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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第2章 修業と日常
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第13話 見た目はボロ、中身は豪華?

とりあえず、日常編1はこれで終わりです。


 貧乏学生の住むアパート、そう聞くとどんなものを想像するだろうか。ドラマなどでよく見るのは昭和に建てられたトタン屋根のボロアパートで、あちこちが錆び付いているものだ。実際はもう少し綺麗なアパートに住んでる人だっている。


 慎哉の目の前にあったのは、そんないかにも昭和に建てられたようにしか見えないボロアパートだった。あちこちが汚れていて、現代っ子なら基本的には住みたがらないだろう思えた。



「こ・・・・ここに住んでんの?」


「・・・・言いたいことはわかるが、()を見てからにしろ。」



 傘を閉じ、錆び付いた階段を昇る勇吾について行く。昇った先の通路を奥まで進むと、「205号室」と書かれた表札が張られたドアの前に着いた。


 勇吾は周囲に自分達しかいないことを確認するとドアノブを握る。



「先に注意しておくが、中に入るときはできる限り誰にも見られないようにしておけ。」


「何でだ?」


「中に入ればわかる。」



 ドアノブを回してドアを開けると素早く中に入る。その後に続いて慎哉も中へと入っていく。



「――――っ!!!!???」



 入った途端、目の前の光景に声にならない声を上げた。


 そこは、外から見たら決して想像できないような豪華な内装だった。いや、と言うより全く別の場所としか言えなかった。



「――――――――フッ。」



 予想通りの反応に思わず笑みをこぼす勇吾。



「どうした?中に入ったらどうだ。」


「――――!あ、ああ・・・・。」



 ようやく正気に戻り、()の中へと入る。


 新築のようなフローリングの床を歩く。玄関だけでもアパート1室分はありそうなスペースだったが、明らかにそれだけでは済みそうにない。オブジェなどはほとんど置いていないが、それを置いても豪華すぎるとしか言えなかった。


 玄関から奥へ進み、ドアの1つを開けて中へ入る。そこは更に広々とした空間が広がっていた。例えるなら、都心のど真ん中に建っているような超高級マンションのリビングであった。



「おおおおおお――――!!??」


「驚いたか?簡単に説明すれば、ここは俺と黒の力で造ったこの世界での拠点だ。」


「――――そうか!?そうだよな!確か空属性って空間を自由に操ることができるんだったよな!?何で気づかなかったんだ?考えてみたら、魔法使えば何でも作り放題じゃん!スゲェ!スゲェ!スゲェ――――――!!」


「うるさい!」



 ようやく何時ものペースに戻った慎哉は、リュックを適当に奥とリビングの中を探検し始めた。勇吾をそれを見てツッコもうとは思ったがやめ、取りあえず買ってきた物を整理する事にした。止めても止まらない事はこれまでの事で十分理解していたからである。


 勇吾は10人は囲めるだろうテーブルに持っていた買い物袋を置くと、以前、布都御魂剣を出した時のような要領で何もない宙に手を突っ込む。収納用の異空間の中から買ってきた物を次々に出していった。これは、空属性持ちにとっては基本的な技術―――荷物などを収納できる異空間を創るもの―――であり、魔法では特殊魔法に属するが、勇吾は空術を使って創っている。



「お―――――――!2階もスゲェな!!」



 階段を上って2階から1階を見下ろしながら叫ぶ。


 前を見ると、窓の向こう側、つまり外の景色が見える。ボロアパートの2階のはずが、窓から見えるのは高層マンションから見るような光景だった。



「スゲェよな~~~!空属性ってホント便利だよな~~~~!」


「簡単そうに言うな。空属性は全属性中でも扱いが難しい属性なんだぞ。それに、常時固定できる空間だとこれくらいの空間が俺の限界だ。」


「じゃあ、スローワールドは?」


「あれは消費した魔力に比例して持続する『限定型』の異空間だから、常に魔力を供給しないと1日もかからず消滅する。この家のように『半永続型』の異空間は最初に消費する魔力は限定型より多いが、一度創ってしまえば強力な魔力で破壊されるか、術者が解除しない限りは永続する。異空間と言っても種類は結構あるんだ。」


「ヘェ~~~~~。」



 なお、『限定型』は後から魔力を供給する事で強度や持続時間を延長する事ができるのに対し、『半永続型』は創った後からさらに増築する事は可能だが強度などの設定変更する事が基本的にできない。ただし、適正がレベル4以上だと、こういった制限を受けずに異空間を創る事ができるケースは結構あったりする。


 勇吾に感心しつつ、今度は2階も探索しようとした慎哉だが、そこに現れた男によって遮られてしまう。



「―――おっ?誰か騒いでいると思ったら、最近噂になってる北守慎哉だな?」


「誰!?」



 何時からそこにいたのか、慎哉の目の前には1人の金髪の青年が立っていた。


 面白い物でも見るようにニヤつく青年。外見上(・・・)は20歳前後で身長は黒王より少し低いその青年を前にし、慎哉は自分の感覚が青年を人間ではない事を知らせていることに気付く。しかも、先日の修業で身に着けた魔力察知能力が青年の魔力のすさまじさも知らせている。



「あ、俺はライっていうもんだ!詳しいことは《ステータス》使えばわかるぜ!」



 それは単に《ステータス》を使えと言っているように聞こえた。


 慎哉は言われるままに青年のステータスを見てみる。



【名前】ライ(偽名)

