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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第13章 神殺し編
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第280話 風と共に在りし不死

――勇吾サイド――


 シャルロネーアと闇御津羽神との戦いは熾烈なものとなった。


 味方側に『白狼』ホロケウカムイが加わった事により多少は余裕が生まれたが、すぐに気を引締め直した。



『――――出て来なさい。私の眷属(ボウヤ)達♪』



 シャルロネーアの声に応えるように数百の魔方陣が出現し、そこから爵位持ちの上級悪魔がゾロゾロと湧いて出てきた。


 『皇帝』を冠する堕天使と契約しているのでその眷属である上級悪魔の軍勢も自由に使役する事ができるようだ。


 そして始まったシャルロネーアと闇御津羽神、そして600体の上級悪魔との戦い、最初は良則やホロケウカムイが悪魔達を無双しながら討滅していった。


 流石と言うべきか、最初の1体は瞬殺、その悪魔は断末魔を残すことなく消滅した。


 その後は力と力の衝突、都市破壊級の攻撃が空を飛び交い破裂していく。


 ホロケウカムイが闇御津羽神を氷漬けにして押さえ込み、良則が慎哉と冬弥と一緒に悪魔達を倒している間に俺はシャルロネーアに攻撃する。


 だが、シャルロネーアの体は霧と化して俺の攻撃を受け付けなかった。



『フフフ、まだまだ未熟ね。その程度じゃ私の興味を惹くことはできないわよ?《月光魔流星群(ダークムーンメテオ)》!』



 空に浮かぶ月から光の流星群が降ってきた。


 月を司る堕天使カスピエル、その力の本領が発揮されるのもまた空に月が昇っているときだ。


 シヴァとインドラが暴れている間にあの女が横槍を入れてこなかった理由も、単に実験だっただけではないだろう。


 嵐の神々が戦っている間は月が雲で隠れてしまう。


 そうなればカスピエルの力は半減とまではいかなくても何割かは殺がれてしまう。


 勝敗は別として、あの女は自分の力が発揮できるタイミングを待っていたのだ。



「くっ・・・!」


『わああああああああ!!何だこらゃああああああ!?』


「みんなは目の前の攻撃に集中して!」



 流星群の大半は良則が空に蹴り返したが、地上空間という水面に落ちる残りの流星群は世界そのものに激震を与えていった。


 バカコンビが展開していた結界にも一瞬だけ歪みが生じたが、それも一瞬で修復された。


 相変わらず呆れるほどのスペックだ。


 そのバカはと言うと、どうやら無事なようだ。


 流星群も余裕で防いでいるし、銀洸に関しては・・・・・・おい、人間を咥えて(・・・・・・)ないか?


 それも複数・・・?



『《デモニックストリーム》!!』


「邪魔だ!!」



 横から悪魔が邪魔をしてくる。


 俺は攻撃を避けて悪魔を布都御魂剣で斬り捨てるが、すぐに自己再生して襲い掛かってくる。



〈―――戦力の出し惜しみは命取りになるぞ?〉


(分かってる!!)



 黒が何を言いたいのかは解っている。


 無意味な意地を張るなと言っているんだ。


 父さんの仇の1人がいるからとはいえ、自分だけであの女を倒そうとするなと。


 そんなつもりないが、出せる戦力を出していないのは事実だ。



(―――だが、奴は神や龍王を支配する力を持っている!状況から考えて、天空系の神格か蛇・龍系を対象にしたものだ!だとすれば、俺が契約している・・・)


〈その心配はないだろう。あくまで俺の仮説だが、あの者の支配効果は強制契約に類するものだろう。インドラ、シヴァ、大物主、闇御津羽神、そして八大龍王、どれも契約者を持たないものばかりだ。最近行方不明になっている神格にもこの点は共通している。俺やアルビオン達がまだ無事な以上、その可能性は有り得るだろう。〉


(・・・確かに、一理はあるな。)



 敵を褒める訳ではないが、あの女程の実力者なら黒やアルビオン、銀洸(バカ)をも支配するチャンスは幾らでもあった筈だ。


 今はまだ遊んでいるだけとも考えられるが、確かにその可能性も低くはない。


 何より、今は持てる最大戦力を出さなければあの女には勝てない。



「――――ライ!!ネレウス!!ジルニトラ!!」



 俺は契約している神全てを召喚した。


 ライは昼間からずっと京都にいたのかすぐに現れた。


 って、コイツは今の今まで何所で何をしていたんだ?


 次に大海蛇(シーサーペント)の姿をしたネレウス、最後に黒龍の姿をしたジルニトラが召喚された。



『あらあら、今日は随分と賑やかね?』


『フム、どうやら彼奴ら(・・・)の毒にやられておるようだな?』


『俺が来・・・』


「ネレウスとジルニトラは残っている上級悪魔達を片付けてくれ!ライは俺と一緒にシャルロネーアを攻撃!」



 3柱の神が加わり、敵戦力は次々に減っていった。


 途中、敵の伏兵が数人いたがそいつらは良則の餌食になって即退場となった。


 上級悪魔達は3分の1にまで数を減らし、俺はライと共にシャルロネーアへ攻撃を続けるが、中々ダメージを与える事が出来ない。


 物理攻撃は全身を霧に変えて無効化し、魔法なども奴のオリジナルらしい《防御魔法》で簡単に防がれてしまう。


 それはライの攻撃も同じだった。



『フフフ、仲間が増えたのにその程度?』


「クソッ・・・!!」


『オイオイ、さっきから違和感を感じていたが、お前のその体、単に霧に変えているだけじゃないな?』


『あら?』


「ライ、どういうことだ?」



 ライは何かに気付いたようだ。



『勇吾、お前は奴のステータスは見たか?』


「あ、ああ!」


『多分、内容改竄されてるぞ?』


「!!」


『《ステータス》は所詮、ヨッシーや丈の祖父さんが持っていた能力の劣化コピーだ。オリジナルならまだしも、汎用型の魔法ならそれに通じた知識があれば改竄は可能だろ。俺もやってるし。』


