表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第3章 アンドラス編
22/477

第19話 尾行

・アンドラス編は思ったより長くなりそうです。




「着いたぜ桜ヶ丘!!」


「・・・・・行くぞ。」



 空きビルの屋上で叫ぶ慎哉を置いて黒王はさっさと下へ降りて行った。慎哉も慌ててその後を追いかけていく。


 慎哉は学校が終わった後、すぐに荷物を家に置いて黒王と合流し、この町へ来ていた。人手がいるだろうと、黒王が独断で誘ったのである。


 2人はサイレンの音が響く街中を移動し、勇吾達と合流した。



「・・・このうるさそうなのが北守慎哉だ。」


「俺の印象悪っ!」



 適当に挨拶を済ませ、4人はすぐに移動した。


 慎哉に対しての説明は既にメールや移動中に済ませていた。勇吾は多少の補足をしつつ、目的の人物のいる場所へと向かった。



「・・・・・あいつ等か?」


「うん、全員いる。やっばり慌てているみたいだ。」



 視線の先には、酷く慌てた様子の学生の集団が歩いていた。



「うわ―――――スゲェ淀んでるな。」



 慎哉の目に映った学生達は異様な空気、いや魔力に包まれていた。色で言えば青黒い感じの魔力が彼らにまとわりついていた。



「へえ、慎哉君にも見えてるんだ?」


「慎哉でいいぜ!それと、みえてるって言っても勇吾みたいにハッキリとじゃないけど。」


「当前だ。お前は感知系の修行は始めたばかりだからな。」



 その後も尾行を続けていくと、学生達の間で喧嘩の声が聞こえてきた。



「おい、あれ大丈夫なのか!?」


「思った以上にアンドラスの『不和』の影響が大きいようだ。それに、火事の事が加わったのも大きいようだな。」


「火事か―――――――。」



 慎哉は視線を別の方向に移す。その方角からは、先程から耳に響くサイレンの音が鳴り続けている。それも1台や2台ではない。何台もの消防車が走っている音が街中に響き渡っていた。



「――――――アンドラスの能力は一纏めに言うと相手に不幸を呼ぶと言う事だ。経済的困難や苦悩、そして人間関係の不和をもたらす。最も、破壊的な行動の方が有名でこっちはあまり知られてないかもしれないが――――――。」



 黒王の説明に緊張感が走る。


 慎哉が来る少し前、この町の各所で同時に火事が発生していた。発生場所は高級住宅やマンション、一般住宅街だった。それらに共通する事は、どの家にも同じ高校に通う子供がいたと言う事である。


 その子供たちというのは言うまでもなく勇吾達が尾行し、目の前でケンカをし始めている彼らである。



「奴の次の獲物は間違いなく奴らだな。狩る前に『不和』を撒き散らせて日常を破壊し、程よく追い詰めたところで惨殺するのは奴が過去に何度もやっている常套手段だ。恐怖と絶望に染まった人間を快楽のまま破壊するのが好きなのだろう。」


