうだ。


 昨日の蒼空さんの報告だと僕の本当の両親は勇吾さんの親戚の九条家の方で、渉くんのは火事で亡くなった方らしい。


 その亡くなった渉くんの両親が、渉くんの出生の真実を知っていたのかどうか、その答えを知る人間は何所にもいない。


 知っているとすれば、それは神様ぐらいだろう。


 あっ――――!



「・・・ライさん(・・・・)に訊いてみたらどうかな?あの(ひと)、結構隠し事とか多いし、他の神様ともコネがあるみたいだし・・・。」


「「あ!」」



 渉くんだけでなく、瑛介さんも声を上げた。


 2人とも思いつかなかったようだ。


 すると、タイミングを見計らっていたようにその(ひと)は突然現れた。



「――――俺、エスプレッソな!」


「「「うわっ!!??」」」



 本当に突然だった。


 気付いた時には僕の隣の席に座っていて、瑛介さんに注文を出していた。



「し、神出鬼没だな!?」


「鬼じゃないけど神だからな♪」



 「神出鬼没」の語源は鬼神だとサラッと説明するライさん。



「それにしても、大衆食堂兼居酒屋にエスプレッソがあるってどうよ?」


「注文しておいてそれを言うか・・・」


「それはそうと、お前らの疑問に答えてやるよ!宗像シスターズにもお前のことを頼まれているからな♪」



 ライさんは、渉くんに加護を与えている神様とも面識があるみたいだ。


 確か、タキリヒメ様だっけ?



「結論から言うと、2人とも薄々勘付いてはいたな!」


「――――本当!?」


「ああ、元々勘が良かったのか、お前が生まれてからも誰かが足りないと感じていたようだな。あ、情報元は訊かないでくれよ?」


「・・・そっかあ。」



 渉くんは何処か安堵したように表情が和らいでいた。



「それと、これは俺からの特別情報だけど、お前の死んだ母親の家族は生きてるぞ?」


「・・・え?」



 安堵したと思ったら一転、今度は驚愕に染まった。


 渉くんの家族が生きてる?



「―――渉の母親は今でも多い家出少女でさ、親に反発して実家を飛び出して旦那と出会ったんだよ!んで、渉の祖父さんと祖母さんは未だに自分の娘が死んだことどころか、孫がいることすら知らずにいるぜ?」


「・・・・・。」


「会いたいか?」


「・・・気が向いたらな。」


「素直じゃないな~?」


「ほら、エスプレッソ!さっさと飲んで帰れ!」



 今更だけど、この店って居酒屋だよね?



「そういえば、亮介は勇吾の再従弟になるんだよな。今気付いたけど、チビだった頃の勇吾に少し似てるな?」



 そ、そうなのかな?


 なんだか照れるよ。



「神なのに、気付くの遅いだろ!」


「まあ、勇吾に会うより前にロキのトリックにはまってたからな~。あれでも俺よりも神格がずっと上だからな。今頃何してるんだろうな、アイツ?」


「確か、ギルドの依頼の中にも捜索願いがありましたよね?」


「あれは抹殺依頼だろ?報酬は凄くいいけど。」


「だな!あ、おかわり♪」


「まだ居る気かよ!?」



 本人は気付いてないだろうけど、渉くん、かなり元気になってきてるよ。


 考え過ぎかもしれないけど、ライさんは渉くんを元気づける為にきてくれた・・・



「お、ミルフィーユ旨そうだな?俺にもくれよ!」


「金払えよ!」



 ・・・かも?




--------------------------


――京都市 九条家(勇吾サイド)――


「―――一皮剥けたようだな。一夜にしてかなり腕を上げている。」


「はあ・・・。やっぱお祖父ちゃんは強いな?けど、大分届いたよな?」


「ああ、しかしまだまだだ。あと幾つか強者との戦いを経験を積んだらまた相手をしてやろう。」


「「「・・・・・(ポカ~ン)。」」」



 俺は九条家の庭でお祖父ちゃんと剣の手合わせをしていた。


 それはこの世界の基準で言えば明らかに手合わせの域を超えており、縁側で見物していた親戚達は呆然とするしかない光景ではあるが。



「ホホホ、亡き大旦那様の血でございますねえ大奥様。」


「ホントに、どうしてあちらにだけあの人の血が(数倍濃く)遺伝したのかしらねえ?」


「「「・・・・・・。」」」



 訂正、肝の据わった女性2名は除く。


 あれから一夜が明け、親戚達も昨夜よりは大分落ち着いてきてはいたが、それでもあまりに現実離れした経験から立ち直れていない者が多かった。


 まあ、それだけじゃないけどな。


 その辺りについてはまた別の機会を設ける予定になっている。



「・・・それにしても、やはり8年前にお前が見たものの一部が幻術だったか。まあ、大吾の最後にしても変だとは思ってはいたが・・・」



 お祖父ちゃんは昨日の話を思いだしながら呟いていた。


 8年前に父さん『神話狩り』に殺された日の出来事、幽世で聞いた父さんの話では、俺の見ていたものの一部はシャルロネーアが見せた幻覚だった。


 あの時、俺が言い付けを破って結界内に侵入した事に気付いていたあの女は、気紛れの理由で俺に幻術を掛けていた。


 それにより、俺はあの場で起きた本当の出来事を8年もの間気付かずにいたのだ。



「そして『神話狩り』の能力・・・あれは相当厄介だな。まさに二つ名の通りだな。」


「うん。」



 幽世での父さんとの会話で、俺は『神話狩り』の能力を聞いている。


 そして同時に、どうして今まで誰も『神話狩り』に勝てなかったのか理解した。


 父さんにしても俺にしても、相性が悪過ぎる相手だ。



「―――いずれ、お前はあの男とは再び相対する時が来るかもしれない。その時の為にも、一層の精進を欠かさないことだ。」


「はい!」



 その後も何度か剣を交え、その日1日は昨日と同じく京都で過ごしていった。


 昨日はあれほどしつこく絡んできた親戚連中も、流石にあれだけの事があった後ということもあり魂が抜けているように大人しかった。


 ただ、曾御祖母さんだけは昨日までとは別人のように俺に優しくなってたけど。



「今夜はすき焼きですよ。たくさん食べていきなさい。」


「ホホホ、松坂牛と松茸が届きましたよ♪」


「明日は美味しい天麩羅のお店に行きましょうか。」


「(・・・母さん、いい歳してデレ始めてる。)」


「(シッ!というか、ここに来た目的忘れてない!?)」



 後日、曾祖父の七回忌の法要は無事に終了した。


 法要の場にバカ共が勝手に参加するという細やかな(・・・・)トラブルを除いてだが。








 神殺し編 完



 神殺し編、これで一応終わりです。

 少し更新のぺーあすが落ちますが、番外編を挟んで次章を開始する予定です。


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