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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第12-1章 大罪獣編Ⅰ――神憑き――
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第205話 大罪獣、再び

――バカサイド――


 俺、登場!!


 決めたぜ俺!


 バッチリポーズを決めながら勇吾からパクッて改良した結界を展開してやったぜ!



『ガルァァァァァァァァァァ!!』



 そこにウルフマン(仮称)が俺に襲い掛かってきた!


 だけど遅い!


 お前の動きは丸見えだ!



「くらえ!凱龍王家秘伝の一撃!必殺――――――――!」


「《グラビティ》!」


『ギャン!?』


「あ~~~!!??」」



 蒼空~~~!


 何で俺の良い所を奪うんだよ!?



「お前がバカやってるからだ!」



 心読まれた!?


 蒼空め、何時の間に読心術スキルを!?



「ふざけてないで、さっさと片付けるぞ!」


「・・・・ホ~イ!」



 仕方ない、俺の活躍は後のお楽しみだ!!


 みんな、待ててくれよな♪




--------------------------


――蒼空サイド――


 芸をやっているバカは適当に扱うとして、問題はコイツラだな。


 さっきの人から人狼に転化する様子からして、コイツラは感染によって増殖する人外のようだ。


 獣人とも呼べなくもないが、この奇妙な“魔力”や“気”の質からして、まだ安易に分類しない方がいい。


 だが、これでコイツラが俺の結界に引っ掛からなかった理由が納得できた。


 コイツラ、人間ではなくなっているが魔力を全然使っていない。


 それよりも、僅かではあるが人間の気配も纏っている。


 俺の結界は主に魔力に反応するタイプのもの、少しでも魔力を使ったり、強い魔力を持つ者が結界内に現れれば瞬時に俺に感知されるようになっている。


 だが、コイツラは今でこそ一般人レベルの魔力ではないが、最初の頃は人間の時と変わらない量の魔力しか持っていなかったのだろう。


 その証拠に、ついさっき転化したばかりの人狼からは一般人と変わらない量の魔力しか感じられない。


 つまり、コイツラの(少なくとも横浜市内での)活動は俺の結界には異変とは認識されず、精々一般人同士のトラブル程度にしか扱われていなかったということだ。


 これは、後で結界の改良の必要があるな・・・。



『・・・蒼空、気付いているか?人狼達の中には、少数だが小学生も(・・・・)混ざっている。まあ、それでも全員高学年、6年生だけだが。』


「ああ、おそらくこの中には行方不明になっている河西も居る筈だ。」


「なあなあ、エロい臭い(・・・・・)がしなくね?」


「『黙ってろ!』」


「へ~い!」



 俺達は人狼達の鎮圧に入った。


 仲間がやられて怒った人狼達は一斉に襲い掛かるが、俺の重力とアルントの風の前ではその辺の不良と何等変わらず、あっという間に倒されていった。



『ガルルルルルルル!!』


「ん?」


『蒼空、あの人狼、いや、狼は少し毛色が違うな。かなり安定している。」



 俺の前に1頭の狼が立ちはだかった。


 狼型は他にもいたが、この個体はそれと比べると一回り小さい。


 おそらく、実年齢は中1か、小6なのだろう。


 だがそんな事よりも、俺は目の前の狼が他の人狼達と比べて少し異質であることに気付く。


 他の人狼達は意識の一部を操作され、体内の気と魔力の流れに違和感があった。


 だが、目の前の狼からはハッキリとした自我が感じられ、体内の気や魔力の流れもかなり安定していた。


 何より、コイツの中から僅かに感じられるのは・・・まさか!


 俺は今までの情報を瞬時に整理し、目の前の狼の正体を推測した。



「・・・3組の河西司(かさいつかさ)だな?」


『――――――!?』


「当たりか。俺は1組の諸星、諸星蒼空だ。学校で何度か会った事があるだろ?」


『モ・・・・諸星・・・!?』


(やはり、コイツは意識を操作されていない。自分の意志で動いている!)


「何?知り合い?」



 隣でバカが野菜スティックを齧りながら話しかけてきたが無視する。


 って、火事場泥棒かお前は!?



「河西、見ての通り俺は人間だが普通の人間ではない。お前達がいる“こっち側”の人間だ。俺の隣にいるグリフォンを見れば分かるだろ?」


『・・・・・・。』


「お前達がどうしてこうなったのかは大体(・・)分かっている。だが、だからと言ってお前達をこのまま放置する訳にはいかないんだ。だから、大人しく降伏してくれないか?」


『――――嫌ダ!!』



 直後、狼――――河西司の気配が変質した(・・・・)


 今までは人ではない別種族に近い、普通と人間と同じ生きた気配(・・・・・)しかしなかった。


 それが今、体内にある“何か”を中心に、黒い、禍々しい気配に変質し、増大していった。


 この感じ、これは――――――!



『――――嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!』


「このオーラ!あの時と同じ・・・!?」


『戻りたくない!!絶対あの家になんか戻りたくない!!あんな所に居たくなんかない!あそこは地獄だ!僕は自由になったんだ!もう縛られ続けるのは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』



 声がさっきよりもより鮮明になって聞こえてきた。


 司から溢れ出す黒い気配、いや、禍々しいオーラは彼の拒絶の意志に比例して増大していく!


 間違いない、これは前に見たのと同じ!