「ゲ―――――――性質悪すぎじゃん・・・・・・。」


「悪魔の大半はそういうものだ。」



 勇吾は素っ気なく答える。


 すると、目の前の学生達は裏路地の方へ入って行った。



「――――――!人混みから離れ出した!急ぐぞ!」



 4人は駆け足で後を追った。


 その直後、琥太郎以外は向かう先から異様な気配が出始めた事に気付く。



「動いたようだな。」


「え―――――――――!?」


「アンドラスが動き出した!」


「マジか!?」


「―――――!!」



 慎哉は初めて感じる悪魔の気配に驚き、琥太郎は全身に緊張を走らせていた。


 そして裏路地の手前まで来ると、勇吾は慎哉と琥太郎の2人を中に入らせないよう下がらせた。



「慎哉はここで琥太郎の警護についていろ。中へは俺と黒で行く。」


「え、俺戦わないの――――!?」


「当たり前だ!今のお前に爵位級悪魔の相手は無茶もいいとこだ。それに、誰かが琥太郎を護っていないといけないからな。」


「僕は―――――――――!」


「ここにい―――――――――――!」


「全員で行くぞ!」


「――――ッ黒!?」



 勇吾は黒王を批判の目で睨む。


 黒王はそれに動じることなく言葉をつづけた。



「―――――お前も(・・・)行っただろ。」


「―――――――――ッ!!」



 その言葉に、勇吾は反論する事が出来なかった。それは「お前ならどうする」と訊くのではなく、既に起きた過去を指摘するものだった。


 2人の様子を訳が分からず見ていた慎哉と琥太郎は、その雰囲気から無言のまま見ている事しかできなかった。



「―――――――わかった。」


「なら急ぐぞ――――!」


「あー―――うん!」


「よっしゃ――――!!」



 4人は悪魔の気配の充満する路地の向こうへと走って行った。












--------------------------


『――――――ハハハハ!!』


 狂気に満ちた笑い声が響き渡る。


 それが現れた瞬間、彼らは一瞬思考が停止し、再び動き出した時には全身を恐怖が支配した。平常心でいるには、目の前のソレはあまりに恐ろしく彼らの眼に映っていた。



「――――――――な―――に―――――っ!?」


「あ・・・・あ・・・・・・・・!?」


「・・・んだよ、あれ――――――――――――――――――!!??」



 その場にいた人間全員が目の前の状況を理解できていなかった。


 彼らはカラオケボックスを出た後、裏路地にある高校のOBが働いている訳あり(・・・)の店に行く予定だった。


 だが、カラオケを出た直後に数人の携帯が鳴り、彼らの家が揃って火事で燃えているとの知らせが来たのである。最も、家に愛着があまりないので火事だろうと帰る気はなかったが、ただでさえ険悪だった空気は更に悪くなり、再びケンカをすることになった。


 ケンカをしたまま路地裏に入り、そのまま店に向かおうとしたところで突然風が吹き荒れた。風は十数秒間彼らの周りにだけ吹き荒れ、収まった時にはソレはすでに目の前にいたのである。



『ハハハハ――――!イイ顔だ、壊し甲斐のある獲物の面になったなぁ―――――――ガキども!!』



 黒い狼に跨り、狂ったように笑い声をあげるアンドラスは目の前で恐怖に震える獲物の姿を見下ろし、どれをどのようにして斬殺すか考えていた。


 最初に目に映ったのはリーダー格の少年だった。彼はアンドラスの姿に顔を真っ青に染め、震えて動けない足を必死に動かそうとしていた。



「――――――――――ッ!?」


『逃げたいか?だが―――――――――――――』



 一瞬、彼は半身を風が通過していく感覚に襲われる。



『――――――ハハ!逃げるられないな――――!!』



 ゴトッと何かが落ちる音がした。


 全身が震える中、どうにか目を地面に向ける。


 そこには、少年の腕が転がっていた。



「――――――――アッ!ウアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――!!!!!!」


「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――!!!!!」」」


「「「ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ―――――――――!!!!!」」」



 肩から血が噴き出し、遅れて激痛に襲われた少年は地面に倒れてのた打ち回る。


 噴き出す生々しい血を見て、一緒にいた者達はようやく悲鳴を上げ、少年を置いて逃げ出そうとした。


 だが、それをアンドラスが許すわけがなかった。



『―――――逃げられないって言ったなぁ!』



 一瞬にして少年達の前に移動し、持っていた剣を振り上げて一番近くにいた少女に振り下ろしていった。



『いい肉を見せなぁー――――――!』


「ぁ―――――――!!!!???」



 少女は反射的に目を瞑り、抵抗もできずに斬られようとした。


 が、振り下ろされた剣が彼女を斬る事はなかった。





          キィン――――――――!





『――――――ああ!?』


 アンドラスが振り下ろした剣は、突如として現れた少年の持つ大剣に受け止められていた。


 現れた少年は剣に力を込めてアンドラスの剣を弾き返し、左手を前に出して魔法を放った。





「――――――《静かに動く世界(スローワールド)》!!』





 瞬間、世界が静止した。










・慎哉も合流しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