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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第13章 神殺し編
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第270話 分け身

――良則サイド――


 破壊神シヴァは雷鳴のような声を上げて僕達の前に立ちはだかった。


 僕とアルビオンが与えたダメージはあるみたいだけど、傷はすぐに回復していく。


 やはり、一筋縄ではいかない相手だ。



「『《西風の鎖(ゼヒュロス・チェイン)》!!』」



 リサとゼフィーラがシヴァを拘束しようとする。


 風は鎖のように巻き付き、一瞬だけ動きを封じた。


 そこに僕が攻撃を加える。



「《破嵐の閃拳(ストームブレイク・フラッシュ)》!!」



 対風・雷属性用の技をぶつけ、シヴァの胴体に僅かな亀裂が生じた。


 だが、それだけだった。



『ウオオオオオオオオオオオオオ!!』


「キャッ!!」


『何というパワー・・・!!』



 風の拘束はあっさりと破られ、車に衝突するような衝撃が僕達に襲いかかった。


 僕達はとっさに魔力操作で衝撃を緩和し、シヴァと距離を置いた。



『オオオオオオ・・・!!』


「弓?」


「あれは『ピナーカ』!!」



 神話の中で破壊神シヴァが使う武器は複数ある。


 その中でも有名なのは三叉戟の『トリシューラ』、そして弓の『ピナーカ』だ。



「《サウザンド》!!」



 弓の弦を引くシヴァに、僕は出せるだけの閃拳をぶつける。


 だが、多少は姿勢を崩すことはできても矢を射るのを止められなかった。



『《白の爪撃(ホワイトストローク)》!!』


『グオッ!!』



 けど、アルビオンが横から一撃を与えて体勢を大きく崩させ、シヴァの矢は空に向かって放たれた。


 百を越える竜巻になって。



『さすがは嵐の神ですね。一度に百以上の竜巻とは・・・。』



 ゼフィーラは戦慄していたが無理もない。


 たった一発だけで百以上の竜巻、なら、全力で同時に何発も連射した時は・・・。



「そういえば、シヴァの前身であるルドラも嵐の神で弓を武器にしてたわね。三叉戟よりも、弓の方がシヴァの神格を象徴しているのかもしれないわね。」


「うん。それにあの弓はピナーカと呼ばれているけど、実のところは正式な名かどうかは不明で、結構謎が多いんだ。だから警戒した方がいい。」


「分かったわ・・・って、ちょっと!なんか勝手に戦いが進んでるわよ!?」



 視線を戻すと、そこでは破壊神と龍皇の激戦が繰り広げられていた。


 シヴァはまるで怒り狂った野獣のように三叉戟(トリシューラ)を揮い、アルビオンも魔力を具現化して全身を武装してシヴァと接戦を繰り広げていた。



『グオオオオオオオオオオオオオオ!!』


『―――無駄だ。自我を封じられている今のお前は本来の力を発揮する事は出来ない。《皇の咆哮(エンペラーブレス)》!!』



 アルビオンはシヴァの腕を全て掴み、ゼロ距離でブレスを放った。


 シヴァの上半身は消し飛び、それによって一瞬戦いは終わったかのようにも見えた。


 けど、僕もアルビオンもそんな訳がないと気付いていた。


 何故なら、シヴァの気配は微塵も弱まっていなかったからだ。



『フン!』



 アルビオンは上半身が消し飛んだシヴァの体を上に向かって投げ飛ばし、もう一発ブレスを放って残った体も消しとばした。


 空にはシヴァの武器であるトリシューラとピナーカだけが残ったが、2つはまだ担い手を失ってはいないことを示すかのように独特の魔力を放ち続けていた。


 事実、シヴァはまだ倒されてはいなかった。



『――――下か。』


「―――!」



 アルビオンはシヴァが出てきた龍脈の穴を見下ろし、その中に潜むモノを睨んだ。


 そして数秒後、龍脈の中から本物の破壊神(・・・・・・)が姿を現した。





 この時、アルビオンは何も言わなかったけど、僕は京都の空の上をシヴァとは異なる“別の何か”が見下ろしているのを感じていた。






--------------------------


――京都市内某所――


「―――やっぱり、最初に顕現したのは力を振り回すだけのダミーだったか。」



 京都市内中を望めるビルの屋上で、彼は一般人には決して認識されない戦いを観ていた。



「次に顕現するものこそシヴァの本体。戦と富、そして冥府を司り、数多の神格と習合していった最強クラスの破壊神。彼らはどうするつもりかな?」



 そして彼は北西の方を向いた。


 その視線の先には何本もの雷が落ちているのが見えていた。



「さて、向こうはどうなるかな?」



 彼は軽く笑みを零すと、自分の出番が来るのを待ちながら人と神の戦いを観戦していった。





--------------------------


――京都帝釈天(勇吾サイド)――


 丈と銀洸(バカコンビ)と分かれ、俺と黒が京都市の北西にある京都帝釈天に到着して最初に目にしたのはインドラの攻撃によって抉られた山々の姿、そして何故か晴翔に両手で抱えられているミレーナの姿だった。



