第161話 その後の小嶋家
・番外編その1です。
・今回は瑛介のストーリー!
――名古屋――
その日の正午、午前のバイトを終えた小嶋瑛介は昼食をとるために家に帰って来ていた。
玄関の横に自転車を止め、腹を空かせながら家の中に入った。
「ただいま~~~!」
「兄貴お帰り~~♪」
入って瑛介を出迎えたのは弟の凌玖斗だった。
「兄貴、これ見ろよ!」
「―――――!どうしたんだ、それ!?」
瑛介は凌玖斗の見せた物を見て驚いた。
それは本来、この家にはないはずのものだった。
「P〇Pの最新機種だぜ!しかも新品!」
「だから、何でそれをお前が持ってるんだ!誕生日にはまだ早いだろ!?」
前にも述べたが瑛介の家は母子家庭で、家計はハッキリ言って最近まで厳しかった。
今は多少は余裕が出来始めたが、それでも子供に高いゲーム機を買うほどの余裕はまだなかった。
実際、この家にあるゲーム機も中古の旧機種か貰い物しかない。
間違っても最新機種、しかも新品などあるはずがなかった。
「お土産に貰った!」
「お土産!?」
「兄貴の分もあるから早く来いよ!」
凌玖斗に手を引っ張られながら今に入った瑛介は、そこにいた人物を見て目を丸くした。
「おお!待っていたぞ、我が初孫!!」
「祖父さん!!??」
そこにいたのは、異世界にいるはずの先代飛龍王ヴォルゲル、つまり瑛介達の父方の祖父だった。
ヴォルゲルは両脇に孫娘、つまり瑛介の妹達を座らせて幸せそうな顔をしていた。
「何でココにいるんだよ!?」
「家族に会いに来た。」
「いや、それは分かるけど・・・向こうはいいのかよ?」
瑛介の言う“向こう”とは飛龍の都のことである。
当代の飛龍王である瑛介の父が不在の今、ヴォルゲルが代行として都を統治しているのだ。
「都のことはムートに全て任せて来たから問題ない!」
「・・・・叔父さん、絶対無理矢理押しつけられたな。」
「それより瑛介、お前にもお土産を買ってきたぞ!」
「・・・・・は?」
横に目を向けると、そこには丁寧にラッピングされた箱の山が積んであった。
「とりあえず、旧知の日本人に最近の若者は何を欲しがってるのか聞いて手当たり次第買ってきたぞ。」
「買いすぎだろ!」
「見ろよ兄貴!P○3や○iiもあるぜ!」
「お兄ちゃんも遊ぼう!」
「お前ら・・・・・・。」
すっかり物で餌付けされている弟妹に、瑛介はそれ以上何を言えばいいのか分からなくなった。
その後、既に注文されていた出前が届き、その日の小嶋家のランチは普段の何倍も豪華なものとなった。
ちなみに、瑛介の知らない内にヴォルゲルは《ガーデン》に別荘を造っていてほぼ毎日顔を見せることとなるのだった。
さらに、瑛介がバイトに行っている間にご近所挨拶はとっくに済ませていた。
その際、凱龍王国の珍しい品々も配ったので祖父ヴォルゲルは一晩でご近所の皆さんと仲良くなった。
「祖父さん、一体何を配ったんだ?」
「普通に高級焼き肉セットと高級酒だ。」
「普通じゃねえ!!」
余談だが、ヴォルゲルが来日したその日の夜、瑛介の携帯に何通ものメールが届いた。
From:ライ
Sub:ヘルプ!(ToT)/~~~
異世界から元龍王が来日して中小の神達がビビってるYO!
みんな俺が関わっているって思ってやがるYO!
身内にまで疑われてるYO!
助けてほしいYO!
――end――
From:店長
Sub:ロマネ・コンティ最高♡
瑛介、お前は今月は残り全部有給休暇な!
ちゃんと家族との時間を最高にしろよ!
あと、お前の祖父さんいい人だな?
P.S.ドラゴンビーフって何所産の肉なんだ?
――end――
From:勇吾
Sub:バカが何かしなかったか?
俺達の気付かない内にバカが名古屋に行っていたらしい。
何か余計なことをされなかったか?
何かあったらすぐに連絡をくれ。
――end――
From:ライ
Sub:さらにヘルプ!(ToT)/~~~
ドイツ・北欧系の龍王が来日したのが国外の神にもバレた!
それで向こうの大手や中小の神どもが日本進出を計画し始めたらしい!
お前から爺さんにバルドル達の説得を頼んでくれね?
――end――
From:美咲
Sub:Gが・・・
外を見たらGが、Gの群が!!
Gが大群で町の外に!!??
――end――
From:バカ
Sub:無題
なあなあ、名古屋にイタズラしに来たらさ
何だか知らねえけど、野良猫や野良犬が団体でどっかに逃げてくのを見つけたぜ!
あと、カラスやネズミやGも川みたいに一目散に逃げてく所を撮影したから送るな♪
[Gの黒い光景写真]
[群れるGの写真]
[Gの拡大写真]
凄くね♪
――end――
From:女子連合
Sub:バカ狩り\(`o'")
あのバカを目撃したらスグにこのメルアドに返信!
発見者には高額報酬あり!
というか全員で捕獲よ!!
――end――
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「・・・・寝るか。」
瑛介はいつもより早く就寝したのだった。
・隠居はしても“元”がついても龍王は龍王、野生動物たちは本能的に恐れます。




