第218話 2回戦開始
――慎哉サイド――
会場に到着~!!
裏技使ったから移動時間はほんの数分で済んだぜ!
「へえ~、ここでやってるのか~!」
「スゲエ、流石東京、建物みんなデカいな~!」
俺の隣で弟の冬弥も感心しながら会場になっている体育館を見上げていた。
地区大会と言っても、やはり東京ということもあって会場に選ばれる場所はそれなりに大きい場所になるみたいだな。
「おい、そっちの本館じゃなくてあっちの別館だぞ!」
俺達が体育館の正面入り口から入ろうとすると、翠龍と一緒に居る晴翔が声を掛けてきた。
「こっちはバスケとかの会場になっている本館、剣道やってるのは隣の方の別館の方だ。別館って言うか、旧体育館だけどな。」
「よ~し!早速行こうぜ~!」
俺達は少し離れた場所にある入口から中に入っていった。
俺達が来たのを知れば、きっと驚くだろうな。
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――琥太郎サイド――
夜鋼に“彼”の話をしてから数分後、僕達の2回戦が始まった。
相手の高校は地区大会では毎回上位に入る強豪校だった。
夏の大会では決勝で破れた因縁の相手だ。
「相手は我が校の因縁の相手だ!全員油断せず行け!」
「「「ハイ!!」」」
気合いは十分!
夜鋼に全部話したお陰で目の前の事に集中できる。
その夜鋼は観戦席の最前列で見ていてくれている。
もしもの時は、すぐに動いてくれる為だ。
あれ?
なんだか知っている気配が幾つかある。
「あ!」
僕は晴翔達を見つけた。
翆龍と慎哉が2人・・・じゃなくて、似てるけど片方は慎哉の双子の弟の冬弥くんだ。
4人とも夜鋼に気付いて並んだ席に座った。
「どうした、立花?」
「あ、いえ、友達が応援に来てくれてたので・・・。」
「そうか、今回はお前の出番が来るだろうから気を引き締めろ!」
「ハイ!」
「よし!」
顧問の先生に元気よく返事をし、僕は対戦相手の方を向いた。
その時だった。
「――――――ッ!?」
見られた!
誰かなのかは分からない。
だけど、確か今、対戦校側から鋭い視線を感じた。
視線はすぐに消えたけど、あの刃物のような鋭い視線を感じた時の余韻はまだ残っている。
一体誰が・・・・・
新たな不安が生まれる中、2回戦が始まった。
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――???サイド――
「ほう、今のに気付いたか?」
琥太郎の対戦校側の観戦席の中で、1人の男が感心したように呟いていた。
気紛れにここへ立ち寄った彼は、身内が一瞬だけ向けてしまった視線に気付いた琥太郎を興味深そうに見ていた。
「――――の圧勝かと思っていたが、どうやらそうもいかないか。しかしあの少年の“気”、前にもどこかで・・・?」
男は怪訝な目になるが、反対側の観戦席に居る者達に警戒してすぐに周囲と同じ保護者の顔に戻した。
(しかし、龍に風虎に白狼、そして加護持ちの契約者の3組か。いや、他にも何かいるか。これも何かの縁か、それとも――――)
表の表情と裏腹に、難しそうに考えし始めた。
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――琥太郎サイド――
この試合、やっぱり何かが変だ。
「――――一本!!」
中堅の先輩が負けた。
一方的、あまりに一方的な敗北だった。
あの先輩は部長と同じ有段者、その実力は僕達もよく知っている、
それなのに、開始1分前後で2本先取されて勝負がついた。
「おい、あそこの高校って、あんなにレベルが高かったか?」
「ああ、春や夏の時とはまるで別人みたいに強くなってな。」
他の先輩達も動揺を隠せないでいた。
2回戦のこの試合は先鋒戦から何かがおかしかった。
先鋒戦、“彼”の試合は文字通り白熱した内容だった。
両者ともに並外れた反応速度や動体視力を見せつけるがごとく激しい技のぶつかり合いを続け、結局、延長戦でも決着がつかずに判定で“彼”の勝利になった。
次の次鋒戦は一方的に相手が二本先取して先輩が負けた。
そして中堅戦も一方的に先輩が負け、僕の番になった。
「頼む立花!俺まで繋いでくれ!!」
「ハイ!勝ってきます!」
「勝ってこい!」
「部長の出番作ってやれ、可哀想だから!」
「お、おい・・・!」
冗談交じりの声援に背中を押され、僕は対戦校の副将と対峙する。
相手はどうやら2年生らしい。
「・・・・・・え?」
また違和感を感じた。
しかも、感じた事のある違和感だった。
(・・・見られてる!)
前を見ると、対戦校の副将を含めた5人がジッと僕の方を見ていた。
それだけなら何もおかしくない。
一瞬、僅かに魔力の気配が混ざっていなければ、だが。
(魔力!まさか・・・!)
それは一瞬だったが、皆との修業や幾つかの事件での経験がそれを敏感に感じ取った。
この世界の一般人は、例外を除いて魔力を全く使うことができない。
その原則に従うなら、魔力を放っていた彼らは一般人で無い事になる。
(試して、みる・・・!!)
もしもの時は観戦席に皆がいる。
僕は周囲に警戒しながら、対戦相手に《ステータス》を使ってみた。
【名前】桜庭 武蔵
【年齢】17 【種族】天鷲族
【職業】高校生(2年) 【クラス】覚醒者
【属性】メイン:風 雷 サブ:水 火 氷
【魔力】870000/870000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv2) 風術(Lv4) 雷術(Lv4) 水術(Lv3) 火術(Lv2) 氷術(Lv2) 剣術(Lv3) 体術(Lv3) 人化
【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv2) 風属性耐性(Lv3) 雷属性耐性(Lv3) 水属性耐性(Lv2) 火属性耐性(Lv2) 氷属性耐性(Lv2) 毒耐性(Lv1) 火傷耐性(Lv2) 凍傷耐性(Lv2) 麻痺無効化 鷲の眼 麻殖神天日鷲の加護
やっぱり・・・!
対戦相手は人間じゃなかった。
名前は日本人だけど、それは大した問題じゃない。
それよりも、僕が相手のステータス画面を出した直後、対戦校側の変化が凄かった。
正確には団体戦メンバーの5人だけだけど、5人全員の僕を見る目が変わった。
彼らにはステータス画面が見えるようだ。
それ以外のメンバーは、顧問を含めて見えていないみたいだ。
(この人達、何者なんだ・・・?)
謎が深まる中、副将戦が始まった。