「・・・何やってるんだ?」


「「ふ、不可抗力だ(よ)!!」」



 何があったのかは今は気にしない。


 今はそれどころではないからだ。



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』


「アルバス!!」


『おお!!』



 風と雷を操る軍神インドラは天候を操って空中を高速移動するアルバスや、川の近くにいる翠龍、そして宙を駆けながら魔法で迫撃をしていたトレンツを攻撃していった。


 何時もなら無駄に派手なポーズを取ったり技名を叫んでいたトレンツも軍神相手ではそんな余裕はなく、無詠唱魔法を繰り出していた。



「くらえ!!」


『オオオオオオオオオオオオ!!!』


「チッ!」



 雷撃をかわし懐に入ったトレンツは、氷魔法を纏わせた足でインドラの腹に一撃を入れる。


 その一撃はインドラの表皮の一部を凍らせはしたが、あまり効果は無さそうだった。



「・・・妙だな?」


『気付いたか。』



 その光景に、俺は少しばかり違和感を感じていた。


 インドラに自我がないことではない。



「黒、インドラはあんなに弱いのか(・・・・)?」


「はあ?何言ってるんだよ?」



 俺の言っていることの意味を晴翔は理解できていないようだった。


 だから簡単に説明した。



「いいか、インドラは中東からインドにかけての広い地域で信仰されている軍神だ。最初から最強だった訳じゃないが、神話の中では龍王を何度も殺したり敵対勢力の神々を虐殺しまくったりした『英雄』であると同時に『魔王』でもある神だ。別称の中には「都市の破壊者」というのがある程戦闘力が高く、トレンツには悪いがあんなに簡単に接近して一撃を入れられる相手じゃないんだ。例え自我が封じられていたとしてもだ。」


「『魔王』って・・・悪神かよ?」


「そして何より、攻撃の威力が弱い。解り易く言えば、本来のインドラは直径100mの極太ビームを連射できるし、雷も一度に1万本落とせる。」


「それは変だな!」



 晴翔はすぐに理解した。


 そう、あのインドラは俺の知識として知っているインドラと比較するとあまりに弱すぎる。


 操られて本来の力が発揮できない事を考慮したとしてもだ。


 だが、あのインドラから感じられる神性は間違いなく本物だった。



「黒、俺達も行くぞ!」


『―――ああ。』



 俺達はこの違和感の正体を明らかにする為、トレンツ達の加勢に入った。


「トレンツ!!」


「勇吾!!加勢プリーズ!!」



 インドラとの戦いに夢中で俺に気付くのに遅れたトレンツは、俺を見ると涙声にも似た声で交代(タッチ)を要求した。


 俺は軽くパンとタッチをすると、布都御魂剣を構えて攻撃を開始した。



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


「―――《漆黒螺旋衝(ブラックスパイラル)》!!」



 布都御魂剣を前に突き出し、直径50m級(・・・・・・)の闇の竜巻を放った。


 力任せの技だが、まずはこれで様子見だ。



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』



 インドラは俺の攻撃に対し、手から雷撃を放って防ごうとする。


 闇と雷は何故か(・・・)拮抗し合い、互いに押したり押し返したりが繰り返されていった。



「黒!!」


『――――――ハッ!!』



 そこに黒の特大ブレスが加わり、俺達の攻撃は混ざり合ってインドラの攻撃を一気に圧倒し、インドラの全身を闇で飲み込んでいった。




――――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!




「「アルマ〇ドンかよ!!」」



 ツッコみが聞こえた気がしたが気にしない。


 俺達の攻撃により、京都帝釈天のあった山は跡形も無く消し飛び、代わりにクレーターが出来上がっていた。


 そしてそこにはあのインドラ(・・・・・・)の姿は無く、俺達の攻撃で消滅したようだ。


 だが、そこには未だに強大な力の気配が色濃く残っていた。



『―――あれは分け身(・・・)、本体から溢れた奴のダミーだったようだな。』


「じゃあ、本体は――――」


『来るぞ。』



 直後、地中から巨大な雷が立ち昇り、世界中に響き渡るかのような巨大な雄叫びを上げてそれは俺達の前に姿を現した。




『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!』




 地中から立ち昇った雷の中から姿を現したのは、4本の牙を持つ兄弟な像の聖獣だった。


 その背中には半透明な翼を持ち、巨体でありながら軽々と空に向かって飛翔した。



「―――アイラーヴァタ!!」



 そして、その巨象の背には1つの影が跨っていた。






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