『フフフ、気付かれたみたいね?』


 改竄・・・。


 言われてみれば、あの女のステータスは馬鹿正直なほどに全ての項目が開示されていた。


 だが、冷静に考えてみればそれはおかしい。


 何故なら、一見便利な《ステータス》もどの相手の情報でも得られる訳ではない。


 実際、アベル達『黎明の王国』の連中もステータスの一部を隠したりしている。


 まして、『創世の蛇』の中でも技術畑のトップに君臨するあの女なら、余計な情報を隠していない方が可笑しい。


 どうやら、俺は偽情報を掴まされていたようだ。



『さっきから攻撃を受ける直前に霧化しているようだが、実際は最初からずっと霧になっているだろ?いや、それよりもっと性質が悪いな。お前は闘いが始まる前からこの大気と同化してる。一時とはいえ、俺達()すら欺くとは大したものだな?』


「――――!」


〈―――なるほど。〉


『フフフ、流石に神様は騙し切れなかったみたいね?ご察しの通り、私のステータスに載っている《霧化の法》は偽情報(フェイク)、真の能力名は《風と共に在りし不死(イモータル・エアーライフ)》。大気と同化し、何者も私に傷をつける事は出来なくなる力。私が昔、スラブの風と大気の神ストリボーグを殺した際に手に入れた力よ♪』


「神殺し―――!」



 成程、《神殺し》は偽情報ではないってことか。


 ストリボーグ―――スラブ神話でほとんど名前しか登場しない風と大気と天候を司る神だったな。


 その神を殺し、あの女は大気と同化する能力を得たということか。


 つまり、俺達は現在、奴の体の中で動いているという事になる・・・!!



『フフフフ・・・・・・♪貴方との遊び(・・)も退屈になってきたわね。この辺りで窒息死でもさせようかしら?』


「―――――ッ!」



 状況が一気に悪化した。


 カスピエルの力が発揮される月夜、正確な範囲は不明だが少なくとも京都市一帯の大気と同化する能力、戦況はあの女の有利なものになっている。


 ここは一旦―――



『逃げられないわよ?』



 奴の眼が怪しき光った時だった。


 突然、俺は心臓を鷲掴みにされた様な痛みに襲われた。



「ぐはっ・・・!!」


『チィ・・・・・・ッ!!』



 ライも同じ痛みに襲われたようだ。


 視線をずらすと、下の方で戦っていた慎哉と冬弥も同じように苦しみ出して動きを止めていた。



『―――――支配は出来なくても、魂を縛る事はできるのよ?これは《盟主》様から授かった瞳の力、貴方達の命は既に私の手中にあるのよ。』


「・・・・・・ッ!!」



 ―――《魂縛の魔眼》か!!



『貴方達がこの町に来て以降、私はじっくりと貴方達の魂を触れながら(・・・・・)観察させてもらってたわ。だからこの瞳の力もよく効いている筈よ?そうそう、少し離れた場所にいる貴方達の仲間もね?』



 トレンツ達もか・・・!!



『フフフ、ついでに神毒も味わってみるかしら?』


「〈グハッ―――!!!〉」



 あの女・・・シャルロネーアの手から何かが出たのを見た直後、俺は大量の血を吐いた。


 それだけじゃない、《神龍武装化》で俺と半ば同化に近い状態にある黒も俺と同じように苦しみだし、武装化のバランスが一気に不安定になっていった。


 これはまさか――――!!



『《盟主》の1柱、アポフィス様の《混沌の神毒》よ。神さえ死に至らしめる猛毒、人間の貴方達は何所まで耐えられるかしら?』


「く・・・・そ・・・・・!!」



 全身が痺れて指一本動かせなくなってきた。


 右手に握られた布都御魂剣が俺の手から離れて地上に落ちていく。


 クソ・・・意識が遠のいて・・・



『フフフ、そういえば、契約者のいない神(・・・・・・・・)がここに1柱いたわね?』


「――――ッ!!!!」



 しまった!!ホロケウカムイ!!


 あの神は味方だが、契約者がいない・・・!!



『そうね、私の支配()が他の神格にも通じるのか、検証してみるのもいいわね?』



 マズイ・・・!!


 慎哉も冬弥も魔眼の・・・毒も受けているのか、痙攣しながら倒れている。


 俺は必死で体を動かそうとするが、俺の体は意志に反して力が抜けていき、意識も遠のいていく。




『フフフ――――《混沌之絶対支配(アブソリュート・ルーラー)》♪』




 そして、俺の意識は闇の中に沈んでいった。






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