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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第2章 修業と日常
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第12話 同級生はイケメンに飢えてストーカー寸前に

今回は少し短いです。


 天雲勇吾は尾行されていた。


 その日、勇吾は雨の中を傘をさしながら街を歩いていた。


 普段なら魔法を使って雨を防いでいたが、異世界の、それも現代の日本ではそうはいかない。ここは科学の世界であり、魔法は架空の産物であるため不用意には使えない。と言うより、彼の世界の法律で制限されている。



「――――後は薬局か。」



 右手にぶら下げた買い物袋を見ながら呟き、近くにドラッグストアがないか周囲を見渡す。梅雨の雨にもかかわらず、勇吾の周囲には傘を差して歩く人々で溢れていた。


 勇吾と黒王がこの街―――と言うよりこの世界に来てまだ―――現実時間で―――一週間も経たない。着いて早々トラブルに巻き込まれてしまった為、今日までゆっくり買い出しをする時間がなかった。今日は午前から買い物に追われ、何軒もの店を出入りしている。



「――――あそこか。」



 今歩いている道の先にある交差点の角にドラッグストアを見つけ、歩く足を速めていった。


 辺りには学生の姿が増え始めている。何時の間にか下校時間になっていたようだ。



「ん・・・・?」



 背後から知っている気配が近づいて来る。感覚を少し上げると、他の気配もいくつか混じっていた。どれも人間、おそらく彼の同級生だろうとあたりをつけたらどうやら当たっていたようだ。


 気にせず歩き続けるが、気配はずっとついてくる。



「慎哉の奴、尾行しているつもりなのか?」



 気配の正体は慎哉と彼の同級生だった。




--------------------------


 時は少し遡る。


 今日の授業も終わり、慎哉は教室で帰りの支度をしていた。


 そこへ、今朝から彼を悩ませている少女達がやってきた。



「北守く~~~~ん!」


「―――さようなら!」



 素早くリュックを背負って教室を出る。



「逃がさないよ♥」


「ゲッ・・・・。」



 廊下では既に待ち伏せされていた。



「・・・・しつこいぞお前ら・・・・・。」



 慎哉は今朝から彼女達に悩まされていた。


 彼女達―――戸山華(とやま はな)泉水優子(いずみ ゆうこ)―――は今朝からしつこく慎哉に付き纏っている。と言っても、慎哉のと言う訳ではない。彼女達は同級生の中でも有名なイケメン好きであり、慎哉に付き纏う理由もイケメンなのである。


 つまり、先週学校の校門前で慎哉と待ち合わせをしていた勇吾と黒王の事である。



「ねえ、いい加減教えてくれない?」


「このイケメン兄弟のこと!」



 そう言って出された携帯電話の待ち受けには先週撮影したばかりのイケメンが映っていた。


 なお、この2人は勇吾達を兄弟だと勘違いしているようである。



「――――俺は帰る!そこをどけ!!」


「「ダメ!!」」



 2人は両手広げて道を塞ぐ。



「恥ずかしくないのかよ!?」


「「イケメンは正義よ!!」」



 最早、言葉が通じる状態ではないようである。


 信吾は説得を諦め、強硬突破する事にした。



「――――じゃあな!!」


「「あっ!?」」



 先日の修業の成果を発揮し、フェイントを入れ、その隙をついて全速力で廊下を駆け抜けていった。あの2人に扱かれた甲斐もあり、階段もあっという間に降りることもでき、無事に学校から逃げ出すことに成功したのだった。


 その後は傘を差しながら街を歩いてゆき、途中で寄り道をしようとしていたら買い物中の勇吾を見つけたのである。



「おっ?勇吾―――――――」


「「――――――――っどこ!?」」


「うおっ!?」



 振り返ると、息を切らせた2人の少女がそこにいた。



「どうやってついてきたんだよ!?」


「「正義(イケメン)のためよ!!」」



 こんな女子中学生がいていいのかと思いたくなる慎哉だった。


 振り返ると、勇吾は慎哉の視界から消えようとしていた。特に用はないので後を追おうとは思わなかったが、イケメンハンター2人の次の言葉で考えが変わった。



「ハァハァ・・・・!彼、どこに向かってるの?家!?」


「ハァハァ・・・・!と言うか、住所教えて!?」


「しつこいな・・・・ん?(そう言えば、あいつらの家って何所なんだ?)」



 携帯の番号やメルアドは知っているが、普段どこで暮らしているのかまだ聞いていなかったことに気付く。


 そんなこんなで尾行する事になって現在に至る訳である。




--------------------------



「――――何考えてるんだあいつは?」



 本人達は尾行しているつもりだが、勇吾にはバレバレである。冒険者として日々の鍛錬を欠かさない勇吾にとっては素人の気配を察知するなど朝飯前なのである。



「ハァ――――――――。」



 溜息を吐きつつ、取りあえず慎哉以外を適当に撒こうと決める勇吾だった。





--------------------------


 10分後、尾行する連中を適当に(・・・)に撒き、慎哉だけ攫った(・・・)勇吾は裏路地に来ていた。



「―――――で、俺の尾行したのか?」


「――――ゴメン!」



 細目で睨まれた慎哉は事の事情を説明し、勇吾を呆れさせたのだった。


 なお、あのストーカー2名は撒いた後はそのまま放置である。



「ハァ、じゃあ行くぞ。」


「――――え!?」


「同級生の事はともかく、住んでる所を教えてなかったのは本当だからな。いい機会だし、招待するよ。」



 そう言うと、勇吾は慎哉の前を歩きながら裏路地から出て行く。慎哉もその後をついて行き、繁華街から住宅街へと向かって行った。


 途中、慎哉は。



(ん~~~、菓子とか買ってった方がいいのか?)



 と思うが、勇吾は寄り道をするつもりはなさそうなのでそのままついて行くのだった。











華と優子はストーカーになってもヒロインにはなりません。




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