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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第10章 救出編
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第150話 悪魔武装化

 緑に覆われた山の側面の一部が爆発し、同時に地下から巨大な魔力を持った“それ”が俺の視界に姿を現した。


 この感じは悪魔・・・か?


 さらにそれとほぼ同時に、眼前の巨大な火柱の中から1つの人影がその姿を現し始めた。



「――――――――――――――――――待て!!」



 良則!?それにトレンツとリサも!


 爆発で山に開いた穴から良則達が飛び出してきた。


 先に出たあれを追ってきたのか。


 宙に舞った土砂のせいで全体がハッキリとは見えないが、その輪郭からして甲冑を身に纏った大柄な男のようにも見える。



『「―――――――手こずっているようだな、アミー?」』


『黙れ、フォルス!!』



 フォルスだと!?


 アミー以外にもソロモンの悪魔がいたのか!!


 だが何か様子がおかしい・・・・・?


 全体の姿が見えて来るのを待たず、俺はフォルスと呼ばれた“それ”に向かって《ステータス》を使った。



【名前】ウィルバー=オルセン

【年齢】110  【種族】人間

【職業】傭兵  【クラス】魔の契約者

【属性】メイン:闇 土 木 風 サブ:火 水 氷 雷 空

【魔力】5,925,200/6,450,000

【状態】悪魔武装中フォルス

【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv3) 属性術(Lv4) 剣術(Lv4) 体術(Lv3) 投擲(Lv3) ????

【加護・補正】物理耐性(Lv4) 魔法耐性(Lv3) 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv3) 全状態異常耐性(Lv4) 強者の瞳 悪神の干渉 悪魔フォルスの契約

【開示設定】ON



 悪魔ではなく、悪魔を武装した契約者か!


 それもかなり強い!


 俺はステータス画面を閉じて敵の方へ視線を戻すと、その直後に火柱は消えて代わりに1人の長槍を持った美青年が宙に立っていた。


 赤い長髪の青年の背からは炎が羽のような形を作りながら揺らいでいた。


 おそらくは能天使だった頃の名残、あれが悪魔アミーの人型携帯なのだろう。



「勇吾!」


「おいおい、敵を追って外に出たらボスキャラ追加かよ?」


「そっちも状況が一変したみたいね?」


「ああ、どうやらそっちはかなりの強敵にぶつかったみたいだな?」



 敵がすぐに戦闘を再開しなかった隙に良則達が合流した。


 良則の体には複数の切り傷があり、特殊な金属糸を編み込んだ装備には所々に鮮血が付いていた。


 過大評価をする訳ではないが、良則がここまで手傷を負わされるのは最近ではそんなに多くはない。



「・・・どれほどだ?」


「アベルほどじゃないけど、横浜に出たカースの“端末”よりは確実に強いよ。」



 アベルと(端末の)カースの間ほどの相手か。


 それに今はアミーも加わって厄介な状態だ。


 だが何より、俺はアミー状態が気になった。


 さっき俺は炎の形態をとっていた奴にかなりのダメージを与えたはずだ。


 加減などせず、奴に致命傷を与えるつもりでかなり魔力も凝縮した浄化の力も込められた斬撃の竜巻をぶつけたにも係わらず、奴からは深手を負った気配など感じられなかった。


 さすがに無傷ではないらしく、魔力が1~2割ほど減っているようだがそれでもダメージが少なすぎると思わずにはいられない。


 一体、どういう事だ?


 いや、理由として考えられるとしたら、ステータスにあった『???の加護』や『????』のいずれかか、又は両方だろう。



「良則、奴のステータ・・・」


『《業火の魔槍(ヘルファイヤーランス)》!!』



 俺の声はアミーの戦闘再開を告げる攻撃によって遮られた。


 チッ!さすがにこれ以上は待っててくれないか!



「―――――――上にそらせ!」



 アミーの槍の先から放たれた業火の一閃の威力を直感的に察した俺達は、真っ向からぶつからず、横から剣技や拳技などで攻撃の軌道を地上から上空に逸らす。


 くっ!さっきまでとは比較にならないほど重い!!



