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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第12-4章 大罪獣編Ⅳ――決着――
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第235話 VSマヒシャ①

――慎哉サイド――


 勇吾達が戦闘開始した頃、俺と冬弥も新たな《大罪獣》と戦っていた。



『クッ・・・!さっきからなんだか力が抜けていく・・・!?』


「俺もだ・・・!?」



 俺達は一方的に苦戦していた。


 戦闘開始から数分、まだ禄に攻撃もしていないのに、俺も冬弥も急な疲労感と魔力の消耗に襲われていた。



「状況から考えて・・・!」


『奴の、仕業だな!』



 俺達は敵の方を向く。


 そこにいたのは、人面犬ならぬ、人面熊だった。


 サイズ自体は白狼の姿に戻っている冬弥とそれほど変わらないが、纏っているオーラがあからさまにボスキャラを彷彿させていた。


 というか、全体のデザイン的にもボスキャラっぽいぞ!!



「・・・ステータスを確認してみる!」



 俺は、敵のステータスを確認した。



【名前】『労苦神』ポノス

【年齢】???  【種族】神

【職業】悪神  【クラス】労苦の権化

【属性】闇 土 風

【魔力】5,820,000/5,820,000

【状態】大罪獣

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(LV4) 補助魔法(Lv5) 特殊魔法(Lv4) 剣術(Lv3) 体術(Lv3) 盾術(Lv3) 神術(Lv4) 労苦之理

【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv5) 闇属性耐性(Lv5) 土属性耐性(Lv5) 風属性耐性(Lv5) 全状態異常無効化 復活した悪神 災厄の血統 実体化した労苦 冥王の支配下



 一目で強敵だって分かるな。


 だって神だぜ?


 ゲームだったらほぼ例外なくボスキャラだ!



【労苦之理】

・自身を中心とした一定範囲内の全ての生物に対し、「労苦」の効果を与える。

・「労苦」の影響を受けた生物は急速に疲労し、体力及び魔力も急速に消耗する。

・長時間影響を受け続けた生物は次第に体調を悪化させ、最後は死に至らせる。

・効果は対象の個体差に依存する。



『なあ、俺の気のせいじゃなければ、街中の人間が倒れてないか?』


「何だって!?」



 冬弥に言われて俺は地上の方を見渡す。


 すると、歩道では深夜返りのサラリーマンやホステス達、夜遊び中の皆さん全員が路上に倒れていた。


 よく見ると、電柱に車が何台も衝突したり、青信号なのに車が1台も動いている気配がない。


 奴の力のせいか!



「不味いぞ冬弥!このまま放っておいたら街の人間全員が死んでしまう!!」


『――――!!』


「勇吾達が来てくれるのを待ってたら間に合わないかもしれない!俺達で倒すぞ!!」


『おお!!』



 勝ち目があるのかは分からないけど、今はそんな事を考えている場合じゃない!!


 やれることだけでもやってやるぜ!




--------------------------


――勇吾サイド――


 耳に装着した通信用のイヤホンから続々と情報が伝わってくる。


 どうやら北海道では『労苦神』が現れて慎哉と冬弥が戦っているらしい。


 東北では瑛介やトレンツ達がザリチュと交戦開始している。


 桜ヶ丘でも《大罪獣》が出現して琥太郎達が戦っていると連絡があった。


 同じ町に住んでいる晴翔もすぐに駆けつける筈だ。


 色々考えたくなるが、今は目の前の敵に集中すべきだ。



「――――黒、スイスの時と同じ《神龍武装化》はできそうか?」


『可能だが、結界の張れない現状では現世への影響は計り知れない。最悪、関東一帯の龍脈の流れが狂ってしまう怖れがある。』


「だが、全力で当たらないと―――――」



 と、そこに都合よくバカの片割れの声が頭に聞こえてきた。



〈ハイハ~イ♪毎度お馴染みの龍王の銀洸だよ~!〉



 俺と黒は一瞬だけ頭が北極並に涼しくなった。


 あのバカ、毎度のことながら全部観ているんじゃないのか?


 いや、絶対そうだ。


 根拠はないが確信できる!



〈今ね~、狭間の世界にいるんだけど~、なんだか黒幕っぽいお兄さんを発見したんだ~!〉


「――――黒幕?」



 それは「廃墟の闇露天商」のことか?


 ファルコ=バルトとまだ見ぬ3人目、この2人については未だに手掛かりが掴めていない。



〈多分~、アイツが結界とかを妨害しているんだと思うよ~!というわけで~、僕と丈で中ボス戦(・・・・)をやるから後ヨロ~♪〉



 バカの声はそこで終わった。


 相変わらずのマイペースぶりだが、お蔭で希望が湧いてきた。


 あの2人はバカだが同時に強い。


 余計な事をしそうだが、今は2人に任せよう。


 俺達は―――――



『――――神の行く手を阻むか、低俗な人間とそれに隷属する神龍よ!』


「いや、阻むのではなく、討滅しに来た!」


『アスラの王よ、現世に害成す者として討たせてもらう。』


『不遜な者よ、塵芥と化すがいい!』



 俺達の前に立つ《大罪獣》、いや、インド神話に登場するアスラの王マヒシャは左手に持つコブラを模した様な杖をこっちに向ける。



『燃えろ――――――』


『「――――――!」』



 マヒシャの声とともに、コブラの口 が大きく開き、そこから蒼い炎が吐き出された。


 炎は一直線にではなく蛇のように動きながら俺達に襲い掛かってきた。


 だが、この程度の速さなら黒には追いつけない。



『――――群れろ!』



 速度が足りないと判断したのか、マヒシャは炎の数を一気に1000以上にまで増やした。


 これは不味い!


