第238話 VSナベリウス&カマソッツ&相柳
――バカサイド――
ヤッホ~!
みんなのマスコット、呼ばれたら時空さえ越えて現れてやるぜ!の護龍丈様DAZE!!
今は狭間の世界で世界を滅ぼそうとする悪の秘密結社が放った刺客と戦闘中DAZE!!
『「うおおおお!!まだだぁぁぁぁぁぁ!!」』
「無駄だ!《虚空流星千槍》!!」
悪魔と合体した敵は百を優に越える分身を生みだし、一斉に高密度の魔力砲、某格ゲーの有名必殺技みたいなポーズをしながら放ってきた。
それに対して俺は、宙に大きな銀色の光球を出して、そこから銀色の槍を流星群のように放った。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
アニメのバトルシーンみたいだな。
結果から言えば、俺の攻撃は敵の攻撃を圧倒して分身達も一掃した。
残ったのはボロボロの敵1人だけだった。
『「ハア、ハア、ハア・・・!何故、何故それほどの力を・・・!?」』
「―――――未来へ進む為に掴んだ力だ!」
『現の世の調和を乱し、さらには禁忌を犯せし者よ、白銀の断罪を受けるがいい!!』
俺の背後で両翼を広げた銀洸が威風堂々とした姿で敵を睨む。
そして俺達は、最近巷を騒がせている2人目の「廃墟の闇露天商」に最後の一撃をぶつけた。
『刮目せよ!《白銀龍王の断罪光》!!』
「不浄なる空よ、我が極大の技により清浄を取り戻せ!《神殺勇猛果敢烈空砲》!!」
俺達の青春パワー大炸裂!!
ハルマゲドン以上の大爆発が敵を飲み込んでいき、断末魔も飲み込んでいった。
キメたぜ俺達!!
「―――――つまらぬものを爆ぜてしまった♪」
『これで狭間は再び安寧を取り戻すだろう。現世への干渉も消え、歪な神々は防人達の戦場へと閉じ込められ、間もなく討滅されるだろう。』
「では、俺達も次の戦場へと向かうとするか♪」
誰も見ていないけどカッコよく決めたぜ!
さ~て、皆の方はどうなってるかな~?
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――蒼空サイド――
まったく、どいつもこいつも俺を過労死させたいのか?
今夜は久しぶりに早寝かと思ったら、俺の結界のすぐ近くで《大罪獣》が発生、しかも神代に滅んだ神まで復活なんて悪い冗談だと思いたい。
まあ、『幻魔師』が関わっている可能性がある以上、単に何時もの暇潰しか嫌がらせとしか考えられないから不思議と諦められるけどな。
しかし、まさか俺が神と戦う羽目になるとはな。
『何を考えているんだ?』
俺を乗せたアルントが声を掛けてきた。
「いや、まさか技術畑の俺が神格を持った相手と戦う羽目になるとは思わなくてな。」
『まあ、確かにそうだな。俺もお前と契約して以来、神クラスと戦う事は滅多になかったからな。』
「・・・偶にはあったのか?」
『まあな。それよりも・・・来たぞ!』
「そのようだな。」
そして俺達の視界の先に巨大な蝙蝠に似た悪神が姿を現した。
見方によっては吸血鬼にも見えるそれは、蝙蝠を擬人化、もしくは蝙蝠の獣人とも言える姿をしていた。
背中から蝙蝠の羽を生やし、両腕の先には赤黒いナイフのような物を生やしていた。
『あれは・・・『カマソッツ』か?』
「知っているのか?」
『確かメキシコのマヤ神話に出てくる悪神だったはずだ。殺戮と血を啜ること好む悪神で、双子の英雄によって倒されたと聞いている。』
「まさに吸血鬼みたいな神だな。」
考えてみれば、どの世界のどの国にも似たような存在が居るのかもしれない。
俺の前世、ライナーの故郷にも吸血鬼の伝承はあった。
いや、今は過去を懐かしんでいる時じゃないな。
『――――カカカカ!上等な、力に満ちた血の匂いがするぞ!』
カマソッツは狂気染みた目で俺達を見ると、両腕の先から伸ばしたナイフを巨大化させて襲い掛かってきた。
「アルント、さっさと倒して寝るぞ!」
『・・・本当に眠いようだな?』
俺達は最初から全開で戦闘を開始した。
厳正に悪影響を及ぼさないように念入りに結界を張った上で、俺達は目の前の悪神に最上級魔法を連発していった。
