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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第12-3章 大罪獣編Ⅲ――上野 暁――
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第228話 山奥にて

――暁サイド――



 殺してしまった。


 人を殺してしまった。


 血の繋がった家族を、両親を殺してしまった。


 姉弟を斬って化け物にしてしまった。


 それだけじゃない。


 沢山の人を傷つけてしまった。


 沢山・・・何十、何百、何千、いや何万人もの人を傷付けてしまった。



『また、裏切った・・・!!』



 全部覚えている。


 暗い感情が爆発した後も、化け物になってからの事も、何もかも!!



――――俺に全部罪を着させて、自分は琥太郎と同じ被害者だって言いたいんだろ、お前は?



 琥太郎を虐めていた奴、神宮晴翔の言葉が頭の中に甦る。


 そうだ、僕がしたのは只の八つ当たり、責任転嫁だ!



――――お前も俺と同じ最低最悪のクズじゃねえか?



 そうだ、僕の方がクズなんだ!


 今になってようやく気が付いた。


 あの時、僕が化け物になった時、琥太郎は僕を助けてくれた。


 あの怖い、凄く怖い魔王のような意志に飲み込まれて暴走した僕を助けてくれた。


 居場所が無いなんてとんだ勘違いだった。


 琥太郎は、ちゃんと僕の居場所を残していてくれた。


 晴翔(あいつ)に奪われたんじゃなく、もう1つイスが増えただけだったんだ。


 それを僕は、僕は・・・・・・!!



『僕は・・・・・なんて臆病なんだ・・・!!』



 後悔だけが頭の中で渦巻く。


 沢山酷い事を知ってしまった。


 裏切っていなかった彼に、助けてくれた彼に、僕は酷い事をしてしまった。


 ちゃんと話し合えばよかった。


 ちゃんと話して、相談していればこうならなかったのかもしれない。


 なのに僕は逃げた。


 もしかしたら裏切られるかもしれないともって逃げてしまった。


 その上、彼の周りにいる人達に嫉妬ばかりして殺そうとまで思ってしまった。



『僕は・・・・・・弱い・・・!!』



 今度こそ戻れない。


 戻りたくても戻れない。


 沢山罪を犯してしまった。


 沢山取り返しのつかない事をしてしまった。



『・・・・・・・・・っ!!』



 そして僕は逃げ出した。


 それが同じ事を繰り返しているのなど頭で理解していながらも、僕は彼らから逃げ出してしまった。


 僕は当てもなく空を彷徨っていた。



 気がついたらずっと雲の上を飛んでいた。


 今更だけど、僕は今、巨大な鳥になってるんだっけ。


 空を飛んだ事なんかないのに、まるで地面の上を立って歩くのと同じ感覚で空を飛ぶ事ができた。



『空ってこんなに広かったんだ・・・。』



 雲の上の景色は僕にとって神秘的だった。


 物で埋め尽くされた地上と違い、ここにあるのは空と雲ばかりだった。


 横を向けば富士山が顔を出し、遠くには飛行機が小さく見えた。



『町が、あんなに小さい。まるでミニチュアみたいだ。』



 見る物全てが新鮮だった。


 気付けば、僕は空を飛ぶことに夢中になり、少しだけ心が軽くなった気がした。


 だけど、それでも僕の罪は決して消えない。



 次第に空が茜色に染まり始めた。


 もっと飛んでいたかったけど、段々疲れてきたので地上に下りて休むことにした。


 この姿で人目に付くのは不味いから、僕は何処かの山奥に下りることにした。



「・・・ここなら、大丈夫かな?」



 人の姿が無いのを確認して下りたのは山に囲まれたところにある渓流の河原だった。


 飛んだ時のようになれた感じで着地した僕は、取り敢えずしゃがんで休むことにした。



「そういえば、すっかり喉が渇いたな。ここの水、飲めるかな?」



 何時間も飛んだせいか、すっかり喉が渇いた僕は流れの激しい渓流の水面に口(嘴?)を近付けると、恐る恐る川の水を飲んでみた。



「あ、美味しい!」



 僕はとにかく飲み続けた。


 これが自然の水そのものの味なのかは分からないけど、都会の水とは雲泥の差なのは明らかだった。



「ふう・・・。」



 十分の喉を潤した僕は何所か気が抜けたのか、急に眠気に似た感覚に襲われ始めた。



「あれ?眩暈・・・?」



 景色が歪んで見え始め、気のせいか視線が低くなっていく気がした。


 全身の感覚も何だか変な気が・・・・・・。



「え・・・?」



 気が付くと、僕は人間に戻っていた。


 いや、正確には人間に近い姿に戻ったみたいだった。


 背中を見ると1対の蒼い翼が生えていて手足と同じ感覚で動かす事が出来た。



「まるで鳥人間みたい・・・・え!?」



 試しに翼を動かしていると、僕は気付いたしまった。


 妙に流れの速い川の水面に映る自分の姿、そして風が妙に冷たく感じる事に。



「え・・・あ・・・裸ぁぁ!!??」



 僕は全裸だった。


 服どころか下着一枚も来ていない、生まれた時と同じ姿だった。


 何で、どうして!?




   バサッ!!




 その時、何かが堕ちて散乱する音が聞こえた。


 振り返ると、そこには着物姿の、僕と同い年くらいの女性が立っていた。



「あ!」


「え?」



 そして僕はやってしまった。


 一瞬、自分が何も来ていないという事を忘れてしまい、それどころか大事な部分(・・・・・)を女性の前でカミングアウトしてしまった。



「キャァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


「うわああああああああああああああ!!!」



 僕も女性も一緒になって悲鳴を上げた。



「変態ィィィィィィィィ!!!」



 そして女性は僕に炎を放った(・・・・・)



「ええええええええええ!!??」


 炎の直撃をくらい、僕は川に落ちてしまい、そのまま流されてしまった。


 あ、僕は泳げ・・・!






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