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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第10章 救出編
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第145話 盟主の封印


「封印を破壊するだと――――――!?」


「そうだ。この娘の魂の中に“それ”がある。だが、力ずくで破壊しようとすれば宿主は死んで新たな宿主へと転移し、発見が困難となる。組織が数百年かけても封印を解く事が出来なかったのはその為だ。」



 《盟主》の封印・・・・・・。


 以前、良則に誘われてあいつの祖父、先々代国王に会いに行った時にそんな話を聞いたことがある。


 『創世の蛇』の《盟主》は一部が封印されており、そのせいで直接動く事が出来ず、構成員達は封印を解く方法を模索していると言っていたな。


 けど、まさか彼女・・・リディ自身がその封印の要のひとつとは・・・・・!


 マズイ、このままだと《盟主》が―――――――――



「―――――――――もう遅い!」


「――――――――――!!」



 俺が力ずくでも止めようとするが、やはり《アイギス》が邪魔をして近づく事が出来ない。


 焦る俺の目の前で、フェランは右手の上に魔力を集中させて一本の刀身を出現させた。



「やめ・・・・・・・!!」


「これで、2つ目だ―――――――――――!!」



 俺の目の前で、フェランは魔力で造った刃でリディを斬った。


 いや、斬ったように見えた。


 彼女の体は彼女の来ている物も含めて全く傷ついておらず、まるで何もされていないようにも見えた。


 だが、すぐに変化が起きた。



〈ああああ・・・・・・!!〉



 今の悲鳴は念話か!?


 目の前のリディの悲鳴が頭の中に響くと同時に、彼女の体の前に不思議な形をした図形、どこかの古代文字にも似た何かが浮かび上がった。


 いや、あれには見覚えがある!



「天空神の“紋”・・・!?」


「そう、古きオリンポスの神のシンボルをベースにした封印式、《盟主》の本体を封印している術式の核の部分だ。数千年、いろんな女の魂に転移していたこの封印も、これで終わりだな。」



 フェランが言い終えるた直後、封印式はガラスが割れるように砕け散った。


 くそ!!俺の目の前で・・・!!



「・・・これで残りは5つ、《盟主》が全員復活するのもそう遠くはないな。」


「くっ・・・・・・!」


「これで俺もここにはもう用はない。後はお前の好きにすればいい。ただし、全員生きて出られればの話だがな?」


「!?」


「後は自分で考えるんだな。俺はさっさとこの世界を去ることにする。無事に生き残れたとしても、二度と会うことはないだろうな?」


「何・・・?」



 意味深な言い方だな。


 一体、奴の中ではどんな筋書きができているんだ!?



「別に深い意味はない。ただの勘みたいなものだ。じゃあな、『黒の契約者』。」



 最後に不敵な笑みを浮かべながら、フェランの姿は一瞬でかき消えた。


 今のは異世界転移じゃなく普通の《転移魔法》だな。


 おそらく、こことは別の拠点か中継地点に移動したんだろう。



「・・・今はそれよりも・・・」



 奴の事はいったん忘れることにした。


 王国軍もバカではないから、転移で逃亡した者も随時追跡しているはずだ。


 俺が今やるべき事は彼女達の救出だ。



「待ってろ。すぐにそこから出す。」



 敵の消えた部屋の中で、俺は全ての水槽を破壊していった。




--------------------


――良則サイド――


 下層部で何かが起きた・・・・・・・。


 (丈のせいで)迷宮化した施設を進んでいると、下の方で何かが起きたのを瞬時に感じ取った。


 それはまるで開けてはいけない箱が開いたような、大事な何かが失われたような、不吉としか言えないような感覚が僕の中を走っていった。


 何だろう、何だか嫌な予感がする・・・



「どうした、ヨッシー?」



 僕の不安に気付いたのか、すぐ後ろを走っていたトレンツが声をかけてきた。



「・・・下層部で何かが起きたみたい。誰かが死んだ訳じゃないけど、何か嫌なことが起きたみたいだ!」


「ゲッ!下ってことは勇吾が向かってる所だろ!」


「・・・きっと、勇吾の目の前で何かが起きたわね。誰もまだ死んでいないの逆に不安にさせるわね・・・。」



 すぐにでも《念話》で勇吾と連絡をしたかったけど、この施設の建材が一部の魔法を妨害または吸収する性質があるからできなかった。


 それ以前に、敵地での《念話》を含めた通信は盗聴される可能性が極めて高いから極力避けるようにとみんなで決めたのに、ここで僕が破る訳にもいかない。



「心配だけど、下層部には黒も別ルートで向かっているから、ここは2人を信じよう。僕達はできるだけ敵を引き付けて無力化していこう!」


「おう!」


「ええ。」



 僕達はその後も敵を無力化していった。


 敵側の主力が王国軍の方に集中しているのか、中層部にいる敵戦闘員はそれほど多くなかった。


 だけど、僕の直感は危険がすぐ近くに潜んでいる事を伝え続けていた。


 この感じ、この先の部屋からずっと僕にだけ(・・・・)向かって伝わってきている!



「この階の敵はこれで大体倒したわね。あとは・・・・・」


「・・・後はあの扉の奥の部屋だけだけど・・・」


「丈のことだから、あの扉もどっかとんでもない所に繋げてるんじゃね?女湯とか?」


「「・・・・・・・・・」」



 僕もリサも完全に否定はできない。


 けど、あの扉の向こうから伝わってくるのは、それとは違う類の嫌な感じだった。



「・・・とにかく、注意して入ってみよう!」



 僕達は周囲にも注意を配りながら扉の奥へと入っていった。






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