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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第12-1章 大罪獣編Ⅰ――神憑き――
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第204話 人狼

・今回はちょっと性的な描写・・・というほどでもないですが、人によっては不快な表現があるので注意してください。

――蒼空サイド――


 横浜もそうだが、夜の大都会は昼とは別の意味で騒々しい。


 前世でも幾つもの大都会を見てきたが、一定以上文明が発展した世界の大都会というのはどうにも静寂な夜とは無縁らしい。


 深夜だというのに街の喧騒は消えることなく不快さを沸きたててくる。



『中国程ではないが、東京の風は嫌な臭いがするな。』


「都会は何所もこんなものだろう。それより、お前の“風”は張り終えたのか?」


『問題ない。標的を見つけたら、すぐに俺の風が拘束するようにしてある。後は標的がこっちの読み通りに――――――』


「発見~~~♪」


「『おい!!』」



 俺とアルントは、思わず馬鹿をツッコんでしまった。


 折角張った探査網が一瞬で台無しにされてしまうとは、自分でバカに頼んでおいてなんだが腹立たしい。


 いや、これは単にバカのノリに苛立っているだけ、か?



「ここから北北西に6kmの地点で人間だけど人間じゃない反応を沢山発見したぜ♪」


「港区の方か。急ぐぞ!」


『ああ!』


「まあ、俺は何所に乗ればいいんだ?」


「足に掴まってろ!」


「扱い酷くね?」


『尾を掴んだら東京湾に沈めるから覚悟しろ!』


「ヘイヘイ。あ、つーか、俺の《転移》で移動した方が早くね?」


「『・・・・・・。』」



 数秒前の会話を無かった事にした俺達は、標的のいる現場に向かって転移した。


 そこはとある繁華街の裏側にある人通りの少ない通りだった。



「あ、あぁ・・が・・・・!!」


『ガルルルルルル・・・・・・!』


「ヒィィィ・・!や、やめ・・・うわぁぁぁぁぁ!!!!」


『グァァァァァァァァ!!!』



 それは俺から言わせてもらえばB級映画のような光景だった。


 水商売姿の女子高生と、大学生くらいの年齢の男が狼男に襲われ首を噛まれている。


 男女は悲鳴を上げるが夜の都会の喧騒の前では、それは誰にも届かない雑音にしなならなかった。



「何アレ?ウルフマン?」


人狼(ルー・ガルー)ではないな。あの家で嗅いだ臭いもするが、別の個体だろう。見たところ、全てではないが自我が奪われているようだな。どうする?』


「・・・おそらく、奴らの頭目が何所かに居る筈だ。あの被害者には酷だが、奴らも殺す気は無さそうだからしばらく様子を―――――――」


「親玉発見♪」


「『・・・・・・・・・・・・・。』」



 有能過ぎるバカと言うのはここまで苛立たされるものだったとはな。


 凱龍王国の苦労が嫌というほど理解できてしまうのは俺だけか?


 俺達はなんとなくバカを一発殴り、標的、狼男達の頭目のいる場所へと移動した。




--------------------------


――???サイド――


 ハハハハ、今日も楽勝だ。


 バカ共が屯っている場所を襲ったら大量の獲物が手に入った。


 俺が手始めに最初の1人を喰った途端に奴らは悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、その時点でもう手遅れだ。


