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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第12-1章 大罪獣編Ⅰ――神憑き――
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第211話 『炎帝』朱雀

――蒼空サイド――


 朱い炎が、癒しと浄化の炎が異空間の街を焼いていく。


 邪悪なるものを、《大罪獣》の体を得た邪霊達、そして世界を汚染しようとする瘴気を微塵も残さずに燃やし尽くしていく。



『『『ギャァァァァァァァァァァァァァァァ・・・!!!!!』』』



 邪霊、いや、邪神達の断末魔が聞こえてくる。


 おそらくはこの世界の何所かで信仰され、後に敗北した(・・・・)下位の邪神だったのだろう。


 時の流れと共に人々の記憶から消え去り、今となっては名前すら失われている神格。


 それを『創世の蛇』の連中がこれの為に(・・・・・)復活させたのだろうが、これで今度こそ完全に滅びる事になるだろう。



「――――韋駄天の次は朱雀か。本当に一族揃ってとんでもない神格と契約しているな。」


『・・・シャレにならないだろ、あれは(・・・)。』



 俺達は空を美しく舞いながら地上にある物全てを聖なる炎で燃やしていく神鳥を見上げていた。


 朱い両翼、不死鳥を思わせる炎を纏った姿は西洋人からすればフェニックスを思い浮かばせるだろう。


 『南方守護神』、時に『朱帝』、『炎帝』とも呼ばれる、中国や日本で特に知名度の高い神、それが朱雀。


 アジア各地の鳥系聖獣と同一視されやすい神は邪神達の断末魔も残さず燃やし尽くしていく。


 これで司達に掛けられていた呪詛も消え、本来の正常な姿(・・・・・・・)に戻るだろう。



『炎が消えるな。』


「ああ。」



 浄化が完了したのだろう。


 地上を覆っていた炎は静かに消えていった。


 そして、炎の消えた大地の上には俺達と、浄化されて本来の姿(・・・・)に戻った司達の姿だけが残った。




--------------------------


――司サイド――


 涙が止まらない。


 突然、怒りと同時に流れてきた悲しみに涙が止まらなかった。



――――“夢”



 無かった。


 言われて初めて気付いた。


 僕に夢は無い。


 あの地獄から、あの痛みから抜け出して自由になる事だけ考えていた僕に叶えたい“夢”は無かった。


 考えた事が無かった。


 “やりたい事”は“やれ!と言われた事”、“なりたいもの”は“なれ!と言われたもの”、他のみんなが当たり前に持っている物を、僕はずっとあらかじめ用意され、強要されていた。


 地獄から解放され、自由になって初めて気付かされた。


 それが凄く悔しくて、同時に凄く悲しかった。



『なら、これから探せばいい。お前自身が真に叶えたいと思い描く“夢”を――――』



 誰の声?


 初めて聞くのに凄く温かい声、その声が聞こえた直後、目の前が明るくなっていく気がした。


 何だか、ずっと胸の中にあった重くて暗いものが一気に消えていくような、心が軽くなっていくような気もした。



「――――――気が付いたか?」


『・・・・・・も・・もろ・・星?』



 悪い夢から覚めた様な、そんな感覚がしながら目蓋を開けると、そこには黒い鳥のような生物と並んで立っている僕と同い年の少年がいた。


 確か名前は諸星蒼空、クラスは違うけど文武両道で成績は毎年断トツトップの人だ。


 あれ?


 何だかさっきより小さく・・・小人みたいになってない?



「調子はどうだ?痛いところや、苦しいところは無いか?」


『ん・・・大丈夫。』


「そうか、1人で立てるか?」



 訊かれて僕は4本の足(・・・・)を動かして立ってみる。


 4本?


 あ、今の僕は人間じゃなくて狼だったんだ。


 けど、さっきと何かが違う・・・?



『・・・こうなったか(・・・・・・)。これが、此奴の本来の覚醒した姿(・・・・・・・・)ということか。微かにだが、神格の“欠片”らしきものが感じられるな。』


「ああ、さっき抜けていった『真神』が子孫に残していったんだろう。」


『?』



 何を、言ってるんだろう?


 覚醒?神格の欠片?真神?


 何の事なのか全然分からない。



「状況が理解できないか?そうだな、まずは自分の姿を確認してみろ。」



 そう言って、諸星はパチンと指を鳴らした。


 すると、僕の目の前に円形状の巨大な鏡が現れ、そこに映った僕の姿に目を丸くした。



『――――ええ!?』



 鏡に映っていた僕は、大きな黒い狼だった。


 何で?僕って、狼の時は紺色の毛をしてなかったっけ?


