第164話 夢
新章「白狼編」スタートです!
真っ暗だ。
何も見えない真っ暗な場所に俺の意識が漂っている。
そして何所からともなく鳴き声が聞こえる。
―――――――――――――オォォォォォォォォォォン!
犬・・・・・・・狼・・・・・・?
遠くから何かの遠吠えが聞こえる。
最初はほとんど聞こえなかったのが、最近は動物の鳴き声だとハッキリと分かる。
これは夢だ。
最初は数ヶ月に1度、最近は3日に1度は聞く様になった何度も見る夢だ。
―――――――――――――オォォォォォォォォォォン!
まただ。
この2、3ケ月でこの夢を見る回数は急激に増えてきた。
最初にこの夢を見たのは何時なのか覚えていない。
少なくとも物心が付いた頃には見ていた気がする。
――――――――オオォォォォォォォォォォォン!
鳴き声が近づいてきた気がする。
同時に胸が苦しくなるような、何かを思い出しそうな、よく分からない感じに襲われる。
――――――オオオォォォォォォォォォォォン!
何なんだ・・・・・・。
お前は何なんだ・・・・・・何がしたいんだ・・・・・・。
何で俺に吠え続けてくるんだ・・・。
誰なんだ、お前は・・・・・・!?
―――――――――――――――ピシッ!
鳴き声の主に向かって問いかけた瞬間、ガラスにヒビが入ったような音が聞こえた。
そしてその直後、今までなかった何か――――――言葉で言い表せないような喪失感が生まれた。
何だ・・・・・これ?
『オオオォォォォォォォォォォォン!!!』
近くだ!
あの鳴き声がすぐ近くまで来ている・・・・・・!
誰だ、何所にいる・・・・・・!?
『―――――――――――――――の半身――――――――』
―――――――――――声!?
鳴き声じゃなく、人の声が聞こえてきた。
聞き覚えの無い声、けど、不思議と聞き入りそうになる声だ。
『―――――――ムが発かれた。多くの血が流れ始めている――――――――――』
ハッキリとは聞こえない。
けど、何かを警告するような内容に聞こえる。
『―――――アラ―――――スとレブ――――カ――――も何者かが――――――た。我が末裔の――――よ、引き裂かれし汝の―――――に会い、共に神代の災厄から“今”を守って―――――――――。』
何だ、何を言っている・・・・・!?
我が末裔・・・!?
俺の先祖の例か何かか!?
誰に会って何を守れって言うんだ!!
それに、お前は誰なんだ!?
『―――――――――――は―――――――カムイ―――――。汝らの祖―――――――――――』
声が急に遠くなっていく。
おい、何を言ってるんだ―――――――――――――――!
俺が叫んだ直後、夢はそこで終わった。