【年齢】208  【種族】雷鳥族

【職業】土地神  【クラス】天神(雷神)

【属性】メイン:雷 サブ:光 風 空

【魔力】6,616,000/6,616,000

【状態】正常

【能力】――閲覧不可――

【加護・補正】――閲覧不可――

【開示設定】一部制限あり



 人でないどころか神だった。



「――――何で神様がここに!?」


「ああ、俺の事はライって呼んでくれいいぜ。様はいらないからよ。あと、俺は勇吾と契約している連中の1人だから!」



 神と言う事もあり、魔力は黒王すら超えている。偽名を使っていたり、能力などが閲覧できないのは彼が制限をかけているからか、それとも相手が神だからだろうか。


 すると、1階にいた勇吾が声を上げる。



「ライ!いるならこっちを手伝え!」


「ホ~~~イ!」



 軽い調子で階段を下りていくライを見ながら、「神と契約するなんてチートだろ!」と心の中で叫ぶが、そう言えば黒王も『神龍』であったことを思い出す。



(そう言えば、勇吾の加護・補正に《神話の契約者(レジェンド・コントラクター)》ってあったような・・・・。)



 慎哉も1階に降り、勇吾のステータスをみて彼の加護・補正をチェックしてみる。




神話の契約者レジェンド・コントラクター

・条件さえ満たせば神・神獣・天使・悪魔と対等な契約が可能となる。

・本来、契約する際に生じる「契約限度数」及び「契約負荷」がなくなる。

・見ての通りのチート補正!これがあれば悪魔にぼったくられずすむぜ!!神話の神々もこの力でゲットだぜ!!



 初めて聞く言葉が幾つか出てきたがやっぱりチートだった。


 後で知る事になるが、これは「契約系補正」と呼ばれ、勇吾のような凱龍王国では結構メジャーな補正である。これは遺伝的な影響をうけて発現する補正であるため、他国や異世界からの移住者などとは違い、先祖代々王国民の血を引く者に先天・後天問わず発現しやすい。特に始祖(・・)である『凱龍王』の血を色濃く受け継ぐ王族ともなると全員が補正を持つとされている。



「・・・・これでチートじゃないって。」


「―――そういうものだ。」


「うおっ!!黒、何時の間に!?」



 背後から突然現れた黒王に驚き飛び跳ねる。


 ライといい、神関係の連中は突然現れるのが挨拶なのかと思いたくなる慎哉だった。



「よく来たな。お茶でも入れよう―――――紅茶でいいか?」



 慎哉が肯くと、黒王はキッチンの方へ行きお茶の準備をし始めた。


 出会ってまだ短いものの、慎哉はどうにも黒王には逆らえないと思う事が多々あった。年上と言う事もあるが、黒王からは今の慎哉では表現できないような空気が流れており、外見以上に貫禄を感じられた。



「なあなあ、今からゲームしねぇ?モン〇ンや〇国無双とか、ソフトはいっぱいあるぜ?」


「――――ライ、お前また――――――。」


「てへっ♪」



 その後、勇吾の怒りを買ったライはみっちりと刑――荷物運びと整理――に処せられた。






--------------------------


 4人はその後、黒王の入れた紅茶(ダージリン)とクッキーを口にしながら雑談をし、ライが2階から持ってきたゲーム機を大型テレビに繋げたので適当にゲームなどを楽しんだ。さっきまでいろんな意味(・・・・・・)で怒っていた勇吾も、コントローラーを持った瞬間、上級者並みのテクニックを発揮して大暴れした。黒王曰く、「勇吾はもともと娯楽好きで、実家にもたくさんのゲームを置いている。」らしい。さっき怒っていたのは、ライが毎回ゲームや漫画を衝動買いして財布の中を危うくするからとのことだ。



「――――そう言えば、神様って普通にゲームとかしてるもんなの?」


「まあな。俺以外にも結構人間の文化を楽しんでる奴は多いぜ?俺もミッチーとコミケによく行ってるしよ。」


「・・・・お前を神の基準にすると世も末だな。」


「否定しきれないのがキツイな。」



 どうやら、神様と言うものは結構人間の世界を楽しんでいるらしい。


 ちなみに、ライは元々この世界の神様とのこと。それも大陸から日本に渡って来た神様で、勇吾が前に(・・)この世界に来た際に契約したらしい。らしいと言うのは、勇吾自身が言っているわけではないからだ。勇吾は自分で話す気はないらしく、黒王も勇吾が言わないなら自分も言う気はないという態度をとっていた。



「んじゃ、もう1戦しますか。」


「何回負ければ認めるんだお前は?」


「俺の心が死ぬまでだ!」


「意味不明じゃね?」


「―――――ライの言葉は気にしたら負けだ。」



 その後、日没までゲームを続けるが勇吾と黒王(・・)が無双しまくる結果となった。




 それから数日間、慎哉は学校が終わると勇吾達の家により、修業を見てもらったり、ライに連れられて秋葉原に買い物に行くなど、充実した日々を送るのだった。


 ただし、勇吾の怒りが爆発する事があったのを除いてだが――――――――――。










・次回から新章です。グロイのも入るので設定変更必要ですね。

・ライの正体は調べればわかると思います。能力に関しては少しずつ明らかになる予定です。


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