 それに、目の色が赤から蒼に変わっている!?


 それに、全身も細部がかなり変わっているような・・・・。


 うん、これって何だか・・・・・



『・・・カッコいい。』


『ナルシストになったか?』


「少しでも理解できたなら向こうに行くぞ。兄の方もそろそろ目を覚ますだろう。」


『え、兄さん!?』



 そうだ!


 兄さんはどうなったんだ!?


 あ、兄さんの臭いがする!



『兄さん!!』


「おい、落ち着け!」



 僕は兄さんの臭いのする方へと走っていった。


 すると、そこには大きな朱い鳥やキジに乗った不思議な色と臭いのする人と一緒に、誰かが地面に倒れてる白い兄さんの傍にいるのが見えた。




--------------------------


――バカサイド――


 リフレッシュ完了!


 ダークネスな奴らのイレイズ完了だぜ!



『ん・・・・・・?』


「よう!気が付いたか、()・兄ちゃん狼?気分はどうだ?」


『うっ・・・俺は・・・!?』


「良かったな!もう大丈夫だぜ!あ、誰かデカイ鏡持ってね?」


『『ない!』』



 チェッ!


 折角、真・兄ちゃん狼を驚かせようと思ったのにな~!


 しょうがない、自作するか!



『兄さん!!』


『――――司!?』



 お!?


 ここで真・弟くん狼も登場!


 蒼空やアルントのコンビも合流!


『何だ、コレ!?』



 真。兄ちゃん狼、俺お手製のビッグミラーで自分の姿を見てサプライズしている。


 やったね♪



『・・・兄さん、真っ白・・・。』


『お前こそ、真っ黒・・・!?』



 真・兄ちゃん狼は白い狼、真・弟くん狼は黒い狼だ!


 これが先祖の血が覚醒した2人の真の姿な訳だ!


 今までの姿は《大罪獣》や邪神とかで歪められた偽りの姿、神々の浄化を経て真の姿になったのだ~!


 って、言ってやったらみんなにボコられた。


 韋駄天(スカンダ)くん、痛いです。


 その後、真・兄ちゃん狼は気絶(?)している間の事を困惑しながら話してくれた。


 真・弟くん狼も同じ事があったそうだ。


 話に出ている2人の御先祖様こと大口真神は呪いから解放されて神界に帰ってあったんだろう。


 未契約の神が長時間現世に留まるのはタブーだし、何より保たない。


 その辺を簡単に説明し、話題は2人への今後の対応に移った。


 あ、長くなるなら漫画読んでていい?


 ・・・冗談だよ。



「それで河西、お前達は今後もアレ(・・)を続けるのか?」



 蒼空、そんなの今の2人を見れば解ることじゃん?



『・・・やらねえ。』


『僕も。』


「だよな~、お前らの行動って無意識のうちに邪神に誘導されてた節があるからな。それに、もう下っ端の支配も出来ないしな。」


『『え!?』』


「吸血プレイはこれからもできるけど、支配とかは邪神の力を借りたものだから、奴らが消えた今は当然使えないぜ?それに、支配されてたウルフマンズ(仮称)は支配されてた時の記憶はあるだろうな~!」


『むしろ、そっちが重大だろう。』


「朱雀?」


『私の炎で邪神や呪詛は焼き尽くす事はできたが、種族までは元には戻せなかった。あの者達も、今後はこちら側で生きていかざるを得ないだろう。』


『『――――!』』



 なんだか重くなってきたな~。


 その辺は後で結果オーライ的にしちゃうからいいんじゃね?



「なあなあ、立ち話もなんだし、場所変えね?」


「そうだな。向こうもそろそろ起きるだろうし、場所を変えて今後の事を話した方がいいだろう。」


「つーことで、お前らも人化したら?」


『『人化?』』



 あ、もしかして知らない?


 そっか!2人はさっき覚醒したばかりだから人化した事がないのか!


 確かに、ウルフマン(仮称)の時とは変身の理屈が違うからな。



「朱雀、教えてあげて♪」


「アルント、頼む。」


『うむ。』


『ああ、分かった。』



 数分後、朱雀とアルントから《人化》を教わった2人は人間の姿になった。


 全裸+尻尾の格好でwww



「うわあ~~~!!??」


「服!!()と司の服はどこ!?」



 ん?


 約1名、口調が変わってない?






・朱雀は一般的には「朱帝」「赤帝」とは呼ばれないそうです。

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