 いくらギルド側の人達が魔法で誤魔化しているとはいえ、これだけ派手に攻撃されてはすぐに限界になってしまう。



〈お~い!みんな聞こえてるか~?〉



 そこに今度は(バカ)の声が頭に響いてきた。



〈何だバカ?死ぬなら変な遺書を残すなよ?〉


〈ヒデエ!?せっかく、良い報せがあるのにそれ酷くね?〉


〈さっさと言え!言わないと、お前の食玩を焼却・・・〉


〈敵の妨害の一部を破りました!異空間結界はまだ駄目だけど、それ以外の結界は使用可能です!位相をずらすのもできます!〉



 それは吉報だ!


 あのバカコンビ、どうやら善戦しているようだ。


 今の念話は他の人達にも聞こえたのだろう。


 周囲一帯に魔法が掛けられていくのを感じる。


 《結界魔法》の一種であろうそれは、“こちら側の存在”を現実空間の位相から少しずらした位相へと強制的に移動させた。


 これで一般人には俺達の戦闘は一切認識されず、また、戦闘によって現実空間が破壊される事も無くなった。


 ただし、この魔法を維持する為に多くのギルド職員や他の冒険者達が戦闘には参加できなくなってしまったが。



『・・・人間め、小癪な真似を!!』


「黒、この結界が維持されている内に叩くぞ!」


『ああ!』



 俺は黒の背中から飛び降り、黒も俺を降ろすと空に向かって急上昇する。


 一方のマヒシャは右手に持っていた剣を持ち上げ、凄まじい魔力を刀身に流し込んで振ろうとした。



「させるか!布都御魂(・・・・)!!」



 俺は布都御魂剣を巨大化させ、マヒシャに向かって大技を放つ。



『断て――――』


「《黒刀・焔龍大斬撃》!!」



 俺とマヒシャはほぼ同時に剣を振った。


 マヒシャの剣からは山を一刀両断できる程の斬撃が放たれ、俺の布都御魂剣からは炎を纏った巨大な斬撃が放たれた。


 大技と言っても、俺の斬撃はマヒシャの斬撃には敵わないだろう。


 相手は神の中でも“王”を冠した高位の神、人間の子供が容易に対等になれるような甘い相手じゃない。


 そう、普通に戦えばだ。




『――――《神を堕とす神龍の波動(ディバイディングウェーブ)》!!』




 俺やマヒシャの真上、地上から遥か高い場所から純白の波動が降り注いできた。


 その直後、俺の斬撃と衝突寸前だったマヒシャの斬撃は一瞬で小さくなった。



『何?』



 俺の斬撃はマヒシャの斬撃を無視するようにけちらし、マヒシャに直撃した。


 成功だ。


 桜ヶ丘での失敗以降、俺達は再び神と戦う時の為に作戦を練っていた。


 その際に上がった神に対する有効な攻撃手段の1つが黒やアルビオンが使う《神龍術》だった。


 さっきの白い波動もその1つで、神格を持つ対象の力を一時的に減衰させる術だ。


 反則的な力の為、黒も滅多に使わないようだが、今回ばかりは一歩間違えれば確実に世界の均衡を崩壊させるので承諾してくれた。



「・・・直撃か。だが、奴には・・・。」



 もっとも、今の斬撃は確認の為(・・・・)のものにすぎない。



『無駄だ。』


「・・・・・・。」



 マヒシャは無傷だった。


 正確には傷が一瞬で完治したのだ。



「伝承通りだな。」



 インド神話における『アスラ王』マヒシャの特筆すべき点はただ1つ、それは・・・



『無駄だ。我は不死身だ。』



 そう、マヒシャは不死身の神だ。


 ある条件(・・)付きではあるが。





・『ポノス』はギリシャ神話の女神エリスの息子です。

・エリスは軍神アレスの妹とされ、争いや殺戮を好む神です。有名な童話、「眠れる森の美女」に登場する魔女は、このエリスがモデルだそうです。


・インド神話に登場するアスラ族は悪神の一族とされていますが、元は善神でデーヴァ族とともに古代インドで崇拝されていました。それが2つに分裂し、インドではデーヴァ族を崇拝してアスラ族を悪と扱われるようになったそうです。

・アスラ族の王は複数存在し、マヒシャはその中の1人で不死身の神とされています。ただし、条件付きですが・・・。



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