『蒼空!!』


「ああ、これは―――――《大罪獣(・・・)》だ!」


『お前ら!!!』


「お!大将登場か!?」



 奥の扉が乱暴に破壊され、中から他の人狼とは明らかに違う空気を纏った大柄の人狼が出てきた。


 まだ司ほどではないが、あの人狼からも禍々しいオーラが漏れ始めている。


 俺が刺激したせいで変異が加速したか、そろとも元々あった偽装(メッキ)が剥がされたか。



「河西、一秀(かずひで)か?」


『お前ら俺の弟に何しやがった!?』


(不味いな。興奮して説得が通じない段階になってきている。)



 どう説得すべきか。


 俺が頭を回転させていたその時、野菜スティックを食っていたバカが勝手に前に出てきた。


 おい!って、あのバカ、障壁を張って制止を防いでいる!



「おい!お前がウルフマン(仮称)のボスだな!群れてエロいことするなんて、変態め!!」


「『お前に言う資格は無い!!』」


『ガルァァァァ!!僕と兄さんの邪魔をするなぁぁぁぁ!!』



 怒りに我を忘れかけている司がバカに襲いかかってきた。


 それに対し、バカは人差し指を出し、一言だけ叫んだ。



「伏せ!」


『ガッ!?』


『司ッ!!』



 見えない何かに押し潰されたように、司の体は床に押しつけられた。


 あのバカ、何を考えてるんだ!?



『お前ら、よくも弟を・・・!!殺す!!』


「おい、そこのボスキャラ!親を殺しかけといて、自分は兄弟でエロし放題とか羨ましいぞ!」


「何言ってるんだお前は!変に刺激するな!!」



 俺の声は聞こえている筈だ。


 だが、バカは興奮している人狼達の頭目、河西一秀への刺激を止めない。



「親を大事にしないでエロ狼軍団のボスなんかやるんじゃない!お前のパパに代わって、俺がお仕置きするぞ!」


『・・・っだとぅ!?』


「・・・不味い!」



 バカは触れてはいけない部分を刺激してしまった。


 両親―――――それはあの兄弟にとって最も忌まわしく、彼らの心の闇の元凶だった。


 俺も人伝に聞いた噂からその事を事前に知っていた。


 あのバカにもその事を刺激するなと忠告しておいたのに、堂々と無駄にして!!



『・・・敢えて刺激してるのか?』


「何?」



 ワザと刺激している・・・?


 アルントの呟きで少し冷静になった俺は、バカの行動が意図するものを考え、1つの答えを導き出した。



「・・・荒療治だな。」



 バカの考えを理解した俺は、半ば呆れながら事態の様子を見届けた。


 確かに、まともに説得するよりも、一度そうした方があの2人にとっても最善なのかもしれない。


 少なくとも俺はそう思う。


 例え、後で周りから非難される事になったとしてもだ。



『・・・親だと?あれが(・・・)大事な親だと?他人のお前に何が分かるってんだ!?』



 一秀から噴き出すオーラが一気に密度を増した。



「親は大事にしろ!お前らを愛して(・・・・・・・)産んでくれた(・・・・・・)家族だろ!」


『フザケルナ!!!』



 一秀の怒号が建物全体を震え立たせた。


 あの反応、俺達が思っている以上に彼らの闇は深いようだ。


 これは確かに、真面目に説得で解決させるのは愚策だったかもしれない。



『お前らに何がわかる!?アイツラ(・・・・)が何をしたのかを!?俺らあの牢獄での地獄の日々を!?俺達がどれだけ痛みに耐えてきたのかを!?どれだけ奪われ続けたのかを!?アイツラが人の皮を被った悪魔だってことを!?弟がアイツラに何をされてきたのかを!?俺達がどれだけ自由を欲したのかを!?親って連中の醜悪さを!?その欲望を!?人間の残酷さを!?解放された俺達の幸福を!?喜びを!?失う事への恐怖を!?綺麗事をマニュアル通りに喋るだけのお前らに何がわかる!!??』


『そうだ!!お前達に奪われてたまるもんか!!!』



 床に押し潰されていた司からも怒号が響いてくる。


 周囲を見渡せば、意識のある人狼達は全員揃って俺達を威嚇し、全身からあの禍々しいオーラが出始めていた。


 あの兄弟の闇が人狼達にも流れ込み、変異を触発させているのか。


 あのオーラから感じられるのは悲しみと恐怖、欲望、虚栄、そして何より怒りがマグマのように溢れ出している。


 これは、前の事件で遭遇したどの《大罪獣》とも何かが異なる。


 いや、それ以前に何故―――――!



『・・・蒼空、どうやら俺の気のせいではないらしい。あの人狼達、特に頭目のあの兄弟から感じられる気配、あれは・・・!』


「ああ、どうやらそのようだ!」



 最初にあの兄弟を見た時、いや、それ以前に河西家に行った時に僅かに残っていてアルントが嗅ぎ取った臭いと、気配の中に混ざっている《大罪獣》以外のあの気配、あれは―――――!?





『『お前らに分かってたまるかああああああああああ!!!!!!』』





 直後、禍々しいオーラが爆発し、俺達が居た建物は中から跡形もなく破壊されていった。


 そして、破壊の後に俺達の目に映ったのは。2匹の巨大な狼と、それに付き従う100匹近くの大型の狼の軍団だった。



『殺す!!自由を奪う連中は全て壊す!!壊し尽くしてやる!!』



 それは、一見すれば横浜に出現したのと同じ《大罪獣》にも似ていた。


 だが、禍々しいオーラに混ざって伝わってくる“気”は、《大罪獣》とも人間とも異なるもっと別のものだった。



「な、何故・・・・・!何故、《大罪獣》から神の気(・・・)が流れてきているんだ!?」



 それは間違いなく神格を持つ者からしか感じられないはずの、『神』として祀られている存在からしか感じられないはず“神の気”だった。


 隣に立つアルントも俺と同様に困惑していた。


 だが、俺達の疑問は、何時の間にか目付きを変えて俺達の前に立っているバカが答えてくれた。





「――――――――『真神(まがみ)』だ。」










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