 俺の下僕達が一斉に襲い掛かり、エサ共のパーティ会場は阿鼻叫喚の巣窟、いや、俺達のパーティ会場となった。



「う・・あぁ・・・!」


『ン・・・・!』


『どうだ。今日のは美味いか?』


『ウン!凄ク綺麗デ美味シイ♪』



 コイツも早速腹を満たしているようだ。


 コイツの牙が俺より若い女の首元に食い込み、そこから血と一緒にこの女の“気”と“魔力”がコイツの中に流れていく。


 俺達は人間をやめたあの日から主食が変わった。


 人間だった頃と同じように米や肉も食えるが、それ以上に今はこの“気”と“魔力”を生血と一緒に喰うのは最高の食事だった。


 まるで吸血鬼みたいだが、あれとは少し違う。


 吸血鬼は血を大量に吸うが、俺達は最初の一口ほどしか血を喰わない。


 俺達にとって生血は調味料、“気”と“魔力”の味を引き立てるスパイスみたいなものだ。


 まあ、下僕の中には血を好んで喰う奴もいるが、それは個人差だろう。


 俗に言うマヨラーみたいなものだろうな。


 ちなみに、同じ人間でも処女や童貞の“気”と“魔力”は中々美味なようだ。



『おいおい、そんなに喰い過ぎると死んじまうぞ?』


『・・・平気、スグニ配下ニスルカラ。ニイサンモ、食事ノ続キヲシテキテ。』


『そうか、他にもお前の兵に合いそうなのもいるから、そいつらもやっとくんだぞ?』


『ウン!』



 俺は下僕がエサを用意した別室へと入った。


 そこには下僕共に身動きを封じられた中高生の男女が泣きながら恐怖していた。



『・・・ん?』



 ドアを閉めようとすると、部屋の外から数人の男女の淫声(いんせい)が聞こえてきた。


 下僕共、美味い飯を喰ってそのまま暴走しかけている奴がいるな。


 まあ、俺も毎晩やってるし止めもしないが。


 あ、アイツもかよ・・・!


 あ~、ま、仕方ないか♪



「ば、化け物・・・・!!」


「来ないで・・・!」


『ハハハ!喜べ、お前らも今夜から俺達の同属だ!』


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「キャァァァァァァァァ!!!」



 俺は今だ抵抗する男から喰い始め、存分に味わった後で俺の“気”を流し込む。


 すると男は全身を痙攣させ、大人しくなったところで解放してやった。



「あ・・・ぁぁ・・・グゥゥゥゥ!?」


「ちょ、ど、どうしたの!?」


「どうなってるの・・・!?」


「し、知るかよ!?」


『グルァァァァァァァァァ!!!』


「「キャァァァァァァァァァ!!??」」


「ワァァァァァァァァァァ!!??」



 男の変化はあっという間だった。


 一瞬で男の体は膨脹し、全身の皮膚から毛が伸び、爪と牙が同時に鋭く伸びていった。


 男が来ていた服は男自身の爪によって布切れと化し、男は俺の新たな下僕へと転化を果たした。



『グルルルル・・・・・!』


『ハハハ、お前もこれで俺の下僕だ!』


『ガウッ!』



 転化した男は俺の前に平伏し、俺への忠誠を誓った。



『お前、コイツにしっかりと教育と食事をしてやれ!』


『グルル・・・・了解!』



 さっきまで男を拘束していた下僕に連れられ、俺の新たな下僕は部屋の外へと出ていった。


 さて、食事の続きと行くか! 



「ヒ、ヒィィィィィィ!!!」


『ハハハハ、すぐにお前達もああなる!』


「「イヤァァァァァァァァァァァ!!!」」



 そして俺の食事は今夜も続いた。


 今はまだ夜しか食事ができないが、いずれは白昼堂々と食事ができる世界を造ってやる!


 ハハハハハ、その為にも、今夜は大勢の下僕を増やしてやるぜ!




『『グギャァァァァァァァァァ!!!』』


『・・・・・・何?』



 一通りの食事を終えた直後、部屋の外から下僕達の悲鳴が聞こえてきた。


 同時に、鋭くなった俺の五感が危険な何かが突然現れたと警告を発してきた。




--------------------------


――蒼空サイド――


「俺、参上!」


「黙れ、バカ!」



 俺はバカを蹴り飛ばし、パニックルームとなったとあるクラブの中を見渡した。


 そこには多くの人狼、中にはほぼ完全に狼の姿になっている元人間が若い男女を襲っている光景が広がっていた。


 中には丁度、人間から人狼に転化している最中の者の姿もあった。



『グォォォォォォ!!』


『五月蠅い!』



 襲い掛かってくる人狼をアルントが軽く吹っ飛ばす。



「おいバカ、すぐに例の隔離結界を展開しろ!外にいる人狼もまとめて隔離しろ!」


「了解です、隊長!」


「・・・・・・。」



 そしてバカは元ネタが不明なポーズをとりながら、『幻魔師』の時に使った結果を周囲一帯に展開した。



「俺流!《スローワールド改》!!」



 今更だが、このバカに退治される連中と、救出される連中に同情してしまう。


 そういえば、あのバカは相方のバカ龍王は連れて来ていないのか?


 などと考えながら、俺はバカが展開する結界の中に入っていった。






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