後日、どっかのバカが「神ボッコ」「オーバーキル」だとか騒ぎ立てるのだがこの時の俺達はそんな事など考えすらしていなかった。
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――良則サイド――
皆が邪神や悪神と戦っている頃、僕とアルビオンは日本ではなく中国に来ていた。
何故中国に来ているのかというと、特に理由がある訳でもなく、直感的に何かが起きそうな予感がしたからアルビオンと一緒に日本海を渡ってきた。
勿論、日本に来た時と同じ不法入国だけど・・・。
そして、僕の直感は当たってしまった。
『グアアアアアアアア!!!』
『――――良則!』
「うん!《閃拳・百光縛》!!」
僕の拳から放たれる閃光が、九つの頭を持つ巨大な蛇に巻き付いて拘束する。
蛇は悲鳴を上げながらも、九つの口から猛毒の瘴気を吐き散らしていた。
『グアアアアアアアア!!!』
「《暁の閃拳》!!」
拘束されても暴れ続ける蛇に、僕は強力な一撃を叩き込んだ。
そしてアルビオンが止めを刺す。
「アルビオン!!」
『《邪を祓う神龍の息吹》!!』
『グオオオオオオ・・・・・・・・・・・!!』
龍皇のブレスを全身に受けた蛇は為す術もなく消滅していった。
アルビオンのブレスが消えた跡には毒も瘴気も綺麗に消え、代わりに蛇の居た場所には数人の少年少女が現れ、ゆっくりと地上に向かって落下していった。
僕達は気絶したまま落下する彼らを救出し、地上に下りて応急処置を施していった。
『――――全員、命に別状は無さそうだ。だが、あの《大罪獣》は今までのとは少し毛色が違っていたな。』
「うん。1体の《大罪獣》に“核”が複数、それに最近の邪神や悪神以外の素体になっていた。これって、《大罪獣》の色んな利用方法を試してるんじゃ・・・・。」
さっき倒した《大罪獣》、体の構造こそ《大罪獣》だったけど、中身は『相柳』という古代中国の伝説に登場する怪物だった。
『だとすれば、今回の一連の事件は“実験”という事になる。ならば、今回の首謀者はカースではない可能性が高いだろう。』
「うん。」
『先程、銀洸から2人目の実行犯を捕まえたと連絡が入った。残る3人目は、現在桜ヶ丘にパズズとアンズーと共に現れたともあった。少々不味いかもしれないな。』
「―――――!僕達も向かお・・・・・っ!?」
『・・・どうやら、味方の加勢には行かせたくないようだな?』
突然、僕達の周囲に無数の気配が生まれた。
その数秒後、僕達は一万体近くの《大罪獣》に囲まれていた。
『――――俺も、久しぶりに本気で戦わざるを得ないようだ。』
アルビオンの目付きが変わる。
こんな顔のアルビオンを見るのは久しぶりだ。
「僕達を足止めにってことは、剛兄のところにも・・・。」
『可能性は高いだろうが、どの道、現段階で《大罪獣》如きにあの2人には大して意味はないだろう。フッ、こっちも似たようなものだが・・・。』
「・・・アルビオン、もしかしなくても楽しんでないよね?」
『いや、敵側の浅はかな策に思わず苦笑してしまっただけだ。それよりも、来るぞ!』
「うん!」
空を埋め尽くすほどの《大罪獣》。
僕とアルビオンはその一掃を開始した。
勇吾、皆、加勢には少し遅れるから、それまで頑張ってて!
「行くぞ!《大罪獣》!」
僕は拳を強く握りしめて空へと跳んだ。
・バカコンビの対戦相手は2人目の「廃墟の闇露天商」と契約悪魔の名ナベリウスでしたが本文では名前すら出ませんでしたw
・ナベリウスはソロモンの悪魔の1柱で序列24位の侯爵です。容姿は黒いカラスで、失われた威厳や名誉を回復させる悪魔です。出番が全然ないまま退場しました。
・蒼空とアルントの対戦相手のカマソッツ(カマソッソ)は中央アメリカのマヤ神話に伝えられる悪神です。
・外見はもろ蝙蝠怪人で、両手に付けたナイフ状の鉤爪が武器です。
・良則とアルビオンの対戦相手は中国神話に登場する相柳でした。
・人間の頭が9つある蛇の怪物で、主君である共工とともに創造神である女媧を起こしますが、火の神である祝融に破れました。