「「おおおおおおお!!!」」



 見た目以上の攻撃の重みに負けそうになるが、どうにか起動を逸らす事に成功する。


 だがその直後、俺の目前に甲冑に身を包んだウィルバー(フォルス)の剣が襲い掛かってきた。



「―――――――――――――!」


「危ねえ!!!」


「トレンツ!?」



 俺を一刀両断にしようとする剣を、横からトレンツが蹴り込んで止めた。


 だが、トレンツの足は刀身に接触しているが弾くどころか振動すらさせられていない。



「ツ~~~~~~~~~!!スッゲェ堅いぞ!!」


『「・・・・・・・軽い。」』


「!!」


「トレンツ!!」



 ウィルバーが剣を軽く横に振るとトレンツの体は簡単に飛ばされた。


 トレンツはすぐに体勢を戻して空中に踏みとどまった。


 その直後、後方の空で大爆発が起きた。


 爆音とともに爆風による嵐のような衝撃が遅いかかり、俺は姿勢を崩しそうになる。



「「「!!」」」



 直接見てはいないが、この音と衝撃から、もし地上で爆発していたら間違いなく街ひとつが壊滅していただろう。


 今のアミーは間違いなく本気、さっきまでのように油断や隙を見せることはもうないか。


 こうなる前に倒したかったんだが仕方がない。



「良則、リサ、トレンツ、町の方に被害が出る前に一気に叩くぞ!」


「うん、わかった!」


「気をつけて!敵はどっちも物理攻撃に強いわよ!」


「なら、こっちは魔法を大量にお見舞いするぜ!」



 細かい作戦などは考えず、俺達は二手に分かれて攻撃を開始した。



「《サウザンド》!!」



 最初に良則の《閃拳》が流星群のように敵に襲いかかる。



『チッ!』


『「・・・・・・」』



 アミーは自分の周囲に球体状の防御壁を張り、ウィルバーは臆せず突っ込んできた。




   ドドドドド・・・!!




 良則の本気の(・・・)(閃拳)は、一発一発がこの世界の高性能爆弾を勇に超える威力がある。


 それが千発以上も放てば、例えどっかの国の艦隊もあっと言う間に海の藻屑と化す爆発が起きるのだが、ウィルバーは何の抵抗も感じないかのように俺と良則の元に突っ込んでくる。


 いや、あれはただ突っ込んでいるのではなく、微妙に体を逸らして《閃拳》の直撃を最低限に抑えている。


 なら、今なら攻撃しても急には避けられない!



「《黒斬衝(こくざんしょう)》!!」


「《煌炎一閃拳(こうえんいっせんけん)》!!」



 ウィルバーをしっかりと捉え、奴のいる空間ごと切裂くつもりで全力の斬撃を放つ。


 それと同時に《千を超える閃拳(サウザンド)》を放っていた良則も最後の一発を放ち終えたと同時にほとんど間を開けることなく次の技を放った。


 さっきまでの数攻めの攻撃とは逆で、今度のは“光”と“火”の2属性を瞬時に融合させ、一転に集中させて放つ技だ。



『「――――――――――――――!!」』



 ウィルバーは無言のまま両手に持った双剣で俺の斬撃を受け止めるが、受け止めると同時に一気に数十mも後方に押し戻され、さらに1秒を待たずに今度は良則のオレンジ色に輝く拳撃の直撃を受けて奴の周囲は閃光と共に大爆発に飲み込まれた。


 その跡には僅かに空間が陽炎のように歪み、俺達の放った攻撃の威力の大きさを物語っていた。


 加減はしなかったとはいえ、まさかここまでの威力が出るとは・・・《聖龍水》の恩恵は想像以上のようだな。


 いや、今はそんな事よりも攻撃を続けないと!



「―――――――一気に叩くぞ!!」


「うん!」



 俺と良則は神経を研ぎ澄ませながらウィルバーの現在位置を捉え、トレンツ達と戦っているアミーにも注意しながら斬撃や拳撃を放ち続けながら接近していった。



『―――――――がら空きだ!《煉獄を超える(デストラクション)破壊の劫火(ブレイズ)》!!』



 それに気付いたアミーは、トレンツが氷魔法により攻撃の雨を放っているにも拘らず俺達に向かって軽く200m四方を飲み込むほどの巨大な炎を放ってきた。


 クソッ!あれを防いでいたらその間にウィルバーに反撃の隙を与えてしまう。



「―――――――――――――――アルビオン!!」



 俺が迷いそうになった瞬間、横にいた良則は天に向かって契約している龍皇の名を叫んだ。


 ()べるのか!?


 俺と黒との契約と違い、良則とアルビオンの契約にはかなり制限がある。


 簡単に言えばこの世界での召喚(・・・・・・・・)に大しての制限がある。


 アルビオンは古くからヨーロッパ各地の伝承などに登場する“白いドラゴン”の1体であり、他の神々がそうしているように自らに制約を課して極力この世界の、特にヨーロッパ地方の表舞台には出ないようにしている。


 その為、この世界で召喚できるのは基本的にはヨーロッパ以外ということになる。


 万が一にも――俺と黒が慎哉に見つかったように――現地の人間に目撃されでもすれば、他の地域なら精々未確認生物扱いだけで済むだろうが、ホームであるヨーロッパでは過去の伝説などを持ち出されて大騒ぎになる可能性が高いのだ。


 だからこそ、今この場所で召喚ができるのか疑問に思ったのだ。


 いや、それ以前に今からだと間に合わない!


 俺はアミーの攻撃の防御に移った。



「《焔祓い-円-》!!」



 布都御魂剣を弧を描く様に振るい、まるで目の前に壁があるかのようにアミーの炎が俺達の前で遮られていく。


 くっ!これは闇属性も融合させた炎!!


 俺には闇属性は効きにくいとは言っても、この量は・・・・・・!





『「《斬り裂き圧し潰す森(グラビティエッジフォレスト)》!!」』





 後方からウィルバーの声が響いた。


 しまった!


 アミーに俺の注意が移ったのに気づかれたか!


 このままだと挟み撃ちに!


 良則は!アルビオンの召喚はやはり無理だったのか!?



『ハハハハ!!死ね、ガキども!!』



 アミーの笑い声が頭に響いてくる。


 その僅か1秒後、ひとつの山を飲み込む爆発が俺達を飲み込んだ。






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